実験刑事トトリ 第4話『僕が傑作を書く時』あらすじと感想

実験刑事トトリ 4話「僕が傑作を書く時」

複雑な犯行計画に加え、先が見えない展開による隠された動機探しが魅力的なエピソードです。人間ドラマといいましょうか、徐々に分かってくる犯人の身勝手さと冷酷な行動に呆れ、最後には哀れにも見えてしまう悲しい結末が訪れる。そんなお話。

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データ

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脚本:西田征史

製作統括:谷口卓敬

制作:NHK

演出:堀切園健太郎

音楽:佐藤俊彦

本編時間:58分02秒

公開日:2012年11月24日

あらすじ+人物相関図

実験刑事トトリ 4話「僕が傑作を書く時」人物相関図作画担当・黒田明とストーリー担当・船木はじめは、ペンネーム『黒船』で活動する漫画家コンビであった。人気絶頂の『ドラゴンタイフーン』が満を持して最終回となると、担当編集者・柳沢聡介は、船木を切って、黒田と共に続編をやろうと画策していた。

実は柳沢が携わってから、ストーリーのほとんどは手直しされており、予想できない展開から人気を取り戻していたのだ。自分が続編に参加できないという不満から柳沢を刺殺すると、その罪を黒田に擦り付けた。そして犯行計画を第二幕へと移行させていくのであった。

人物紹介(キャスト)

今回の犯人:船木 はじめ
役者:中尾 明慶(なかお あきよし)
職業:漫画家(ストーリー担当)


今回の被害者:柳沢 聡介
役者:野間口 徹(のまぐち とおる)
職業:編集者

小ネタ・補足

〇凶器に使用したサバイバルナイフは、一瞬見ることができるレシートによると、購入場所は千代田区中神田5-1-10 麻間ビル3Fにある、『世界のミリタリーショップ Combot Rambo』という店で、2012年10月25日12時58分に、28.000円で購入している。もちろん架空の店である。

〇30分05秒~作業部屋に置いてある「ピンボールマシン」は、ビンテージ物で日本に1台しかないそうである。若くして成功した漫画家コンビが何にお金を使うかと考えた結果、イメージに合わせ配置したそうである。(オーディオコメンタリーより)

〇アシスタント・五反田香織の部屋で聞き込みを行う際、演じる「松尾れい子」氏がアドリブを多く入れてきたそうだが、かなりカットされてしまったようだ。(オーディオコメンタリーより)

都鳥が酒瓶を持ち上げるのを五反田が止めようとするシーンはカットされずに使われており、台本にないやりとりだったためか、都鳥の表情が若干驚いているのが伺える。

〇犯人の風貌(切れ長の目にニット帽とか)は、当時脚本を担当した『西田征史』氏に寄せていると思われる。また、西田征史が脚本を書いた『TIGER & BUNNY』のキャラクターデザインを担当したことからか、35分19秒の酒店店主役には、漫画家「桂正和」先生がゲスト出演している。

まとめ

凝った犯行計画のエピソードです。冒頭で殺人を決行しますが、それ以外にも犯人の狙いがあり、物語が進んでいくことで明らかになるという先の見えない展開になっています。漫画家の犯人回だけあり、まるで漫画をめくるかの如く「一体どうなるんだ⁉」と次の展開を見たくなるんですね。

一方でこのドラマの肝である実験が行われていない矛盾も生じてしまいます。『実験刑事』というタイトルを銘打ったキャラ設定がまったく活かせていないのは、いっそのこと潔いのか? コンセプトからズレてしまっていますが面白いので気にしないようにしましょう。

このエピソードは『盗用』がテーマでもあったように感じました。タイトルが『僕が傑作を書く時』とあります。犯行計画は犯人・船木はじめが考え出したものでありますが、その後の展開については上手くはいきませんでした。

そこで使わざるを得なくなってしまったのが、被害者から奪った『ネタ帳』です。他者のアイディアを自分自身が考え出したかのように盗用したことにより、本来の犯行計画に修正することができました。『傑作』とは何なのか? 盗用したできた物語だったのです。

本来、船木が得意とする物語とは、『ピンチになった登場人物をラストのどんでん返しでヒーローが助け出』というパターンでした。この作風は犯行計画にも用いられましたが、盗作の罪といいましょう。今回の事件は、被害者の得意とする『展開が予想できないサスペンス路線』になっていました。

古くから「自分のしたことは自分に返ってくる」というように『因果応報』な展開。ハッピーエンドとなるはずの終幕は、予想だにできない人間ドラマにより、哀れな犯人に胸を痛める皮肉で悲劇的な結末でした。ヤンデレホモの要素がある。

以上、『僕が傑作を書く時』でした。