古畑任三郎 23話『ニューヨークでの出来事』安楽椅子探偵

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【VS.未亡人】「一期一会という言葉があります。いい言葉です。旅の楽しさは人との出会いです。しかし、出会った事を後悔する人間もたまにはいます。バスや列車や飛行機の中で、たまたま隣に座った人物が例えば、黒い服を着ていて、襟足の長い人物だったりしたら、その旅は最悪です。特に、あなたが犯罪者の場合は」

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データ

データ:詳しく見る

脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:河野圭太

音楽:本間勇輔

本編時間:45分55秒

公開日:1996年3月13日

あらすじ+人物相関図

ニューヨークでの出来事 人物相関図

古畑任三郎と今泉慎太郎は、結婚式を終えた小石川ちなみを訪ねて渡米していた。ニューヨーク行のバスの車内で、2人は日本人乗客の女性を見つけて声を掛ける。女性は鵜飼(のり子・ケンドール)と名乗り、徐々に古畑たちと打ち解けていった。

のり子は、古畑たちの職業が刑事だと知る。「私に言わせれば、世の中に解けない謎なんてありませんよ。人間が作った謎です。人間が解けなくてどうすんですか」そう豪語する古畑に対し、彼女は完全犯罪で人を殺したことがあると話し始めたのだった。

人物紹介(キャスト)

のり子・ケンドール(鈴木保奈美)

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「ニューヨークでの出来事」より引用』】

今回の犯人:のり子・ケンドール

役者:鈴木保奈美

職業:未亡人

殺害方法:毒殺

動機:夫の不貞

概要:詳しく見る
未亡人の女性。小説家ネルソン・ケンドールと結婚をしていたが、彼が10年間に渡りカドベリーに住む未亡人と不倫関係にあったことを知り殺害を決意する。猜疑心が強く、レディーファーストである彼の心理を利用したトリックで毒殺した。友人が現場を見ていたという偶然が重なり、裁判では無罪を獲得。結果的に完全犯罪を成し遂げた。

日本の大学を出てアメリカの出版社に就職。仕事上の関係から小説家ネルソンと結婚をした。最初に古畑たちには『鵜飼』と名乗っておりこれが旧姓だと思われる。

完全犯罪を成し遂げたのは6年前のことである。有罪を覚悟しての殺人であったが、帰宅したはずの友人が庭から一部始終を目撃していたこと。殺害動機となる不倫関係を記した原稿は、金庫に保管されていた偶然が重なり裁判では無罪放免となった。

ネルソンの死後に出版された小説『カドベリー・イン・ザ・トワイライト』は、未亡人との不倫関係を綴った内容であり「夫の不倫の本の印税で生き延びている。どこへ行っても笑いもの」と語っている。33:18~サービスエリアでは客に奇異なまなざしを向けられているシーンも見受けられる。

のり子「でもね、古畑さん。彼女は間違ってた。結局罰を受けたんです。何より大きな罰を。主人の死後に出版された本は大ベストセラー。今では純愛小説のバイブルよ。今でも印税が入ってくる。出版社の方の話だと、あと10年は売れ続けるって。

どんな気持ちか分かります。私、夫の不倫の本の印税で生き延びてるんです。見たでしょう。私はどこへ言ったって笑いもの。そして本の中では、夫は永久に愛人と愛を語り合ってるんです。こんな罰があるかしら?こんな事なら、あなたに事件を担当してほしかったわ」

古畑「完全犯罪なんて、するもんじゃありません。……えー、『彼女』にお会いになったら、そう伝えてあげてください」

夜行バスはニューヨークに到着する。バスから降りると暖かな日差しが目に刺さる。朝靄が広がる雑踏の中へ、彼女は静かに微笑みながら去っていくのであった。


ネルソン・ケンドール

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「ニューヨークでの出来事」より引用』】

今回の被害者:ネルソン・ケンドール

役者:????

職業:小説家

概要:詳しく見る
恋愛小説家の男性。売れっ子の作家であり、モントレーの片田舎にある小さな家で執筆をしていた。出版社に勤務していた鵜飼のり子と結婚していたが、̚10年間カドベリーに住む未亡人と不倫関係をもっていた。

最期の小説は、その不倫関係をまとめた『CADBURY IN THE TWILIGHT(カドベリー・イン・ザ・トワイライト)である。彼の死後に出版され、小説は大ヒットセラーとなった。純愛小説のバイブルとされ、出版社の話だとあと10年は売れ続けるらしい。

小説のポートレイト(作者写真)では大男になるように写っていたが、実際はのり子よりも身長は低かったようだ。猜疑心も強く、不倫関係を話してからは毒殺される可能性も考えていたようである。未完成の原稿は絶対に人に見せないようで、完成するまで書斎にある金庫の中で保管している。

犯行計画/トリック

【和菓子に毒を仕込み殺害】

※一体どのようにして片方にだけ毒を入れた和菓子を食べさせたのかがエピソードの要である。

①のり子は友人と自宅で談笑をしていた。17時頃に友人が帰宅すると、ネルソンが書斎から居間にやってきた。のり子はコーヒーと今川焼を1つ用意した。ネルソンは今川焼を半分に割ると、のり子に手渡す。彼女が半分に割った今川焼を食べたのを確認して、ネルソンも食べたところ毒で死亡した。

②帰宅した友人はネルソンの小説の大ファンであり、実は庭に隠れて彼を一目見ようとしていた。毒は今川焼の片方だけに入っており、ネルソンが半分に割って渡したのを目撃している。裁判では狙った殺人ではなかったと証明された。

③ネルソンの最新作は、未亡人との不倫の話だった。のり子は、本が出版される前に原稿を見て逆上したのが殺害動機だとされる。しかし、ネルソンは原稿は書斎の金庫の中に入れていた。発見された遺作の原稿にはエピローグが付いておらず、彼の本でエピローグがないのはその原稿だけだ。

④これからエピローグを書こうとしていたことになるため、作品は未完成である。ネルソンは未完成の原稿は絶対に人に見せなかった。そのため、のり子は原稿が完成したことを知らなかったので動機はない。

推理と捜査(第2幕まで)

ネタバレ注意!:表示する
〇バスの乗客で日本人と思わしき女性を見つけた。彼女は「ハックショイ!」と、くしゃみをした。そのようなくしゃみをするのは日本人だけである。彼女は日本人だ。

〇事件の日、ネルソン(被害者)の大ファンだという友人は、帰宅したフリをして庭に隠れて一目見ようとしていた。どうして写真を見せなかったのか?
A.奥さんは写真が嫌いで、家には飾っていなかった。

視聴者への挑戦状

「えー、どうやらニューヨークに着く前に謎は解けそうです。彼女は、いや、彼女のお友達は、えー、どうやってご主人を毒殺したのか。キーワードは『今川焼』『ローストビーフ』そして『感じのいいおばさんは本当にいたのか』古畑任三郎でした」

三幕構成

ニューヨークでの出来事 三幕構成

小ネタ・補足・元ネタ

〇古畑任三郎たちは、『小石川ちなみ』を訪ねてアメリカに訪れていた。小石川ちなみは、第1話『死者からの伝言』の犯人である。第2シーズン1話『しゃべりすぎた男』では、ちなみを無罪にした弁護士が犯人が登場する。5話『動機の鑑定』では、ちなみは結婚をした様子。全ては最終話『ニューヨークでの出来事』への布石であった。

〇被害者の身長に関して「小説のポートレイトでは大男になるように写っていたが、実際は奥さんより身長は低かった」と台詞がある。ちなみに、のり子・ケンドールの役者である鈴木保奈美氏の身長は160㎝である。

〇生地に餡を包み込んだ和菓子として『今川焼』が登場した。地方によっては『大判焼き』『あじまん』と呼ばれているお菓子です。どうでもいいが、管理人の地方では「あじまん」の愛称である。

まとめ

安楽椅子探偵Armchair Detective-アームチェア・ディテクティブ-)というジャンルの作品なんですね。犯行現場に一度も立ち入らず、部屋の一室で安楽椅子に座りながら事件の一端を聞いただけで解決してしまうという、非常に言語的な作風になっています

このエピソードで魅力は、推理と分析を堪能できるという点なんですね。バスの車内で繰り広げられる会話劇であり、犯人側の些細な証言から倫理的思考を張り巡らせるのです。過度な演出や殺害シーンもなく、単純に謎に挑むという醍醐味を味わうことができます。

完全犯罪を成し遂げた女性が語り手というものユニーク掴みですね。安楽椅子探偵物と言えば、北村薫『空飛ぶ馬』ハリイ・ケメルマン『九マイルは遠すぎる』などを読んだことがあります。推理依頼が入ったり、探偵自身が疑問に思ったことを突き止めていく流れです。

今作品では、事件を語るのが犯人である以上、証言に嘘が含まれている可能性も現れます。会話の矛盾、どこで嘘をついていたのか。古畑が仕掛ける罠という脚本の上手さが光ります。

以上、『ニューヨークでの出来事』でした。