『100日後に死ぬワニ』ストーリーとアイディアの考察

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Twitterの4コマ漫画『100日後に死ぬワニ』は、2019年12月12日から2020年3月20日で毎日更新されました。刻々と迫るタイムリミット……。一体どうやって死んでしまうのかという期待感、悲しさが入り混じったストーリーは、反響を呼び徐々に人気漫画へとなりました。

ここでは、ストーリー構成とアイディアについて、Twitterならではを活かしたマーケティングの上手さや、人気になった要因について拙い分析と考察を勝手に行っていきます

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ストーリー構成と手法

冒頭で『死ぬ』ということが明言されているのがヒットの要因なんですね。読者としては、『どうやって死ぬのか?』という物語の過程だけを味わうことに集中できますので、余計なことを考えなくても済むようになります。この手法を『先説法』と呼びます。

例に挙げると、『余命一か月の花嫁』もこの手法を取られているといえるでしょう。これから起こる出来事を、物語の冒頭で説明してから開始する。

「100日後に死ぬ」という前情報を視聴者は教えてもらっているので、単純にストーリーだけを追っていれば楽しめるんです。ワニくんはどのように成長していくのか、恋は実るのか……?などです。

「あんなもの(ギャンブル)は…貧乏人のすること…!
賭けずとも…十分楽しめる…!人が恐れおののきながら、不安定な橋を渡っていく…
なきながら渡っていくんだ その様を…こうした安定した場所で見ていると もうそれだけで…しみじみ幸せを感じられる…

普段感じることのできぬ「セーフティ」という名の悦楽…「安全」であることの愉悦…!
これが思いもかけず美味でな……だから賭ける必要などないのさ…」

賭博黙示録カイジ7巻 利根川幸雄の台詞より引用

『100日後に死ぬワニ』では、主人公のワニくんは死ぬことを知りません。しかし、読者だけは死ぬこと知っているという優越感に浸れるんですね。視聴者だけが分かっている心理をうまく活かした形式と言えば、『刑事コロンボ』『古畑任三郎』などの倒叙形式になります。

完全犯罪を目論む犯人側の犯行からはじまり、視聴者は犯人が分かった状態で進みます。その後に登場する、警察とのやり取り、「どうやって逮捕されるのか」「逃げ切ることができるのか」という対決感を味わえます。

サンセット大通り』『市民ケーン』『火垂るの墓』では、冒頭で死ぬことが明言されます。なぜこのようなことになってしまったのか最初に戻り、人生という映画を主人公と共に歩んでいくんですね。出来事の結末から語られ、過去に遡り物語を振り返る手法は『後説法』と呼ばれます。

ワニくんは、4コマで繰り広げられる日常ものです。時間をあまりかけたくないという人たちにも人気があるのでしょう。情報過多な世の中ですので単純ゆえの強みです。4コマ漫画には珍しくオチがなく『起承転転』という流れが多いです。続けてみることが前提とされ描かれているのです。

アイディアに関して

『○○日後に死ぬ』というアイディアはさして珍しいものではありません。『100日後に死ぬ』×『ワニくん』という組み合わせが見事ですね。ゆるい日常4コマで優しいタッチの絵ですが、死へのカウントダウンがはじまっているというギャップが秀悦ですよね。

余命100コマ おーみや

おーみや著『余命100コマ』

以前から存在する同様のネタがあります。『余命100コマ』という2012年に発刊されてた同人誌です、『100コマ後に爆死する』と死神から宣告されてしまった女子のお話なんですね。

漫画のコマが進むたびに、爆死へのカウントダウンが進んいくという、漫画ならではの設定を活かしたストーリー展開なんですね。最後の爆死までをどう生きてきたのか理解していく、人生の代理的側面を堪能することができます。オチが非常に優れており、落語で言う『アゲサゲ』が好みです。

作者は「おーみや」さんと言う方で、設定が優れているものが多いのでおすすめです。同人誌ですので入手が大変ですが、ぜひ狙ってみてください。

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」
ジャック・フォスター著『アイデアのヒント』27pより引用

「そもそも、アイデア捻出の原則は1つしかない。異質なものどうしを結びつけよ、である。常識の空を破りたいとは、だれでも考えていることだ。しかし、この殻は非常に強固なもので、いかに待っても自然に割れてはくれない。異質なものとの結びつきによって可能なようだ」
星新一著『進化した猿たち』死刑を楽しく 9p~10pより引用

このように、真新しい組み合わせで、『100日後にワニが死ぬ』という物語も完成したといえるでしょう。毎日更新され、気軽に見ることができるTwitterだからこそ、情報社会ならではのマーケティングも人気に拍車をかけましたね。

また、世にも奇妙な物語では『大予言』という話がありました。高名な占い師から、『3日後に死ぬ』と宣言された男の話です。『カウントダウン』という話では、突如、校庭のグラウンドに机が並べられてできた巨大な『10』の数字ができます。1日たつごとに数字の数が減っていき……。

このように、時間的制約が予め決められていることにより視聴者側としても「ここで終わり」という安心感が得られます。逆に時限爆弾のように、「どうなってしまうのか」という期待感を保ったままラストを迎えられる構成なんですね。

テーマ設定

『ワニくんの日常で突然に陥った死』という、誰にでもあり得る状況だからこそ、感動のラストであると評価する人も多いようです。一方で、もちろん反対意見もあるでしょう。この違いとは、主人公(ワニ)に『共感』や『応援したくなれるか』がどうか。これがストーリーの要なんですね。

「『新選組!』をDVDで初めてご覧になった方には申し訳ないけど、あのドラマの本当の面白さは、週に1回ずつ1年かけて見続けた人だけが味わえるものだと、僕は思っている。連ドラってそういうものだから」三谷幸喜著:「ありふれた生活5」より引用

これに尽きると思います。本当の面白さは、Twitterの更新で毎日見続けた人だけが味わえるもので、最後あたりから見た人は、まだ主人公に共感できるほどの距離感にいないわけですから微妙なオチであったという評価しかできません。

かくいう私も、最後あたりから見ており、「へえー」という有り体の感想しか得られませんでした。Twitterのみんなで見守ってきたからこその臨場感というものも感性には働いてきます。機動戦士ガンダムのキャラに言わせると、ランバ・ラル「この風、この肌触りこそ戦争よ!」。その場で結末を見届けてきた人でないと分からない感動があったのでしょう。

藤子・F・不二雄

【藤子・F・不二雄著『SF異色短編4』ある日より引用】

突然陥る死という話では、藤子・F・不二雄著『ある日』という短編漫画があります。その日は4人の映画同好会の集まりで一人ひとり撮り終えた映画を披露する。どれも素人だが目を見張る完成度。だが参加者の1人は、どの作品もリアリティがないと酷評。そんな彼の映画とはただの日常風景を映した物で、急に画面が途切れて終わる…風刺が効いた闇深い作品です。

オチに関して

100日後に死ぬワニ 3日目

【きくちゆうき著『100日後に死ぬワニ』3日目4コマ目引用】

ファンの間では、3日目がキーポイントとされております。あまり関係ないですが、2011年に放送されたアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』でも3話目が物語のキーポイントでしたね。この3日目ですが、ワニくんが車が多い道路を渡ろうとするヒヨコを助けた場面です。

100日後に再びヒヨコを助けようとしてワニくんは……。これを見た時に思い出したのが、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』のラストシーンです。野原一家が戦国時代にタイムスリップしてしまうというストーリーになります。

井尻又兵衛由俊という武士は冒頭で銃で撃たれてしまう所を、しんちゃんが来たことで歴史が変わって生き残るという未来に変わります。又兵衛共に戦国時代での戦に勝利しますが、最後に敵の銃弾に倒れてしまうのです。冒頭で邪魔された歩兵の銃弾が、時空を超えて又兵衛を貫いたという解釈がでされます。ここでしんちゃんに言う台詞があります。

俺は、お前と初めて会ったとき、撃たれて死ぬはずだったのだ。
だが、お前は俺の命を救い、大切な国と人を守るはたらきをさせてくれた。
お前は、その日々を俺にくれるためにやって来たのだ。

「映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」より引用

死ぬはずの予定を狂わした事で、運命が再度死亡予定者に死を与えたのです。つまり、3日目でひよこを救ったことにより、死の代償を得てしまった。……など、まったくの見当違いです

3日目で助けたヒヨコは、その後は鶏に成長しました。再び、ヒヨコが車が多い道路を渡っているのを見て、ワニくんはとっさに飛び出して身を挺して庇った。心優しいワニくんがそこにはいたという、単純に分かりやすく「その作品の魅力」を上手く表現したオチなんですね。

まとめ

Twitterでは様々な創作漫画が人気になっていますが、『100日後に死ぬワニ』はテレビでも取り上げられています。ほのぼのとした万人受けしやすいキャラクター。カウントダウンがあり終わりが見える。みんなが結末に注目するため、どうなるのかと創造力をかきたてられる構成で、読者全員が一体感を覚えたのが功を制したんですね。

毎日続けることの大切さ、作品と共に自分を売り込んでいく積極性。こういった日々の積み重ねにより、相手から名前や作品を知ってもらえる機会が巡ってくるんですよね。作品は見られなければ意味がありません。まずは、自分を覚えてもらうことが大切なのだと感じました。

……と、このように私は勝手に思っているだけで、作者きくちゆうき氏の「ホームページ」よると『事故で亡くなった友人のことを思ってまた絵を描き始めた(20歳より引用)という文章がありました。

100日後に死ぬワニは、最後に事故により死亡してしましました。そう考えると、この作品が誕生したきっかけとは、友人の死による動機で描かれた漫画なんですね。作品に込められた思いを汲み取ることができるのは作者自身だけです。

作者はあくまでも、自分のもっていた物語を文章や絵にしただけということ。それを読んだ人が感じる『物語』とは全く別物になります。作者の書いた『物語』は作者だけのものなんだから、あなたが読んだ『物語』もあなただけのように。どう受け止めるかは、あなただけのものです。

以上、『100日後に死ぬワニ ストーリー構成とアイディアの考察』についてでした。

  1. 100ワニポップコーンの作り方
    ①オーブンを98°cに予熱する。
    ②ワニくんは、そのあいだ、当ビル5f屋を開く。
    ③オーブンで豆を5分間焼いてできあがり。