恋愛小説家・南条理沙(アンミカ)は、俳優・窪田達臣(河相我聞)とともに、視聴者の恋愛相談を受ける番組『ナンリサ窪タツの恋するクリニック』でMCを務めていた。そんな2人は密かに交際してたのだが、窪田が結婚の事実を隠していたことが明らかになる。この件を問いただすと、彼はこれからも大人の関係を続けたいと提案したのである。
女性としての尊厳を傷つけられた南条は復讐を決意すると、翌週の番組収録の日、監視カメラの死角を移動して、窪田をいつもの待ち合わせ場所である大道具倉庫に呼び出し撲殺した。高所から物が落下した事故死に見せかけるのだが、犯行現場から離れる際、子役に姿を目撃されてしまうのだった。
データ・スタッフ
脚本:森ハヤシ
トリック監修:能塚祐喜
音楽:野崎美波
演出:筧昌也
プロデュース:宮崎暖
制作プロデューサー:熊谷理恵
製作:フジテレビ
放送日:2024年5月31日
放送時間:46分
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:南条理沙(なんじょう・りさ)
役者:アンミカ
概要:恋愛小説家の女性(50歳)。テレビ番組『ナンリサ窪タツの恋するクリニック』で同じくMCを務める窪田達臣と7年前から密かに交際していたが、彼は結婚の事実を隠していた。さらに『これからも大人の関係を続けたい』と提案されたために復讐を決意する。
恋愛小説家としては、1年で3本も書き上げる速筆であり、新作は『待ち合わせは24時 朝、起きたら桜のような君がいた』である。待ち合わせシリーズと称される小説は、累計発行部数100万部を突破しており、映画化も決まっていたようだ。
今回の被害者:窪田達臣(くぼた・たつおみ)
役者:河相我聞(かあい・がもん)
概要:俳優の男性(45歳)。テレビ番組『ナンリサ窪タツの恋するクリニック』でMCを務めており、南条理沙とは番組をきっかけに7年前から密かに交際していたが、実は6年前にはすでに結婚していた。この事実が明らかになると、『引き続き大人の関係を保ちたい』旨を正直に打ち明ける潔さは認めるが、男としてはクソ野郎である。
その他キャスト
役 者 | 概 要 |
大井希心(おおい・きこ) | 目撃者の子役 |
少路勇介(しょうじ・ゆうすけ) | 子役の父親 |
佐々木史帆(ささき・しほ) | 『ナンリサ窪タツの恋するクリニック』のアシスタント・プロデューサー |
武井亮介(たけい・りょうすけ) | テレビ局の警備員 |
菊池豪(きくち・ごう) | パネルを持ってたドッキリ番組のスタッフ |
大塚萌香(おおつか・もえか) |
役名:初根梨深 |
林田麻里(はやしだ・まり) | 衣装担当 |
高山純平(たかやま・じゅんぺい) | 子役オーディションのスタッフ |
今泉マヤ | 窪田達臣の妻 |
谷手人(たにてひと) | 大道具倉庫に台車を運ぶスタッフ |
あいだあい | 女性鑑識 |
小ネタ・補足
○子役オーディションのスタッフ(高山純平)は、5話『法廷画家は誰がために』において、「#初恋リスペクト」の監督からパワハラを受けて裁判を起こしていた被害者であった。本作では「#初恋リスペクト2」のスタッフとして引き続き仕事を続けているようだ。
まとめ【評価:好き】
森ハヤシ脚本の第3弾であり、前作『真っ白の殺意』と同じく、犯人は証人を作ったうえで犯行におよぶ博打要素の高いトリックですが、主人公・黒羽ミコ(篠原涼子)と犯人・南条理沙(アンミカ)の関係性、犯人の『目撃者』をめぐるやりとりが見事な作品であり、筧昌也の演出が普段とは違った雰囲気を醸し出していたことで最後まで中だるみせずに視聴できる好きな回でした。
魅力はひとえに主人公と犯人の距離感でしょう。2人は同じ小説家であり過去にとある因縁があります。そんな犯人の番組ゲストに黒羽がテレビ局に招かれるのですが、テレビ局の入口でのファーストタッチからエレベーターに乗り合い、お互いにバチバチと罵り合いを繰り広げる展開は面白いです。
また、犯人はアリバイトリックを完成させ、警察の捜査からどのように言い逃れるかを待ち構えるだけではなく、犯行現場から立ち去る際に自分の姿を見てしまった『目撃者』の口をどう封じこめるのかというサスペンス要素も残っています。
どうにかして口を封じたいが行く先々で邪魔が入ってしまう緊張感、黒羽が自分と顔見知りだからこその距離感でグイグイと迫り捜査してくる煩わしさ。犯人視点で進む倒叙形式だからこその駆け引き、追いつめられていく犯人の焦燥感を共有することができました。
なによりも、大胆かつ博打性の高い犯行計画の粗を帳消しにしてしまうぐらい、より事件を魅力的なものに昇華できたのは、「アンミカ」氏の緩急ある表情のおかげでしょう。
陽気でポジティブだがふとした瞬間に見せる冷酷な裏の一面、張り付いたような笑顔は目撃者に迫る追跡者としての上質な存在感を与えました。さらに最後のギャップも踏まえると、まさに今回の犯人に適役だったと思います。
ところで、これまでの森野徹(バカリズム)に対する黒羽の接し方は軽薄なものがありましたが、今回は森野を無理くり矢面に立たせるといったことはなく本人の意思に合わせながらの対応でした。森野も黒羽の言葉を聞き再奮起しており、バディとして支え合う連携も見どころな回になっています。
評価としましては、証拠の隠滅方法が酷いぐらい雑なところが不満点なのですが、それ以上に魅力的な部分が多かったので高評価です。
以上、イップス(ドラマ)|8話『口封じのかくれんぼ』ネタバレなし感想【評価:好き】でした。
参考サイト
・フジテレビ『イップス ニュース26』(https://www.fujitv.co.jp/yips/news/index26.html)、2024年6月3日閲覧
・フジテレビ『イップス ニュース27』(https://www.fujitv.co.jp/yips/news/index27.html)、2024年6月3日閲覧