古畑任三郎「ワースト回」ランキング!なぜ第3シーズンは不評なのか?

2026年「Netflix(ネットフリックス)」で『古畑任三郎』の配信が始まると、連日のようにSNS上で当時の思い出や「神回」を巡る感想が一気に沸き立ち、その人気ぶりを改めて確信しました。

ところで配信開始前のX(旧Twitter)で、ミステリ作家・青崎有吾あおさき ゆうご氏によるポスト⁽1⁾をきっかけに、ファンの間で「どのエピソードがいまいち」だったのかという問いが話題になりました。

そこで筆者は、Netflix配信直前(5月28日~5月31日)の3日間に投稿された関連ポストをすべて閲覧。

199名・計261票のファン意見を集計しました。

配信前夜に集まった「古畑ファンの声」をベースに、どのエピソードが「いまいち回」だったのかだけではなく、どのような部分が不評に繋がったのかを分析し、『古畑任三郎』という作品の理想像に迫りたいと思います。

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『古畑任三郎』ファンが選ぶ「いまいち回」ワーストランキング

【集計ルール】

  • 集計期間: 2026年5月28日 21:41(青崎有吾氏のポスト起点)~5月31日 23:59
  • 対象データ: 上記ポストのツリー、引用リポスト、および「古畑任三郎」「いまいち(イマイチ)」を含む検索ヒット(計199名・261票)。
  • 識別方法: エピソード名が明記されていない場合も、象徴するキーワード(例:焼きハマグリ、ファックス、落語家など)から厳密に特定。「シーズン○」などのタイトルがないものは除外。

ワーストランキング【全43作品】

ファンから「いまいち」と評された不名誉なエピソードは以下の通りです。

No.シーズンエピソード名犯人(役者名)演出投票数
36第3シーズン雲の中の死玉置浩二佐藤裕市28
31第3シーズンアリバイの死角
(古畑、歯医者へ行く)
大地真央佐藤裕市24
37/38第3シーズン最後の事件 前編・後編
(最も危険なゲーム)
江口洋介河野圭太15
30第3シーズン灰色の村
(古畑、風邪をひく)
松村達雄(ほか)河野圭太13
33第3シーズン絶対音感殺人事件市村正親佐藤裕市13
42ファイナルラスト・ダンス松嶋菜々子河野圭太13
5第1シーズン汚れた王将坂東八十助河野圭太12
41ファイナルフェアな殺人者イチロー河野圭太12
3第1シーズン笑える死体古手川祐子河野圭太11
4第1シーズン殺しのファックス笑福亭鶴瓶星護10
34第3シーズン哀しき完全犯罪田中美佐子河野圭太10
9第1シーズン殺人公開放送石黒賢星護9
22第2シーズン間違えられた男風間杜夫河野圭太9
39スペシャル5すべて閣下の仕業松本幸四郎河野圭太8
18第2シーズン偽善の報酬加藤治子河野圭太7
23第2シーズンニューヨークでの出来事鈴木保奈美河野圭太6
26スペシャル3古畑任三郎 VS SMAPSMAP鈴木雅之6
32第3シーズン再会
(古い友人に会う)
津川雅彦河野圭太6
7第1シーズン殺人リハーサル小林稔侍星護5
15第2シーズン笑わない女沢口靖子松田秀知5
12第1シーズン最後のあいさつ菅原文太松田秀知4
14第2シーズンしゃべりすぎた男明石家さんま河野圭太4
27スペシャル4黒岩博士の恐怖緒形拳鈴木雅之4
28第3シーズン若旦那の犯罪市川染五郎河野圭太4
6第1シーズンピアノ・レッスン木の実ナナ松田秀知3
10第1シーズン矛盾だらけの死体小堺一機河野圭太3
29第3シーズン忙しすぎる殺人者
(その男、多忙につき)
真田広之鈴木雅之3
1第1シーズン死者からの伝言中森明菜星護2
13スペシャル1笑うカンガルー陣内孝則松田秀知2
24スペシャル2しばしの別れ山口智子河野圭太2
35第3シーズン完全すぎた殺人
(頭でっかちの殺人)
福山雅治河野圭太2
2第1シーズン動く死体堺正章河野圭太1
8第1シーズン殺人特急鹿賀丈史松田秀知1
11第1シーズンさよなら、DJ桃井かおり松田秀知1
17第2シーズン赤か、青か木村拓哉松田秀知1
19第2シーズンVSクイズ王唐沢寿明松田秀知1
21第2シーズン魔術師の選択山城新伍松田秀知1
16第2シーズンゲームの達人草刈正雄河野圭太0
20第2シーズン動機の鑑定澤村藤十郎河野圭太0
25総集編SP消えた古畑任三郎河野圭太0
40ファイナル今、甦る死藤原竜也河野圭太0
43特別編古畑中学生河野圭太0

【投票分析】ファンが指摘する「ワースト回」3つの評価軸

投票数を細分化すると、以下のような結果となります。
(※「スペシャル・その他」には、スペシャル1〜5、総集編SP、特別編(古畑中学生)の合計値が含まれます)

シーズン総投票数割合(シェア)
第3シーズン118票45.2%
第1シーズン62票23.8%
第2シーズン34票13.0%
ファイナル25票9.6%
スペシャル・その他22票8.4%
合計261票100%

第3シーズンが45.2%と半数近くの票を集め、最も不人気であるという結果になりました。

X(旧Twitter)上のネガティブな投稿を見ていくと、評価軸は以下に大別されます

  1. 主要キャラクターの変化
  2. 物語の構成や演出
  3. ミステリ(トリック)の整合性

特に第3シーズンにおける新キャラクターの導入は、作品選定や評価に顕著けんちょな影響を与えていました。

しかし、第3シーズンは様々な制約が重なったこともあり、これまでのドラマの定石を崩そうとした回でもありました。

ファンによる不満点のコメントともに、脚本・三谷幸喜氏らの証言をベースに、切実な制作背景その理由を紐解いていきます。

1. 主要キャラクターの変化:西園寺の登場

  • 西園寺さいおんじ(石井正則)、花田(八嶋智人)が嫌い」
  • 「キャラクターショーになった」
  • 「花田が出るようになっておかしくなった」
  • 「メタ的な悪ふざけが好きではない」
  • 「西園寺が邪魔すぎる」
  • 「古畑と今泉であってほしかった」

不満の声として多く見られたのが、第3シーズンから本格加入した西園寺守(石井正則)や花田(八嶋智人)に対する拒絶反応です。

単なるキャラの好き嫌い以上に、第1・第2シーズンで確立されていた「古畑・今泉」いびつなバディ関係に対し、「その絶妙なバランスに西園寺が割って入ったことへの抵抗感」や、花田による「メタ的な悪ふざけによるキャラクターショー化」への不満が強いことがうかがえます。

また、主人公側のキャラクターが増えたことにより、ドラマの画面構成や台詞回しに渋滞が生まれます。

それにより本作の持ち味でもあるテンポの良い、正味45分に凝縮された『古畑(田村正和)と犯人(ゲストスター)の駆け引きを重視した会話劇』を描く時間が少なくなりました。

例えば、古畑任三郎がほとんど捜査に加わらず、西園寺くん主体で捜査を進め、花田兄も登場したシーズン3第9話『雲の中の死』が、ファンから低評価を受ける傾向があるのは、このような理由からだと考えられます。

そのため、役者同士による一対一の対決感、今泉との絡みがあるコメディを期待していたファンにとって、アクの強い新キャラクターの介入は”いまいち”に感じる結果となったのではないでしょうか。

しかしながら、西園寺くんの登場は、三谷氏にとっても田村正和さんにとっても、必要不可欠な存在であったことを制作背景から見ていきます。

【制作背景①】コメディリリーフ「今泉慎太郎」のキャラクター崩壊

第一の理由は、三谷幸喜氏が「今泉くん」というキャラクターをコントロールできなくなったことにあります。

本来、今泉慎太郎(西村雅彦)は、オマージュ元である『刑事コロンボ』との差別化(単独捜査ではなく部下を置く)のために作られたキャラクターでした。

視聴者の目線を代弁する『狂言回し』(物語の進行や主題の解説を担い、観客の理解を助ける役割)が主な仕事だったんですね。

そのため当初は「風変わりな上司に振り回される常識的な刑事」だったわけですが、回を追うごとにコメディリリーフ(コミカルな役割)としての立ち位置がエスカレートしていきます。

第2シーズン終了時点で、今泉のギャグキャラ化は行き着くところまで行ってしまい、逆に古畑の方が常識人に見えるという逆転現象が発生します。

本来三谷氏が想定したキャラの方向性から外れる存在となり、当時の苦悩を以下のように明かしています。

三谷「キャラがふくらみすぎて、本来、僕が今泉でやろうとしたことと変わってきて(略)僕は『今泉はもう殉職していいんじゃないか?』と思ったほど(笑)。

だからプロデューサーに「今泉は限界じゃないか?」と言ったら、「でも、”古畑…”と言えば”今泉”です。どうにか続けてくれないか」と。⁽2

第3シーズンを前に、キャラの扱いに困った三谷氏は「今泉を殉職させ、後に犯人役として再登場させる」という奇策を提案しましたが、プロデューサーの判断や西村雅彦氏や直訴により頓挫。結果、今泉は続投となります。

しかしながら、奇行が目立ちすぎた今泉では、物語の進行や主題の解説を担い、観客の理解を助ける「狂言回し」の役割をこれ以上まっとうすることができません。

結果的に彼のポジションは宙に浮いてしまったのです。

【制作背景②】田村正和氏の負担軽減のための「西園寺守さいおんじ まもる」くん

今泉が狂言回し(説明役)の機能を失ったことで投入されたのが、新キャラクターの西園寺守(石井正則)です。

一部の視聴者から「テンポを悪くする」「不要なキャラクター」と批判されていますが、シリーズ長期化の観点から必要不可欠な存在であったことは無視できません。

最大の目的は、主演の田村正和氏の「年齢的なセリフ量の負担軽減」であり、実質的な捜査(現場検証や状況説明)を西園寺に肩代わりさせていたのです。

三谷『「古畑」は台詞が長いので、年齢的なこともあって、田村さん、「覚えるのがキツイ」と後半はずっとおっしゃっていて』⁽3

『古畑任三郎』の醍醐味は、田村氏の流れるような長回しセリフや、犯人を理路整然と追い詰める会話劇にあります。

しかし、通常のドラマとは比較にならないセリフ量をすべて暗記し、あの独特な言い回しや表情に演技を乗せることは、私たちが想像する以上の労力が必要だったと思われます。

そこで、優秀で真面目な西園寺というキャラクターを加入させることで、事件の捜査過程や現場についての説明役を担当させました。

それにより田村氏のセリフ量を実質的にカバーし、ドラマのクオリティを維持するという実務的な課題がクリアされたのです。

この現場検証や事件概要の説明役は、ギャグキャラ化した今泉には残念ながら不可能だったのです。

2.物語の構成や演出:エピソード毎に異なる方針

当たり前の話ですが、いつも同じ展開ばかりでは視聴者にも飽きがきてしまいます。そのため普段とは異なる趣向を凝らした回を入れることがあります。

この『普段とは違う演出』が、いつも通りの安心感から外れてしまい、結果として悪い印象を持ってしまったのではないでしょうか?

  • ギャグシーンがクドイ
  • 共感性羞恥が働く/気恥ずかしさが/観ていてハラハラしてしまう
  • 古畑が「警察とは」みたいなのを語り始め急に醒めた
  • わざわざ2週に分ける必要がなかった
  • 突然ラブな雰囲気としんみり
  • イチロー/スマップ回は本人に忖度しすぎて。ゲスト上げが露骨すぎ

1話完結のフォーマットを崩した演出や、ゲストのキャラクター性に引きずられた回も低評価を招いています。

  • 初の2部構成を用いたシーズン3最終回
    • 第3シーズン『最も危険なゲーム(前編・後編)』(江口洋介)、2週連続放送という異例の回となっていますが、正味45分間の事件という1話完結型の魅力が薄れたことが低評価の大部分の理由でした。本作は『電車をハイジャック』したように見せかけます。しかし、やっていることが機密情報が入った鞄を取り戻そうとする話ですので、引っ張った割にプロットの弱さが目立ったのではないでしょうか。
  • コメディ要素が強いがワンサイドゲーム
    • 『矛盾だらけの死体』(小堺一機)、『間違えられた男』(風間杜夫)、『雲の中の死』(玉置浩二)などの犯人がコミカルに揺さぶられる回においては、三谷幸喜氏の得意とするシチュエーションコメディが盛り込まれています。コントのようなストーリーは、ミステリ要素が少ないと感じられやすいようで、その点を観たい視聴者は苦手意識を感じていました。
  • 古畑任三郎のギャップに対する違和感
    • 『最後のあいさつ』(菅原文太)や『再会』(津川雅彦)における「警察官や人生観を語る信念・倫理観」を真面目に話す古畑の姿や、ファイナル『ラスト・ダンス』(松嶋菜々子)における男女の情愛、しんみりとした情緒的演出は、「キャラクターのブレ」を感じてしまう人もいたようです。特に第1シーズンの古畑任三郎は、私生活を見せない謎の人物ではありました。徐々にその変わり者の鱗片を見せ始め、殺人現場や犯人の前ではふざけていたのに、急にそのような正論を吐かれてしまうと、感情移入をし難くもなるのも気持ちは分からなくもありません。

コメディ色の強い作品について

古畑や刑事コロンボの魅力は「犯人と古畑の心理的駆け引き」にあり、時には犯人が古畑を上回り、逆に出し抜くような一進一退の展開にあると思います。

コントのようなコメディ要素が強いことで、殺人事件としてのシリアスさや緊迫感が薄れてしまいます。

前述したエピソード(小堺一機、風間杜夫、玉置浩二の犯人回)の共通点は、衝動的な殺人であり、苦労した計画が崩れてしまう運の悪い犯人たちということです。

振り回されてしまうというドタバタな喜劇のためミステリを期待している視聴者にとっては評価が分かれるポイントだと思います。

また、古畑任三郎がネチネチと追い詰めていくのが魅力でもあるのですが、古畑が一方的に犯人を追い詰め、揺さぶる展開が続くため、どうしても「ワンサイドゲーム」が目立ってしまいます。

一方的に追い詰められる展開が多く、心理的に追い詰められる割合が強すぎるため、緊張感が高いままとなることが、苦手に感じる理由に繋がっていました。

シーズン毎の構成変化について

第1シーズンは『刑事コロンボ』を踏襲した堅実な倒叙ミステリとなっていました。

第2シーズンでは、三谷幸喜氏の円熟期であり、今泉というキャラクターを事件に絡めることで、緊張感の中にあるユーモアが絶妙なバランスで成立していました。

これらを踏まえると、第3シーズンはこれまでの展開をあえて崩した『新しさを模索する作風』が多いシーズンであったと言えます。

例えば第3シーズン3話『灰色の村』では、村人全員が犯行を隠蔽するシリーズ屈指の異色回であり、4話『アリバイの死角』では古畑自身が犯人のアリバイ作りに利用される。5話『再会(古い友人に会う)』では従来の謎解き要素よりも人間ドラマに重きを置いた感動的なエピソードに仕上げています。

さらに最終回では、シリーズ初となる2週(前後編)に渡る枠組みを採用しており、テロリストの事件に挑んだ長編に仕上がりました。

このようなバリエーションに富んだ作品作りを支えたのが、新キャラクター・西園寺くんです。

スペシャル回『古畑任三郎 vs SMAP』や『黒岩博士の恐怖』から登場しており、優秀だけど経験不足な西園寺くんが実質的な捜査を担うエピソードが度々登場します。

古畑を事件の中心から外すことが可能になり、西園寺くんは犯人の引き立て役として翻弄される場面を展開することができるようになりました。

8話『完全すぎた殺人』は、西園寺くんの役割ともマッチしており、不人気票が少ない名エピソードになっていましたが、必ずしも「倒叙形式」と相性が良かったわけではありません。

【制作背景③】倒叙の魅力「犯人視点」の減少

本作が採用している『倒叙(とうじょ)形式』は、最初に犯行の手口と犯人が明かされた状態で進むミステリです。

犯人側の人間ドラマや心理描写を深く描ける点、そして視聴者が「犯人はどう追い詰められるか」をサスペンスとして楽しめる点が最大の魅力です。

三谷「パターンを破る形で、いろんな工夫をほどこしたのが、パート3だったんですけど、僕がずっと悩んでた、誰の視点で描くかというのは、今回もやっぱり難しかった。

今度は、ほぼ、古畑と新しい部下の西園寺の視点なんです。だから、ますます、犯人側の話が見えなくなってきちゃって。それは不本意といえば不本意だったんですね」⁽4

あくまで「主人公は古畑で、物語の主役は犯人」という立ち位置が理想ではあります。

  • 視聴者やプロデューサーの要望により外せなかった「今泉」
  • 古畑のセリフ量をカバーするために不可欠だった「西園寺」
  • さらに周辺を固める「花田(八嶋智人)」などの新キャスト

45分間のなかに彼らのやりとりを入れるには「警察側の描写」が過多になりすぎました。

本来主軸であるべき「犯人側のドラマ」に割く時間が削られたことで、「犯人視点のサスペンス」から「警察側というチームの物語」へと変化してしまったこと。

これこそが、第3シーズンが「いまいち」という違和感を与えた要因であると考えます。

第3シーズンは各事件のシチュエーションの奇抜さがありますが、単に犯行プロセスを追っていくエピソードが多かったという印象も残ります。

1つ1つの作品には人間ドラマとしての面白さはあるのですが、ミステリの主役としての犯人感が薄れ、結果的に「犯人と古畑の一対一の駆け引き」の深みが犠牲になった側面があります。

3.ミステリ(トリック)の整合性:リアリティの欠如

ミステリ部分に寄せられていた不人気要因に繋がったコメントは以下の通りです。

  • 「トリックが…しょうもない/めちゃくちゃ/ひどい/雑/すぐバレる」
  • 「解決の決め手が…立証できるのかが疑問/必然性がない/納得できない」
  • 「FAXや封じ手の仕組みを根本的に理解していなくてミステリとして成り立ってない」

ミステリ作品としてのロジックの破綻や、運要素の強さに不満が集中しています。すなわち犯行にはリアルさが伴わなければならないという意見です。

  • ルールや仕組みの誤認:第1シーズン第5話『汚れた王将』ほか
    • タイトル戦の「封じ手」の仕組みを悪用したトリックが描かれます。実際の将棋の規定(封じ手の記入方法や立会人の関与など)とは異なる手順となっており、ミステリファンからは「前提となるルール理解の不足により、ミステリとして成立していない」と批判を浴びました。
    • 同様にシーズン1の第3話『殺しのファックス』では、ファックスの送受信機能についての問題が指摘がありました。
    • ※両作品については、小説版『古畑任三郎』のあとがきでも、ミステリファンが情け容赦なく矛盾を突いてきたと三谷幸喜さんは語っており、時代を経った今でもミステリファンの意見は根強いのだと感じます。
  • 期待値とのギャップ:第2シーズン第10話『ニューヨークでの出来事』ほか
    • 長距離バス内での会話劇のみで進行する特殊な構成です。しかし、最終的な古畑の推理に爆発的なインパクトが欠けているという意見がありました。
    • シーズン3第6話『絶対音感殺人事件』では、他のエピソードで絶対音感を利用した殺人という触れ込みがあったのに対し、実際には活用されていないことに不満を述べているファンもいました。
  • 客観的に見てそうはならんだろ:第3シーズン第3話『古畑、風邪をひく』
    • 古畑が犯人の偽装工作(被害者の演技)を見破る決定打として、『焼酎(しょうちゅう)が『焼蛤(やきはまぐり)』に見えるという視覚的誤認を根拠としました。これに対しては、ファンからは「まったく見えない」という不満が噴出していました。
  • 運要素強すぎ問題:第3シーズン4話『アリバイの死角』
    • 歯科医師である犯人が「古畑任三郎の歯を治療している時間」をアリバイに利用します。 しかし、「治療中に歯科助手と古畑が一言も会話を交わさない」というのは極めて不自然であり、少しでも声を交わせば身代わりは一発で露見します。また、「被害者が麻酔の切れるタイミングで、都合よく薬を飲むために指定の場所へ行く」前提など、全体的にトリックの「運要素」を指摘して意見が多く見られました。

【制作背景④】トリックよりロジックを意識して作られている

ミステリ部分の指摘に対しては、作中(第3シーズン9話『雲の中の死』)で、古畑任三郎が「リアリティがないのは昔から」、「トリックに穴があるのも昔から」と暗転シーンで語るメタ的な反論演出がなされることもありました。

そもそも三谷幸喜氏は、様々な雑誌で「トリックよりもロジックを意識して脚本を書いた」と述べています。

ここで言う「ロジック」とは、状況証拠などを積み重ね、「犯人はこの人以外にあり得ない」と導き出す論理的な推理の道筋のことです。

本作は決して「緻密な犯行計画(トリック)」を物語の目玉としているわけではありません。

重視しているのは、『犯行現場や犯人との会話を通して見つかる小さな疑問や矛盾点』であり、そこから「古畑がどこで犯人に気が付き、どのように追い詰めていくのか」という過程を大事にしているのです。

これは「倒叙形式」ともマッチしています。冒頭で視聴者は犯行の一部始終を見てきたわけですが、「犯人がどこでミスをしたのか」を古畑に揺さぶられていく追体験することになります。

そして最終的には、犯人自らが言い逃れのできない証拠を突き付けられ、「犯行を認めざるを得ない(犯人以外にはあり得ない)」という結論(ロジック)によって物語が締めくくられるのです。

例えば、トリックが面白い第2シーズン5話『VSクイズ王』ですが、密室トリックを解明したことだけで逮捕に至るわけではありません。

その後の「犯人が犯行現場にいたとしか考えられない」という、逃げ場のない論理展開があるからこそ、犯人は自白を決心するのです。

そのため、たとえ「ルールの誤認」や「運要素の強いトリック」が現実とは異なっていたとしても、作中の世界観(物語のロジック)としては筋が通っており、ドラマ自体の面白さは損なわれていません。

それよりも、視聴者にとって重要なのは「どこに矛盾や疑問があるのかを古畑が見抜くか」という過程です。

ミステリとしてのトリックの見事さも確かに魅力ですが、それ以上に「刑事が犯人のミスに気が付く瞬間」「犯人に罪を認めさせる証拠の提示」にどれだけの説得力を持たせることができるのかが、ドラマとしての評価の鍵を握っています。

例えば、人気の高い第2シーズン第1話『しゃべりすぎた男』でも、「敏腕弁護士があれだけのことで自白をするだろうか?」と疑問視するファンは少なくありません。しかし、事件の元を辿れば犯人の動機とは「有力弁護士の令嬢と婚約するために、邪魔になった愛人を葬る」というものでした。

クライマックスの法廷では、古畑により犯行の矛盾が暴かれ、それを目の当たりにした令嬢が絶望して退廷していきます。これを目撃したことで犯人の心が折れ、自白に至ったのだとすれば、視聴者の納得感は非常に高くなります。

つまり、「視聴者が解決方法に納得がいって気持ちよくなれるか」、これこそが物語の評価を大きく左右する要素だと言えます。どこかミステリ部分に粗があったとしても、人間ドラマや心理戦といった他の要素で十分にカバーができるのです。

だからこそ、逆に「自分(視聴者)のなかで納得のいく鮮やかな証拠や展開」が提示されなかったエピソードについては、その期待値とのギャップから、評価が低くしてしまう傾向にあると考えられます。

「不満票ゼロ」の神回:共通の成功法則

ここまで不人気な要素を考えてきました。

一方で不人気投票(計199名・261票)のなかで、まったく票が入らなかったエピソードが3つありました。

(総集編「消えた古畑任三郎」と特別編「古畑中学生」も0票でしたが除外します)

単純明快に票がない=誰もが認める神回と呼ぶには言い過ぎかと思いますが、とりわけ人気も高い作品だと解釈していきます。

不人気票なしのベスト3!

  • 第2シーズン3話「ゲームの達人」(草刈正雄)
  • 第2シーズン7話「動機の鑑定」(澤村藤十郎)
  • ファイナル1作目「今、甦る死」(藤原竜也ほか)

これがNetflix配信前に誰もが認める名エピソードです。

『ゲームの達人』は、田村正和さんと草刈正雄さんによる圧倒的な格好良さが画面から押し寄せてきて、推理小説のようなトリックが面白いです。そして、人生をゲームに例えた締めくくりのセリフも実にしゃれています。

『動機の鑑定』は何と言っても、犯人の裏表のある演技力と色気がたまりません! 骨董商の世界を舞台にした作品で、共犯者を演じた角野卓造さんとのコメディタッチなやりとりも素敵です。何よりも、最後に犯人が語る『物の価値』に関する名セリフが忘れられません。

『今、甦る死』は田舎を舞台に、わらべ歌になぞらえた殺人に偽装するなど横溝正史風な設定と、これまで作品を観続けてきた視聴者があっと驚く仕掛けがあり、古畑を最も苦しめた知能犯が非常に魅力的です。

作品の評価を左右しやすい3つの軸「犯人と古畑の駆け引きの面白さ」「ミステリとしての見応え」「演出の方針」で脚本を振り返ると、どれも隙のない展開となっています。

また、「犯人の格調の高さ」も大きな魅力です。裏にある悪役オーラを身にまといながらも、その胡散臭さを隠してしまうほど、田村正和氏と対等に渡り合える色気を持ったゲストスターたちであり、解決編までに大きく失態を晒すことがなく、古畑と見事な舌戦を繰り広げてくれました。

上記『ゲームの達人』『動機の鑑定』『今、甦る死』の3作品は、ミステリ面も強い脚本、魅力的な犯人像、そして古畑や今泉くんといったキャラクターのコメディも融合しており、ファンが掲げた不満点をうまくクリアした成功作品と呼べるでしょう。

まとめ:不人気要因から探る「理想の古畑任三郎」の条件

今回の投票は、2026年5月28日から5月31日までの、「Netflix(ネットフリックス)」で配信が始まる前に行われた集計結果になります。配信を機に初めて観た方や、改めて作品を観直した方もいると思いますので、今投票をすれば、また違った結果になるかもしれません。

改めて投票結果を振り返ると、第3シーズンに全体として不人気票が多く集まり、261票中118票(45.2%)を占める結果になりました。次いで第1シーズンが62票(23.8%)となり、逆に第2シーズンは安定して面白い回が集中したという評価です。

各シーズンの特徴を振り返ってみると、それぞれの魅力が見えてきます。

第1シーズン:古畑任三郎の「原点」 『刑事コロンボ』をベースとしながらも、「限られた空間での犯人と刑事のテンポの良い駆け引き」を重視した、舞台劇のような仕上がりです。

第2シーズン:古畑任三郎の「完成形」 「今泉くん」という独自要素が、古畑と犯人との緊張感のあるやりとりにコメディが加わった絶妙なバランスで成り立つ構成です。

第3シーズン:変化を楽しめる「意欲作」 従来のバリエーションに変化を加えた作品群が多く、新キャラクターの登場や、各事件のシチュエーションに奇抜さがある作りです。

ファンが感じた不満の本質とは?

X(旧:Twitter)で投票理由やコメントを整理すると、不満の声は以下の順で多く見られました。

  1. 主要キャラの増加
  2. ミステリの整合性
  3. 物語の構成や演出

何かを評価する際、基準となる作品は誰しもあると思います。『古畑任三郎』の場合、多くの人の基準点となるのが、やはり第1または第2シーズンになっているのではないでしょうか?

そう考えると、第3シーズンで「今泉くん」の『ダメだけどいざという時に頼りになる相棒感』が薄れ、完全に道化キャラになってしまったのは、従来のファンには刺さりにくかったのかもしれません。本来ならば、犯人と古畑の心理戦を邪魔せず、適度な間隔で緊張をほぐしてくれるの存在だったのです。

しかしながら、様々な制作背景が重なり、新キャラクター「西園寺くん」を登場させる必要性が出てきました。それにより、『古畑・犯人・今泉』というこれまでの絶妙なバランスを崩さざるを得ない状況になります。

「主要キャラの増加」がもたらしたもの

視聴者が本当に望んでいたのは、「田村正和さんとゲストスターによる演技合戦」であり、スタイリッシュに事件を解決する古畑でさえ見抜くことができなかった「犯人の心の内」。それを犯人自身が弱みや価値観として打ち明けていく、深い人間ドラマこそが本作の大きな魅力だと感じています。

そのため倒叙ミステリは、あくまで「主人公は古畑だが、物語の主役は犯人」という立ち位置がベストだと私は考えています。

ですが、西園寺くん主体による捜査が増えた結果、第3シーズンは犯人の犯行プロセスを追う時間ばかりが多くなり、計画が徐々に崩れていく「犯人の内面」を掘り下げる描写が減少してしまいました。

ファンが不満だと感じた「主要キャラの増加」の本質は、この「古畑と犯人の関わりの減少」に繋がっていたのではないでしょうか。

個人的には西園寺くんは魅力的な人物だと思っており、古畑や犯人の引き立て役としてドラマを彩ってくれました。どちらかと言うと、メタ的な発言を自由奔放に繰り出す「花田(八嶋智人さん)」の方が苦手に感じてしまいます。

評価は人それぞれ

「主要キャラの増加」がコメントでの不評が多かったものの、やはり「ミステリの整合性」がしっかりしていない作品は低評価になる傾向にありました。

第3シリーズは人間ドラマが魅力的なエピソードが多くありましたが、それ以上に「ミステリの出来」が悪いと、低評価が上回ってしまいます。

とは言うものの、身も蓋もない話をすれば、ゲストスターと田村正和さんのやりとりが面白ければそのエピソードは最高になるんです。そこに、ミステリとして説得力があるか、今泉くんや西園寺くんのコメディパート(あるいは花田が出すぎないか)のバランスが良いか、というベースが乗っかります。

あとは各作品自体にそれぞれ多くの魅力があるため、評価なんて人それぞれです。 ワーストランキング上位の作品に、あなたの好きな回が入っていませんでしたか? 私自身「いまいちだな」と感じる部分はありつつも、逆に「その作品にしかない大好きなポイント」もたくさんあります。

改めて、古畑任三郎を見終わった方いますか? 好きな回や嫌いな回はありましたか? 
「あと3回走って平均だそうよ」(古畑任三郎『さよなら、DJ』のセリフより)

以上、【古畑任三郎「ワースト回」ランキング!なぜ第3シーズンは不評なのか?】でした。

引用・参考文献

  1. 青崎有吾『X(旧:ツイッター)ポスト』(https://x.com/AosakiYugo/status/2059978346671517989)2026年5月29日19時10分閲覧 ↩︎
  2. 三谷幸喜・松野大介『三谷幸喜-創作を語る』講談社、2013年、p.68-69  ↩︎
  3. 清水直樹『ハヤカワミステリマガジン №752』早川書房、2022年、p.20 ↩︎
  4. 小森収『はじめて話すけど…』フリースタイル、2002年、p.98-99 ↩︎
  • 三谷幸喜『古畑任三郎-殺人事件ファイル』扶桑社、1994年
  • 町田暁雄『刑事コロンボ読本』洋泉社、2018年
  • 使用させていただいたイラスト『いらすとや』(https://www.irasutoya.com/)
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古畑任三郎
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主に古畑任三郎や刑事コロンボについて語ってます
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