古畑任三郎 35話『完全すぎた殺人』頭でっかちの殺人

古畑任三郎 35話 完全すぎた殺人 頭でっかちの殺人

【VS.科学研究員】「ミステリの専門用語にアームチェア・ディティクティブという言葉があります。探偵が一歩も部屋の外に出ずに推理だけで事件を解決してしまう事。それでいくと今回は、アームチェア・マーダラー。一歩も犯行現場に踏み込むことなく完全犯罪を成し遂げようとした男の話」

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データ

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脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:河野圭太

音楽:本間勇輔

本編時間:46分11秒

公開日:1999年6月1日

あらすじ+人物相関図

古畑任三郎 完全すぎた殺人 頭でっかちの殺人 人物相関図

化学研究員・堀井岳は、事故により車椅子での生活を余儀なくされていた。事故をきっかけに、恋人・片桐恵が自分を離れて、同僚の等々力と婚約したことを知ると、双方に復讐を計画する。それは、犯行現場に一歩も立ち入ることなく犯す遠隔殺人であった。

等々力の結婚祝いに、学園祭の思い出である『考える人』の像をプレゼントした。この中には爆弾が仕込まれているのだ。その後、片桐が疑われるよういつくもの罠を張り巡らせると、堀井は研究室から電話を掛け、等々力自身に起爆装置を作動させ爆殺したのだった。

人物紹介(キャスト)

古畑任三郎 堀井岳 

今回の犯人:堀井岳(ほりい がく)

役者:福山雅治

職業:科学研究員

殺害方法:爆殺

動機:復讐

概要:詳しく見る
『バロネス科学工業株式会社』研究員の男性。片桐恵、等々力とは大学の同期でトリオで会社に引っこ抜かれていた。事故をきっかけに車椅子での生活を余儀なくされ、恋人であった片桐が自身を離れ、等々力との結婚を決めると双方に復讐を決意する。

大学2年(1990年11月3日)の学園祭で、等々力と共同制作した『しゃべる考える人』の像に爆弾を仕掛けると、結婚祝いに等々力にプレゼントする。その後、片桐が疑われるようにいくつもの罠を張り巡らせると、研究室から電話を掛け、等々力自身に起爆装置を作動させ、一歩も犯行現場に立ち入ることなく爆殺させた。

会社では、『瞬間接着剤の開発』を担当している。横からの圧力にだけ弱い特性の瞬間接着剤は、今年中には商品化が決まっていた。

車椅子生活になった事故の詳細は不明であるが、この事故をきっかけに性格が歪んでしまう。頭の中で作り上げた完璧な殺人計画であったが、計算外であった『人の情』でもろくも崩れ去る。人の心に寄り添えれば起きなかった事件でだったが、その心を閉ざしたのは自身であるのも皮肉な話である。


古畑任三郎 等々力今回の被害者:等々力(とどろき)

役者:板尾創路

職業:科学研究員

概要:詳しく見る
『バロネス科学工業株式会社』研究員の男性。堀井岳、片桐恵とは大学の同期でトリオで会社に引っこ抜かれていた。大学2年(1990年11月3日)の学園祭では、堀井と『しゃべる考える人』を共同制作している。頭を摩ると、「自分で考えろ」としゃべる仕組みらしい。学生時代には実験のミスで、研究室を吹っ飛ばした過去もある。

妻子持ちであるが現在は別居中である。片桐恵との交際は半年前から始まり結婚を約束していた。『新製品 ケミカルピットの基本構造とその将来性について』という書類や、他にも論文コンクールなどに応募したりしている。『アクリル酸誘導体』の資料などもまとめていたようだ。

住所は『東京都世田谷区 ◯?5-15-19 ガーデン前林213号室』にあり、自宅でも研究ができるように納戸を実験室に改築していた。

犯行計画/トリック

『遠隔操作で爆殺。その罪を擦り付ける』

①堀井岳は等々力に、『アクリル酸誘導体の資料』を職場に送ってくれるように頼んでいた。また堀井は、等々力の鞄の中から、『新製品に関する資料』を盗んでおく。その後、同僚の研究員・島津に、予定が入った自分の代わりに『ジャイアンツ戦のペアチケット』をプレゼントした。

②等々力と会うと、彼の交際相手・片桐恵との結婚祝いに、かつて学園祭の出し物で作った『考える人の彫像』をプレゼントした。この中には爆弾が仕掛けられている。また、片桐はかつては堀井の恋人であった。

②片桐恵が、図書室の複写室の鍵を返却すると、堀井は複写室の鍵を盗んだ。18時の退勤時刻、片桐に好意を寄せる島津が野球観戦に誘うが、「残業があるので」と断られる。片桐は等々力と交際していることは、まだ職場では秘密だったので嘘をつく必要があった。

③片桐は等々力の自宅に向かう。19:00 堀井は片桐の携帯に電話をかける。片桐とは元交際関係であり、自分を振って、妻子持ちの等々力を略奪した件など煽るような発言をして、わざと携帯の電源を切らせた。

③電源が切られたことを確認すると、警備室に連絡をする。「図書室の複写室に忘れ物をしたが鍵が戻ってきていない」。警備員は最後に鍵を借りた片桐に電話をするが、電源が切られているため電話が繋がらないと返した。

④19:23 堀井は、等々力のマンションの隣の部屋にピザの出前を頼んだ。
19:50 今度は等々力の自宅に電話をする。変声機を使い声色を変えると、地下鉄の手荷物預かり所に成りすました。朝盗んでおいた、『新製品に関する資料』が届けられている。等々力は、片桐に頼み駅まで取りに向かわせた。

⑤20:07 変声機を使わず等々力に電話をする。今日プレゼントした『考える人』の中に手紙が入っていると、台座の裏にある蓋を取らせる。装置が起動して爆死した。捜査が開始されると、堀井は片桐に対して、等々力とは無関係だと警察に話すように誘導する。

⑥犯行日、片桐は残業すると言っていたが18時以降は会社におらず、携帯電話も繋がらなかった。等々力の自宅に行っていないと言うが、彼女が出ていくのをピザの配達人が目撃し直後に爆発が起きた。大事な研究資料が爆発で焼失しないよう、あらかじめ等々力に資料を送らせたのではないかなど、片桐が犯人になるように画策していた。

推理と捜査(第2幕まで)

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○被害者は爆発物を取り扱っていたのに手袋をしていなかった。場所がトイレだったのもおかしい。誰かが爆発を誘発させたのではないか?

◯犯人として、被害者の交際相手・片桐恵が疑われた。しかし、彼女が犯人ならば、爆発させて不自然じゃない場所がある。どうしてよりにもよってトイレで爆発させたのか?

→爆発物は元々別の場所にあり、解体して水に流そうとしたのではないか?

視聴者への挑戦状

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「えーどうやら今回は西園寺くんの勇み足だったようです。今回はとても頭のいい人間が、頭の中だけでえ組み立てた犯罪。しかし実際にやってみると、あちこちにほころびが。さて、彼が見落としていた最大のミスとは はたして何でしょうか。古畑任三郎でした」

小ネタ・補足・元ネタ

◯罪を擦り付けられる片桐恵を演じたのは、『戸田菜穂』氏である。彼女をジャイアンツ戦に誘う研究員・島津を演じたのは、『竹沢一馬』氏である。

◯被害者・等々力の名前はスタッフロールでも明記されていない。28分33秒~西園寺くんが見せた宅配物の送り主を見ると、擦れていて断言はできないが『等々力雅史』と表記されている。

◯『バロネス科学工業株式会社』の住所についても記載されている。東京都武蔵野市 八幡◯? 8-29-16であった。

〇事件があった日、等々力は「論文コンクールの審査会から入選を知らせる電話を待っていた」とあった。その後の西園寺くんの調べでは「予選すら通過していなかった」との流れがあるが、作中ではそれ以外に論文コンクールについての描写や説明がない。犯人が変声機で審査会になりすましていたのだろう。

◯舞台設定としては、刑事コロンボ23話『愛情の計算』を意識していると思われる。大規模な研究施設が舞台で、登場人物は白衣を着ている。心情に関してが解決のカギとなる。

〇刑事コロンボ11話『悪の温室』も一部参考にしていると思われる。西園寺くんが事件捜査を任せられ、今泉から「張り切っちゃって」と言われる。悪の温室では、若手のウィルソン刑事がコロンボから捜査を任せられ、「張り切りボーイ」と茶化される。共に勇み足で、罪を擦り付けられた女性を誤認逮捕してしまう。ラストシーンでは、その女性の横を犯人が通り抜け退場する。

まとめ

実に犯行計画が複雑なんですね。冒頭で犯人が行っていた行動の数々だったのですが、何をしているのかが皆目見当がつきません。それが後半になるにつれてすべてが繋がっていく流れは秀逸です。

西園寺くんが主導で捜査をすすめているのも、トリックに関して一度視聴者側の情報を整理するために説明役が必要なんですね。 罪を擦り付けられた片桐の犯行だと、道筋を立てながら聞かせてくれるのです。

内容的には復讐劇でありますが、被害者を殺害して終わりではなくもう一つの目標、『罪を擦り付ける女性』がいる。『一歩も犯行現場に立ち入ることなく犯す殺人』という特殊な設定のおかげで、ストーリーの幅を広げることに成功しております。

(41分25秒)古畑任三郎「実に面白いことが起きるんです」とのセリフがあるのですが、事実上の「ガリレオVS古畑任三郎だ‼」と勝手に盛り上がっていました。「ガリレオ」は、福山雅治氏が演じる物理学准教授・湯川学がトリックを物理学による計算で解決して2007年の推理モノのドラマです。

その湯川の決め台詞的が、「実に面白い」なんですね。今作品から8年の時を越えた繋がりがあるんだと勝手に感動していました。ガリレオも犯人視点から進む倒叙形式に近く、冒頭で犯人が殺人を犯します。どんなトリックで殺害したのか、どこにミスがあったのかを楽しめる作品です。同じフジテレビなのも何かのご縁ですかね。

以上、「完全すぎた殺人」でした。