古畑任三郎 18話『偽善の報酬』凶器を探せ

スポンサーリンク

【VS.脚本家】「物をよく無くす人います。しかしどうか癇癪を起こす前に、もう一回自分の周りをよく探してみてください。眼鏡を無くして困っているお父さん、もう一回おでこにかかってないか調べてみてください。コンタクトを無くしたお姉さん、目の隅にずれてないか確認してみてください。入れ歯を無くしたおじいさん、口の中に落ちてないかもう一回調べてみてください。そう、探し物は大抵あなたのすぐ目の前にあるもんです。意外な所に…」

スポンサーリンク

データ

データ:詳しく見る

脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:河野圭太

音楽:本間勇輔

本編時間:46分13秒

公開日:1996年2月7日

あらすじ+人物相関図

偽善の報酬 人物相関図脚本家・佐々木高代は、妹でマネージャー・佐々木和子との折り合いが悪かった。和子は高代の稼いだ金銭を管理し、慈善事業に寄付している。自分の金を無駄なことに使っていることや、自由に金を使うことができない不満から、彼女を殺害する計画を企てたのだった。

ある晩、高代は強盗殺人を装って和子を殴り殺した。自分で警察に通報をすると、古畑任三郎たちが現場検証に訪れた。証言の矛盾などから、すぐに高代の犯行だと睨んだ古畑は「この事件、凶器を見つければ解決だ」と宣言し、現場となった館内を探っていくのだった。

人物紹介(キャスト)

佐々木高代 古畑任三郎

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「偽善の報酬」より引用』】

今回の犯人:佐々木高代(ささき たかしろ)

役者:加藤治子(かとう はるこ)

職業:脚本家

殺害方法:撲殺(????)

動機:昔から嫌悪感があったため

概要:詳しく見る
脚本家の女性。マネージャー・和子は妹で、昔から折り合いが悪かった。金銭の全てを和子が取り仕切り、多額の金を慈善事業に寄付している。自分で稼いだ金を自由に使えないことも日頃からの不満であり、強盗殺人に偽装して妹を殴り殺した。

妹とは60年間の付き合いであり、古畑任三郎からなぜ殺害を我慢できなかったのかと聞かれると、「思いついちゃったんですもの。良い殺し方」と悪びれることなく言い放った。「血が繋がっていなかったら、絶対この人とは友達にならなかった」「7:3で嫌い」とも話す。このエピソードでは凶器当てがテーマであり、邸内にある意外な物が凶器となっているのを発見するのが見どころだ。

高代はペンネームであり、本名は『久子(ひさこ)』である。代表作は、桃井かおり主演『冬の蚊取り線香』である。古畑も大ファンであると語り、ラストの葬式シーンで主人公は「人生は蚊取り線香。ぐるぐる回ってあとは灰になるだけ。でも蚊はよく落ちる」という場面があるそうだ。

桃井とはまだ親交があるらしく、事件の一報を聞き心配した彼女が電話を掛けてきていた。邸内には贈花が多数あり、その中には『吉永小百合』から送られた花もあった。古畑はその豪華絢爛な送られた花々を見て「タモリみたいです」と驚いていた。

傍若無人でわがままな性格である。炊事や家事などは一切行わず全て他人に任せている。それは妹に対してだけではなく、今泉慎太郎にも同様の扱いであった。料理に対してはことごとく皮肉を付け加え、庭の草むしりまでさせていた。

今の仕事を始めたきっかけは、ケーリー・グラントデボラ・カー主演『めぐり逢い』を見たことがきっかけだそうだ。「自分の幸せのために仕事をしてるのよ。他の作家がどうなろうと知ったこっちゃないわ」という、実に潔い信念がある。

ジョン・トラボルタ似で、売り出し中の俳優・山崎浩には手を掛けており、来月ニューヨークに1ヶ月ほど一緒に滞在する予定であった。しかし、彼に恋人がいることが分かると、凄まじい形相で睨みを利かせていた。

刑事ドラマは担当したことがないようだが、もしこの事件がドラマなら、犯人に最後なんとしゃべらせるかを古畑に聞かれる。「何にも言わせないわね。今のドラマはしゃべりすぎよ。人はね、ここぞという時には何にも言わないの」そう言い終えると、傲慢な女流作家は静かに退場したのであった。


佐々木和子 古畑任三郎

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「偽善の報酬」より引用』】

今回の被害者:佐々木和子(ささき かずこ)

役者:絵沢萠子(えざわ もえこ)

職業:マネージャー

概要:詳しく見る
概要:妹でマネージャーの女性。高代によると「昔から現実的で計算が立ってお金に細かい人だった」とのこと。高代が稼いだ金を全て管理しており、何百万もの金を慈善事業に寄付している。また、若い下積み脚本家を助けるための『(不明)基金』を作っていた。

家事を一切行わない高代に代わり、家事全般は全て彼女が担当している。かつお節は、使う分だけ削るなど本格的である。小銭をガラス瓶に貯め込んでおり、銀行で換金したところ、計67.000円も入っていたようだ。

犯行計画/トリック

【強盗殺人に偽装】

①台所でかつお節を削っていた佐々木和子に、高代は声を掛ける。驚いてかつお節を床にばら撒いてしまう。拾い集めるため中腰になっていた和子の後頭部を『○○○○』で殴り殺す。その後、財布の中から現金を抜き出し、勝手口の扉を開けた。外には空になった財布を投げ捨てておく。

②警察に通報すると聴取の際「悲鳴と物音を聞いて階段から降りると不審な男がいた」と話す。妹は強盗に殺害されたように偽装した。

推理と捜査(第2幕まで)

ネタバレ注意!表示する
〇佐々木高代は、事件があった時は部屋にいた。悲鳴と物音を聞いて階段を降りると、男が逃げていったと話す。しかし、勝手口のドアは蝶番(ちょうつがい)が錆びついており、開ける度に音がする。被害者は耳が悪くないので、犯人が侵入した時にどうして気が付かなかったのか?

〇被害者は後頭部を殴られていた。そして、スカートはかなり上の方まで捲れあがっていた。脛が半分見えており、中腰になった時に殴られた可能性がある。犯人を見たならば、どうして中腰のまま背後を向けたのか。顔見知りの犯行かも知れない。しかし、高代は悲鳴を聞いたと言っていた。そうなると、どうして中腰のまま逃げようともせずに悲鳴を上げたのか。彼女の証言には矛盾がある。

〇高代は遺体には触れず、キッチンにも入っていないと話す。彼女の衣服には、かつお節がくっついていた。彼女が犯人である。

〇被害者の具合からいってかなり重い物で、遠くまで運べないはずだ。また、夜更けにどこかに捨てにいったとも考えにくい。凶器はまだ家の中にあるはずだ。

〇冷蔵庫の中には『H』と『K』と書かれた調味料が2つずつあった。佐々木高代の本名は「久子(ひさこ)」でHである。被害者は「和子(かずこ)」でKだ。姉妹は、わざわざ調味料を個別で持っているぐらい仲が悪いようだ。

〇佐々木高代と古畑任三郎は、小説を読む時に誰をキャスティングするのかという遊びをした。この事件のキャスティングを誰にするかの話題になると、高代は犯人役に『キャサリン・ヘップバーン』か『ジャンヌ・モロー』にしたいと語った。事件の犯人は女性である。

視聴者への挑戦状

「えー、謎は解けました。やっと凶器を見つけました。佐々木高代は一体何を使って妹を殺したんでしょうか。えー、ヒントはこれです(料理本)。解決編はこの後で、古畑任三郎でした」

三幕構成

偽善の報酬 三幕構成

小ネタ・補足・元ネタ

佐々木高代 万年筆

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「偽善の報酬」より引用』】

〇佐々木高代の執筆道具、インクはパイロット社『30ml(黒・青)』。万年筆は形状から、プラチナ万年筆『#3776センチュリー(旧式:ブラック)』だと思われる。原稿用紙は、満寿屋『NO.15(ルビ無し:グレー)』である。

〇佐々木高代の犯人像としては、刑事コロンボ41話『死者のメッセージ』の犯人アビゲイル・ミッチェルをモデルにしていると思われる。推理小説家の女性でシリーズ最高齢の犯人である。古畑任三郎との会話でのはしゃぎようや、自白した際の「私はもう年寄りだし……」と情けを求めるシーンなどは、似ている箇所が多い。

〇佐々木高代の邸内には、芸能人から贈られた花が多数あり、古畑が「タモリみたいです」と言うシーンがある。これは『笑っていいとも』のテレフォンショッキングのことで、このコーナーでは芸能人から贈られた花が飾られる。

〇「もしこの事件をドラマ化したら?」と、古畑と高代がキャスティングについて話をする場面がある。配役は以下である。
古畑任三郎:ケビン・コスナー
今泉慎太郎:桜金造
被害者:ベティ・デイビス
犯人:キャサリン・ヘプバーン/ジャンヌ・モロー

まとめ

昭和を代表する名女優『加藤治子』さんの名演が光るエピソードなんですね。『凶器当て』がテーマで、古畑任三郎は冒頭から佐々木高代が犯人だと見抜き「凶器を見つければこの事件は解決」と断言しています。これにより事件の焦点は、凶器を探すだけになるシンプルな構成になりました。よろしいでしょうか?ここまでで話は10分過ぎました。このドラマ45分あります。

残り35分もの尺をどうやって稼いだのか?会話&会話なんですね。犯行現場となった邸内だけのワンシチュエーションで乗り切るんです。小説やら創作をしたことがある人ならわかるんですが、超絶難しいです。ここまで引っ張れるのは舞台劇作家・三谷幸喜氏のなせる技なんですね。

犯人概要をいつも書いているんですが、いつもよりも長尺になっています。他の事件の犯人は短めになるんですけど、尺を伸ばすべく犯人についての情報がたくさん出てくるんです。時間を稼ぐシーンと言えば、例えば俳優・山崎浩のやり取りなどは、本編には関係はありませんね。

この作品の脚本は非常にシンプルな構成である故に、演じる役者さんの演技の上手さに感動してしまいました。35分間ほとんど、古畑と犯人の会話ですよ。対決感は薄いですが、名女優の立ち振る舞いに感動して、最後はホロリときてしまうラストでした。(酷い犯人ですが…)

以上、『偽善の報酬』でした。