刑事コロンボ 38話『ルーサン警部の犯罪』アメリカで最も有名な警部

刑事コロンボ 38話 ルーサン警部の犯罪
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【VS.テレビ俳優】アメリカでもっとも有名な「ルーサン警部」が犯罪を起こします。一種の劇中劇のようなエピソードであり、犯人はルーサンを演じている「ウォード・ファウラー」です。エピソードの中でも、ルーサン警部のように振る舞うことがあります。コロンボもカミさんも大ファンだったみたい。

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データ

脚本:ルー・ショウ&ピーター・フィーブルマン
原案:ヘンリー・ガルソン
監督:バーナード・L・コワルスキー
制作:エヴァレット・チェンバース
ストーリー監修:ビル・ドリスキル
音楽:バーナード・セイガル

本編時間:74分
公開日:アメリカ/1976年10月10日 日本/1977年12月17日

あらすじ

俳優ウォード・ファウラーは、アメリカの人気テレビ番組「ルーサン警部」の主演である。テレビプロデューサーのクレア・デイリーと作り上げた大切な番組だが、彼女は裏ではウォードの秘密を握っており、それをネタに強請られていた。

ある晩、付き人マークに睡眠薬入りの酒を飲ませると、野球中継を見ている途中で眠りについた。野球中継をビデオに録画しておくと、クレアが飲食店に買い物に行くことを掴んでいたマークは、覆面を被り店に押し入る。店主を気絶させると、クレアを射殺したのだった。

すぐに自宅へ戻ると、マークの腕時計とデジタルタイマーの時間を前に戻す。ビデオに録画していた野球中継を再生すると、マークを叩き起こした。先程とゲーム進行は変わりはなく、一瞬だけ眠りに落ちていたような錯覚を与えたのだ。これで犯行時間、一緒にテレビを見ていたというアリバイを彼が証言してくれる。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

今回の犯人:ウォード・ファウラー
役者:ウィリアム・シャトナー

吹き替え声優:山城新伍

概要:テレビ俳優の男性。テレビプロデューサーのクレア・デイリーに過去の秘密を握られており、それをネタに金を強請られていた。ビデオカメラを利用してアリバイを作ると、押し入った強盗から殺されたように偽装した。

アメリカで人気の刑事ドラマ『ルーサン警部』の主演をしており、全身白いスーツに、白いトップハット、ステッキ、胸に赤い花飾りと、マジシャンのような恰好をしている。シークレットブーツを使用して身長を高く見せているが、実際の身長はコロンボよりも5㎝ほど高いぐらいとのこと。

ルーサン警部はクレア・デイリーが企画した番組であるが、徐々に人気は下火になっているようだ。ウォードの持ち込み企画として、「自分が同情される殺人犯になる。被害者があまりにも冷酷で暴君」という設定をクレアに見せたが、それを演じられる魅力はないと断られている。

クレアには過去の秘密を握られ、株式証券でギャラの半分を支払っている。合計で50万ドルは彼女に搾取されたようだ。それでもギャラは稼いでおり、広々として化粧室まで完備するトレーラーハウスを購入している。(1976年10月:1ドル=291円 50万ドル=1億4550万円)

飲食店に押し入り強盗を行う際、店主の証言によると「やたらとクールだった」とのこと。テレビ俳優の面目躍如ともいえるが、ルーサン警部の癖が抜けずに、押し入り強盗になり切れなかったともいえる。アリバイ工作に利用したビデオは、カメラ別で3000ドルだそうである。(87万3千円)

コロンボ警部と会話する際は、ルーサン警部に扮して会話をすることが多かった。自分自身に疑いを掛けたり、コロンボとビデオでドラマ再現ごっこをしたりとお茶目な性格をしている。

ウォード・ファウラーは芸名で、本名はジョン・ジェネリッグ。朝鮮戦争中にカナダに逃亡した過去がある。砲兵隊で射撃の名人だったようだ。最初にコロンボに伝えた偽名としてはトロントで芝居をしていた設定の「チャールズ・キプリング」という名前だった。


今回の被害者:クレア・デイリー
役者:ローラ・オルブライト

吹き替え声優:岩崎加根子

概要:テレビプロデューサーの女性。ルーサン警部を手掛け、他にも何本かのテレビ番組に携わっている様子。同じくテレビプロデューサーのシド・デイリーは夫である。ウォード・ファウラーをテレビ俳優に導いたのは彼女であり、過去の秘密も知っている。テレビ俳優として名が知れ渡った頃にタイミングを見て、秘密保持の見返りとして金銭を要求したようだ。

金銭といっても『株式証券』に変えてから渡すように指示しており、できることならば部屋の壁紙にもしたいと豪語している。6年前には、ワニ革のハンドバックをウォードからプレゼントされており、ボロボロになった今でも愛用していた。

押し入り強盗された店主トニーとは10年以上の付き合いがある。店に飾られている写真を見ると、彼女だけではなくウォードとも親交があったようだ。注文するものは決まって、ハムのサンドウィッチ。エッグサラダを店主は食べてもらったようだが、嫌いと断っている。チーズバーガーも嫌いなようである。

シド・デイリーと婚約するまでは、ウォードと一時付き合っていたようだ。ウォードにテレビ俳優をさせるために、歯並びを治させ、5㎏痩せさせ、櫛の入れ方も教えるなどだいぶ手を掛けて育てていたことがうかがえる。

トニーの飲食店で殺害される前に、覆面越しであるが声だけでウォード・ファウラーだと見抜いてみせた。最後は観念したかのように自ら死を受け入れる。悲しくも気高い女性であった。

「どっちみち殺されるくらいなら、へいへい言うことを聞く必要はないでしょう? この尻拭いだけは、私やったげないわよ。悪いけど私、このへんで手を下ろすわよ。ばかばかしい。おやすみ……ウォード」

小ネタ・補足

〇押し込み強盗に入られた店主トニーを演じた『ティモシー・ケリー』氏は、バートという名前の店主を『死者の身代金』『ホリスター将軍のコレクション』で演じている。だいぶ痩せられてしまった。

〇被害者の夫シド・デイリーの秘書を演じたのは『シーラ・ダニーズ』氏である。1977年に、コロンボ警部を演じた「ピーター・フォーク」氏の再婚相手であり、カミさんとなった。42話「美食の報酬」50話「殺意のキャンパス」58話「影なき殺人者」64話「死を呼ぶジグソー」にも役者として登場する。

まとめ

被害者の死に際が印象に残るエピソードです。『印象に残る被害者ベスト5』を挙げなさいなんて言われたら、間違いなく迷いなく1番に指名するほどのトップバッターなんですね。脚本的に被害者が悪人に間違いないんですけど、終わってみると犯人が悪人に見えてしまいます。

被害者が脅迫をして金銭を巻き上げており、犯人に対し同情を得るような設定ではありますが、どこか憎むべき犯人像が強く残ります。被害者が最後は気高く死を望む姿勢や、犯人が撮影の延長線上のような発言が、殺人を犯した張本人なのに他人事な雰囲気になり憎悪が生まれるのかも知れません。

最後に、「自分は同情される殺人犯になるんだ」と犯人は語りますが、被害者のクレアの台詞には、「あんたには人殺しもできないし、同情される甘さもなく、それだけの個性もない」と評価されています。元々、やはり魅力的な殺人犯にはなれなかったのかも知れません。

いかに犯人に対して同情させないか? おそらくはこれを狙った脚本なのではないでしょうか。

以上、38話「ルーサン警部の犯罪」でした。

  1. 自分はクレアさん容赦なさすぎてほとんど同情できなかったです。
    だってギャラの半分て欲張りすぎじゃねーって感じです。
    日本だったらギャラ半分取られて税金払ったら極貧に近い生活しかできなさそう。
    アメリカはもうちょっと税金安いみたいですが、三十数%は取られるようだし、5000万もらっても2500万取られて税金で1700万取られたら、あーら800万しかない。
    控除やら累進の低いところがあるからもう少し残るでしょうがトップ俳優の世間体たもてそうもないし、ウォードさんもそりゃあ覚悟決めちゃうよねーと思ってしまった。
    まあ、あのルーサン警部気取りが鼻につくのはいなめませんけども。

  2. ガガンボ様
    コメントありがとうございます。

    >>自分はクレアさん容赦なさすぎてほとんど同情できなかった
    >>ギャラの半分て欲張りすぎ
    ウォードはTV業界で最大のギャラを貰っているらしいのですが、実際どの程度の金額か分かりません。せっかく稼いだのに半分持ってかれたらやってられませんよね。

    >>ルーサン警部気取りが鼻につく
    コロンボ警部に語る『ルーサン警部』発言は、捜査をかく乱させる狙いであると同時に、やはり役と実生活の区別が曖昧になっているようも感じます。今回ウォードの新しいドラマ企画のアイディアが『同情される犯人役』でした。現実に殺人犯として「演じ」世間から同情を得るためには捕まる必要があります。どこか彼の中で逮捕されたいと願う一種の破滅願望があったのではないかと思いました。

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