フジテレビで1994年から2006年まで続いた刑事ドラマ『古畑任三郎』は、犯人視点から事件が進む倒叙形式や、刑事役「田村正和」氏の好演もあり大ヒットをしました。

さて、三谷幸喜氏がリスペクトした『刑事コロンボ』から影響を受けたであろう部分が、古畑任三郎のエピソードでは節々に多く存在しています。

この記事では、古畑任三郎の原型となった、刑事コロンボからのオマージュ元をまとめていき、後半はパクリに該当するのかを考察していきたいと思います。

構成上、一部ネタバレがありますのでご了承ください。

第1シーズン(1話~12話)1994年

 タイトル古畑任三郎の内容オマージュ元
1回死者からの伝言殺害方法41話「死者のメッセージ」
2回動く死体

シーズン1の2話。良心の呵責から真実を打ち明けようとする被害者を部屋から出ようとするのを阻止するため、揉み合い末にテーブルに後頭部をぶつけさせてしまう過失致死。古畑が自販機で買ったコーヒーを犯人に渡す。古畑に誘導され、犯人は被害者の遺留品である懐中電灯を探す。

4話「指輪の爪あと」
シーズン1の2話。夫への良心の呵責から真実を話そうとする被害者を部屋から出ようとするのを阻止するため、揉み合いの末にガラステーブルに後頭部をぶつけさせる過失致死。コロンボが自販機で買ったコーヒーを被害者の夫に渡す。コロンボに誘導され、犯人は被害者の遺留品であるコンタクトレンズを懐中電灯で探す。

古畑と警察がヒソヒソ話をしながら犯人を見る。犯人は疑われると思ってドキドキする。

42話「美食の報酬」

すっぽんの安全装置。特定の条件により犯人だと断言される。

16話「断たれた音」
ゴミ処理機の安全装置。特定の条件により犯人だと断言される。

3回笑える死体

精神科医が犯人。古畑がストッキングを被りタバコを吸えたことを証明する。

31話「5時30分の目撃者」
精神科医が犯人。コロンボがストッキングを被ったままではタバコを吸うことができないと推理する。

犯人が被害者となる人物に、隣家へ泥棒が入ったとでっちあげる。25話『権力の墓穴』

強盗が入ったことで正当防衛による殺人を主張する犯行計画。

7話『もう一つの鍵』

4回殺しのファックス殺害後に誘拐事件をでっちあげ、警察も捜査に加わる。ファックスの送信予約時間に合わせて送られる脅迫文書に従い、自ら身代金を運び、途中で飲食店に立ち寄る。

2話「死者の身代金」
殺害後に誘拐事件をでっちあげFBIが捜査に加わる。電話の予約通話に合わせ自ら身代金を運ぶ。

11話「悪の温室」
偽装誘拐事件をでっちあげる。犯人自身が身代金を運びながら、途中でガソリンスタンドに立ち寄るなどし共犯者と次の行動の段取りを合わせる。

5回汚れた王将

将棋のタイトル戦中の殺人

16話「断たれた音」

チェスの世界チャンピオン戦中の殺人

立会人・大石(小林昭二)

32話「忘れられたスター」
小林昭二は、ネッド・ダイヤモンドの吹替を担当している

立会人・立花(石田太郎)

石田太郎は、二代目刑事コロンボの声優

不正を仕込んだところ被害者に目撃される。犯人の性格が解決編で影響する。

15話「溶ける糸」

6回ピアノ・レッスン

被害者がピアノを弾いている隙に犯行に及ぶ。古畑がグランドピアノで『函館の女』を人指し指で弾く。

10話「黒のエチュード」
被害者がピアノを弾いている隙に犯行に及ぶ。コロンボがグランドピアノで『チョップスティックス』を人差し指で弾く

楽屋で古畑が犯人の帽子を被り、犯人に鑑越しに見られる。

38話「ルーサン警部の犯罪」

7回殺人リハーサル

犯人自身が犯行現場となる場所に捨てたポラロイドカメラの写真から疑われる

27話「逆転の構図」

(1)撮影所閉鎖を阻止する動機(御曹司の息子が経営難の撮影所をスーパーにする)

(2)犯行を認めたセリフ「私はこれっぽっちも後悔していない。これっぽっちもね。男にはね。命に代えてでも守らなきゃならないものがある。私はね、何回だってやるつもりだよ」

28話「祝砲の挽歌」
(1)陸軍幼年学校閉鎖を阻止する動機(御曹司の息子が経営難の陸軍学校を男女共学にする)

(2)犯行を認めたセリフ「私は後悔していない。私は何度でもするだろう」
8回殺人特急

目撃者に犯人の顔を確認してもらうが、思っていた人と違う人物を目撃していた。

10話「黒のエチュード」

解決方法
(犯人しか知りえない情報の吐露)

31話「5時30分の目撃者」

9回殺人公開放送

インチキ超能力者が犯人

46話「汚れた超能力」
インチキ超能力者が犯人。「刑事コロンボ読本」p.280の三谷幸喜氏の対談記事では、「本当に、〈新シリーズ〉は声かけてほしいと思ってましたもん。とてつもなく面白いの書く自信があったんですけど……」と、新シリーズの残念さを語っており、この作品がアイディアに繋がった可能性がある。

事件解決方法(自分以外の○○が決め手に)

6話「二枚のドガの絵」

10回矛盾だらけの死体

殺したと思っていた被害者が生きており、2度目の殺人を行おうとする。

16話「断たれた音」

体調不良を装い診察室で注射器をくすねる

29話「歌声の消えた海」
薬でわざと体調不良を起こし、医務室からゴム手袋をくすねる。

古畑が凶器を回収した際のセリフ「こういうのを証拠っていうんです」

42話「美食の報酬」
台詞をそのまま引用

11回さよなら、DJ

レコードプレーヤーに針を落とそうとするが、犯行直後のために手が震えてしまい役目を譲る。

19話「別れのワイン」
ワインを移し替えようとするが、犯行直後のために手が震えてしまい役目を譲る。

古畑「人がね、いつもと違うことするっていうのは気になるんだよ」

30話「ビデオテープの証言」
「人が普段と違うことやると何かあるんじゃないかと、すぐ思っちゃって」

ラジオ局内を『サントワマミー』が流れる時間内に行き来する。

43話「秒読みの殺人」
テレビ局内を自分の声を吹き込んだテープの再生時間内に行き来する。

殺人予告を自分に送り、被害者に自分と同じ服装をさせることで間違って殺されたように見せかける。

20話「野望の果て」

解決方法
(知ることができない時間、その物事を知っていた)

34話「仮面の男」

12回最後のあいさつ犯行を認めたセリフ「残念だよ。洋子の事件も君に担当してもらいたかった」41話「死者のメッセージ」
「もし、あなたが姪の事故の捜査をやってくださったら」

第2シーズン(14話~23話)1996年

14回しゃべりすぎた男「人はものを先入観で見る」という犯人のセリフ。アヴァンタイトルでは、ロールシャッハ検査について語る。

1話「殺人処方箋」
「人は先入観でものを見る」という犯人のセリフ。OPではロールシャッハ検査の映像が流れる。

古畑は犯人の運転する車で一緒に犯行現場まで移動するが、犯人は現場まで「一度も行ったことがない」と、とぼけて道を尋ねる。

21話「意識の下の映像」

通話中のとある音が電話のアリバイを崩すきっかけになる。

12話「アリバイのダイヤル」

(1)シーズン2の1話で通常よりも尺が長い。

(2)動機と展開
不倫相手から関係を暴露すると脅され犯行に及ぶ。被害者に好意を寄せる人物が犯行現場に訪れており罪を擦り付ける。その後、弁護士として裁判を引き受けることになる。

(3)証拠を記録されていたことが詰め手になる。

(4)刑事コロンボ読本P.275の三谷幸喜氏へのインタビューによると、当初犯人の職業はロック歌手を想定していた。

11話「黒のエチュード」

(1)シーズン2の1話で通常より尺が長い。

(2)不倫相手から関係を暴露すると脅され犯行に及ぶ。被害者に好意を寄せる人物が犯行現場に訪れており疑われることになったが、後に彼を弁論して立場を守る。

(3)証拠を記録されていたことが詰め手となる。

(4)音楽関係者(指揮者)が犯人。

15回笑わない女
(1)戒律の厳しい女学校。古畑たちは被害者の追悼式に参加し、二段ベッドのある空き部屋に泊まり、生徒らと食堂で食事をする。

(2)空き部屋に案内する生徒は俳優の子どもであり、性別とやりとりが反転している。
※生徒『なぎさ』(演:藤谷文子)俳優:スティーブン・セガールの娘が空き部屋の案内役を務め、古畑がカマを掛けると、タバコを吸っていることを認める。
28話「祝砲の挽歌」
(1)規律正しい陸軍幼年学校。コロンボは被害者の追悼式に参加し、二段ベッドのある空き部屋に泊まり、食堂で生徒らと食事をする。

(2)生徒『モーガン』(演:ブルーノ・カービィ)俳優:ブルース・カービィの息子が空き部屋の案内役を務め、コロンボは葉巻に火をつけるためライターを借りようとするが、タバコは吸ってないと答える。

犯人は最も知られたくない人物に最も見られたくない一面を晒してしまい、被害者が秘密を守るために職場から去るのを知ったうえで犯行に及ぶ

35話「闘牛士の栄光」

16回ゲームの達人本のページの端が折ってあり自殺を疑う32話「忘れられたスター」
17回赤か、青か

最年少犯人(大学生)で、最後に動機を尋ねると身勝手な理由で呆れる。

56話「殺人講義」

おみくじクッキー

42話「美食の報酬」

解決編
「今の聞いた(聞きました)」
「お聞きになりました(ああ)」
「君も聞いたね」

27話「逆転の構図」
「今の目撃したね(ええ、しました)」
「今の行動ちゃんと目撃したね(はい)」
「君も今の彼の行動目撃したね」

18回偽善の報酬犯人のはしゃぐ姿、自白前「私はもう年寄りだし」と情けを求めるやりとり。41話「死者からのメッセージ」
19回VSクイズ王※やりとりの反転
犯人が自分の顔を短時間しかアップにさせず、すぐにカメラを切り替えたことをプロデューサーに怒ってメイクセットに入る。
6話「二枚のドガの絵」
犯人が自分の顔を長時間アップさせたため、すぐにカメラを切り替えるようプロデューサーに怒ってメイク落としに入る。
20回動機の鑑定

古畑が骨董について学び、犯人から「よく勉強されましたね」と賛辞をおくられる。

19話「別れのワイン」
コロンボがワインについて学び、犯人から「よく勉強されましたな」と賛辞をおくられる。

殺害後に共犯者から電話を掛けてもらいアリバイをつくる。ガラス片が遺体の上にあったことから疑われる。

33話「ハッサン・サラーの反逆」
殺害後に共犯者から電話を掛けてもらいアリバイをつくる。漆喰の粉が書類の上にあったことから疑われる。

被害者のメモ「六半、うずくまる、かなり寒い」

39話「黄金のバックル」
被害者のメモ「二度回す、真夜中過ぎにすぐ」

21回魔術師の選択作品のモチーフ
(マジッククラブでマジシャンの犯人が手品を駆使した犯行をおこなう)

36話「魔術師の幻想」

犯人役・山城新伍

38話「ルーサン警部の犯罪」
犯人の吹き替え・山城新伍が担当

22回間違えられた男 なし 
23回ニューヨークでの出来事 なし 

総集編『消えた古畑任三郎』

25回消えた古畑任三郎なし 

第3シーズン(28話~38話)1999年

28回若旦那の犯罪タイトルの由来38話「ルーサン警部の犯罪」
犯人の師匠役(梅野泰靖うめの やすきよ)犯人役として3度登場したロバート・カルプの吹き替えを担当
29回忙しすぎる殺人者

多忙を極める犯人のキャラ設定

52話「完全犯罪の誤算」

特定の条件と位置でなければ見えないモノを見ていた

28話「祝砲の挽歌」

30回灰色の村(古畑、風邪をひく)

最後に犯人が、自分が去った後の村の行く末を案じて日本酒で乾杯する。

19話「別れのワイン」
最後に犯人が、自分が去った後のワイン工場の行く末を案じてワインで乾杯する。
31回アリバイの死角(古畑、歯医者へ行く)トリックのモチーフ「なぜ被害者がトイレに行く時間を知ることができたのか」

21話「意識の下の映像」
なぜ被害者が試写会中に廊下に出る時間を知ることができたのか。

事件解決方法

27話「逆転の構図」

32回再会(古い友人に会う) なし 
33回絶対音感殺人事件

指揮者が犯人。被害者を灰皿で殺害し、偽装工作中に犯人の行動によりペットの金魚も死ぬ。被害者に好意を寄せる楽団員に罪を擦り付ける。



10話「黒のエチュード」
指揮者が犯人。被害者を灰皿で殴り気絶させると、ガス自殺に偽装する過程でペットのインコが死ぬ。被害者に好意を寄せる楽団員が疑われる。


34回哀しき完全犯罪

犯人が犯行後に鏡を見て微笑む。被害者の本当の真意が最後に分かる演出。

32話「忘れられたスター」

架空の電話でアリバイを作るが話した内容に矛盾が生じてしまう。

26話「自縛の紐」

犯行現場の照明から怪しまれる。ラストで着飾った犯人が古畑に手引きされ退場する。

39話「黄金のバックル」

35回頭でっかちの殺人(完全すぎた殺人)

大規模な研究施設、登場人物がほとんど白衣。犯人の心情が事件解決の決め手になる。

23話「愛情の計算」

西園寺くんが事件捜査を一任され、今泉から「張り切っちゃって」と茶化される。結果、勇み足で罪を擦り付けられた女性を誤認逮捕する。ラストシーンでは、その女性の横を犯人が通り過ぎる。

11話「悪の温室」
若手のウィルソン刑事が事件捜査を一任され、コロンボから「張り切りボーイ」と茶化される。結果、勇み足で罪を擦り付けられた女性を誤認逮捕する。ラストシーンでは、その女性の横を犯人が通り過ぎる。

36回

雲の中の死(追いつめられて)

 なし 
37回最も危険なゲーム前編・後編(最後の事件 前編・後編)ドラマ最終回。動物愛護団体を隠れ蓑にするテロリストが犯人。被害者は組織を裏切り射殺される。45話「策謀の結末」
旧シリーズ最終回。北アイルランド援護協会を隠れ蓑にするテロリストが犯人。被害者は犯人を裏切り射殺される。
38回

スペシャル回(13話、24話、26話、27話、39話)

13回笑うカンガルー

犯人と被害者の関係。被害者のどこにでもメモを取る性格。

3話「構想の死角」

古畑と今泉が、オーストラリア旅行を缶詰の懸賞で当てる。

29話「歌声の消えた海」
コロンボのかみさんが、缶詰の懸賞でメキシコ旅行を当てる。

(1)夫を殺してしまったと相談を受け偽装工作を行う
(2)解決編の展開

25話「権力の墓穴」
妻を殺してしまったと相談を受け偽装工作を行う。

被害者のメガネについて、事件前/事件後の違いを指摘する。

10話「黒のエチュード」
犯人の花飾りについて、直前/直後の違いを指摘する。

24回しばしの別れ(1)発表会を抜け出し時間内に犯行現場を行き来する。
(2)犯人・二葉鳳翆ふたば ほうようと家元・二葉鳳水ふたば ほうすいとの秘密の関係(同性愛)
 43話「秒読みの殺人」
試写会を抜け出し時間内に犯行現場を行き来する。犯人のケイと女優・バレリーの関係が同性愛を感じさせる。
26回古畑任三郎vsSMAP

数珠が1つなくなる。ズボンの裾に紙切れを入れ証拠をでっちあげる。

13話「ロンドンの傘」
傘に数珠を1つ入れ証拠をでっちあげる。

ラストのセリフ「彼らは悪い人間じゃないよ。そうでなかったら、こんなにたくさんの人の心は掴むことはできません」

24話「白鳥の歌」
ラストのセリフ「あなたは怖い人じゃありません。(中略)これほどの歌が歌える人に悪い人はいませんよ」

27回黒岩博士の恐怖 なし 
39回すべて閣下のしわざ

大使館内の殺人。過激派組織の犯行に偽装。

33話「ハッサン・サラーの反逆」

ゼリービーンズをつまみ食いする犯人。

52話「完全犯罪の誤算」

犯人が地震に対する支援金を送っており、メキシコのサンチェス知事から表彰を受ける。35話「闘牛士の栄光」
コロンボがメキシコでの旅行中に事件を捜査するが、その時の相棒がサンチェス警部。

ファイナルシーズン(40話~42話)2006年

40回今、甦る死ストーリーの構成37話「さらば提督」
道楽者の御曹司が会社の身売りを阻止するため社長を殺害して経営を引き継ぐ8話「死の方程式」
事件解決方法
(凶器の隠し場所)

5話「ホリスター将軍のコレクション」

ラストのモチーフ

14話「偶像のレクイエム」

41回フェアな殺人者

本業が俳優ではないイチロー(野球選手)が犯人。自分も死ぬかも知れない殺害方法

24話「白鳥の歌」
本業が俳優ではないジョニー・キャッシュ(カントリーミュージシャン)が犯人。自分も死ぬかも知れない犯行計画

事件解決方法

23話「愛情の計算」+27話「逆転の構図」

42回ラスト・ダンス

冒頭「ブルガリ三四郎」の推理

「遺言状隠しましたね。絶対に捜査の手が届かない場所に」

15話「溶ける糸」
「あんた絶対捜索されない所に糸を隠した」

双子の犯人というモチーフ

17話「二つの顔」

銃声とピエロの人形

30話「ビデオテープの証言」

番外編『古畑中学生』2008年

43回古畑中学生 なし

新聞小説(2020年~)

44回一瞬の過ち犯人が鏡を見ると額にも小さな血の痕が付いており、慌ててハンカチで拭う40話「殺しの序曲」
犯人が鏡を見ると額に煤(スス)が付いており、慌ててハンカチで拭う
45回殺意の湯煙

・起用した犯人からくる先入観。
・浴衣に着替え直し露天風呂から広がる森を通り旅館入口へ戻る。
・時刻のズレ。
・紙飛行機に込められた意味。

37話『さらば提督』
・起用した犯人からくる先入観。
・スキューバダイビングの服に着替え海を泳ぎ戻る。
・時刻のズレ。
・船に文字を書くために使用する型紙に込められた意味。

『古畑任三郎』は『刑事コロンボ』のパクリなのか?

『古畑任三郎』は、『刑事コロンボ』と同様に、犯人側の犯行から描き始める「倒叙(とうじょ)ミステリ」と呼ばれる形式を採用しています。この形式において、両作品は今日では代表作としてしばしば並び立って語られます。

実際に全エピソードを比較すると、さまざまな場面において『刑事コロンボ』からの影響が見て取れます。

では、『古畑任三郎』は「パクリ」なのでしょうか、それとも「オマージュ」なのでしょうか。

両作品の共通点や流用箇所を整理しながら、その位置づけについて考察します。

1.パクリとオマージュの違い

「古畑任三郎 刑事コロンボ」と検索すると、「パクリ」という言葉が関連語として表示されることがあります。このことから、両作品の類似性が広く認識されていることがうかがえます。

まず「パクリ」とは、「盗作や盗品などを指す語」⁽1⁾とされています。他人の作品をあたかも自分のもののように扱い、模倣する行為を指し、「パクリ=盗作」と理解されます。

一方「オマージュ」とは、「①尊敬。敬意。②賛辞。」⁽2⁾とされ、既存作品への敬意を前提とした表現です。影響を受けた作品に対し、自身の解釈や独自性を加えて再構成する行為だと捉えることができます。

創作界隈では、これらの違いを分かりやすく示す言い回しとして、次のように整理され紹介されています。

  • バレて困るのがパクリ
  • バレなきゃ困るのがパロディ
  • バレると嬉しいのがオマージュ
  • バレないと困るのがリスペクト

このおおまなか整理から分かるように、重要なのは作品に込められた「意図」や「態度」になるのではないでしょうか? 原形となる既存作品のアイディアを、どのように独自の作品に組み込んで表現しているのかが重要になると考えます。

2.著作権的観点(トリックや設定について)

著作権法において保護される著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項)とされています。

ここで重要なのは、著作権の観点では、「アイデア」そのものではなく「表現」が保護の対象であるという点です。したがって、表現の本質的な類似が認められる場合に初めて、盗作と評価される可能性があります。

そのため、トリックや設定といったアイデアが共通していても、それだけで著作権侵害となるわけではありません。問題となるのは、表現の具体的な一致や類似性というなんだか小難しい部分になります。

古畑任三郎の一部には、確かに類似する箇所が見られますが、物語全体として見ると、構成やセリフ回し、演出は異なっています。

そのため、作品全体としては、刑事コロンボに見られるアイデアと似ている部分があるものの、『古畑任三郎』における表現方法は独自のものであり、別個の著作物と評価できます。

したがって、古畑任三郎は心情的にはオマージュであり、法的にも著作権侵害には当たらないと考えられます。

以上を踏まえると、古畑任三郎がパクリとされるためには、ストーリー構造や展開の順序、重要な演出などにおいて、表現レベルでの本質的な一致が必要になるといえるでしょう

そこで、どのような部分に「古畑任三郎のオリジナリティ(独自性)」があるのかを考えていきます。

3.両作品の共通点

両作品の主な共通点として、以下が挙げられます。

  • 倒叙ミステリ形式(犯行が最初に提示される)
  • 個性的な刑事と完全犯罪を企てる犯人の対決
  • 心理的な駆け引きを軸とした展開

しかし、これらはミステリ作品全般に広く見られる要素でもあります。そもそも倒叙ミステリの源流は、ドストエフスキー『罪と罰』(1866年)や、オースティン・フリーマン『歌う白骨』(1912年)などに求めることができます。

その中で『刑事コロンボ』が革新的であった点は、個性的な刑事が犯人との会話を中心とした心理的駆け引きを、映像作品として確立したことにあります。

したがって、これらの共通点のみをもってパクリと断定することは難しく、「倒叙」というジャンルの共有と捉えるのが妥当です。

4.刑事像と舞台設定の違い

比較項目刑事コロンボ古畑任三郎
外見・印象庶民的、よれよれのコート、だらしないフォーマル、黒のスーツ、紳士的
性格謙虚さを装いつつ執拗に食い下がる礼儀正しいが、負けず嫌いで皮肉屋
捜査スタイル地道な聞き込み、物証の積み上げ犯人との知的な対話、心理的洞察
演出の特徴写実的な刑事ドラマメタフィクション、舞台演劇的手法

『刑事コロンボ』は、庶民的でだらしない外見とは対照的に鋭い推理力を持つ警部補です。そのギャップによって、社会的地位の高い犯人を追い詰める構図が特徴です。また、ロサンゼルス市警に所属し、地道な捜査と聞き込みを重ねることで事件を解決していきます。

一方、『古畑任三郎』も同じく警部補ですが、フォーマルで紳士的な人物として描かれています。礼儀正しい一方で、負けず嫌いで子供のようないたずらっ子な一面もあり、犯人を精神的にも追い詰めていきます。また、今泉や西園寺といった部下とのコミカルなやりとりも特徴の一つです。

演出面にも大きな違いがあります。『古畑任三郎』では、暗転シーンや視聴者への「挑戦状」といった演出が用いられ、作中の人物が視聴者に語りかけるメタフィクション的構造が採用されています。

これは、アメリカのテレビドラマ『エラリー・クイーン』(1975年)の演出から影響を受けており、独特の緊張と緩和を生んでいます。

また、『刑事コロンボ』が決定的な物証によって鮮やかに幕を閉じるエピソードが多いのに対し、『古畑任三郎』では逮捕前に犯人が自らの動機や心理を吐露する場面が印象的であり、古畑任三郎の大きな魅力だと感じます。

古畑の「なぜ○○をしたのですか」という問いかけにより、物語は単なる事件解決を超え、犯人の心の解放(カタルシス)へと至ります。この情緒的な解決プロセスは、両作品の大きな相違点といえるでしょう。

5.エピソード構成と影響関係

『古畑任三郎』の各エピソードは、『刑事コロンボ』から主に以下の要素を組み合わせて構成されています。

①キャラクター設定などの表面的要素
②トリックや舞台設定といった構造的要素

例えば第20話「動機の鑑定」では、「骨董商の犯人と刑事の会話」や「共犯者を利用した犯行」といった要素が見られます。これらは『刑事コロンボ』の「別れのワイン」における知識をめぐるやりとりや、「ハッサン・サラーの反逆」におけるアリバイ工作など、複数のエピソードから要素単位で影響を受けていることが分かります。

しかし、それらは単純な模倣ではありません。日本的な文化背景への置換、演出の反転、キャラクターの再構築などを通じて再構成されており、まさに独自の作品といえるのではないでしょうか。

このような手法は、三谷氏の初映画作品である『12人の優しい日本人』(1991年)が『十二人の怒れる男』(1957年)を下敷きにしながら日本独自の文脈で再創造されたことと同様、三谷氏の創作スタイルともいえます。

6.三谷幸喜にとっての刑事コロンボ

三谷幸喜氏は、『「刑事コロンボ」は大袈裟な言い方ではなく、僕の人生を変えたドラマだ』⁽3⁾と述べており、その影響を明確に認めています。

また、『僕の観たい『コロンボ』、僕の観たい〈倒叙〉はこういうのだ、というところから『古畑』が始まったので(略)『コロンボ』と『古畑』が並んでいて、どっちを観てほしいかといえば、僕は間違いなく『コロンボ』なんですよ』⁽4⁾と語っています。

このように影響関係が公言されている点は、少なくともそれが隠された盗用ではないことを示してており、リスペクトしている作品であることは明らかです。

結論:古畑任三郎は独自の要素があるオマージュ

『古畑任三郎』は『刑事コロンボ』から強い影響を受けています。

しかし、倒叙ミステリという形式はジャンルとして共有されるものであり、各エピソードもコロンボから複数の要素を取り入れて、再構成して作られています。

作者自身が影響を公言している点に加え、視聴者に直接語りかけるメタフィクション的手法や、事件関係者への聞き込みを排して犯人との対決に特化した劇的な構成、部下・今泉とのコミカルな掛け合いなど、独自の表現が確立されています。

そのため単なる模倣ではなく、リスペクトに基づき新たな価値を付け加えた「古畑任三郎」は、独自のオリジナリティを持つ「オマージュ作品」と評価するのが妥当でしょう。

おわりに|古畑任三郎と刑事コロンボをどう見るか

古畑任三郎が日本ドラマ史に残る金字塔となったのは、コロンボという偉大な先人に学びつつも、三谷幸喜氏独自のオリジナリティが息づいているからに他なりません。

三谷氏は「刑事コロンボ」に尊敬や敬意をもっており、その原型となる作品をリスペクトすることで、自分の観たかったもう一つのコロンボとして古畑任三郎という作品を作り上げました。

古畑任三郎の記念すべき第1話『死者からの伝言』ですが、金庫室に被害者を閉じ込めて殺害するという筋書きは刑事コロンボ41話『死者のメッセージ』から、そのまま流用されています。

つまり三谷氏にとっては、これから刑事コロンボのようなドラマを「古畑任三郎」でする、という決意の表明を感じとることができました。

古畑任三郎の原形ともいえる『刑事コロンボ』は、様々な刑事ドラマにも影響を与えております。現在では古典作品に位置付けられてしまいますが、その魅力は時代を超えて愛される理由があります。ぜひ、視聴したことがない方にもおススメしたい作品です。

私も初視聴が再放送があった2017年からで、ドはまりしてこのようなブログまで立ち上げてしまったほどです。

今回、古畑任三郎における刑事コロンボからのオマージュ元を書き出してみましたが、「ここが入っていないじゃん!!」と感じる部分がありましたら、ぜひご教授ください。

以上、【古畑任三郎】刑事コロンボからのオマージュを徹底比較でした。

引用・参考文献

  1. Webli辞典『パクリ』
    (https://www.weblio.jp/content/%E3%83%91%E3%82%AF%E3%83%AA)2026年3月20日11時02分閲覧 ↩︎
  2. 西尾実・岩淵悦太郎・水谷静夫 編著『岩波国語辞典-第7版新版』岩波書店、2011年 p.188 ↩︎
  3. 三谷幸喜『三谷幸喜のありふれた生活11-新たなる希望-』朝日新聞出版、2013年 p.21 ↩︎
  4. 町田暁雄『刑事コロンボ読本』株式会社洋泉社、2018年、p.179 ↩︎

・ 弁護士法人フラクタル法律事務所『著作物とは』
(https://www.fractal-law.net/copyright/tyosakubutsu_toha.html)2026年3月20日11時30分閲覧