イップス(ドラマ)|2話『悪童の生配信、生殺人』ネタバレあり感想(評価:好き)

配信者「よっちゃん」こと唐沢陽介(藤原季節)と、「チョロ」こと中野隆二(細川岳)は、『悪童エクスプレス』名義で活動していた。配信が軌道に乗ると、唐沢は金目当てに企業案件のネタばかりを扱うようになり、さらに多くの再生数を得るため、ついにはヤラセにも手を出すようになった。

中野は自分が思うような配信ができず、良心の呵責にも耐えられなくなると、投稿した動画がヤラセだと打ち明けるように求めるのだが、告白すれば多額の違約金やこれまで積み上げてきた努力が消えてしまう。唐沢は結成5周年の生配信を利用した鉄壁のアリバイを作り上げると、中野が自ら服薬自殺したように見せかけ殺害した。

現場となったカラオケ店では、現場を抜け出した刑事・森野徹(バカリズム)と、ミステリ作家・黒羽ミコ(篠原涼子)が偶然居合わせており、遺体の第一発見者として事件を捜査するのであった。

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データ

脚本:オークラ
音楽:野崎美波
演出:筧昌也
プロデュース:宮崎暖
制作プロデューサー:熊谷理恵
製作:フジテレビ

放送日:2024年4月19日
放送時間:46分

人物紹介(キャスト)

今回の犯人:唐沢陽介(からさわ ようすけ)
役者:藤原季節

配信チャンネル『悪童エクスプレス』にて「よっちゃん」名義で活動する男性。相方・中野隆二から、投稿した動画の内容がやらせだったことを打ち明けるよう迫られると、生配信を利用して鉄壁のアリバイを作り、服薬自殺したように見せかけ殺害した。


今回の被害者:中野隆二(なかの りゅうじ)
役者:細川岳

配信チャンネル『悪童エクスプレス』にて「チョロ」名義で活動する男性(27歳)。相方・唐沢陽介とは大学の同級生であり、結成当初は身体を張ったネタを投稿していた。しかし唐沢が、名声や金目当てに企業受けしやすいネタばかりするようになり、ついにはヤラセにも手を出すようになる。かつてのような配信を目指すため、生放送中に正直にヤラセだと打ち明けるように求めた。

小ネタ・補足

『悪童エクスプレス』は2019年4月19日に初めて動画投稿を開始した架空の配信者コンビである。冒頭で森野徹(バカリズム)が閲覧していたスマホを見ると、現在のチャンネル登録者数は160万人で、561本の動画を投稿し、平均再生回数は170~200万回である。また、マッチングアプリ『ENDAN』のCMにも出演するなど人気の配信者だ。

○カラオケ店『Latte』の店員「井上孝」を、お笑い芸人『土佐兄弟』の土佐有輝が演じている。

○20分50秒~犯行後、犯人(よっちゃん)がSNSを見ながら口ずさむ曲は、ゆず『超特急』である。「悪童エクスプレス」の特急に掛かった選曲かつ、犯行後の心情を思わせる歌詞になっている。

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まとめ(評価:好き)

コンビの相方殺し(創作に関する互いの価値観・方向性の違い)という根源的な動機が絡む本作品は、人気配信者という現代的な職業の犯人かつ、視聴者が見る生配信の最中に行われる犯行が見事に組み合わさったトリッキーな作品でした。

『悪童エクスプレス』名義で活動する「よっちゃん」と「チョロ」は、結成当初は身体を張ったネタ(世界一臭い缶詰シュールストレミングの開封、プリンに醤油でウニ味になるか、電気水コップなど)で、非常に配信を楽しんでいたように見えます。

しかし、配信が軌道に乗ると「よっちゃん」は、企業案件ばかりを取り扱うようになり、視聴者受けを狙って再生数を稼ぐためにヤラセにも手を出すようになります。ここから、明確に動画配信を『仕事』として扱い、金や再生数といった目に見える要素に価値観を見出すのです。

一方で「チョロ」は、自分の意思を通して2人で好きなことに取り組んでいく楽しさ、何かを作り誰かが面白いと言ってくれる体験といった唯一無二の要素に魅力を感じているのだと思います。自分の作品を一番最初に見てくれて共有できる存在が「よっちゃん」であり、加えて自分自身が満足できる作品を生み出したいといった目に見えない部分に価値観を見出しているんですね。

そのため、現在の配信スタイルは、自分がやりたいと思えるようなネタではなくなり、さらに視聴者に対して嘘をつくという良心の呵責が耐えられなり、心から尊敬する「よっちゃん」のファンでもなくなってしまう。ヤラセを告白することで、現在の地位を破壊してまでも、再び楽しかったあの頃に戻りゼロからやりなおしたいという思いがあったわけです。

犯行後にSNS(「よっちゃんはどんな気持ちなんだろう」のコメント)を見て犯人が口ずさむのが、ゆず『超特急』でした楽しかった過去を振り返りながら前に進む決意を秘めた歌詞となっており、犯人と被害者との価値観のズレが垣間見え、かつての思い出とも決別する瞬間でもあります。

このように、2人が動画配信を始めたばかりのやりがいのある過去、現在との心境の変化が重要なのですが、上手く犯人と被害者のドラマを表現できなかったように思えました。第1話『電撃ウィッチの魔法』でも述べていますが、犯人側のドラマだけではなく、探偵側のドラマ(黒羽と森野がイップスに陥った要因)を展開している部分があるからです。

探偵側のドラマを見せつつ、犯人側のドラマも並行せねばならず、犯人と被害者のかつての関係・現在の思いが分かるのは最後に見せる投稿動画や、情報管理ガバガバな裏アカウントで「チョロ」が呟いているメッセージを通して一気に視聴者に還元されるため、彼が言うような、「よっちゃん」に対する思いを私は上手く流れに身を委ねて乗り切ることができませんでした。

しかしながら、犯人である唐沢陽介の立ち振る舞いなどは魅力的であり、生放送を利用したアリバイトリックは高ポイントでした。

最後に、冒頭で『悪童エクスプレス』に対する森野のコメント、「昔見てたけど今はむしろ嫌いですね。でも見ちゃうんですね。んで見て、やっぱりこいつら嫌いだわって確認したくなっちゃんですよね」という、熱心なアンチはファンよりもファンらしい見事な心理が突き刺さったという話をして終わりにします。

以上、『悪童の生配信、生殺人』でした。

参考サイト

・フジテレビ『イップス  ニュース09』(https://www.fujitv.co.jp/yips/news/index09.html)、2024年4月21日閲覧

・フジテレビ『イップス ニュース10』(https://www.fujitv.co.jp/yips/news/index10.html)、2024年4月21日閲覧

・歌ネット『ゆず 超特急 歌詞』(https://www.uta-net.com/song/35514/)、2024年4月21日閲覧

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