倒叙とは?通常のミステリーとの違い。

スポンサーリンク


ミステリーの技法の1つとされています。倒叙とは、「inverted detective fiction(逆さまの探偵小説)」とも称されており、いったい何が逆さまなのか?倒叙とミステリーの違いや、その魅力についてを記載していきたいと思います。

スポンサーリンク

通常のミステリー形式

通常のミステリーでは、最初に事件が発生します。某刑事ドラマを例にあげます。
①遺体発見or捜査陣や主な登場人物などの説明。
②捜査をしていくことで、徐々に容疑者が現れてくる。
③事件の核心に迫り、なんかひと悶着ある。
④刑事や探偵が、トリックや犯行を見破る。動かぬ証拠により犯人を特定する。
⑤親切丁寧に回想シーンを交えながら殺害シーンを見せる。犯人は事件の真相を語る。

通常の刑事ドラマの形式になります。探偵小説の場合は主人公の説明や、舞台説明から入り、おおかた登場人物がそろってから事件が発生しますね。金田一耕助シリーズや、シャーロック・ホームズ、名探偵コナンなど……。探偵や刑事と名乗ってればこの形がテンプレです。

「who done it(誰がしたのか)」
why done it(なぜしたのか)」
how done it(どうやってしたのか)」

ミステリ界隈で有名なのが、この3箇条になります。これらを上手くつなぎ合わせ、ミステリー作品がつくられていると言えるでしょう。ただ、本格ミステリーのジャンルの多様化で当てはまらないこともあります。

そのため、「事件や謎を解決する側から描く」のが、ミステリー作品としても良いでしょう。この推理小説の元祖は、1841年。アメリカの作家エドガー・アラン・ポーの短編『モルグ街の殺人』です。ここから、分析と推理によって犯人を突き止めていく探偵小説ができあがってきたのです。

倒叙形式の場合

ミステリー形式は、最初に事件が発生して犯人を突き止めていく流れでした。しかし、倒叙形式の場合は最初から犯人が分かった状態で進みます。逆さまの探偵小説の由来がここにあります。倒叙では初めから事件を引き起こす犯人が登場し、完全犯罪を画策して実行に移すのです。

倒叙の作品の登場は、演劇ではアンソニー・アームストロングの全3幕戯曲『Ten-Minute Alibi(10分間のアリバイ):1933年』恋敵を殺すために青年が時計を10分ずらしてアリバイを作る。また、映画ではではヒッチコックの『ダイヤルMを廻せ!:1952年』妻の遺産を相続するため、綿密な殺害計画を組み立て実行に移すが……。その後、テレビドラマ『刑事コロンボ:1968年』の登場により、映像による倒叙の金字塔となりました。

小説においては、3大倒叙作品というものがあります。
①フランシス・アイルズ『殺意:1931年』
②リチャード・ハル『叔母殺人事件:1935年』
③F・W・クロフツ『クロイドン発12時30分:1934年』

上記3点がノミネートされています。倒叙小説の元祖は、オースティン・フリーマンの短編集の1つ『歌う白骨:1912年』とされています。また推理小説ではありませんが、ドストエフスキーの長編『罪と罰:1866年』は、犯人の心理描写がリアルに描かれた倒叙形式の最高傑作とも称されています。日本では、江戸川乱歩、鮎川哲也が倒叙の名手として活躍しました。

「who done it(誰がしたのか)」「why done it(なぜしたのか)」「how done it(どうやってしたのか)」が、ミステリーの鉄則です。オーティス・フリーマン氏によると、「どうやって発見に成功したのか」これが重要と述べていたそうです。

上記画像は3幕構成という名前です。「ブログに関して」に詳しく記載はあります。第1幕「犯人が殺害実行」第2幕「警察の捜査と推理」第3幕「犯人と刑事の決着」と分けることができます。最後の戦いに向けての、どこに犯人のミスがあったのかが大事になるということです。

刑事が犯人を追いつける手段や方法。トリックなどや演出なども、大方「刑事コロンボ」で、出尽くした感じがあり、よく「水戸黄門」のような、決まりきったパターンの形式と茶化されることもしばしばあります。

倒叙形式の流れ・主人公について

ミステリー小説の場合は、「探偵・警察」が主役になります。しかし、倒叙の場合は「犯人」が主役を食ってかかるほど重要な役目になります。 通常のミステリー形式では、豪華な役者を登場させてしまうと、高確率で「犯人」だと分かってしまいます。それをミスリードとして、他のパッとでの登場人物を犯人にしたら、「誰だお前」状態になってしまい興ざめですよね。

倒叙の場合は、最初から犯人が分かっているため、豪華な役者を犯人にしてもなんら問題はありません。この点からも、倒叙形式の作品は映像的に有利とも言えるでしょう。しかし、豪華犯人に見合うだけの探偵・刑事役も必要になるとも言えます。

有名な探偵・刑事役として、「古畑任三郎」や「刑事コロンボ」をあげます。相手を油断させて、警戒。油断させ、警戒。このハラハラ感。丁々発止のやりとりから、「倒叙サスペンス」とも揶揄されております。では、倒叙形式のパターンを紹介します。

①犯人は社会的に成功した、何らかの分野のスペシャリストである。しかし、その地位を危うくしようとする人物が現れる

②犯人は、その人物を自身の立場や技能を利用したトリックで殺害する。被害者は大抵、事故か自殺に見せかけられる。

③刑事がやって来て、現場の些細な矛盾からこれが謀殺であると見抜き、初対面での言動から速やかに犯人を特定する。

④犯人と刑事の論戦。序盤は犯人が上手く言い逃れたように見えて、その時についた嘘が後で首を絞めるのもパターン。

⑤捜査を進めるうちに、刑事が犯人の意外な過去など「新たな情報」を手に入れる。

⑥恐喝者や邪魔になった共犯者など、刑事以外の「犯人に仇為す人物」が浮上し、多くの場合、犯人はこれを殺害してしまう。

⑦刑事が決定的な証拠を突きつける、あるいは犯人が自滅的な行動に出るよう誘導し、逮捕する。倒叙はじめて物語!2015年・新刊倒叙ミステリ勝手に反省会その1より引用

地位を脅かす人物の他に、犯人が野心や復讐のために殺害する場合もあります。また、殺害実行場所は、犯人が内部構造を知り尽くした職場などで実行されることも多いです。

犯人がどうやって被害者を殺害したのかはわかっていますが、徐々にその動機がわかってくる。同情し得る過去をもっていたりすることもエピソードによってはあります。刑事が犯人に対して聞き込みを行うのではなく、インタビュアーのようになって付きまとう感じに近いですね。

倒叙形式の魅力

やはり、「犯人の心理描写」は魅力的です。通常のミステリー形式の場合は、犯人は伏せられた状態です。探偵の心理描写や第3者の視点からに描写のみになってしまいます。しかし、倒叙形式は犯人がわかっておりますので、犯人の心情を表現することができます。この点においては、小説の方が心理描写は詳しく書き込むことができるため、小説から映像になった作品を見比べてみるのも面白いかも知れません。

なぜ、犯人は被害者を殺害するに至ったのか?殺人という究極の手段に出てしまった背景を、じっくりと犯人に対して感情移入しながらみることができるのは倒叙ならではです。通常のミステリーは「いかにして犯人を追い詰めるか」に対し、倒叙は「いかにして犯人が追い詰められるか」の物語と言えるでしょう。

また、「綿密な犯行計画」がなぜ失敗してしまったのか。「どこで犯人はミスをしたのか?」など、たったひとつの些細なミスから完全犯罪が崩れ去ってしまうというプロセスは面白いです。「いつからわたしを疑っていたんだ?」「最初にお会いした時です」なんて、やりとりは痺れますよね。

犯人はすでにわかっているのだから、どうやって刑事は犯人を逮捕するのか?に視聴者は集中すればいいのだから、うまい集客効果も期待されます。

まとめ

おもに犯人視点からはじまる形式の倒叙は、「刑事コロンボ」の登場により、爆発的に人気が広まりました。一応「倒叙」という言葉は、国語辞典にも記載されております。私は、「古畑任三郎」から倒叙形式を知りました。しかし、古畑任三郎も1994年~2006年のドラマです。もうすでに見たことがない、知らないという人もいるのかもしれません。

連続しての倒叙形式は、やはりマンネリ化する傾向にあり、インパクトのある初回の放送(99.9 -刑事専門弁護士、相棒)や、数話目以降(刑事110キロ、神の舌をもつ男)に趣向を変える目的で使用されます。犯人側のエピソードを展開できるということでは、名探偵コナンの劇場版などでは多用されています。

犯人側の心理描写、刑事と犯人の丁々発止のやりとり、最後の鮮やかな決め手。一種のオチのある短編。星新一先生のショートショートのような作品に思えます。倒叙というジャンル自体は、一定の人気はありますが、それ以上は脚光を浴びることが少ないです。それゆえに、熱狂的なファンも多いのです。

以上、「倒叙とは?」でした。