古畑任三郎 第1回スペシャル(13話)『笑うカンガルー』初スペシャルの海外ロケ

古畑任三郎 13話 笑うカンガルー
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スペシャルに相応しい入り組んだストーリー構成になっています。初の海外ロケなのですが、事件現場となるホテル内だけで会話が進むなど、オーストラリアの広大な景色を全く使用していないのが面白いですロケ地は『シェラトン グランド ミラージュ リゾートポート』であり行ってみたいものです。

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データ

脚本:三谷幸喜
監督:関口静夫
制作:フジテレビ
演出:松田秀知
音楽:本間勇輔

本編時間:95分45秒
公開日:1995年4月12日

あらすじ+人物相関図

数学者コンビ・二本松晋(陣内孝則)と野田茂男(田口浩正)は、数学界で名誉あるアーバックル賞を獲得してオーストラリアでの授賞式を執り行っていた。二本松は、口下手で不愛想な野田に代わって記者のインタビューに答えていると、不倫関係にある野田の妻・ひかる(水野真紀)から電話が入り、夫が死んでしまったと相談を受ける。野田を突き飛ばしたら死んでしまったらしく、二本松は階段から転落したように偽装工作を行うと、偶然旅行に来ていた古畑任三郎たちを証人にしてアリバイを作り上げたのだった。

人物紹介+キャスト

今回の犯人:二本松晋(にほんまつ しん)
役者:陣内孝則(じんない たかのり)

概要:数学者の男性。同じく数学者・野田茂男とはコンビを組んでおり、口下手で不愛想な彼に代わりマスコミや記者対応を行っているまた、野田の妻・ひかるとは不倫関係にありお互いを愛しあっている。そんな折、彼女から夫を殺してしまったと相談を受け、犯罪への一歩を歩むことになる。


今回の共犯:野田ひかる
役者:水野真紀(みずの まき)

概要:野田茂男の妻。親の都合で決まった結婚であり、今年で5年になるようだ。夫婦仲は最悪であり、理不尽な暴力を受けている。夫とコンビを組んでいる二本松晋とは不倫関係にあり、離婚したならば彼と婚約をするつもりであった。


今回の被害者:野田茂男(のだ しげお)
役者:田口浩正(たぐち ひろまさ)

概要:二本松晋とコンビを組む数学者の男性。「芸能人じゃないんだ」と、不愛想で口下手なため、マスコミなどの対応は二本松に任せて研究に専念している。「頭を使うのが俺、口を使うのがあいつ」と、役割分担をしているようだ。

小ネタ・補足・元ネタ

〇ロケ地はオーストラリア『シェラトン グランド ミラージュ リゾートポート』である。

〇二本松晋と野田茂雄がアーバックル賞を獲得した論文は『4次元空間におけるドメスティックな微分構造の発見』とのことだが内容は不明だ。また、アーバックル賞は40歳未満の数学者にしか与えられない名誉ある賞とのこと。共に架空のものである。

『ファルコンの定理』とは、300年前にファルコンという学者が発見した定理である。彼の死後、定理の解き方を記録した書類が火事で焼失してしまい、長年解き方が分からないままであった。これを証明できれば、数学の歴史に確実に名前を残すと言われている。なお、架空の数式である。

〇『ファルコンの定理』の元ネタは、フェルマーの最終定理だと思われる。フェルマーの最終定理は300年以上解明されていなかったが、1995年2月13日に証明された。このエピソードの放送日は1995年4月12日であり、現実とドラマ内で解明した数学者の名前も『アンドリュー・○○』と寄せている。

『カンガルーが笑う』とは、オーストラリアの言葉で、意味は「男運が悪い女性」という意味だそうである。脚本を担当した三谷幸喜氏による造語だと思われる。

刑事コロンボからのオマージュ

〇ストーリーの流れは、刑事コロンボ25話『権力の墓穴』のアレンジである。このエピソードでは、妻を殺してしまったという夫から電話を受け、友人が偽装工作を行っていく。

〇登場人物に関しては、刑事コロンボ3話『構想の死角』の推理小説家コンビから着想を得ていると思われる。メインでシナリオを書いているジムが、スポークスマンのケンにコンビ解消を告げ、それが殺人の動機に繋がった。また、被害者・野田茂雄は、どこにでも思いついたメモを書く癖があるが、構想の死角の被害者も同様の癖がある。

〇古畑任三郎と今泉慎太郎は、缶詰の懸賞でオーストラリア旅行を当てた。刑事コロンボ29話『歌声の消えた海』では、コロンボのカミさんが缶詰の懸賞に当たっている。

まとめ

このエピソードの魅力は、共犯となった二本松晋が、守るべき存在の野田ひかるを殺人犯にしてしまう流れにあります。第一の犯行で、死んだと思っていた野田が息を吹き返し『ファルコンの定理』を解明してしまうのです。

この定理を解明した数学者は歴史に名を残すとも言われており、結局のところは二本松は名誉を独占するため殺人を犯してしまいます。しかし、徐々に古畑から追い詰められると、今度は逆に守るべき存在であった野田ひかるを殺人犯に仕立て上げるのです。

これには「最低!」 と思わず声をあげてしまうこと請け合いなのですが、それだけで終わるドラマではありません。最期の古畑と野田ひかるの会話に含みがあるのです。人間の本質とは自分本位であると二本松は答えを導き出したわけですが、2週目で本作品を視聴すると違った雰囲気を受けました。改めてタイトルは『笑うカンガルー』で、「男運が悪い女性」という意味です。

つまり最初から「野田ひかる」が主役のエピソードだったわけです。主犯こそは二本松が活躍していますが、真の犯人とは野田ひかる彼女であり、殺害を庇ってくれるはずと踏んで、最初から二本松を利用するつもりだったのかも知れない。そのような怖い話だとも捉えることができるのです。しかし、ひかるの思惑は外れてしまい、『カンガルーに笑われる』ことになったのではないでしょうか?

以上、『笑うカンガルー』でした。

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