劇団フーダニットが演じる、舞台版 刑事コロンボ「殺人処方箋」を観劇してきました。日にちは2021年7月9日~11日の3日間でした。1日2公演の上演であり、コロンボをWキャストが演じておりました。計6公演で、1回80名でおよそ460名の目撃者になったわけでございます。
ドラマ版との違いについては、他の方の解説記事を参照してもらえればということで、ここでは会場に行った雰囲気をお伝えできればと思います。
観劇しようと思ったわけ
以前書いた記事です。要約すると、「コロナウィルスが流行しているのに東京まで行くのはどうなのかと悶々としていたけど、どこにも立ち寄らず日帰りで行けば良いよね!」と、己を完全肯定した結果の観劇でございました。
「日本で再演される可能性はほとんどないと思われます」
劇団の座長様がおっしゃられているのだから、このチャンス逃すまいと思った次第でもあります。
刑事コロンボのルーツは舞台劇にあり。……、観るしかないよね。
刑事コロンボ完全捜査ブックP.25~P.27によると、「殺人処方箋」は、1962年に初演を迎えたそうです。ドラマ版とはラストの展開が大きく違うという記述があり、どういった展開なのかと気になっておりました。
舞台版の役者については大物揃いだったんですね。
犯人ロイ・フレミング役:ジョゼフ・コットン
共犯スーザン:パトリシア・メディナ
被害者クレア:アグネス・ムーアヘッド
コロンボ役:トーマス・ミッチェル
「本来、主人公は殺人犯のほうで、コロンボは付録的な役だったのだが、コロンボはが明らかに主人公を食っていたのだ」
「出演者たちがカーテン・コールに現れると、観客たちは拍手を贈る。そこにトーマス・ミッチェルが姿を見せると、拍手は天井を突き抜けんばかりに高まる。その後ろへ主演のジョセフ・コットンが現れると、拍手は静かになるんだ。コロンボ刑事がこんな効果をもたらす結果になるとは、私たちはまったく予想していなかった」
【レインコートの中のすべて】P.25~26より引用
「我々は、コロンボ警部を、それまでに生み出してきた何人ものキャラクターと同様の、聡明という以外には特筆すべきことのない、単なる殺人課の刑事としか見ていなかった。
(中略)
つまり、主役は確かにジョゼフ・コットンだったが、この刑事には、”特別な平凡人”とでもいうべき否定し難い魅力があったのだ。明晰さを巧みに隠し持った男—その魅力が観客を強く惹きつけたのである。」
【刑事コロンボ 13の事件簿】P.13より引用¥3,080 (2024/06/24 10:41時点 | Amazon調べ)ポチップ
原作者のリチャード・レビンソン&ウィリアム・リンク氏は、『犯人視点のサスペンスに重きを置いていた』ことが分かります。主人公は犯人で、コロンボという刑事は単なる舞台装置の一つである。ところが観客は作者の意に反し、主人公たる犯人よりコロンボ警部補に面白さを見出したのです。
一見冴えない男が、知的で社会的地位のある犯人の完全犯罪と思われた犯行を崩していく過程に面白さを見出し、コロンボ警部補のキャラクター性に光るモノを感じ取り、1968年のTVムービー『刑事コロンボ』の誕生に至ったわけなんですね。
旧約聖書においては、「光あれ。はじめに神は天と地とを創造された」と綴られています。つまり、神たる原作者が考えた刑事コロンボのルーツは舞台劇にあるんだから、観るしかないよね。と禅問答のように観劇することを繰り返し決意したわけであります。
会場はどんな様子だったの?
私が観に行ったのは、7月10日(土)13:00と17:00の公演でした。会場「タワーホール船堀」では、1Fがコロナワクチン接種会場になっており、コロンボの舞台がある5F大ホールではピアノ発表会もされているなど色々イベント催されていました。
さて、劇団フーダニットさんの舞台は5F小ホールで、検温とアルコール消毒を行い会場内に入りました。コロンボをWキャストで演じるということで、せっかくならばと両方を観劇しました。1回目2000円、2回目は割引で1000円になります。
舞台ホールに入る前の広場では、キャストのイラストとコメントが掲載されたパネルが設置されてました。お土産コーナーも設けられており、『ラスク』と『マグカップ(2種類)』が各1000円で販売されていました。こちらは、戦利品で詳しく紹介します。
頂いたパンフレットの裏面には『当たりマーク』が付いているのもあったそうで、当たれば景品でも貰えたのでしょうか? 残念ながら私は2枚とも外れという結果に終わりました。ホールに入ったあと、拍手が聞こえたので当たりは確実にあったのでしょう。
公演はほぼ満席であり、見た感じ40~50代くらいのお客さんが多かったです。女性と男性の比率は半々ぐらいで、子供連れの方もおりました。終わった後にTwitter見てみると、作家さんやミステリー解説本を発刊している方もおり、日本の名だたる愛好家たちが一同に集まったのだと感じました。
スタッフ/キャスト紹介
訳・演出 | 松阪 晴恵 |
舞台監督 | 渡辺 幸枝 |
音響 | おしゃれからす制作部 |
照明 | 東舞トータルサービス |
衣装 | 橘 沙織 |
小道具 | 渡辺 幸枝 |
宣伝美術 | 加藤 友美 |
写真 | 中川 忠満 |
広報 | 松坂 健 |
渉外 | 川崎 拓己 |
犯人(精神科医) | ロイ・フレミング | 川崎 拓己 |
共犯(患者) | スーザン・ハドソン | さつまいも |
被害者(ロイの妻) | クレア・フレミング | 池内 奈都子 |
秘書 | ミス・ペトリー | 恩田 一美 |
犯人の友人(検事局) | デイブ=ゴードン | 太田 秀幸 |
コロンボ警部補 | コロンボA | 円城寺 ソラ |
コロンボB | 中山 一喜 |
舞台とドラマ版との違い
肝心要の物語なのですが、「めとろんさんの記事で舞台版 殺人処方箋」が詳しく解説されておりました。あらすじから、舞台構成、ラストの解説から考察までと4拍子揃った記事となっており、私の出る幕はないというわけなのです。記事を読むと、めとろんさんも7月10日に観劇されたようですね。
そのため、そちらの記事にはない部分を蛇足としてここでは綴っていきたいと思います。パンフレットには自分が気づいた部分以外も多く記載されておりましたが、そこは載せておりません。
〇役名の違い。
ロイ・フレミング⇒レイ・フレミング
クレア・フレミング⇒キャロル・フレミング
スーザン・ハドソン⇒ジョーン・ハドソン
〇物語の地域がニューヨークからロサンゼルスに変更。
〇空港でのアリバイ作りのシーン、自首してきた男との取調室での会話、撮影所で共犯者を問い詰めるシーンなどはカットされていました。全編に渡り室内での会話となっており、診療所/自宅/取り調べ室の3つのシーンで物語が進行しました。
〇被害者である妻の年齢は、ドラマでは年上の設定でしたが、舞台では犯人よりやや年下になっていました。インテリジェンスで父が資産家という点は変わりありませんでした。
〇ラストの展開。ドラマ版とは大きく異なる展開になっており、この物語の主役は犯人たちであったと感じた次第であります。
戦利品の品々
〇パンフレット:刑事コロンボ研究の第一人者・町田暁男さんによる、舞台版「刑事コロンボ」の紹介と解説。ミステリ研究家・小山正さんによる、犯人視点から進む「倒叙形式」の解説が計4ページにまとめられていました。
〇ラスク:きび糖&黒糖の2種類セットの販売でした。添加物の説明がユーモラスで、『劇団愛』と『ナゾトキシタクナール』という未知の成分が加味されているようです。(1000円)
〇マグカップ(2種類):コロンボを演じた「円城寺ソラ」さん、「中山一喜」さん。犯人のロイ・フレミングを演じた「川崎 拓己」さんのプリントがなされたマグカップです。公演終了後には品切れになっておりました。(1000円)
まとめ
会場内の話声(聞き耳を立てたわけじゃあない、勝手に聞こえてきたんだ)によると、刑事コロンボが好きな方であったり、古畑任三郎が好きな方。丸っきり初見の方であったりと、舞台であったり演目を楽しみにしておられているようでした。
笑い声でしたり、ラストの展開には、「アッ‼」と声を上げ驚かれる人もおりました。舞台というのは観客のリアルな反応を共感できるというのが魅力だと感じます。
凝縮の展開と演出、舞台ならではの緊迫感。コロンボWキャストで、立ち位置や仕草が異なり楽しめました。TV版とは違う結末は、より犯人にフォーカスを合わせた展開で、じっとりビターな感情になりました。その後に買って帰った甘美なラスクは美味だったのです。
以上、『舞台版「殺人処方箋」を観劇する』でした。
遅ればせながら、めとろんです。
せぷてい様も、同じ日に観劇されていたのですね。ご挨拶したかったです!
「倒叙ミステリ」に特化した、こちらのブログの丁寧でわかりやすい記事には、いつも刺激を受けまくっております♪
これからも、よろしくお願いいたします。
めとろん様
≫同じ日に観劇
このご時世ですので迷っていたのですが、またとない機会を逃すまいと観劇しました。めとろん様ともすれ違っていた『舞台 殺人処方箋』観れて良かったです‼ ウィリアム・リンク&リチャード・レヴィンソン作品について、資料や創作のバッググラウンドも含めた考察や感想は勉強させていただいてます‼