刑事コロンボ 16話『断たれた音』チェックメイト!

【VS.チェスの世界チャンピョン】「犯人はあなた以外には考えれない」という状況証拠が完璧なエピソードなんですね。冒頭からチェスの駒につぶされそうになる悪夢はインパクトがあります。チェスの世界チャンピョンを決める大会前夜に起こるという殺人というのも、脚本的に面白いです。

被害者役の方が、スラムダンクの『安西先生』に見えてしょうがないのは私だけ?

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データ

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脚本:ジャクスン・ギリス

原案:ジャクスン・ギリス、リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク

監督:エドワード・M・エイブロムズ

制作::ディーン・ハーグローグ

ストーリー監修:ジャクスン・ギリス

音楽:ディック・デ・ベネディクティス

本編時間:74分

公開日:アメリカ/1973年3月4日 日本/1974年4月13日

あらすじ+人物相関図

断たれた音 人物相関図チェスの世界チャンピョンであるエメット・クレイトンは、病気で引退した元・世界チャンピョンのトムリン・デューディックとの直接対決がロサンゼルスで行われることになった。これは、事実上の世界一決定戦で世界中の注目を浴びていた。

この対決は、クレイトンの元・婚約者リンダ・ロビンソンの計らいで、彼を敗北させ地位と名誉を失墜させるため、親しいデューディックに頼み実現したのだ。対決の前夜、クレイトンとデューディックはホテルを抜け出し、レストランで密かに手合わせをする。結果はクレイトンの惨敗であった。

観衆の前で敗北を恐れたクレイトンは、デューディックをホテルの裏側まで誘い出すと、稼働中のゴミ粉砕機に突き落とした。ディーディックが対決を恐れ、ホテルの裏口から逃げ出そうとして、足を滑らせ機械に巻き込まれたように見せかけたが、病院に搬送され一命を取り留めていたのだった。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

エメット・クレイトン

【NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン:刑事コロンボ「断たれた音」より引用】

今回の犯人:エメット・クレイトンローレンス・ハーヴェイ

吹き替え声優:小笠原良知(おがさわら りょうち)

追加吹き替え声優:田原アルノ(たはら あるの)

職業:チェス世界チャンピョン

殺害方法:薬殺

動機:王座防衛

概要:詳しく見る
現チェス世界チャンピョンの男性。自身を献身的にサポートしてくれたリンダ・ロビンソンと婚約を約束していたが、魅力的な女性が現れて別れを告げる。リンダは復讐のため、母の友人で元世界チャンピョンのトムリン・デューディックとの直接対決を催された。対決前夜、密かに手合わせを行うも惨敗してしまう。勝てないと悟ったことから、稼働中のゴミ粉砕機に突き落とし事故死に偽装しようとした。

耳が不自由で左耳に補聴器を装着している。補聴器は集中したい時には電源を切り、無音のままチェスの対決に臨んでいる。読唇術を習得しており、補聴器なしでも相手の口の動きから言葉を理解することができる。

驚異的な記憶力の持ち主でもあり、過去のチェス世界戦の駒の配置や勝敗、その後の駒の動かし方などを記憶していた。この記憶力を活かして、トムリン・デューディックの常備薬リストを数秒見ただけで暗記。ゴミ粉砕機に突き落としても死なず、病院に搬送された彼の薬をすり替えることで殺人を成功させた。

世界チャンピョンの座を防衛するプレッシャーから、対決前日にはデューディックの顔をしたチェスの駒につぶされる悪夢を見る。文字通り重圧に押しつぶされた結果と言えよう。デューディックとの非公式戦で敗れた後は、苛立で部屋の壁に補聴器を投げつけて破壊してしまった。


トムリン・デューディック

【NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン:刑事コロンボ「断たれた音」より引用】

今回の被害者:トムリン・デューディックジャック・クリューシュン

吹き替え声優:松村彦次郎(まつむら ひこじろう)

職業:元・チェスの世界チャンピオン

概要:詳しく見る
ロシア人の元チェス世界チャンピョンの男性。病気が理由でチャンピョンの座を退いていたが、昔から親しい友人の娘リンダ・ロビンソンから、現世界チャンピョンのエメット・クレイトンと対決してほしいと持ち掛けられ、今回の復帰戦に応じた。

引退しているが腕前は健在である。対決前夜にクレイトンと密かに手合わせを行い、7手先を読み切り41手をもって圧勝する実力(チェスの平均:40手~決着)であった。勝負師としての強さだけではなく、敗北したクレイトンに思いやりをもって接する優しさを兼ね備えた人物である。

病気は糖尿病とのこと。かなりのグルメであり、塩分の高い食事やワインを飲んでいる。低カロリーで砂糖抜きの料理を健康管理の医者から提供されているが、不味くて食べたくないと抜け出しては、レストランで食事を楽しんでいる様子。

そのため、クレイトンがすり替えた薬は、血糖値を下げる・上げるタイプの物であると考えられる。ゴミ粉砕機の中に転落であり低血糖状態にあるはず。おそらくは上げる薬を、下げる薬にすり替えたのではないだろうか?

グルメ以外の趣味としてはボーリングがある。コロンボが休日の楽しみにしていたボーリングをしようとした際に、デューディックが失踪したと連絡が入る。そんな彼がいた場所とは、こともあろうにボーリング場であった。

入れ歯を装着している。出歩く際には必ず、年代物の象牙でできたミニチェスセットを持ち歩いているとのこと。

犯行計画/トリック

【事故死に偽装するが生きていた。そのため病院で薬をすり替え薬殺する】

①エメット・クレイトンは、トムリン・デューディックと密かに対決するが惨敗してしまう。部屋で精神的に追い詰められた彼は、補聴器を壁に叩きつけて壊した。そして、ディーディックの殺害を決意する。彼の名を語り、アステカ空港からメキシコ行のタクシーを予約した。

②電話で、デューディックをホテルの裏口に呼び出す。彼が部屋から出た際に、ドアにセロテープを貼りカギが自動ロックできないようにした。清掃員が部屋から出ると、デューデュックの部屋に侵入して、旅行カバンに荷物を詰め込んだ。

③デューディックと地下で会う。クレイトンは不倫の経緯について語り、リンダに謝罪したい旨を伝える。何を書けば良いかと取り乱した素振りを見せて、デューディックに「すまない、許してくれ」と、書いて欲しいと頼んだ。書き終えると稼働中のゴミ粉砕機にデューディックを突き落とす。

④クレイトンは昨夜密かにディーディックと対決して、自分が圧勝したと嘘をつく。書かせた手紙も発見されると、敗北を恐れたディーディックが、旅行カバンを持ち出してホテルから逃げ出そうとして、油で滑りやすいゴミ粉砕機近くで、足を滑らせてしまった事故死に見せかけた。

⑤しかし、病院に搬送されたデューディックは一命を取り留めていた。クレイントンは、彼の常備薬を病院ですり替えて殺害した。

推理と捜査(第2幕まで)

ネタバレ注意!
〇被害者の旅行鞄に入っていた歯ブラシが、彼の物ではなかった。ディーディックは義歯であり、歯ブラシは健康管理係が使用している物である。また、いつも持ち歩いているミニチェスセットが入れられていなかった。

〇エメット・クレイトンの補聴器は昨夜壊れてしまったようだ。

〇被害者が書き残していった手紙は、ただのメモ紙に書かれていた。封筒は彼が使用している公式の紋章入りで、便箋も彼の部屋にあったにも関わらず、なぜただのメモ紙に書いたのか?

〇レストランでデューディックとクレイトンが手合わせした際、デューディックから先に駒を動かしたとシェフは証言する。クレイントンは、その手合わせは自分が勝ったと話す。だが、デューディックが残したチェスの記録には、白(先手)が勝利したと記録してあった。

〇クレイトンが使ったペンのインクと、デューディックが書いた手紙のインクが一致した。

三幕構成

小ネタ・補足

〇エメット・クレイトンの聴力の障害は、ノベライズ版によると、就職が決まり叔母の家に報告を兼ねて車を運転していたところ、道を大きく外れてきたタンクローリーを避けようとしたが衝突してしまう。その結果、感覚器官の破裂により聴力を失ったようだ。

〇リンダ・ロビンソンは、エメットが聴力を失ってからも献身的に彼を支えてチェスを進めた。チェスの王座になると、クレイトンは、スージー・バレンタインという女優と関係を持とうとして、リンダとの婚約を破棄していたとノベライズ版では記載されている。

〇被害者の『トムリン・デューディック』が、スラムダンクの安西先生ケンタッキーのカーネル・サンダースに酷似していると思ったのは私だけではないはずである。ぜひ、画像検索で見比べていただきたい所存である。

〇今エピソードは、犯人『エメット・クレイトン』演じた『ローレンス・ハーヴェイ』氏の遺作である。胃ガンに犯されており、冒頭で少し酒を飲む以外は食事のシーンは一切ない。

チェスで勝てないだけで殺人? 東西冷戦状態の時代であり、対戦相手はソ連(ロシア)のトムリン・デューディック、西のエメット・クレイトンの対決という構図になります。チェスは知性の代名詞とも言われており、影響力が大きい競技です。アメリカ側にとってみれば東西冷戦の代理戦争であり、クレイトンの敗北は社会的な死にも繋がったのではないでしょうか。

まとめ

小さなコロンボの気づきが良いんですね。積み重なって積み重なって、最後にクレイトンの犯行にしか考えられない状況が作り出されるのは見事な展開です。忘れられない場面は、レストランでの小道具を使ったチェス対決で、映像的にもお洒落なやりとりでした。

普通ならば、稼働中のゴミ粉砕機に突き落とされたら死亡してしまいます。それなのに、なぜかデューディックが生きていた。その『なぜ』が、クレイトンの犯行以外にしか考えれないに繋がる。犯人と刑事の直接対決は、まさに盤上でのチェス対決さながら!

コロンボ警部の最後の台詞もオシャレです。「お気の毒だが、縦から見ても横から見ても明らかなんだ。この事件の犯人は〇〇〇〇なんだ」。縦8マス×横8マスの計64マス。チェス盤になぞらえた、ストーリーと一貫性のある締めくくりはお見事です。

以上、16話「断たれた音」でした。