古畑任三郎 第1シリーズ6話『ピアノ・レッスン』はるばる来たぜ殺人犯

古畑任三郎 6話 ピアノ・レッスン
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音楽院が舞台の事件です。犯人を演じる木の実ナナ氏の犯人像が印象に残るエピソードでありますが、それ以上にどうして事件を引き起こしたのかという動機の面で感動する作品となっています。嫌われ者ではありますが、芯はしっかりとしている気高き女性なのです。

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データ

脚本:三谷幸喜
監督:関口静夫
制作:フジテレビ
演出:松田秀知
音楽:本間勇輔

本編時間:46分14秒
公開日:1994年5月18日

あらすじ+人物相関図

ピアノ・レッスン 人物相関図

塩原音楽学院理事長・河合健(中丸新将)は、翌日に開かれる音楽葬のためホールでピアノのリハーサルをしていた。そこに、ピアニスト・井口薫(木の実ナナ)がスタンガンで襲撃すると、心臓に持病がある彼をショック死させたのだ。遺体はその晩に発見され、音楽学院の理事たちはピアニストの代役を彼女に依頼したのであった。

人物紹介(キャスト)

今回の犯人:井口薫
役者:木の実ナナ

概要:塩原音楽院の理事兼講師でもある世界的ピアニストの女性。尊敬する塩原一郎が築き上げた音楽院だったが、理事長が河合健に代わってから金もうけ主義になってしまった。純粋に音楽を愛していた塩原の意思を守るべく、自身が音楽葬でレクイエムを弾くために殺人を決行した。

生徒には、廊下ですれ違った際、楽器をケースに入れて運ぶように叱りつけ、時には生徒を殴ったりもしたそうである。学院の理事・生徒に対しても威圧的な態度ではあるが、かなり多くいる生徒の名前を憶えているなど、講師としての仕事はしっかりとしているようだ。


今回の被害者:河合健(かわい けん)
役者:中丸新将(なかまる しんしょう)

概要:塩原音楽院理事長の男性。故・塩原一郎の音楽葬で彼の代表作『追想のレクイエム』を演奏するため、夜間コンサートホールで曲の練習をしていたところ、井口薫に襲撃され死亡した。ピアニストとしてはそれなりで、経営者としては一流であるが金儲け主義に走り過ぎている様子。

小ネタ・補足・元ネタ

〇故・塩原一郎の代表曲は『追想のレクイエム』であると、ほとんどの登場人物が話す。しかし、冒頭で河合健がピアノを弾きながら見ていた楽譜には『追悼のレクイエム』と表記されている。この曲は架空の曲である。また、井口が弾いた『北京の冬』も架空の曲となっている。

〇塩原音楽院のエレベーター制御装置は、第2話『動く死体』で使用された「すっぽん」の制御装置と同じ小道具であり再利用したようだ。

〇古畑任三郎が、井口薫を犯人だと思ったきっかけは、同人ゲーム『探偵 蜘賀美種子の推理』エピソードⅡにそのまま引用されている。同じく犯人視点から描かれるシナリオである。

〇ピアニスト・中村紘子氏が、日本経済新聞紙上で連載していたエッセイに、このエピソードのリアリティのなさを突っ込んでいる。ノベライズ版「古畑任三郎」のあとがき²⁾では、三谷幸喜氏は指摘され恥ずかしかったとつづっている。中村紘子氏の文章は『どこか古典派』というエッセイ集³⁾で読むことが出来る。

刑事コロンボからのオマージュ

〇古畑任三郎が、一指し指で『函館の女』をグランドピアノで弾く。10話『黒のエチュード』では、コロンボが一指し指で『チョップスティック』を演奏する。

〇古畑任三郎が、楽屋で犯人の帽子を被り鏡で自分の姿を見ている所を犯人から目撃され恥ずかしくなる。38話『ルーサン警部の犯罪』でもコロンボが犯人の楽屋で帽子を被り目撃されるやりとりがある。

今後考察したいポイント

〇レクイエムの曲名は結局どっちなんだ問題。故・塩原一郎の代表曲は『追想のレクイエム』と音楽院理事・大木は述べている。しかし、冒頭で川合が弾いている譜面には『追悼のレクイエム』と表記されている。

ノベライズ版・古畑任三郎では『追想』表記⁴⁾だが、専門書籍・古畑任三郎大辞典では『追悼』表記⁵⁾である。犯人・井口も作中は『レクイエム』とした言及しておらず、結局のところどっちなんだ。

まとめ

井口薫の性格、音楽院内での立場、経営方針に関する不信感など、犯人に関する事柄で物語は進んでいきます。古畑が犯人を追い詰めるといった推理も少なく、逆に彼女の気迫で古畑が追い込まれているようにも思えました

犯人役は存在感のある木の実ナナさんが演じ、序盤は徹底して『嫌われ者』として井口薫が描写されていきます。また、薫自身も学院関係者に威圧的な態度や、強い口調・言動であり横柄な人物のように見えました。しかし、彼女なりの信念をもってそういった態度をしていたことが明らかになるのです。

純粋に音楽に一生を捧げた塩原先生の意思を守るべく。尊敬する師のため殺人を犯し、自分自身が『レクイエム』を弾こうとする決意が美しいです。古畑は最後に井口に演奏を頼むのですが、彼女が古畑にりつけるように言う最後の台詞は耳に残ります。それもそのはず、この曲は他人の興味本位で聴かせるものではなく師を偲ぶための曲だったからなんですね。

以上、『ピアノ・レッスン』でした。

引用・参考文献

1)『探偵 蜘賀美種子の推理Ⅱ 仮面の証明』たんすかい、2013年

2)4)三谷幸喜『古畑任三郎 殺人事件ファイル』フジテレビ出版、1994年 416項、167項

3)中村紘子『どこか古典派』中公文庫、2002年、92項

5)古畑任三郎研究会編『古畑任三郎大辞典』フジテレビ出版、1996年 170項

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