【VS.西洋美術研究家】「こんなお便りが来てます。熊本県は阿蘇の河田さんですね。『古畑はよくプライベートで事件に遭遇するがあまりにもリアリティーが無い。いくらドラマの中の刑事とはいえ何でもありというのは如何なものか』…何でもありなんです
データ
あらすじ+人物相関図
西洋美術研究家・臺修三は、日本へ戻る飛行機のトイレ内で、愛人・市川由美子と話をしていると、乱気流で機体が大きく揺れる。彼女はバランスを崩し頭を打ち死んでしまった。その場を立ち去ろうとするが、その姿を少年に目撃されてしまう。
自席に戻ると、ネクタイピンを無くしていたことに気が付く。人目につかないよう、パイロットの服を着て現場に戻るがピンが見つからない。トイレから出ると、『グレムリンを見た』と騒ぐ今泉に、副パイロットと偽ったばかりに付き合うハメになる。
そうこうしている間に西園寺くんは、由美子の遺体を発見してしまった。西園寺くんたちの前ではパイロットのフリをして捜査に協力する羽目になり、乗務員の前では乗客になる。大空の密室、臺にとっては最悪なフライトが始まったばかりであった。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:臺修三(うてな しゅうぞう)
役者:玉置浩二
職業:西洋美術研究家
殺害方法:過失致死(乱気流でバランスを崩す)
動機:愛人の存在を隠すため通報はしたくない
今回の被害者:市川由美子(いちかわ ゆみこ)
役者:川合千春
職業:不明
犯行計画/トリック
『過失致死』
①愛人・市川由美子から誘導され、トイレで密会するハメになる。妻・臺もえ子と別れなければ、一緒に写っているプリクラを見せて愛人関係を公表するという。それを取り返そうと、揉み合いになると、乱気流で大きく機体が揺れ、バランスを崩した由美子は後頭部を打ち死んでしまう。
②臺は妻には頭が挙がらない。もし愛人の存在がバレればどうなるかわからないため、通報よりも隠滅の選択をとった。被害者の化粧ポーチを持ちだし、その場を立ち去ろうとしたが、機内を走り回っていた少年に目撃されてしまう。
③ビジネスクラスの席に座ると、愛人関係の証拠となるプリクラをすべて剥がし、化粧ポーチをゴミ捨て場に捨てた。その後、自席のあるファーストクラスの席に戻ると、ネクタイピンを落としたことに気が付く。
④人目を避けるためにパイロットに服を着て変装すると、トイレに戻った。ネクタイピンが見つからず、立ち去ろうとしたところ今泉に、「パイロットさん?」と尋ねられ、思わず「副パイロットです」と答えてしまう。その後、西園寺君が遺体を発見したため、パイロットとして事件捜査に協力することになってしまった。
視聴者への挑戦状
小ネタ・補足・元ネタ
◯犯人の妻・臺もえ子を演じたのは、『もたいまさこ』氏である。スチュワーデス・空閑は、『北原一咲』氏。少年は『安達心平』氏が演じた。
まとめ
10話『矛盾だらけの死体』22話『間違えられた男』に続くコメディー回なんですね。放映時のタイトルにもなった、『追いつめられて』がそのまま当てはまる内容になっています。飛行機という大空の密室で、犯人は逃げ場もないんですね。
この作品の大きな特徴は、古畑任三郎がほぼ捜査に携わっていないことです。西園寺くんが主体となって犯人を追い詰めるんですね。また、異色なシーンと言えば、被害者の大胆なキスシーンでした。そういった描写がほとんどなかった古畑任三郎シリーズにとっては意外ですよね。
飛行機内という限定的な舞台、危機的状況でパイロットに成りすました人物。まさに劇作家・三谷幸喜氏の得意分野の組み合わせで、成りすましによって、ファーストクラス/ビジネスクラス/エコノミークラス、刑事や乗務員の前で犯人が違う役割を演じなければならないという喜劇が誕生します。
ひと目で感じられる恐妻家・もえ子の存在感が素晴らしいですね。パイロットに成りすましたばかりに事件捜査に協力するハメになるが、妻からは雑誌を取りにいくように何度も命令される。それどころではない夫の心中をお察しできるやりとりが生まれます。
ギャグ回に拍車をかけるのは、冒頭のアバンタイトル/視聴者への挑戦状の場面です。完全なお便り紹介コーナーになっており、メタ演出が全開です。こういったお遊びのシーンが散りばめられた本作品は、まさに異色な古畑任三郎のエピソードだったと言えます。
以上、『雲の中の死』でした。