【VS.外科医師】「車内で、リクライニングシートを倒す時は必ず一言後ろの人に声をかけてください。そういった小さな思いやりが旅を楽しい物にしてくれます。そう、やっぱり旅は楽しくなくちゃいけません、旅は…」
データ
あらすじ/人物相関図
天真楼病院の外科部長・中川淳一は、愛人との不倫現場を興信所所長・宍戸隆に撮られていた。依頼人は妻らしく、このことがバレると離婚をしなけらばならなくなる。妻の父親は病院を経営しており、また財産は妻の名義で管理している。離婚をすることで、現在の地位と財産までも失ってしまうのだ。
中川は不倫を揉み消すべく、列車内のビッフェで買収を持ち掛ける。しかし、宍戸の意思は固く断られてしまった。だが中川は、買収に失敗したときのために、彼の飲み物の中に睡眠薬を混ぜ込んでいたのだった。
睡眠薬が効いてくる時間になると、8号車にある宍戸の隣の席に座る。そして、フィルムが入っているコートを回収すると、くるぶしにある静脈にカリウムを注射し、心臓麻痺に見せかけて殺害したのだった。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:中川淳一(なかがわ じゅんいち)
役者:鹿賀丈史(かが たけし)
職業:外科医師
殺害方法:
動機:口封じ
今回の被害者:宍戸隆(ししど たかし)
役者:河原さぶ
職業:興信所所長
犯行計画/トリック
【心臓麻痺での病死に偽装】
①中川淳一と宍戸隆は、車両内にあるビッフェで会話。予め宍戸のコーヒーに睡眠薬を混ぜていた。宍戸は不倫現場を写真におさめており、中川は買収しようとするが断られ殺害を決意する。
②中川は車内販売で『みかん』を購入。そして、8号車にいる宍戸の隣の座席に座った。宍戸は睡眠薬が効いているため起きない。宍戸のコートの内側が編み込まれており、そこにカメラフィルムを入れているようだ。なかなか糸を切れないため、コートを脱がした。
③足首にある静脈に『カリウム』を注射する。しばらくして心臓麻痺で死亡する。元々、宍戸は心臓麻痺の薬も服用しており、病死に偽装することもできる。回収したコートを羽織り、自席がある7号車に戻った。後は次に停車する駅で降りれば自身の犯行には辿り着かない。
視聴者への挑戦状
「まーこういうこともあります。しかしですね。私はですね。中川先生が殺したってことに関してはかなり自身があるんですよ。そもそもこの事件は医学的な知識がないと出来ないはんざいです。くるぶしの横に製脈があるなんて普通の人知りませんからね。
そうだ、覚えておいた方がいいですよ。全国の完全犯罪を企んでる皆さん、ね。えー、実はですね。これからひとつ実験をやってみようかと思います。んー、中川先生がうまく乗ってるかどうか分かりませんけども事件の再現をしてみようと。
ひょっとするとですね、犯人しか知らないことまで、つい再現してしまう可能性が。そうなったら、こっちの思うつぼです。まあ、そう簡単にしっぽを出すとは思えませんけども。とにかく皆さん、よーく注意して見ててください」
店員「(コーヒー)お下げしてよろしいですか?」
「まだ残ってるでしょ」
店員「あ、失礼しました」
「(飲み干して)えー、と。古畑任三郎でした」
三幕構成
小ネタ・補足・元ネタ
〇決め手に関しては、刑事コロンボ31話『5時30分の目撃者』を参考にしている。
〇中川淳一は、三谷幸喜が脚本を務めた『振り返れば奴がいる』に登場する人物である。天真楼病院で外科医師をしており、古畑任三郎へのスピンオフ出演となっている。
〇車掌は『梶原善』三谷幸喜作品に欠かせない人物である。
〇時系列的には、第5話『汚れた王将』で帰宅するために乗った列車での事件である。
〇刑事コロンボ読本の中で、古畑任三郎のプロデューサーを務めた『石原隆』が一番好きなエピソードだと語っている。
まとめ
三谷幸喜さん脚本『振り返れば奴がいる』の登場人物「中川淳一」が犯人として登場する、ファンにとってはたまらないエピソードになっていると思われます。私は原作未視聴ですので、詳しくはコメントできません……いずれ見なければ。
このエピソードの素晴らしい点は、テレビ的な描写を活かしていることです。列車内での殺人ということで、いわば密室状態。古畑任三郎が中川淳一を医者であると見破る場面/被害者がコートのポケットに入れていた小銭の音/リクライニングシートなどなど、丁寧な伏線が張り巡らせているのが見事ですね。
また、三谷幸喜さんならではの遊び心といいましょうか?今回の犯人は『振り返れば奴がいる』の登場人物であることは述べました。そのタイトルにちなんで、古畑の推理によって犯人が『振り返る』ことで、殺人を認めることに繋がるんです。リクライニングシートを倒し、後ろの席の人物を見るために振り返る……。見事な落とし方は必見です。
以上、『殺人特急』でした。
これは気づきというか余計なツッコミなんですが
犯行再現実験の時、中川は2度も後ろ向きのまま客室に入り古畑の隣に座りました。これはその後ろの席にヤクザが座っていると思っての行動というのは理解できます。つまり、その前に実験(おばちゃんの目撃証言)のためにビュッフェ往復する時にヤクザがいる横を通ってきたということですよね。個人的にはそのシーンが見たかった。どんな顔して通り過ぎたのか(笑)
花畑様
再び楽しいご考察ありがとうございます!
11号車:今泉慎太郎(自由席)
10号車:ビッフェB(売店)
09号車:ビッフェA(食堂)
08号車:犯行現場(グリーン車)
07号車:犯人と古畑任三郎
車両編成的には、花畑様のツッコミの通り、犯人はどうしても犯行現場を通らなけらばならず、やはり相当緊張しながら進んで行ったんだろうなと思いました。
古畑警部補の影に隠れながら移動していく姿が思い浮かびます(笑)。誘いを断るのもなんだし、これほど気のいいお医者さんはおりませんね♪ せっかくなので車内図も作ってみたいと思います!
管理人さん、返答ありがとうございます。
初見で序盤にでたヤクザを覚えていた視聴者がどれだけいたか…ちょっと時間開き過ぎ?と感じたので
実験前にヤクザがいることをおさらいする意味でも前述のシーンを設けても良かったのでは、と思いました。
もう一つ、入れ替わっていた婆さん見て中川が呆然としてるところにヤクザがきて
「刑事さん、もう席に戻っていいかい?あ、倒れた男の隣にいたのコイツだよ」みたいなダメ押し展開なら
私的には120点でしたね(笑)
≫序盤にでたヤクザを覚えていた視聴者
忘れたか忘れないかぐらいの伏線がいいですよね。
脚本の三幕構成的には、『中間点』でもう一度登場しており、タイミング的には視聴者への配慮がなされているのかなと思っています。11号車のおばあちゃんの登場は、見返して「あーこの人か!」となりました(笑)
≫中川が呆然としてるところに
二度刺される感じで面白いかも知れませんね(笑)
>>忘れたか忘れないかの伏線
あの程度のエピソード(面通しの失敗とオチ)入ったくらいで伏線(ヤクザの存在)吹っ飛んでしまうような
レベルの自分に話をあわせていただいて、管理人さんホント恐縮です