古畑任三郎 41話『フェアな殺人者』イチローが犯人回

古畑任三郎 41話 フェアな殺人者

【VS.野球選手】「今回の犯人は、常にフェアプレイを好むスポーツマンです。人を殺したという以外は、実に公明正大な人物です。 そして、アメリカ大リーグで活躍する、ある日本人野球選手と全く同じ名前で、顔もそっくりです。しかし、別人です。お間違えのないように」

スポンサーリンク

データ

データ:詳しく見る

脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:河野圭太

音楽:本間勇輔

本編時間:90分15秒

公開日:2006年1月4日

あらすじ+人物相関図

古畑任三郎 40話「フェアな殺人者」人物相関図古畑任三郎とも公私を共にした向島音吉は、警察官から転職しホテルの警備員になっていた。フリーライター・郡山繁から強請られ、警察官の給料だけでは到底払い切れなくなったからだ。郡山を殺害し自殺を計画したが、腹違いの弟でメジャーリーガー・イチローが兄に代わりに殺害を決意する

イチローは、記者会見が開催されるホテルの地下駐車場で取引を行う。一方的に殺すのではなく、用意した毒薬入りと蜂蜜入りのカプセルを互いに飲むというものであった。最初に郡山にカプセルを選ばせると、残ったほうのカプセルを自分の口に入れて見せた。生き残ったイチローは、自身への手がかりとなるマッチの箱を助手席に残しその場を立ち去ったのだった。

人物紹介(キャスト)

古畑任三郎 フェアな殺人者 イチロー

今回の犯人:イチロー

役者:イチロー

職業:メジャーリーガー

殺害方法:毒殺(ストリキニーネ

動機:兄を守るため

概要:詳しく見る

メジャーリーガーである男性。腹違いの兄・向島音吉が、フリーライター・郡山繁から強請られており、彼を殺害して自殺しようとするのを知ると、自身が代わりに郡山の殺害を決意。片方だけ毒薬が入ったカプセルを用意すると、郡山に選ばせて、自分も残ったカプセルを口に含むというロシアンルーレットな方法で毒殺した。

アメリカから帰国した理由については、難病や怪我と闘う子供たちへ毎年寄付を行っており、チャリティーイベントの一環として一時帰国をしていた。イチローグッズは全国200か所で販売されることになっており、その発表イベントのために、今事件の舞台となったバリトンホテルに宿泊していた。

モットーは、フェアに嘘はつかないことである。ホテルに入る際には、待ち構えるマスコミやファンを避けて裏口から入るマネージャーの案を拒否して、正面入り口から堂々と入場した。会見では『常に平常心でいること』が大切であると語る。

フェアプレイの精神は殺害方法だけではなく、その後の事件に当たる刑事たちにも配慮をした。被害者が自分の部屋から持ち出したマッチの箱を置くなど、わざと証拠品を犯行現場に残し、他殺の可能性も考えられるように考慮した。

兄のことになるとその例外は破れるようで、「兄貴の問題は俺の問題」であると、兄に捜査の目が及ぶと唯一の嘘をついた。兄によると、「表と裏を使い分ける器用な奴じゃない」と評価されている。


古畑任三郎 フェアな殺人者 郡山繫

今回の被害者:郡山 繁(こおりやま しげる)

役者:今井朋彦

職業:フリーライター

概要:詳しく見る

44歳、フリーライターの男性。男性向け雑誌で風俗関係の記事を主に書いており、暴力団がらみの取材も行っていた。そんな折、警察官である向島が暴力団組員と草野球に興じる姿を撮影する。当初は記事にするつもりが、向島に腹違いの弟・イチローがいると調べ上げるとそれをネタに強請りを行う。

弟に迷惑をかけさせることになると脅し金を強請り続けていたが、麻薬の売買で任意の取り調べがあることを聞きつけ、フィリピンへの海外逃亡を企て1000万円を要求していた。免許証は持っているが、車は盗難車であった。

忍び込むのは職業柄慣れていると話しており、地下駐車場からイチローの部屋(スイートルーム2503号室)まで誰からも見つからずに移動をしている。イチロー選手のファンである甥っ子がいるらしく、会ったことを知ったら泣いて悔しがるだろうとも話していた。

犯行計画/トリック

『フェアな殺人を実行』

①向島は強請ってきた郡山をナイフで刺殺し、毒薬(ストリキニーネ)で自殺しようとしていたが、それを腹違いの弟・イチローが兄に代わり殺害を決意する。ホテルの部屋で郡山と密会すると、地下駐車場で現金を支払う段取りをつける。

②ストリキニーネが入ったカプセル、ハチミツを入れたカプセルの2つを用意する。誰からも見つからずホテルの廊下を移動し、スタッフの後を追い専用通路からエレベーターを利用して地下駐車場まで移動をした。

③郡山の車内で取引を行う。「俺はどんな時もフェアな勝負しかしない。だからお前にもチャンスをやる」。郡山から最初にカプセルを選ばせ、残ったカプセルは自分の口に入れた。

④生き残ったイチローは、写真とネガ、免許証、カプセルを入れた瓶を回収する。郡山に書いたサインボールは、駐車場のダクトの隙間に投げ込み隠した。郡山がホテルの部屋で密会した際に持って行ったマッチの箱は、わざと助手席に残しておく。これで捜査する側もフェアである。

視聴者への挑戦状

ネタバレ注意‼表示する

「えー断っておきますが、この物語はフィクションです。ここだけの話、最初の想定では犯人の名前はハチロー選手でした。しかし、イチロー選手自身が自分を演じたいと申し出てくれました。んー物語の中のイチロー同様、本物のイチロー選手も人生というゲームを楽しむ男でした。

あー、しかし誤解のないように、決して人は殺しませんフフッ(笑)。ではここで問題です。わたしは、いつ、どの段階でイチロー選手に疑いを持つようになったか? 古畑任三郎でした」

小ネタ・補足・元ネタ

〇ホテルのロケ地は、『ホテル オークラ東京ベイ』である。

〇向島によると、持っていた毒薬(ストリキニーネ)は、「警察にいた時の知り合いからくすねてきた」と語っている。向島も登場するミニドラマ『今泉慎太郎』の5話「慎太郎危機一髪」で、科学捜査研究所の桑原万太郎が持っていた毒薬である。彼からくすねたのだろう。

〇脚本・三谷幸喜氏と、演出・河野圭太氏へのインタビューによると、イチロー選手を犯人にするにあたり配慮をしたそうだ。アメリカで成功した寿司職人にしようかと考えたり、向島巡査との腹違いの弟という設定でフィクションであることを全面的に押し出したなど。

イチロー選手からは、『嘘をつきたくない』『フェアで行きたい』『銃や刺殺などはNG』など要望があったようだ。イチロー選手自身は古畑任三郎の大ファンであり、セリフ合わせの段階で、ほとんど最後まで暗記していたとのことだった。

〇刑事コロンボ『愛情の計算』と『逆転の構図』から事件の詰め手を参考にしている。『白鳥の歌』では、俳優以外からの犯人役として、カントリーミュージシャン「ジョニー・キャッシュ」氏が演じるエピソードがある。

まとめ

犯人側の犯行から描かれる倒叙形式の力を遺憾なく発揮できるエピソードなんですね。豪華な役者を登場させてしまうと、高確率で「犯人」である可能性が高いです。それをミスリードとして、他のパッとでの登場人物を犯人にしたら、「誰だお前」状態になってしまい興ざめですよね。

倒叙の場合は、最初から犯人が分かっているため、豪華な役者を犯人にしてもなんら問題はありません。今回の事件は(当時)現役野球選手・イチロー氏を犯人で起用した非常にキャッチーなエピソードなのです。

「客寄せパンダ的な配役でしょー?」と思って観てみると、普通にイチロー氏の演技が上手いんですね。同情を受ける犯人にするために、被害者を悪党にするという『古畑任三郎vsSMAP』のような動機にし、『笑わない女』などの犯人側のルールを理解してゲームに臨むという構成なんですね。

自分のための犯行ではなく兄のため。さらに、殺人もフェアでなければならないという制約がありました。強制的ではありましたが、どちらかに毒薬が入ったカプセルを選ばせた後に、残ったほうのカプセルを自身でも服用しているという体を張ったトリックです。

毒薬を強制的に飲ませるのではなく、あくまで相手が選んだカプセルが毒だった。直接手を下しているわけではなく、しかも、自身の命をかけた犯行であることが卑劣な殺人者というイメージから視聴者を遠ざける狙いでもあったように感じます。

ミステリーとしては最初のとっかかりが巧みなんですね。助手席の下に落ちていた駐車券、足で消された吸いかけのタバコ、マッチがあるのに何故シガーライターを使用したのか? 1つの謎が次の謎となり最後に集約していきイチローが事件に関与しているという流れは非常に美しいです。

以上、『フェアな殺人者』でした。