凶器探しがメインプロット作品である。「絵沢萠子」氏と「加藤治子」氏の口喧嘩から始まる。犯人のチャーミングで意地悪な演技が見事である。なんといってもタイトルがカッコいいではないか。『偽善の報酬』なんて洒落ている。
データ
あらすじ+人物相関図
脚本家・佐々木高代は、妹でマネージャー・佐々木和子との折り合いが悪かった。和子は高代の稼いだ金銭を管理し慈善事業に寄付している。自分の金を無駄なことに使っていることや、自由に金を使うことができない不満から、高代は強盗殺人を装って和子を殺害する。
自分で警察に通報をすると、古畑任三郎たちは証言の矛盾などからすぐに彼女の犯行だと睨んだ。「この事件、凶器を見つければ解決だ」と宣言し、現場となった館内を探っていくのだった。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:佐々木高代(ささき たかしろ)
役者:加藤治子(かとう はるこ)
職業:脚本家
脚本家の女性。マネージャー・和子は妹で、昔から折り合いが悪かった。金銭の全てを和子が取り仕切り、多額の金を慈善事業に寄付している。自分で稼いだ金を自由に使えないことも日頃からの不満であり、強盗殺人に偽装して妹を殺害した。
高代はペンネームであり、本名は『久子(ひさこ)』である。代表作は、桃井かおり主演『冬の蚊取り線香』で、ラストの葬式シーンで主人公は「人生は蚊取り線香。ぐるぐる回ってあとは灰になるだけ。でも蚊はよく落ちる」と語る場面があるそうだ。
今回の被害者:佐々木和子
役者:絵沢萠子
職業:マネージャー
妹でマネージャーの女性。高代が稼いだ金を全て管理しており、何百万もの金を慈善事業に寄付している。また、若い下積み脚本家を助けるための基金を作っていた。
小ネタ・補足・元ネタ
〇佐々木高代の執筆道具:インクはパイロット社『30ml(黒・青)』。万年筆は形状から、プラチナ万年筆『#3776センチュリー(※旧式タイプ)』だと思われる。原稿用紙は、満寿屋『NO.15(ルビ無し:グレー)』を使用していた。
〇佐々木高代の邸内には、芸能人から贈られた花が多数あり、古畑が「タモリみたいです」と言うシーンがある。これは『笑っていいとも』のテレフォンショッキングのことで、このコーナーでは芸能人から贈られた花が飾られる。
刑事コロンボからのオマージュ
まとめ
『凶器当て』がテーマであり、古畑任三郎は冒頭から佐々木高代が犯人だと見抜き「凶器を見つければこの事件は解決」と断言している。これにより事件の焦点は、凶器を探すだけになるシンプルな構成となる。
残りの尺をどうやって稼ぐのか。会話&会話である。犯行現場となった邸内だけのワンシチュエーションで乗り切ることになるのだ。小説やら創作をしたことがある人ならばお分かりだろうか、会話を書くのは超絶難しいのだ。
昭和を代表する名女優『加藤治子』さんの名演が光るエピソードであり、傲慢な女流作家を演じる名女優の立ち振る舞いに感動して、酷い犯人なわけだが最後はホロリときてしまうラストだった。ラストシーンで加藤さんが台詞がうまく出てこなかったようで驚くほど間が空くシーンがあるのは面白い。
最後の台詞は何でもかんでも説明を求めたがる視聴者に対し一石を投じモノ申す一言でもあった。セリフで語らずとも表情や仕草から内なる感情や思いなどは通じるのである。ドラマとは総合芸術なのだから。
以上、『偽善の報酬』でした。