古畑任三郎 5話『汚れた王将』ヘボ将棋 王より飛車を可愛がる

【VS.将棋棋士】「パジャマのボタン止めてから、全部ずれていた事に気付く事って良くあります。パジャマを着る時は必ずボタン下 から止めてください。まず掛け違える事はありません。合理的に生きるっていうのはつまりそういう事で…」

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データ

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脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:河野圭太

音楽:本間勇輔

本編時間:46分06秒

公開日:1994年5月11日

あらすじ+人物相関図

汚れた王将 人物相関図将棋棋士・米沢八段は、将棋のタイトルである竜人戦の対局中であった。成績は3連敗中で、この1局を落としてしまうと負けが確定してしまう瀬戸際の状況だ。対局の中盤、米沢は封じ手を宣言するが、白紙のまま封をして提出したのだった。本来なら次に指す一手を書き記さなければならない。

米沢の行動に不信を抱いたのは、対局の立会人・大石であった。米沢の不正行為を疑い、この件を実行委員会に報告すると話したため、彼を自室で殺害した。遺体を大石の部屋に運ぶと、入浴中の風呂場での事故死に偽装した。

たまたま大会がある旅館に宿泊していた古畑任三郎は、現場の状況から米沢が殺人を犯したと推理する。翌日、白紙の封じ手に一晩熟熟考した差し手を記入して対局を再開させた。対局は米沢が優勢に進めていく。だが終盤、米沢は飛車を成らず、勝てるはずの対局を棒に振ったのだった。

人物紹介(キャスト)

米沢八段 古畑任三郎

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「汚れた王将」より引用』】

今回の犯人:米沢

役者:坂東八十助(ばんどう やそすけ)

職業:将棋棋士

殺害方法:撲殺

動機:口封じ

概要:詳しく見る
概要:プロ棋士の男性。エピソードでは米沢八段と呼ばれ名前は明かされていない。第八期竜人戦おいて中谷竜人と対局中であった。現在までに三連敗しており、あと一敗すれば負けが確定してしまう。そこで、封じ手に細工をする。それを、立会人・大石に見咎められ殺人を犯した。

「合理的」という信条が中心にある。洋服は着ないそうで、着物の持つ合理性が自分に合っているそうだ。「着物にはポケットとかボタンとかそういった余分なものが一切ない。しかし、これほど機能的な衣類はありません」とのこと。古畑の質問に対して、合理的な答えを返していき感心された。

背広を普段着ておらず、シワになると知らなかったのか?背広までも着物同様に綺麗に畳んでしまい、背広を着なれない人物の犯行だと疑われるきっかけにもなった。将棋の世界に生きてきたため、世間知らずな一面もあるようだ。納豆は、しょう油を入れる前にかき混ぜた方が、水分が少ない分より粘り気がでる……、といった豆知識も持っている。

殺人を犯してまで、封じ手のトリックを成功させた。対局は優勢に進んだのが、終盤はなぜか飛車成りをせずに、徐々に攻め込まれ投了を宣言する。飛車に残された証拠が目に付いてしまったのだ。しかし、それ自体は証拠ではなく、『なぜ飛車成りをしなかったのか』。合理性を求める彼の性格自体が証拠となるラストは、このエピソードでも印象に残るやりとりである。ちなみに、好きな動物はキリンだそうだ。


大石 古畑任三郎

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「汚れた王将」より引用』】

今回の被害者:大石

役者:小林昭二(こばやし あきじ)

職業:将棋棋士

概要:詳しく見る
概要:地元の将棋棋士の男性。米沢八段が封じ手で不正を行ったと勘付き、職務をまっとうする。実行委員会に報告する旨を伝えると、米沢八段に灰皿で撲殺されてしまった。対局がある旅館に泊まるときは必ず夜食を注文し、この日はサンドウィッチであった。

犯行計画

【入浴中の事故死に偽装】

米沢は自室で、ガラスの灰皿で大石の後頭部殴り殺害。遺体を大石の部屋まで運び出し、衣服を脱がせると浴槽へ入れる。お湯を入れ、浴槽に後頭部を擦り付けると、浴槽で転倒して後頭部を打ち付けた事故死に偽装した。被害者の衣服をベッド上で畳むと、自室に戻って血痕を綺麗に拭き取った。

【封じ手に細工】

竜人戦の対局中、封じ手を宣言する。本来なら、次に駒を動かす一手を記入する必要があるが、米沢は立会人たちに見つからないように白紙で提出し封をした。

翌日の対局で、立会人が封を切るとそこには、米沢が一晩熟考した一手が記載されており、勝負を優位に進めていった。なぜ、封をしていたはずの白紙に、次の一手が書き込まれていたのか?

視聴者への挑戦状

「思っていた通りでした。えー、試合に使った駒。夕べ米沢八段の部屋にあったものでした。今日のポイントはふたつ。まず、米沢八段が使った封じ手のトリック。そしてもうひとつ。なぜ八段は勝てるはずの勝負を捨てなければならなかったのか。今日はちょっと急いでますんでこの辺で。古畑任三郎でした」

三幕構成

汚れた王将 三幕構成

小ネタ・補足・元ネタ

『竜人戦』は架空のタイトルである。現実に存在する将棋のタイトル戦は、【竜王戦、名人戦、叡王戦、王位戦、王座戦、棋王戦、王将戦、棋聖戦】の8大タイトルである。竜王戦と名人戦をもじってつけられたタイトルであると考えられる。また、タイトル戦は5番勝負か7番勝負である。今回の犯人である米沢は3連敗中とのことで、竜人戦は7番勝負であるようだ。

〇今泉が将棋の町での対局と話している。将棋の町といえば山形県天童市で『ほほえみの宿滝の湯』で竜王戦が開催されるが、実際のロケ地は山梨県『大月真木温泉』で撮影された。

〇古畑が「新幹線に乗って酢豚弁当食べんの夢なんだから」と話している。この事件後、新幹線に乗って帰宅するようで、第8話『殺人特急』の直前のエピソードになる。

〇立会人・大石を演じた小林昭二は、刑事コロンボ32話『忘れられたスター』で、ジョン・ペインの吹き替えを担当した。また、同じく立会人・立花を演じた石田太郎は、2代目コロンボの吹き替えを担当していた。

作中では『封じ手』の書き方に誤りがある。実際には、用紙は2枚用意される。盤上が描かれた紙に、赤のペンで動かす駒を丸で囲み、移動先まで矢印を引くことで示される。2通のうち1通は立会人が保管し、もう1通は対局場の金庫などに保管する。作中は用紙が2枚ではなく1枚であり、次の一手を黒ペンで記入している。

まとめ

米沢八段が『負けて当然、勝って偶然』と将棋の格言を語るシーンがあります。将棋でいちばんスキのない布陣は、戦う前の状態、最初に並べた形です。相手を攻めようと思ってひとつコマを進めるごとに、その鉄壁な布陣は崩れていく。どんどん攻めれば攻めるほど、相手に攻められるスキが大きくなってくる。だから負けるのが当たり前になるという意味だそうです。

倒叙作品にも同じことが言えると思います。犯人たちは完全犯罪を目指し、あの手この手で自分の犯行を誤魔化そうとします。しかし、小細工をすればするほど、どこかに痕跡が残ったり、ボロが出たりしてしまう。まさに一手指す毎にスキが出てくる、そんな状態。

本当に捕まりたくないのであれば、戦う前の状態を維持すること。つまりそもそも殺人を起こさないに尽きるのだと思います。 殺人を犯した時点で犯人の負け。投了になるんですね。

以上、『汚れた王将』でした。