刑事コロンボ 24話『白鳥の歌』カントリーミュージック界の大御所が犯人として登場

刑事コロンボ 24話 白鳥の歌
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【VS.ミュージシャン】犯人視点から進む『倒叙形式』で面白いのが、大物を起用できるということです。通常の推理ミステリーだと、有名人が登場すると、その人が犯人である可能性が高いです。それを避けるためパッとでの人物を犯人にされたら「誰だお前」状態になります。

最初から犯人が分かっている形式だと、超大物を犯人に起用してもなんら問題もありません。今回のエピソードは古畑任三郎で言う、役者ではない野球選手の「イチロー」を犯人役として起用したということが見どころの1つです。

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データ

脚本:デヴィッド・レイフィル
原案:スタンリー・ラルフ・ロス
監督:ニコラス・コラサント
制作:エドワード・K・ドッズ
制作総指揮:ローランド・キビ―&ディーン・ハーグローヴ
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

本編時間:98分
公開日:アメリカ/1974年3月3日 日本/1974年9月21日

あらすじ

カントリー・ミュージシャンのトミー・ブラウンは、妻のエドナ・ブラウンに弱みを握られていた。彼女は新興宗教に心酔しており、トミーの歌手としての収益金は全て礼拝堂の建築費につぎ込まれ、自分が利用できる金銭や自由もなかったのだ。

弱みとは、かつて未成年の信者メアリ=アン・コップと関係をもったことで、公表されてしまえば逮捕され現在の地位もなくなってしまう。そこでトミーは、その晩の天候が悪いと調べたうえで、小型航空機を操縦して2人に睡眠薬入りのコーヒーを飲ませ眠らせた。

パラシュートで航空機から脱出すると、墜落する機内に残された2人を殺害した。トミーは着地の際に、足を骨折しながらもパラシュートを倒木の下に隠して気を失う。後日、航空局が悪天候での操縦中に起きた事故として調査を開始されることになる。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

今回の犯人:トミー・ブラウン
役者:ジョニー・キャッシュ

吹き替え声優:外山高士

概要:カントリー・ミュージシャンの男性。新興宗教『魂の十字軍』の信者で、未成年だったメアリ=アン・コップと関係をもったことを、妻エドナに掴まれ言いように利用されていた。教団の歌手としての収益金を搾取され、自由に生活ができないことに対して我慢の限界に達する。そこで、小型航空機の操縦中、悪天候のため墜落した航空機事故として、秘密を握るエドナとメアリを抹殺した。

航空機の操縦に関しては、20年前に空軍で習得した技術であり、朝鮮兵として出兵した過去がある。しかし、試験に落第してしまい、軍隊ではパラシュート整備やバスの運転手、伝令、通信とたらい回しに何でもやってきたと語る。

罪状は不明だが、かつてアーカンソー州の農場刑務所に収監されていたが、エドナによって仮出所させられている。3年前に未成年のメアリ=アン・コップと関係をもち、そこからエドナに脅されるようになってしまったようだ。

歌手としての収益金はすべてエドナによって管理されているため、金銭は自由には使えない。移動手段はレンタカーで、他の歌手が高級車を乗り回していることに嫉妬を感じている。殺人に使用した小型飛行機も型落ちであり、エドナの台詞「遠回しに新しいのを買えってさ」などから、古い物を買ったと解釈することもでき、小型航空機は自身の購入物の可能性が高い。

エドナとメアリの殺害後は、気分が晴れ晴れとしたのか? 病院に入院中にも関わらず、月2000ドルで借家を契約する。退院後は、女性や友人を集めてパーティーを開いていた。(1973年3月1ドル=261円 月2000ドルの借屋=月52万2千円)

使用してるギターはハンドメイドの品物であり、非常に特殊な『膠(にかわ:動物の骨や皮からとれるゼラチン状の物質)』で板を張り合わせているとのこと。機密装置のない飛行機に乗せると乾燥したり、高度の影響でヒビ割れが発生する恐れがある。旅客機で移動する際は、自分とギターで2席分の切符を買って対策しているそうだ。

命と同じぐらい大事なギターであり、エドナの弟ルークにぶん殴られた際にも、決してギターを手から放さなかった。もし傷がついていたのならば、首をへし折るつもりだったらしい。


今回の被害者:エドナ・ブラウン
概要:アイダ・ルピノ

吹き替え声優:麻生美代子

概要:トミー・ブラウンの妻である女性。新興宗教『魂の十字軍』に心酔しており、トミーの歌手としての収益金を全て魂の十字軍のため、アメリカ最高の礼拝堂を建築する費用に使っている。完成までの建築費は500万ドルが必要とされており、現在まで103万ドルをつぎ込んでいるようだ。(1973年3月1ドル=261円 500万ドル=13億5百万円 103万ドル=2億6千8百83万円)

トミーとの出会いは、彼が服役していた刑務所であり、仮出所させたのは彼女のおかげである。新興宗教の奉仕活動の一環として刑務所に寄ったのではないだろうか? コンサートでは、バック・ボーカルも担当している。

自身を神の使いと自負しており、トミーを奴隷のように使っている。自分優先であり、トミーの殺害計画の1つ、小型飛行機内の暖房を消され寒くなった際には、自分よりも幼く、凍えているメアリ=アン・コップを差し置いて、まずは自分から温かいコーヒーを飲んでいる。


今回の被害者:メアリ=アン・コップ
役者:ボニー・ヴァン・ダイク

概要:トミー・ブラウンのソプラノボーカルを務める女性。新興宗教『魂の十字軍』の信者であり、エドナ・ブラウンに付き添うように歩いている。3年前にトミー・ブラウンが娘と偽って、連れられたホテルで関係をもった。

トミー・ブラウンの女性への誘いかたなどから、彼から関係を迫ったように思える。当時16歳であり未成年に手を出したことになる。宗教信者で暴行罪も適用になるということは、ご察しの通りだ。

小ネタ・補足

〇犯人『トミー・ブラウン』を演じたのは、実際にカントリーミュージック界の大御所『ジョニー・キャッシュ』氏である。

犯人の過去の経歴などを振り返ると、実際にジョニー氏と酷似している部分が多い。アーカンソー州生まれで農業をしていた、空軍に入隊しオペレーターになるなど。ドラマではアーカンソー州の農業刑務所に服役、空軍に入隊した過去があり、軍のバスの運転手、伝令、通信とたらい回しに何でもやったと語っている。

〇犯人が睡眠薬入りのコーヒーを入れたボトルは、22話『第三の終幕』で、コロンボ警部が使用していたボトルと同じタイプである。

〇エピソードで多用されているテーマ曲は、ハンク・ウィリアムス氏の楽曲『I saw the light』である。ストーリーとしては、ラストの詰め手と『I saw the light(私は光を見た)という歌詞がリンクする演出になっている。

まとめ

大物ミュージシャンを犯人役に起用する掴みばっちりのエピソードになっており、放送当時のアメリカの反応はいかがなものであったのか気になるところでもあります。演技というものは詳しくはないのですが、普通に上手いなぁという印象です。

犯人の人物像としても、ジョニー氏の経歴を使用する当て書き方式であり、この点もファンならニヤリとする構成なのではないでしょうか?

動機としては、ミュージシャンが未成年のファンに手を出しちゃったのがばれちゃったという、昔からもこれからも未来になってからも変わらない世界共通の出来事になっております。(よくオファーしたなジョニーさん!)

良い意味では、極悪マネージャーに反旗を翻すミュージシャン。被害者役が憎い妻でしたので殺されてもしかたないと、視聴者側に犯人の同情を誘います。ただ、メアリは可哀そうですね……。解説本の説明によると、それを補う工夫もなされているようです。

『このトリックは自分の命の保証もない決死の犯行にすることで、ふたり同時の殺人という本来ならつきまとう残忍なイメージを払拭するという狙いがある』

ミステリーとしては、墜落事故から殺人を疑う過程が丁寧に追われておりスムーズな展開です。各地を回りながら1つ1つの疑問点を払拭していくんですね。

なんといってもラストのコロンボ警部とのやりとり。最大限にジョニー氏へのリスペクトしたセリフは胸が打たれるラストでもあります。詰め手としては、過去の2作品を彷彿とさせるのですが、決定的違いは部下がおらず、コロンボ警部と犯人のみです。

この場面を作り出したことによる犯人のセリフ、「人殺しと二人っきりで怖くないかね?」それに対してのコロンボ警部の返しがこのエピソードの魅力、犯人の人物像を高く評価すると同時に、憎むべき犯人というイメージを緩和させられます。ぜひ、ご視聴してみてください。

以上、24話「白鳥の歌」でした。

  1. 【航空機事故に偽造】→「偽装」でしょうか?

  2. ありがとうございます!
    【×偽造】➡【〇偽装】で間違いありません。
    修正させていただきました。お手数おかけしました。

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