古畑任三郎 9話『殺人公開放送』設定が素晴らしい

古畑任三郎 9話 殺人公開放送

超能力者が犯人であり、生放送中に自身が殺害した遺体を行方不明者の探索隊に発見させるのだ。このプロットが非常に優れていると感じる。

結果的に古畑任三郎は犯行現場に立ち入ることなく、生放送があるテレビ局内だけで事件が完結することになるのだ。VTRの映像だけで事件を推理していく安楽椅子探偵ものと言えるだろう。

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データ

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脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:星護

音楽:本間勇輔

本編時間:46分07秒

公開日:1994年6月8日

あらすじ

霊能力者・黒田清は、生放送で失踪者を探す透視を披露するため、身に着けていたとされる赤いスカーフを河川敷のタイヤの中に隠し入れていた。偶然通りかかったチンピラ・中島に見つかり、揉み合いの末に石で撲殺してしまう。

生放送番組では物理工学部教授・神宮音彦から、化学的に黒田の霊能力はインチキであることを証明されていく。後に引けない黒田は一矢報いるべく、自身が殺害した遺体を捜索隊に発見させると、これを超能力で見つけたと主張したのだった。

人物紹介(キャスト)

今回の犯人:黒田清(くろだ きよし)
役者:石黒賢(いしぐろ けん)

インチキ霊能力者の男性。生放送番組で失踪者の透視を披露するため、失踪者が身に着けていたとされる赤いスカーフを河川敷にあるタイヤに隠し入れたところを偶然通りかかったチンピラに見つかり、揉み合いの末に撲殺。遺体を橋の下にあるボートに遺棄した。

生放送番組『脅威の霊能力者 黒田清のすべて』において、披露していった霊能力が福岡天神大学理工学部教授・神宮音彦により全て化学の力で否定されたため、隠していた遺体を透視で発見したと主張した。


今回の被害者:中島
役者:岡部務(おかべ つとむ)

黒田清が赤いスカーフを隠し入れる所を発見したチンピラの男。隠していた赤いスカーフを見つけると、黒田から無言で赤いスカーフをぶんどられる。押し倒されてしまうと、とうとう堪忍袋の緒が切れ落ちていたビール瓶を手に取り殴りかかろうとするが、石で頭部を殴られ絶命した。

小ネタ・補足

〇福岡天神大学理工学部教授・神宮音彦の役者は『山口崇』氏。福富アナの役者は『潮哲也』氏。撮影隊のリポーターは『樋渡真司』氏である。

〇ノベライズ版『古畑任三郎』では「神宮音彦」教授視点で話が進む¹⁾。古畑任三郎はスタジオにはおらず番組を視聴していたという設定である。音彦教授へ古畑は電話で決定的証拠を伝え、警察にそのことを報告するように話しエピソードが終わる流れであり大きく改変されている。

まとめ

このエピソードで特徴的なのは、古畑任三郎が『犯行現場』に一切立ち入ることなく事件を解決する点である。事件の一旦を聞いただけ、見ただけで犯人を逮捕するのだ。ノベライズ版ではさらに簡略化されており、ドラマでも活躍した神宮音彦教授が主役となっているのも面白い。

3幕構成で物語を分解すると、第2幕まで黒田清と神宮教授の生放送番組で話が展開している。実質、古畑が黒田清と対決するのは、第3幕の31分32秒~46分07秒と15分程度に凝縮されていることが分かる。犯人とのやり取りが少なくした分『生放送番組中の事件』という特殊なシュチュエーションを楽しむことができるのだ。

通常ならば隠しておきたかった殺人であるが、神宮教授に追い詰められた黒田は、自ら透視能力によって遺体を発見したと主張するという展開は皮肉が効いており、ラストのやりとりは何とも哀しくもなるエピソードである。

以上、『殺人公開放送』でした。

引用・参考文献

1)三谷幸喜『古畑任三郎 殺人事件ファイル』フジテレビ出版、1994年

シド・フィールド/安藤紘平/加藤正人『映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術』フィルムアート社、2009年

ハリイ・ケメルマン/永井淳・深町眞理子(翻訳)『九マイルは遠すぎる 早川書房、1976年