【VS.医師】「名探偵。皆さん名探偵といえば誰を想像しますか?シャーロック・ホームズ、エルキュール・ポアロ、エラリー・クイーン。日本にも様々な探偵がいます。日本の名探偵に共通する特徴、何だかご存じですか?実はみんな名字は洒落てんですけど名前がどうも田舎臭いんですね。例えば、明智…小五郎。金田一…耕助。そして、古畑…任三郎」
データ
あらすじ+人物相関図
花見家の主治医・乾研一郎は、推理作家・花見禄助の妻・常子と不倫関係にあった。妻の素行を不審に思った禄助は、探偵に調査を依頼すると不倫の事実を掴む。だが禄助は、真相を知るのが怖いと調査結果を見ていないと話す。そこで乾は、妻の気持ちを寄り戻すためと狂言自殺を提案した。
次の日の晩、乾と禄助は結託して狂言自殺を実行する。だがそれは、乾の仕組んだ巧妙な殺人トリックであった。家政婦・亀山を証人に仕立てると、彼女が現場から離れた隙に常子と禄助を射殺する。禄助には事前に遺書も書かせており、妻の不倫を知った禄助による無理心中に偽装したのだった。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:乾研一郎(いぬい けんいちろう)
役者:草刈正雄
職業:医師
殺害方法:銃殺
動機:不倫関係の清算
今回の被害者:花見禄助(はなみ ろくすけ)
役者:藤村俊二
職業:推理作家
今回の被害者:花見常子
役者:一色采子(いっしき さいこ)
職業:禄助の妻
概要:37歳、禄助の妻。花見家の主治医・乾研一郎と不倫関係にある。禄助とは別れ、乾と婚約しようと迫っていた。
犯行計画/トリック
【無理心中に偽装】
①花見家の主治医・乾研一郎は、花見禄助の妻・常子と不倫関係にあった。禄助は探偵に調査を依頼すると、妻が不倫していた事実を掴んだようだが、まだ調査結果は見てないらしい。そこで、妻の気持ちを振り向かせる方法があると、禄助に狂言自殺を提案した。
②禄助は書斎から、リビングの家政婦・亀山に「さようなら」と電話をかける。亀山はこのことを乾に告げると、2人は書斎の前に移動。禄助は爆竹に着火して音を鳴らした。乾は亀山に、書斎のカギを持ってくるように促した。その間、乾は常子の寝室に入りサイレンサー付きの拳銃で射殺。
③亀山と乾が書斎に入ると、額から血を流した禄助が倒れていた。乾は亀山に、救急車を呼ぶように指示する。また、お湯を沸かすようにも伝え時間を稼ぐ。亀山が下の階に降りると、禄助は起き上がる。額の血はペイントであった。
④乾は禄助に、ワープロで作成した遺書にサインをするように促した。その後、再び禄助に床に寝そべるよう促すと、拳銃で額を打ち抜いた。禄助の手に拳銃を握らせると、壁に向かって発砲させる。これで硝煙反応がつき、妻の不倫により意気消沈した禄助が、無理心中を図った自殺に偽装できた。
推理と捜査(第2幕まで)
視聴者への挑戦状
「えー事件は解決しました。さすがミステリーマニアの犯罪でした。やはり巧妙に仕組まれた密室殺人でした。決め手となったのは、んー……、サインのない遺書。古畑任三郎でした」
三幕構成
小ネタ・補足・元ネタ
〇本のページの端が折られており自殺を疑うきっかけは、刑事コロンボ32話『忘れられたスター』からの引用である。
〇冒頭で見える花見禄助の著書『電撃入籍殺人事件』は、三谷幸喜氏が1995年10月に入籍を発表したことから。『やっぱり猫が死ぬ』は、三谷氏が脚本のドラマ『やっぱり猫が好き』からのパロディタイトルである。
〇禄助が読んでいた推理小説『三十六の悲劇』は、最近出た若い作家『望月連太郎』の献本とされる。元ネタは、推理小説家『法月倫太郎』氏だと思われる。著書に「一の悲劇」「二の悲劇」が存在する。
まとめ
犯人に草刈正雄さんが登場した、対決感ある作品になっています。第2シリーズは特殊な展開(法廷、爆弾犯、犯人側のルール理解、凶器/動機当て、密室、安楽椅子探偵)などバリエーション豊かであり、第2シリーズは『動機の鑑定』と本作の2本がスタンダードな倒叙形式です。
さて、このエピソードの魅力といえば『ゲームの達人』というタイトル通り、まるで事件を楽しんでいるかのような犯人の立ち振る舞いであります。自分の考え出したトリックに、絶対的な自信を持ち「ゲームっていうのは人生と同じで勝たなきゃ意味がない」という信念があるんですね。
しかし彼が、昔からの教訓として思っている出来事があります。「細かい所では勝つのに、肝心な所ではポカをする」ということです。乾はエピソード中にこう語っています「ミステリ作家を志したがものにならなかった」と、だから医者になったというのです。
社会的地位のある職業の医者で、細かい所では勝利していますが、肝心のなりたかった小説家にはなれなかったんですね。そのため今回の事件では、推理小説家としての自信作をトリックに用いたのではないでしょうか?
結果として古畑任三郎との勝負に敗北します。ここで面白いのが、古畑が指摘するほぼ全ての手がかりは、被害者の性格に起因するものでした。自分よりも劣ると蔑んでいた友人に翻弄されてしまう物語であったんですね。
自白する際に、先程の台詞「細かい所では勝つのに……」と呟き投了します。もしも計画通りに進んだならなんて、そう人生は上手くいきません。だからこその、「人生はゲームじゃありません。軽く見てると痛い目を見ますよ」。古畑任三郎の台詞の返しがまたカッコいいですね。
以上、『ゲームの達人』でした。
>狂言自殺を仕組んだ時にも、頭の側面から血を流したように見せず、こめかみに銃を撃ち死んだように見せかける
こめかみではなく額の真ん中では?
匿名様
ご指摘ありがとうございます! お手数おかけしました。
合わせて、返信遅くなり大変申し訳ございません。
花見禄助の概要で、間違いなく『額』でございます。文章の確認不足でした、修正させていただきました。