刑事コロンボ 28話『祝砲の挽歌』犯人の信念とラストの余韻が美しい

刑事コロンボ 28話 祝砲の挽歌

【VS.陸軍幼年学校校長】古畑任三郎の脚本家:三谷幸喜さんの1番好きなエピソードです。学校という閉鎖的な舞台のなかで進み、98分間と長編エピソードに属してますが、無駄がありません。

犯人役にはパトリック・マクグーハンで、コロンボ史上最多の4回犯人役として登場する名犯人役です。冒頭は6分30秒以上無言のままエピソードが進行するという緊張感のあるはじまり方は、物語に期待感が沸き起こります。

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データ

脚本:ハワード・バーグ
監督:ハーヴェイ・ハート
制作:エヴァレット・チェンバース
制作総指揮:ローランド・キビ―&ディーン・ハーグローヴ
ストーリー監修:ピーター・S・フィッシャー
音楽:バーナード・セイガル

本編時間:98分
公開日:アメリカ/1974年10月27日 日本/1976年1月10日

あらすじ

ヘインズ陸軍幼年学校校長のライル・C・ラムフォード大佐は、学校経営が赤字続きであるため陸軍学校を閉鎖して男女共学の短期大学に作り替えようとする同学校理事のウイリアム・ヘインズの殺害を計画していた。

ラムフォードは早朝に、砲弾の火薬を爆発力が強い物に詰め替える。グラウンドに設置されている大砲の砲口に布を詰め込んだ。今日は開校記念日であり大砲で祝砲を放つのだ。ウイリアムが校長室に来ると、ラムフォードは少し扉を開けて秘書に会話のやり取りが聞こえるようにした。

わざとウイリアムを怒らせると、「自分が式典を仕切る」と誘導させる。開校記念の式典が始まり、ウイリアムが祝砲を放つと、ラムフォードの細工で大砲と共にウイリアムは爆死した。古い大砲で事故が起きる可能性も高く、事件は事故として捜査が開始されることになるのだった。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

今回の犯人:ライル・C・ラムフォード
役者:パトリック・マクグーハン

吹き替え声優:佐野浅夫

追加吹き替え声優:中庸助

概要:ヘインズ陸軍学校の校長である男性。赤字経営の陸軍学校を廃止して、男女共学の短大に作り替えようとする学校理事ウイリアム・ヘインズを、開校記念日の式典を取り仕切るよう言葉巧みに誘導する。祝砲を放つ大砲に細工を行うことで、発射と同時に爆死した事故に偽装した。

兵士としての階級は大佐。開校記念日に使用する大砲の砲弾の火薬を、硝酸ナトリウムからゼグリナイト(C4)という火薬に詰め替えることで火力を上げ、大砲の砲口に布を詰めることで発射時に爆発するように仕組んだ。

陸軍学校を廃止されることに対して殺人であり、本人なりの信念、国の防衛のためには陸軍学校を守る必要性を感じていた。

「戦争は終わることはない。多くの人間が我が国の破滅を画策している。だからこそ本校のような教育施設を廃止することはできんのだよ」

「国家間の争いが収まれば、わたしも喜んで軍服を脱ごう。人間が互いに殺し合うことを辞める世の中がくれば、(コロンボ)君も制服を脱ぐだろう?」

争いごとがない世界が実現したのならば、「心静かに庭の手入れでもするさ。バラがあってね。白いバラだ」と語った。規律は厳しく、エピソード中には計3人の生徒が怒られている。

1人目:ミラー候補生(靴の汚れ)2人目:ジャクソン候補生(食べ物で遊んでいた)不特定多数:(リンゴ酒の密造)。これも彼らの将来を考えての行動であり、コロンボ警部と会話した際には、生徒に対する優しさを感じられる一面も見られた。

その信念と厳しさから、ラムフォードを嫌っている生徒も多いようであるが、本人もそれは理解しており、「嫌われ者は必要だと」話す。校長室内では、1日1本だけ葉巻を吸っているようで、コロンボを理解者として認めたのか、彼にも葉巻を手渡した。

殺人の準備をしていたのが日曜日のAM6時頃。土曜日は22時~教官のミューティングに参加していたため、大体5時間ほどの睡眠をとったのではないだろうか。


今回の被害者:ウイリアム・ヘインズ
役者:トム・シムコックス

吹き替え声優:堀勝之祐

概要:陸軍学校理事である男性。陸軍幼年学校の創立者の孫で、理事は肩書のようなものである。ほとんど学校関係には携わっておらず、ラムフォードの言葉から、広告関係の仕事をメインにしているようだ。

学校の経営は赤字であり、収容人数6000人に対して、1100人しか入学していない陸軍学校を閉鎖して、新学年から男女共学の短期大学にする計画を進めていた。ウイリアム自身もこの学校の卒業生であり、その時代からラムフォードは校長を勤めている様子。

ラムフォードが過去に、ウイリアムの性格分析した資料によると、「非常に強情な青年であり意思が強く独善的である。反対の立場をとるために説を曲げるようにさえ思える。雪が白いと言えば彼は黒いと言うだろう。この点から、その反応を予測することは容易である」。この性格を利用され、言葉巧みに開校記念日の式典を取り仕切るように誘導された。

小ネタ・補足

〇コロンボの手帳の中身を見ることができる。(54:18~数秒程度)

〇犯行に使用した爆薬は、『ゼリグナイト(C4)』である。粘土のように使用することができ、映画やゲームにおいても使用されることが多い。

〇犯行に利用した大砲は、第1次世界大戦の品物で『オールド・サンダー』というフランス製の75㎜砲とのこと。

〇コロンボ警部を空き部屋に案内した生徒は、ジョージ・クレイマー刑事役ブルース・カービィの息子『ブルーノ・カービィ』である。

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まとめ

最後まで信念を突き通す犯人はカッコいいですね。ラムフォード大佐は最後に、「わたしは後悔していない。わたしは何度でもするだろう」と語ります。スタッフクレジットが流れるのですが、そこで幼年学校で歌われる訓練歌が流れるという演出。

「くたばる奴はここにはいない。卑怯者もここにはいない」
犯人の信条と噛み合った歌であると感じました。

ただ、犯人演じる「パトリック・マクグーハン」の見事な演技力に思わず納得してしまいますが、犯人としてはダメですよね。赤字経営のために男女共学に作り替えようとするウイリアム・ヘインズ氏を殺害したのは置いておき、その後、訓練生ロイ・スプリンガーの不始末にするのは卑怯者です。仮にも大切な生徒を身代わりにするなんて……。

このエピソードでは、ラムフォード大佐の生きざまを感じ取っていくシナリオなんですね。訓練学校といういわば、犯人のテリトリー内で起こった殺人でした。コロンボ警部もその中で犯人に迫っていき、規則や厳格なルールを知ったうえで、訓練学校の全貌を知っていくのです。

ラムフォード大佐も、コロンボ警部のことを認めたのか? 自分自身の本音を打ち明けて、陸軍学校の必要性を語る。そこに、有無を言わさぬ共感をしてしまいます。

以上、28話「祝砲の挽歌」でした。

  1. 今回は陸軍幼年学校が舞台と言うことで、今までとは一味違う内容でした。
    それに、以前コメントしました犯人像で、このところ「最後まで開き直り型」が続きましたが、今回は「白鳥の歌」以来の、犯行を素直に認める型でした。
     しかも、コロンボ刑事が大砲に詰めたボロ布を発見した時に自白することを考えていた。
    しかし後悔しているとは思わないで欲しいと言うのは、何としても共学化は阻止しなければならない。こうしたスパルタ式訓練の場も必要だという校長の信念だったのですね。
     ただ、スパルタ式訓練と言っても、体罰のシーンが全く無かったのは感心しました。
    アメリカでは、体罰についてどう考えられていたのかはわかりませんが、日本では、この当時は体罰は容認されていた時代。中学生だった私も先生からは良く体罰を受けましたが、特に問題にはなりませんでした。
     窓に吊るされていた密造されているとされたリンゴ酒が、事件の重大な鍵を握っていた点。
    訓練生の一人に嫌疑がかけられ、それを晴らすために訓練を抜け出して女子高の生徒と逢っていたことを白状しなければならなくなった点などの展開も良かったと思います。

  2. ≫陸軍幼年学校が舞台 今までとは一味違う
     1話完結型だからこそ、毎回違う舞台設定になるのは面白いですよね。次作、29話では豪華客船が舞台になるなどバリエーションも増えていきますのでお楽しみください!己の信念に基づいた犯行であり、飛躍し過ぎてしまったのかもしれませんが後々の祖国のためを思った犯行でありました。

    ≫スパルタ式訓練の場
     陸軍幼年学校では、戒律や規則に基づき、体罰ではなく懲罰。それ相応の罰則をするという方針だったのでしょうか? 体罰が見られなかったのは、一重に学校長ラムフォード大佐の抑制/統制能力が非常に高かったのかもしれません。一つの集団の平和を維持するために必要なものとは何か? 『共通の敵』であると言われます。ラムフォード大佐は自らを嫌われ者であると語っており、その集団はその敵に向かって一つにまとまることができる。そういった役割を大切にしていたのではないでしょうか。
     日本においても体罰が問題になっていますが、体育会系の指導は厳しいですよね。受け取る側の問題とは言われておりますが、度を過ぎた指導はご勘弁でした。そういった恐怖で私自身も統制されていたのかも知れませんね。

  3. 私にとって好きなコロンボ作品ナンバー1がこれです。

    たぶん、昨今の日本の刑事ドラマであれば、
    「ひとつだけ疑問があるんです。あなたは吊るされていたリンゴ酒のビンを犯行時間に見たわけですよね?
    犯行時間に見た物に普通は言及しないのではありませんか?」
    とか、
    「皮肉なものですね。あなたが信念から見過ごせなかった生徒の違反行為が、あなたの犯行を証明することになるなんてね」
    とか主役の刑事に言わせそうなもんです。

    しかしこのエピソードではそんな野暮なことはわざわざ言わない。
    物語の格式を上げている気がします。

    そしてパトリック・マクグーハンと吹き替えの佐野浅夫さんが最高!

  4. ≫このエピソードではそんな野暮なことはわざわざ言わない。物語の格式を上げている気がします。
    古畑任三郎になりますが、脚本家の犯人に対して、「逮捕される前になんてセリフを言わせますか?」と古畑から問われました。すると、「なんにもしゃべらせない。ここぞという時には、人は黙っているものよ。今のドラマはしゃべり過ぎよ」と返しました。余計なセリフは野暮になる。堂々とした退場シーンと、軍歌が流れるエンディングには余韻が残ります。

  5. 最後の生徒のセリフが聞き取れません。何といったのでしょうか?

  6. RedBull様
    >>最後の生徒のセリフが聞き取れません。何といったのでしょうか?

    『訓練歌』と『訓練終了の号令』になります。
    「1 2 3で頑張ってゆこう くたばる奴はここにはいない 卑怯者もここにはいない」
    「訓練、終わり!」

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