古畑任三郎 第3シリーズ1話(#28)『若旦那の犯罪』落語が舞台の殺人事件

古畑任三郎 28話 若旦那の犯罪
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第3シーズンの開幕エピソードで、新キャラ・西園寺くんが正式加入しました。第2シーズンで登場する芳賀刑事のように丁度良い塩梅のシーン数ではなく、古畑警部補に代わりガッツリと事件の解説を行うことも多くあり、今泉くん出番が徐々に減ってきてしまうなど悲しい一面もあります。

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データ

脚本:三谷幸喜
監督:関口静夫
制作:フジテレビ
演出:河野圭太
音楽:本間勇輔

本編時間:57分48秒
公開日:1999年4月13日

あらすじ

落語家・気楽家雅楽(松本幸四郎)は、兄弟子・気楽家苦楽(モロ師岡)の新作落語を我が物にするために殺人を計画する。師匠・気楽家有楽との稽古を苦楽に身代わりを頼むと、その間に事務所から真打候補のリストを盗み出し、アパートに帰宅した苦楽をナイフで殺害したのである。

苦楽に変装した雅楽は、老人ホームの慰問に参加して苦楽が生きていたよう見せかける。その後、雅楽は打ち上げパーティーに参加して自身のアリバイも作り上げた。苦楽は盗みだした真打候補のリストを見て、今年も真打にはなれないことに悲観して自殺をしたように見せかけたのだった。

人物紹介(キャスト)

今回の犯人:気楽家雅楽(きらくや がらく)
役者:市川染五郎(現:松本幸四郎)

概要:落語家の男性。将来を有望された若手でルックスと話の上手さから独演会も決まっていた。そこで新作落語を披露することになり、兄弟子・気楽家苦楽の作品を我が物にするべく自殺に見せかけて殺害した。

本名は信雄(のぶかつ)で、『若旦那』の愛称で呼ばれている。「若い人にも聞いてほしいから」「(落語は古い)そういうイメージを打ち破りたい」と、テレビでも活躍している。前へ前へと新しいことに挑戦しているようであるが、伝統的な古典落語は不勉強な一面がある。


今回の被害者:気楽家苦楽(きらくや くらく)
役者:モロ師岡

概要:落語家の男性。本名は高田渡(たかだ わたる)。古典落語をよく勉強しており、分厚いネタ帳には新作落語を書き綴っていた。師匠・気楽家有楽は噺家としての魅力は薄いが、噺を創る作家としての能力を高く評価している。あくまでも噺は自分自身のモノであるという考え方であり誰にも譲らなかった。

小ネタ・補足・元ネタ

〇気楽家苦楽は古典落語をよく勉強し、それを新作落語に活かしていたと言われていた。新作落語『タイムマシンで行こう』は、大ヒット映画が放映される前に戻り、それと同じ映画を作って大儲けしようという内容である。噺の中では、『タイタニック』を先取りしようとしていた。

〇2020年9月1日に配信したインターネットラジオ・第百十八回「トリをとりたいが、弟子達が。」で、落語家『桃月庵白酒』師匠が『若旦那の犯罪』に出演した当時の思い出を39分35秒~語っており、番組内の『タイムマシンで行こう』は、柳家喬太郎師匠が作ったようだ。

〇『タイムマシンで行こう』の中にある、「しかし、このラーメンもケチなラーメンだな。チャーシューなんか透けて見えちゃってるよ」という流れは、古典落語『時そば』で、ちくわ入りのそばを食べる場面のオマージュである。

〇「浅草弁天山から打ち出す暮陸奥の鐘。いんにこもって、ものすごくボーン……」気楽家有楽が稽古で披露した落語は『野ざらし』の一節である。

〇気楽家一門は独特なネーミングである。気楽家有楽、雅楽、苦楽、墜落、イラクと作中では登場した。墜落を演じたのは『柳家さん生』、イラクは『柳家さん光』である。

〇独演会のロケ地は、『府中の森芸術劇場』である。

刑事コロンボからのオマージュ

〇『若旦那の犯罪』というタイトルは、38話『ルーサン警部の犯罪』からインスパイアされたと思われる。

〇気楽家有楽を演じたのは『梅野泰靖』氏は、犯人役で3度登場した『ロバート・カルプ』氏の吹き替えを担当していた。

まとめ

トリックに関しては、やはりどこかしら破綻しているような気もします。古典芸能では、師匠からつけてもらう稽古に対してメモを取るなどはご法度のため、『見取り稽古』が中心となるとはどこかで聞いたことがあります。しかし、目が悪い師匠ではありますが、さすがに弟子と会話ぐらいはしないものだろうか?

仮にも甥っ子であるため、師匠よしっかりしてくれ! でも、あえて身代わりになっていることには気が付いており、その後の事件展開から庇っていたのかも知れませんね。

さて、被害者が目の前で『煮干し』を握りしめるのを犯人は目撃しています。古典落語を知らないのでダイイングメッセージの重要性を見逃すなど上手くカバーされてはいますが、何らかの意図があるのではないかと回収しなかったのはお粗末な犯人でした。でも想像以上に血が出てしまったので気が動転してしまったのでしょう。古畑任三郎のベスト3に入るショッキングなシーンでした。

なんといってもこのエピソードで見どころだったのが『梅野泰靖』氏が演じる師匠の存在感です。師匠と弟子との絆を最後に魅せることでうまく締めくくられたラストにも思えました。解決編では古畑vs犯人という構図がほとんどで、そこに3人目が最後まで加わることは稀(逆トリックなどで加わることがあるが途中で退席)なのです。

犯行の動機となった犯人の心情や思いに対し、師匠が返す言葉。功を焦る弟子に対しての師匠の思いが伝わりました。しかしながら、その後の”一門引き連れて”の件は、個人的にやり過ぎな感じがします。仮にも弟子・苦楽が亡くなっているのに扱いの差が悲しいよ。

以上、『若旦那の犯罪』でした。

  1. こんにちは。現実の世界でも、二代目を襲名した二世落語家が「フレッシュ大喜利」のモデル?の老舗演芸番組を卒業?して話題になってますね。しかも、アドバイスを無視する相手が二ツ目の兄弟子ではなく共演する大御所噺家だったり、稽古もせず熱中してたのが飲み歩きではなくライザップ。まさに事実は小説よりも奇なり。さすがにネタを盗んだ挙句…ってところまではないでしょうが(笑)

    あと、まとめ欄の文中で「ダイニングメッセージ」と記載されてます。西園寺くんに指摘されますよ(笑)

  2. 花畑様

    ≫二代目を襲名した二世落語家
    ≫老舗演芸番組を卒業
     まずはお疲れ様ですね。視聴者参加のリモコン投票で座布団がいつもすっからかんでしたね。

    ≫まとめ欄の文中で「ダイニングメッセージ」
    「失敬!」修正させていただきました。また、桃月庵白酒師匠が、作中の『タイムマシンで行こう』は柳家喬太郎師匠が作ったと、インターネットラジオで語っていましたので、その件をまとめに追記しました。
     

  3. タイムマシンの噺はまるっと一席聴いてみたいですね。それと、苦楽兄さんのネタ帳とか小道具さんが喬太郎師匠からもらった原本見て一生懸命にそれっぽく手書きしたんだろうな、画面に映るのは一瞬なのに…とか些細なことに思いを馳せてしまいました。

  4. 花畑様
    ≫タイムマシンの噺はまるっと一席聴いてみたい
    同意です。最後まで通して作ったのでしょうか? また、”ダイニング”メッセージの件ありがとうございました。

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