古畑任三郎 1話『死者からの伝言』招かれざる客

死者からの伝言

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「死者からの伝言」より引用』】

【VS.少女コミック作家】「犬を飼っている人に一言。名前を呼ぶ時は“ちゃん”を付けるのは止めてください。“ちゃん”を付けると、犬は“ちゃん”までが自分の名前だと思い込んで“ちゃん”を付けないと振り向かない場合があります。犬には……」

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データ

データ:詳しく見る

脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:星護

音楽:本間勇輔

本編時間:46分07秒

公開日:1994年4月13日

あらすじ+人物相関図

少女コミック作家・小早川ちなみは、編集者・畑野茂と交際関係にあった。しかし、畑野はプレイボーイであり、多数の女性と交際関係があった。ちなみは自分が遊ばれていたことに気が付き、復讐のために別荘にある金庫室を用いた殺害を計画する。

畑野に地下にある金庫室から、荷物を取り出してほしいと頼む。そして彼が、室内で荷物を取り出すのに夢中になっているのを確認すると、そのまま金庫を閉めてしまった。これで数日中には、金庫室内の酸素を使い果たして窒息死する。

それから3日後、嵐の夜にちなみは再び別荘に訪れる。金庫室で死体を発見したと、警察に通報したのだった。あとは捜査が始まれば、金庫の扉が閉まって出られなくなったという不慮の事故で片付けられる。だが大雨で土砂崩れが起こり、すぐには警察は駆けつけられないという。

そんな時に玄関のチャイムが鳴った。「あのーすみません。古畑と申します」。ちなみは、突然の訪問に驚いた。さらに、その男は警察手帳を取り出して見せる。別荘に彼を招くと、死体のことを伝えた。現場を見て古畑は殺人だと断言する。なぜか畑野の頭部には、自分でも知らない殴られた跡があったからであった。

人物紹介

小石川ちなみ

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「死者からの伝言」より引用』】

今回の犯人:小石川ちなみ(こいしかわ ちなみ)

役者:中森明菜(なかもり あきな)

職業:少女コミック作家

殺害方法:窒息死

動機:復讐

概要:詳しく見る
概要:少女コミック作家の28歳女性。仕事で付き合いのある編集者・畑野茂と交際関係にあったが、弄ばれていたことに気が付き、彼を別荘にある金庫室に閉じ込め、窒息死させるという殺害計画を実行した。

19歳からコミック作家として仕事をしている。作品は『カリマンタンの城(第一部全5巻)』『アゼルバイジャンの夜は更けて(踊り子とスパイが愛し合う話)』などがある。高校卒業後から、ずっと漫画を描き続けており、社会経験や恋愛経験がないと語る。料理などは得意で家庭的だと自負している。気を許した古畑に、玉子スープを作ってあげた。

作品の傾向としては、ハッピーエンドが主となる。なお、キャラは似通っており、古畑から同一人物のキャラではないかと突っ込まれる場面があった。『カリマンタンの城』は、古畑が「良い話」だと号泣し、以後は愛読書となるほどのめり込んだ。

『コミック作家』という肩書に強いこだわりがあり、『漫画家』と言われると、「コミックです」と度々修正をしている。愛車は『赤のポルシェ』である。小さな頃から大きな暖炉のある家に住むのが夢であり、犯行現場となった別荘を購入していた。元々はドイツ人の外交官が使っていたとのこと。

高級車や豪華な別荘など、作家として経済的成功を伺うことができる。本人は、お金を使うのが下手と語り、いらないものばかり購入してしまうそうだ。なお、古畑が車内で広げていた地図を確認すると、長野県と記載されている。そのため、別荘は長野県の山中にあると考えられる。

ペットはゴールデンレトリバーの『万五郎』である。ペットフードとしては、『愛犬の友』という商品を、金庫室の脚立に上がった上の棚に保管していた。ちなみに冷蔵庫は外にある小屋に備え付けている。


畑野茂

【©フジテレビビジョン『警部補 古畑任三郎「死者からの伝言」より引用』】

今回の被害者:畑野茂(はたの しげる)

役者:池田成志(いけだ なるし)

職業:編集者

概要:詳しく見る
概要:多数の女性と交際関係にある、プレイボーイな男性。小石川ちなみとは、仕事上の付き合いから交際に発展した様子。だが彼女との関係は遊びであった。殺害現場となってしまった別荘にもよく訪れていたようで、合い鍵も所有している。彼自身は運転免許を持っておらず、女性から連れてきてもらいホテル代わりに使用していたのだろう。

持ち物としては、身だしなみには気を使っており、整容用品を鞄に詰め込んでいた。システム手帳には、女性関係のことでスケジュールが埋まっている。新品のインスタントカメラ、エイズ防止に避妊具も入れていた。マメな性格であり、領収書などは全て保管している。ストリップを良く見に行っていたようで、女性ダンサーの友人も多かったようだ。

手帳を見ると、小石川ちなみとは、23日の15:30に『成城学園キッチンドーナツ』で待ち合わせをしたようだ。その後、高速道路のドライブインで、『カレーライス』か『カレー南蛮そば』を食べる。そして、別荘で殺害されてしまった。

犯行計画

【金庫室の扉が閉まった事故死に偽装】

①小石川ちなみは畑野茂に、地下の金庫室に保管している荷物を取って欲しいと話す。畑野が荷物を取るのに夢中になっている隙に、金庫室の扉を閉めた。これで、数日後には中の酸素を使い果たして窒息死する。

②3日後、ちなみは再び別荘に訪れる。畑野が死亡しているのを確認すると、警察に通報した。「1ヶ月ぶりに別荘に来てみると、金庫室で人が死んでいた」

③以前にも金庫の扉が独りでに閉まったことがある。中には古い原稿なども保管しており、畑野が調べ物をしていると、何かの拍子にドアが閉まり、閉じ込められたという筋書きを完成させた。

疑問点

推理と疑問点
〇小石川ちなみは、荷物をほどく前に地下室に行っていた。

→畑野が来ていると聞いて、呼んでも返事がないので地下室に行った。

〇被害者の頭部には殴られた跡があった。床には小さな金庫があり、角の部分に血痕がついていた。金庫のカギを開けられるんは、ちなみと被害者だけである。ちなみは、被害者が閉じ込められた後に、誰かがやって来て殴ったと思っている。普通は殴られてから、金庫室に押し込められたと考えるのではないか?

〇被害者の領収書は全て3日前だった。ガソリンスタンドと高速道路のレシートもあるが、運転免許証を持っていない。ドライブインでは、「カレーライス」と「カレー南蛮そば」を食べている。1人で食べるには随分な取り合わせである。さらに避妊具もあることから、連れは女性の可能性が高い。

〇被害者のスケジュール帳には、人と会う予定で埋まっていた。ちなみによると、被害者は女性関係が派手だったようである。3日前の予定には『C』の頭文字の女性と会ったようだ。「C:ちなみ」と解釈することもできる。

〇被害者は、漫画の原稿用紙を握りしめて死んでいた。裏面は白紙であり、書ける状態のボールペンも握りしめていた。なぜ、何も書かなかったのか?

視聴者への挑戦状

「今回のテーマはダイイングメッセージ。やはり被害者はこの中に犯人をしめすメッセージを残していました。えー、自分を殺したのが 小石川ちなみ であることをしめす、十分すぎるほどの手がかりが、この中にあったんです。

この謎が解けたとき。同時にもうひとつの謎も解決されるはずです。すなわち、被害者を殴った人物はだれか?ヒントになったのはこれです…(今泉慎太郎が投げ捨てた紙)古畑任三郎でした」

三幕構成

元ネタ・小ネタ・補足

【作中に登場した漫画】
『カリマンタンの城』、『アゼルバイジャンの夜は更けて』は、残念ながら架空の漫画である。原画を担当されたのは、漫画家『なんばくに』氏である。

【トリックに関して】
刑事コロンボ 41話『死者のメッセージ』の殺害方法である。推理小説家アビゲイル・ミッチェルは、コロンボシリーズの最高齢犯人。逆に小石川ちなみは、最年少犯人という対比だ。刑事コロンボのファンである三谷幸喜氏のアレンジで、これを1話にもってくるあたり、これからコロンボのようなドラマを始めます。という宣言ではなかったのだろうか?

まとめ

記念すべき第1作目にあたる作品です。小石川ちなみは、その後のエピソードにもちょくちょく名前が挙がり、会話の中だけではありますが、ドラマが展開していきます。

さて、このエピソードの面白い点は、『白紙のダイイングメッセージの謎』そして、『被害者の頭部の傷』という、犯人も一体なぜにできたのか分からないという状況があるところです。犯人も知らないわけですから、見ている視聴者も分かりません。警察、犯人、視聴者も一緒に謎に迫っていくという一体感が実に見事な脚本だと感じます。

作中にはBGMもほぼなく、ラストシーンに少し流れる程度です。音は「雨」と「雷」だけ。さらに、室内会話劇であり、犯人と刑事の会話はほぼ1室だけで繰り広げられていきます。舞台劇作家の三谷幸喜氏の真骨頂といいましょうか、会話の運びが上手いです。

また、犯人の小石川ちなみの『心情の変化』というのが面白いですね。徐々に警戒をしていた古畑に心を許していく姿がいいですね。繊細な女性が、復讐のために犯人になる姿が描かれており、視聴者への共感を呼び込む脚本構成。中森明菜氏の自身なさげな言動、か細い声が、アクセントを加えております。

以上、「死者からの伝言」でした。