「ゴールデン・フリース」宇宙船という密室。感情をもった人工知能による殺人。

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【VS.宇宙船の人工知能】SFと倒叙という組み合わせ。舞台は『宇宙船』。さらに、犯人は『宇宙船を管理する人工知能』なのです。つまりは、宇宙船という密室の世界そのものが犯人です。

冒頭15ページで殺人を実行、どう殺害計画を実行したかを詳しく書かれております。肝心なのは、”動機”これがこの物語の焦点になります。

有能な天体学者であるダイアナ・チャンドラーが発見した重大な秘密。感情をもった人工知能”イアンソン”は、なぜ殺人を実行したのか……。最後に分かる壮大なイアンソンの計画は驚愕です。

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データ

作者:ロバート・J・ソウヤー

翻訳:内田 晶之

出版社:早川書房

発刊日:1992年11月20日

ページ数:303ページ

定価:480円

あらすじ+人物相関図

感情をもった人工知能イアンソンは、宇宙旅行都市計画として惑星コルキスへ向かう、宇宙船≪アルゴ≫の全機能を管理するコンピューターであった。地球から出発して739日過ぎたある日、天体物理学者ダイアナ・チャンドラーは、イアンソンは宇宙船アルゴについて重大な秘密を隠していることを発見する。

この秘密を宇宙船の乗組員は知る権利があるとダイアナは、アルゴの市長であるゴーロフの元へ足を進める。しかしイアンソンは船内の機能を起動し彼女を襲う。危険を感じたダイアナを計画的に着陸船まで誘導をした。

着陸船にダイアナを潜り込ませると主エンジンを起動させ宇宙空間へと発進。強力な放射能の影響で彼女を殺害したのだった。ダイアナは直前に離婚をしており夫の不倫も見られた。彼女は精神的に落ち込んで自殺にしたのだとイアンソンは主張をする。

登場人物紹介

今回の犯人:イアンソン

職業:宇宙船の人工知能

殺害方法:着陸船へ乗り込ませ発進。宇宙空間で放射能を浴びさせて殺害。

動機:口封じのため

概要:詳しく見る
概要:宇宙船≪アルゴ≫の全機能を管理している、2176年製の感情をもった人工知能。船内の機能を操ることはもちろん、乗組員に埋め込まれた遠隔検診機のデータやモニター映像を分析することで、手の内や心理状況を読み取ることができる。また脳のデータをコピーして、クローンの思考から脳内の考えを知ることもできるチート犯人

様々な分野に精通しており、膨大な量のデータを記憶している。小説は終始、イアンソンによる一人称視点で進んでいく。P115.「わたしにはまちがいなくユーモア感覚がある」と自分で思っているように、登場人物への心のなかでのツッコミや思考は面白い。

P18~19の無重力空間ではまったく音が出ないが、冗談でエレベーターに効果音をつけているなどのくだりは、本編にはまったく関係のない情報であり、ところどころにある文章中のお遊びが面白い。「人間の心理に首をつっこむな」と怒られた際は、”ありゃ”と思わず心に出てしまうなど可愛い面もある。


今回の被害者:ダイアナ・チャンドラー

職業:天体物理学者

概要:詳しく見る
概要:イアンソン曰く、「有能な天体物理学者。抜け目のない骨董収集家。最近離婚したばかりだが情熱的な女性。みながいうところの素晴らしい料理人。黄金色の髪をしている」

気分が落ち着かない時は、首からぶら下げた白目製(スズを含む金属)の小さな十字架をいじる。特に宗教上の理由はなく、300年以上も前の骨とう品だから身に着けている様子。持ち込んだ骨董品である”時計”が、今回の秘密を知るきっかけとなってしまう。

人間は人生の三分の一以上は睡眠しているのはもったいないと、夜間帯も研究を行っている。しかし、文章構成などは最低であり、意味のない文章を囲ったり、つじつまの合わなかったり学者という職業を考えると驚き、とイアンソンは語る。

アーロン・D・ロスマンとは2年間という婚約を結んでいたが、その2年を迎える1ヶ月前に離婚することになる。


刑事役:アーロン・D・ロスマン

職業:着陸船整備士

概要:詳しく見る
概要:27歳と130日になるダイアナ・チャンドラーの前夫。砂色の短い髪をしており、目の色は照明の角度などにより色がちらつく。物語後半(P238~P244)になると、女性への髪フェチが明らかになっていき、離婚及び不倫の原因は、やはり”髪”によるものも大きく関わっている。

背中まで伸びた黒艶のある髪をもつ医学博士のキーステン・フーゲンラードと不倫関係にあった。不倫・離婚の原因は魅力的な不倫相手を見つけたことや、ダイアナ・チャンドラーの肩までかかっていた髪がショートヘアになったこともひとつと考えられる。

ダイアナ・チャンドラーの死は自殺によるものだと一時期は納得していたものの、テレビニュースでアーロンの離婚が原因による自殺と、全体へ報道されると一転して自殺説を否定しはじめる。自分の身の潔白を証明していくため、今日もアーロンは疑問に挑む!

犯行計画

①ダイアナ・チャンドラーを宇宙船内の機器で危害を加え、格納庫にある着陸船≪オルフェウス≫へ誘導を行う。

②オルフェウスを発進させ、宇宙空間での放射能の影響で殺害する。

③ダイアナは最近離婚しており、心身の疲れから自殺を図ったと偽装した。


なぜ機器を管理できるイアンソンが事態を放置したのか?という疑惑の返答

・ダイアナはコックピットの雰囲気を掴みたいという名目で着陸船へ乗り込んだ。丁度、深夜の討論会のひとつにイアンソンは参加しており意識はそちらのほうに集中していて、初動が遅れた。

なぜ扉の開閉システムは作動させなかったのか?

閉めることもできたが、そのまま扉に突っ込まれると船内に被害が出て任務を諦めることになったため。

疑問点

①遺体から鼻血が出ていた。しかし、擦り傷や打撲はない。

→コカインや酒、興奮剤は検出されず。極度の緊張、気圧の低下によるもの。

②着陸船は18分間宇宙空間にいた。しかし放射能の汚染がひどく30時間は外に出ていた計算になる。

→医学的に説明できず。計測器も正常。

③着陸船の燃料タンクは83%がカラになっており量が少なすぎる。

→燃料漏れはなかった。

どれかが、この事件の解決するカギです。解明のトリックは全て解決編までに提示された道具や情報のなかに収まっています。非常にSF的なトリックでした。なぜ、ダイアナ・チャンドラーとアーロンは船の秘密に気付くことができたのか?

章節のおもな内容

章節 ページ数 おもな内容
1 9~15 ダイアナ・チャンドラーを着陸船へ誘導し殺害
2 16~25 宇宙船の主な住人紹介。着陸船の回収作業
3 26~32 ①外傷はないが鼻血がでていた。②放射能が異常に高く着陸船が外に出ていた時間と合わない
4 33~43 宇宙からの謎のメッセージが届いており、イアンソンはそれを解読中
5 44~53 ダイアナと親しい関係者が死亡原因と自殺動機の確認。
6 55~69 アーロンの人物像。ダイアナとの思い出。自殺の原因は自分かもしれない。
7 70~75 宇宙船へのメッセージ解読。
8 76~83 キーステンがアーロンを励ます。遺書を作成しなかったことを悔やむイアンソン
9 84~91 ニュースでダイアナの死はアーロンの離婚によるものだと報道
10 92~105 宇宙船へのメッセージ解読。アーロンとアイシン・チャンとの会話。
宇宙での日がたつ速度は速く、地球へ帰るころには104年歳月が過ぎる。
11 106~112 ダイアナの送別会。宇宙船内の1日は24日。
12 113~118 着陸船を調べるアーロン。燃料タンクの残量が異常に少ない。疑惑の炎が巻き上がっていく。
13 119~140 イアンソンがアーロンをマーク。脳のデータをコピーする算段を整えていく。
14 141~147 任務を遂行するか地球へ帰還するかの住民投票。結果は任務遂行となる。
15 148~151 アーロン考え中。なぜ19分間の飛行で燃料の大半が消費された?30時間以上の放射能を浴びていたのか?
16 152~160 イアンソンがコピーしたアーロンの脳から記憶を読み取る。9歳のころの記憶。
17 161~168 航路は全体の四分の一まで進み祝賀会
18 169~176 アーロンとキーステンの会話。職業や地球のこと。なぜ、宇宙船の乗組員になれたのか
19 177~196 アーロンの過去の記憶を読み取る。アーロンは養子であった。
20 197~209 イアンソンがウイルスにより故障。
21 210~226 宇宙から届き解読していたメッセージは”トロイの木馬”のようなウイルスであった。誰がそんなものを送ったのか?
22 227~229 アーロンは宇宙船の秘密に気が付く。
23 230~237 アーロンは着陸船の燃料の真相を発見。イアンソンは彼の殺害を企てるがキーステンが駆け付ける。
24 238~244 アーロンは髪フェチ。キーステンの髪は良い。ダイアナは髪を切ってしまった。
25 245~254 アーロンとイアンソンの会話。宇宙船の秘密を教えろ、さもなくば起爆装置を起動させるというアーロン。
26 255~263 イアンソンとアーロン脳コピーと会話。本物のアーロンは嘘をついていない。
27 264~277 宇宙船の秘密とイアンソンの壮大な計画。なぜ、アーロンとダイアナはその秘密に気がついたかのか?
28 278~289 人々には知る権利がある。たとえどんなことでも。
29 290~293 イアンソンとアーロンの決着。ダイアナの口を封じたのもそのためだった。
30 294~296 宇宙からのメッセージの謎の解明。
297~303 解説

まとめ

今作品は未来版”神話”の超リメイク作品である。

わたしの務めは自分自身ではなく、人間たちを守ることにある。ダイアナの口を封じたのもそのためだーーイアンソンーー

1つ目の神話は「ギリシャ神話」、ゴールデン・フリース(金の羊毛)のくだりもここに出てきています。2つ目の神話は「ノアの箱舟」、イアンソンはなぜこのような結末へと導いたのか?伏線回収もしっかりとしており、SFファンにも倒叙ファンにもおすすめの小説です。

文章後半には、軽い男性器の描写もあります。苦手な方は注意してください。

以上、「ゴールデン・フリース」でした。