刑事コロンボ 52話『完全犯罪の誤算』旧シリーズテイストの1本

新・刑事コロンボ 52話 完全犯罪の誤算
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【VS.弁護士】パトリック・マクグーハンが犯人と監督を務める、旧シリーズのような感覚で見られる正統派の倒叙作品です。マクグーハンは、「祝砲の挽歌」「仮面の男」の犯人役の方です。新シリーズでは犯人側のドラマが展開されるエピソードが多いのですが、今作品は犯人側のドラマはなく、純粋な犯人と刑事の駆け引きを味わうことができます。

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データ

脚本:ジェフリー・ブルーム
監督:パトリック・マクグーハン
制作:ペニー・アダムス
制作総指揮:ジョン・エプスタイン
製作総指揮スーパーバイザー:ウィリアム・リンク
ストーリー監修:ジャクスン・ギリス&W・R・ウッドフィールド
クリエイティブコンサルタント:ビル・ドリスキル
音楽:デヴィッド・マイケル・フランク

本編時間:95分
公開日:アメリカ/1990年2月10日 日本/1995年3月17日

あらすじ

弁護士オスカー・フィンチは、過去にフランク・ステイプリンを違法な手段で無罪にしていた。彼は今度も弁護を依頼し、もし断れば過去の違反を暴露すると脅してきたのだ。現在オスカーは下院議員ポール・マッキーの参謀役を務めており、間もなく大統領選が始まる。

ポールが副大統領候補として政界入りが決まれば、オスカーは司法長官としてのポジションに就くことができるかも知れない。そんな大事な選挙戦を前に、この情報をマスコミが黙ってはいない。その晩、フランクの自宅で彼を射殺する。

あらかじめ用意した偽装工作を行うと、遺体に拳銃を握らせて火薬を手に吹きかける。これで手には硝煙反応が残る。自身が起訴される内容の新聞切抜きをデスクの上に置くと、有罪は逃れられないと思い自殺したように偽装したのだった。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

今回の犯人:オスカー・フィンチ
役者:パトリック・マクグーハン

吹き替え声優:久米明

概要:弁護士であり副大統領候補の下院議員ポール・マッキーの選挙参謀を務める男性。過去にフランク・ステイプリンを違法な手段で無罪にしており、今度の弁護を断ればこの件を暴露すると脅してきたため、口封じのため自殺に見せかけて殺害した。

過去の違反とは21年前に遡る。フランクを無罪にするため、地方検事局に勤務するポールに指示し、証拠が載った書類をシュレッダーで処分させ、検察の立件をできなくさせるというものであった。この件は、書類紛失というポールの上司の管理ミスということで、上司は検事をクビになったようだ。

過去は違法な手段で無罪を勝ち取ったものの、現在の弁護士としての腕前は本物である。専門は刑事弁護士であり、法廷では敵なしとも称されている。高額な弁護料であるようだが、彼を頼る依頼者は多数いる。今エピソードでは、「キンセール」と「フレミング」という名前の人物の弁護を担当していた。

本業の弁護や顧客との打ち合わせの傍ら、選挙参謀としては会場の選びや祝賀会の指示を担い、ポールが副大統領になった暁には、未来の司法長官の座を狙っていた。時間は命そのもの」という価値観があり、遅刻は嫌いで、同じ質問を繰り返すのも嫌い。とにかく無駄が嫌いなようである。

一方でジョークが大好きなようだ。フランクが妻に送ったとされる2枚のFAXは、1枚目はユダヤジョーク、2枚目はアイリッシュジョーク。アイリッシュジョークは気に障るとのことで聞かなかったが、ユダヤジョークは楽しみに聞いた。そして大爆笑をしている。

食い意地があり、何かを食べていないと落ち着かないのか? エピソード中では、度々お菓子などの手軽な物を口に運ぶ姿が見られた。事務所の机の引き出しには、未開封のガム3パックが入っていたりもしていた。

コロンボ警部の愛車『プジョー403』への酷評が酷く、歴代犯人の中でも指折りの発言を聞くことができる。


今回の被害者:フランク・ステイプリン
役者:ルイス・ゾリック

吹き替え声優:小松方正

概要:違法なビジネスで金を稼いでいる男性。どのような違法手段かは不明であるが、オスカー・フィンチの見立てでは5年の刑期のようだ。裁判には慣れっこと話しており、刑務所に入りたくない理由は、かわいい女房に肩身の狭い思いをさせたくないとの理由らしい。見返りとして、足がつかないようにスイス銀行を通じて現金を送る予定であった。

違法なビジネスによって金銭を稼いでいるが、秘書のレベッカ・クリスティによると、「良い人でした」と、表向きには人当たりが良かったらしい。オスカー・フィンチと内密の話をするため、妻スーザンにはハワイに行かせ、メイドには休暇を与えていた。妻にはハワイに向けて2通のFAXを出すほどの愛妻家ぶりだ。

1枚目:ユダヤ系 2枚目:アイリッシュジョークを送ったようだが、今エピソードでは1枚目のみコロンボにより披露された。

ユダヤ系ジョークの内容
ユダヤ系のおばさんが、ビバリードライブを歩いてきた。こっちからは、オーバーを着た痴漢が歩いてゆく。おばさんのまん前で、痴漢がコートをぱっと開いた。おばさん、じっくり見て言った。「ペラペラの裏地がぶら下がってるよ」

自宅には最新式の電話機があり、ダイヤル以外の30個のボタンで着信先を保存できる。また、殺害前にはイタリアチーズ「レッジャーノ」を食べていた。コロンボ警部の親父も好きだったようで、最高のチーズと評している。1欠片10ドルはするようだ。(1990年2月:1ドル=145円 10ドル=1450円)

小ネタ・補足

〇マクグーハンが監督を務めた34話『仮面の男』で登場した『ビルトモア・ホテル』が、今作品でも知事との打ち合わせや祝賀会のシーン使われている。現在は『ミレニアムビルトモアホテル』という名称になっている。

〇56話『殺人講義』では、コロンボが法学部の学生たちに特別講義を行う。その際、証拠の捏造をするのかという学生の質問をはぐらかす時にこのエピソードについて語った。

〇殺人現場にいたことを証明する証拠は、コロンボ役のピーター・フォーク氏のアイディアである。自伝では刑事コロンボの撮影裏やその他のアイディアを模索したことなどが綴られている。アルツハイマー型認知症を発症する前に書かれた自伝であり、絶版で現在はプレミア価格となってしまった。

まとめ

新シリーズのようなギラギラ感はない。電話のやりとりだけで分かる殺意が芽生えるシーン、音もなく黙々と進める犯行計画、気高さのある犯人を旧シリーズファンは待ち望んでいたのです。変に技巧派にしたり、BGMを多用することはなく安定感があるのです。

有能弁護士だけにあり、コロンボの追及ものらりくらりと見事に逃れるんですね。新シリーズ犯人は年齢層が低いのですが、パトリック・マクグーハンとピーター・フォークは共に60代と年齢が近く、対等な関係で丁々発止のやりとりを楽しむことができました。

タイムイズマネーな考えであり、よく喋りよく食べると茶目っ気もありますが、経験からくる態度とふてぶてしさなど、キャラの立て方が上手いと思いました。カット割りとか、カメラアングルもユニークです。

以上、「完全犯罪の誤算」でした。

  1.  ユダヤ人ネタのジョーク、「裏地」というのはどうやら、かぶってる皮のことらしいです。ユダヤ人の男は割礼をするので、おばさんは見たことがなかった。それとユダヤ人女性はコチコチなので、男性の持ち物なんかより服飾関係の方に関心がある。という偏見が下敷きにあって、おばさんソレをしげしげと見て「おやまあ、あんたそれ裏うちかい(裏地付きなんて初めて見た)」、または「帽子かぶってあったかそうだこと」・・・シモネタの中でも反応に困るほど下品なものです。で、一瞬しまったと思ったが大笑いすることに決めた犯人、マクグーハンの演技が冴えていたと思います。

  2. ≫ユダヤ人の男は割礼をするので、おばさんは見たことがなかった
     ※露出狂の男で裏地=男性器のあれ……で下ネタだとは思ってはいましたが、改めて学ばせていただきました。

    ≫それとユダヤ人女性はコチコチなので、男性の持ち物なんかより服飾関係の方に関心がある。という偏見が下敷きにあって
     ※そういった考えがあるのですね。マクグーハンが笑うまでの絶妙な間と、カメラの引きが良い味です。前に『人生最強の武器 笑いの力 ユダヤ人の英知に学ぶ』、というジョーク集の本を読んだのですが、ユダヤジョークは下ネタ系が多いんだと(収録に偏りがあった?)思った次第であります。

  3. パトリック・マクグーハンの秀逸な役作りと演技と演出。
    久米明さん、小松方正さんの吹き替えが印象的です。

    「いい質問だ」ブーーーン!!
    の場面とか、ユニークですね。

    ピーター・フォークの自伝は数年前に新品で定価で購入しました。
    パトリック・マクグーハンのほか、フェイ・ダナウェイやジョン・カサヴェテスについても語っていましたね。

  4. フリーザ様世代さま
    ≫パトリック・マクグーハンの秀逸な役作りと演技と演出。
     新シリーズは派手な演出が多いのですが、マクグーハン演出は堅実で、旧シリーズを思い出させてくれます。間の取り方と繋ぎが見事ですよね。
    ≫ピーター・フォークの自伝は数年前に新品で定価
     私も数年前に中古でしたが購入しました。今、値段を見てみるとびっくりです‼ コロンボの再放送に伴い、関連書籍の値段もプレミアム価格になっていました。

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