古畑任三郎 3話『笑える死体』正当防衛を主張します

【VS.精神科医】「古くなったストッキングの意外な使い道をお教えします。切り取った先っぽをスリッパの上にかぶせて家の中を歩いてみてください。細かいゴミが面白いように取れます。ストッキングっていうのは便利な物で……」

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データ

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脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:河野圭太

音楽:本間勇輔

本編時間:46分07秒

公開日:1994年4月27日

あらすじ+人物相関図

笑える死体 人物相関図精神科医・笹山アリが自宅に帰ると、シェフ・田代慎吾が、サプライズで誕生パーティーを開いたのだった。アリと田代は、以前恋人関係であったのだが、田代は別の女性と婚約をしてしまった。アリは、自分を振ったことに対して強い復讐心を抱いていた。

そこでアリは、人を驚かせるのが好きな田代の性格を利用した殺人計画を画策する。まず、隣の敷地からストッキングを被った泥棒がいたと彼に話した。田代が外に出て行くのを確認すると、玄関のカギを閉める。その代わり非常階段のカギを開けて、物干し場にはストッキングを吊るしておいた。

田代は部屋に戻ろうとするが、カギがかかって入れない。非常階段のカギが開いているのを発見し、そこからアリの部屋に通じるベランダまで移動した。そこで、ストッキングを見つける。先程、ストッキングを被った泥棒の話を聞いていた田代は、アリを驚かせるためにそれを顔に被ったのだ。

そして、部屋に入ってきた田代を、アリは金属バットで撲殺した。これで、自宅に帰宅したら泥棒が襲い掛かってきたためにバットで殴った正当防衛を主張できる。

人物紹介

笹山アリ 古畑任三郎

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「笑える死体」より引用』】

今回の犯人:笹山アリ(ささやま あり)

役者:古手川祐子(こてがわ ゆうこ)

職業:精神科医

殺害方法:撲殺

動機:復讐

概要:詳しく見る
概要:笹山神経外科クリニックの院長である女性。1994年3月16日で30歳になった。クリニックの患者であった田代慎吾と交際していたが、別の女性と婚約したことを知り、強い復讐心を抱く。彼の性格を利用し、正当防衛を主張できる殺人計画を画策した

精神科医だけあり、非常に堂々とした立ち振る舞いをしている。女性らしさとはやや遠い位置にあり、古畑から疑われたのも、強盗が襲い掛かってきたならば、普通の女性ならば逃げる。後ろにドアもあり逃げ出すこともできたが、アリは自分から向かいバットで殴ったという、とても勇気ある女性であるということからであった。

俗に言う女子力が不足しているようにも思える。料理が大変苦手であり、生卵を割ることすらままならず、中身ごと粉砕する始末であった。ミートローフは大嫌いで、茶わん蒸しは嫌い。焼きナスは絶対にやめてと語っていた。食わず嫌いなだけか、古畑がそれらを料理したのだが、普通に食べている。さすがに手を付けないのは失礼だと思ったのだろうか?

仕事に関して、物語の冒頭では、人前で喋るとあがってしまい何も話せなくなる男性に対し、単純作業(イタズラ書きや、ビー玉を手に取り転がしておく)などして発言すると、言葉が出なくなるといったことにはならないと助言をしていた。


田代慎吾 古畑任三郎

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「笑える死体」より引用』】

今回の被害者:田代慎吾(たしろ しんご)

役者:羽場裕一(はば ゆういち)

職業:シェフ

概要:詳しく見る
概要:青山のフランス料理店に勤務する腕の良いシェフ。3年前、笹山神経外科クリニックの患者であったようで、そこからアリと知り合った様子。アリによると、盗癖症であったとのこと。アリとは以前付き合っていたようだが、別の女性と婚約をしている。

人を驚かせるのが大好きであり、彼を知っている人は「よく被りものをして仲間をびっくりさせていた」と語る。また、30歳になったアリのためにサプライズパーティーを開いた。東急ハンズ(渋谷店)のパーティーグッズ売り場で、9620円の買い物をしたようだ。また、ケーキやローストチキンを料理し、シャンパンも振る舞った。

遺体写真を見た古畑には「あの不謹慎を承知で私も言うんですけども、長年いろんなホトケの顔見てきますけども、これほど、そのなんていいますか、その、笑えた写真も珍しいですね。こんな顔で亡くなって、彼もさぞ残念だったでしょう」と評価されている。

非常階段から隣の部屋に渡るには、かなりの高さがある箇所を通らねばならず、たいした度胸の持ち主である。靴は『クラリーノ』を履いていた。タバコを吸うようで、キッチンの三角コーナーに吸い殻を入れていた。

犯行計画

【正当防衛を主張しての殺人】

①笹山アリは、窓から外を見ると「隣の敷地からストッキングを被った泥棒がいた」と田代に伝える。田代は外に行き泥棒を追う。アリはその間、玄関のカギを閉める。非常階段のカギを開け、ベランダにストッキングを吊るした。そして、浴室のシャワーを流したままにする。

②田代が部屋に戻ろうとするが、カギがかかり入れない。非常階段のカギが開いているのを見つけ、そこからアリの部屋のベランダまで向かう。ストッキングを吊るしているのを発見した。人を驚かせるのが好きな田代は、ストッキングを被り、アリを驚かせようとする。

③田代は部屋の中に入る。シャワーの音に気が付き、浴室に向かうがアリはいない。リビングに戻るとそこには彼女がいた。ここで、金属バットで撲殺される。室内のパーティー用品などを片付けると、警察に通報する。部屋に帰ってきたら泥棒がおり、襲い掛かってきたために殴ったという正当防衛を主張した。

視聴者への挑戦状

「いやあこれは難しい事件です。えー田代を殺したのはアリです。これは事実です。しかし、正当防衛であれば彼女を逮捕することはできません。有罪を立証するためには、計画的であったことを証明しなければなりません。

実は彼女と田代が深い関係であったという証拠。夕べ2人でパーティーをやったという証拠を見つけなければなりません。実はあったんです。この部屋の中に。お分かりですか?

ヒントは『東急ハンズ』、『田代の性格』、そして、1番目につきやすいものほど見つけにくいという心理学の鉄則。そしてこれです(銀紙)。古畑任三郎でした」

三幕構成

笑える死体 三幕構成

小ネタ・補足・元ネタ

〇古畑は、ストッキングを被った状態ではタバコを吸えないと話す。しばらくして、古畑はストッキングを被り、やっぱりタバコは吸えたことを確認した。元ネタは、刑事コロンボ31話『5時30分の目撃者』のコロンボの推理「ストッキングで覆面をしたままタバコは吸えない」というのを否定してみせた形となっている。

なお、この件に関しては、『刑事コロンボ読本』の三谷幸喜氏の鼎談記事で「絶対にストッキングを被ってもタバコ吸えるのにな」との思いからであったと語られている。ちなみに、5時30分の目撃者の犯人マーク・コリア―も精神科医である。

まとめ

1番最初に撮影が開始されたエピソードになります。演出は河野圭太さんで、他のエピソードも多数演出されております。ここで、残念な点としましては、『1番目につきやすいものほど見つけにくいという心理学の鉄則』と視聴者への挑戦状で述べておりますが、それが画面内に一度も登場していないということです。

なぜか片付けたはずのパーティーの銀紙が再びテーブルの上や頭に乗っていたりと、丁寧な伏線などはありましたが、ややフェアではないようにも思ったりしちゃいます。

見どころとしてはやはり、田村正和さんが、ストッキングを被ってタバコを吸うシーンが挙げられます。吸った後に煙が目に染みたのか、シパシパとしているのもユーモラスな場面になっています。さらに料理を使ったやり取りと、鎌をかける会話が絶妙です。

動機としては、第1話「死者からの伝言」の犯人、小石川ちなみと同じものになっています。恋人であった男性が実は別の女性と交際しており、自分は本命ではなかった。決定的な違いは、性格にあります。ちなみは完璧な復讐ですが、アリの場合は「プライドの問題」であると述べています。

笹山アリは、強い女性像が全面的に伺えるキャラクター像であり、田代慎吾と冒頭で会話した際には、「私って怖い?」との問いかけに、笑顔であった田代は萎縮したのか無言で頷いています。人を驚かせるのが好きな田代にとっては、精神科医で心の内を見透かされているアリは馬が合わず、別の女性と婚約したのかもしれませんね。

以上、「笑える死体」でした。