イップス(ドラマ)|1話『電撃ウィッチの魔法』あらすじとネタバレなし感想

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テレビドラマ『イップス』は、2024年4月12日からフジテレビで放送がスタートした作品です。タイトルでもある「イップス」の意味とは、精神的な葛藤やプレッシャーにより今までできていたことができなくなる心理的症状とされ、野球選手などスポーツ系の職業の人が陥りやすいそうです。

W主演となっており、作品を書けなくなったミステリ作家を「篠原涼子」、事件を解けなくなった捜査一課の刑事を「バカリズム」が演じ、お互いに欠点を抱えたコンビが殺人事件を解決していく、いわゆるバディもののミステリドラマなんですね。

さて、本作品の特徴としては、『倒叙形式(犯人が分かった状態で進む)』を採用している点です。同フジテレビの刑事ドラマ『古畑任三郎』をリスペクトした場面も見受けられ、毎回豪華な犯人と刑事たちのやりとりが楽しみであります。

データ

脚本:オークラ、森ハヤシ、中園勇也
音楽:野崎美波
演出:筧昌也、並木道子、相沢秀幸
プロデュース:宮崎暖
制作プロデューサー:熊谷理恵
製作:フジテレビ

放送日:2024年4月12日
放送時間:58分

あらすじ

熱波師・電撃ウィッチ麻尋こと大島香織(トリンドル玲奈)は、反社の元恋人・竹内渉(山口大地)から、かつての関係を暴露すると脅されていた。スキャンダルが明るみになれば今までの努力が消えてしまうため、勤務するサウナ施設に誘い込むと、スタンガンで気絶させ、水風呂での溺死に見せかけて殺害したのだった。

そのサウナ施設では、スランプに陥っているミステリー作家・黒羽ミコ(篠原涼子)と、SNSアカウントで彼女の作品を誹謗する捜査一課の刑事・森野徹(バカリズム)が偶然居合わせており、遺体の第一発見者として黒羽は事件に首を突っ込んでいくのであった。

人物紹介(キャスト)

今回の犯人:大島香織(おおしま かおり)
役者:トリンドル玲奈

「電撃ウィッチ麻尋」の名義で活動するサウナプロデューサー 兼 熱波師の女性。自身が勤務するサウナ施設で、口封じのため反社会的勢力の元恋人・竹内渉を溺死に見せかけ殺害した。熱波中のBGMは、電撃にちなんでYMOの楽曲『ライディーン』である。


今回の被害者:竹内渉(たけうち わたる)
役者:山口大地

反社会的勢力の男性。大島香織とはかつて交際関係にあり、反社の自分と付き合っていた秘密にする見返りに金銭を搾取していた。彼女がプロデュースする水風呂『冷却エンジェル』で溺死させられ、文字通り昇天してしまう。

小ネタ・補足

○ミステリー作家・黒羽ミコが書こうとしている小説『死者からの伝言』は、古畑任三郎第1話からの引用である。創作ノートに書かれたアイディアには、「車エンスト 雨宿り」「漫画家の犯人」、「編集担当が被害者」、「何も書かれていない白紙の原稿」など、古畑のエピソードを思わせる内容になっている。

○09分50秒~黒羽ミコが創作ノートを2ページ(見開き4P)開くが、どちらのページも文章・付箋紙の内容、イラストまでまったく同じ内容になっている。美術ミス?

○サウナ施設「SPA Foudue」の店長は、お笑い芸人『マグ万平』が演じている。実際にサウナ施設で熱波師をしていたり、プロデュースや番組出演するサウナ界の牽引する人物である。

まとめ(感想)

完全犯罪を目論む犯人、現場に残された手掛かりから事件を疑う刑事……。 倒叙作品の主人公はどちらでしょうか? 倒叙ものの先駆作品かつ代表作として挙げられ、避けて通れないのが「刑事コロンボ」や「古畑任三郎」です。

刑事は犯人に執拗に付きまとい矛盾点を聞いていき、犯人はあれこれ反論をしていく丁々発止のやりとりが醍醐味であります。魅力的な犯人が起こした事件を解決までのプロセスが重要ですが、その為に捜査する側もユニークなキャラ設定でなければ成り立ちません。

しかしながら、刑事側の描写が多くなることで、犯人側のドラマが薄れてしまいます。あくまで主人公たる『犯人がいかにして追いつめられるか』の物語に、刑事の私生活が見えるような情報は極力ない方がいいのではないか?

視聴者の倒叙に対する認識と作品のハードルを高くしてしまったのが、刑事コロンボ・古畑任三郎が生み出した功罪とも言えるでしょう。

さて、本ドラマ『イップス』刑事側の物語で展開する倒叙作品となっています。書けないミステリ作家・黒羽と、事件を解けない捜査一課・森野の最悪な出会いから始まり、やがて事件を通してお互いの共通点が見つかり合致する瞬間という、バディものとしてのツボを掴んだ展開は最高でした。

黒羽の何にでも首を突っ込んでいき、森野との小ボケを含んだ会話の応酬であったり、ヤンキーファッションな刑事がいたり全体的にゆるい世界観で、本格ミステリではなく「TRICK」や「逆転裁判」が好きな人は合うと思います。逆に篠原涼子氏が演じるキャラクター性が合わなければ視聴は辛い。

また、コロンボ・古畑的な倒叙を求める視聴者にとっては微妙に感じてしまうかも知れません。刑事は推理過程を犯人に対して語るのではなく、バディである相方に推理を聞かせるからです。そのため、犯人が刑事に反論する場面が減り、心理的に揺さぶられながらも絶対に捕まりたくない犯人と刑事との対決感といった要素が削れてしまいます。

ところで、犯人は倒叙ミステリ初の職業ではないでしょうか? サウナを盛り上げる熱波師でした。職業に関連し、サウナ施設内で完結するトリックは一体感があっていいですね。そして、犯人が本当に大切にしていたモノが伏線として描かれており、最後に分かる流れも見事でありました。

細かい点としては、「被害者と犯人は一緒に水風呂に居ながらなぜ感電しなかったのか」というミステリ部分です。ふたを開けてみれば、別にそこまで手の込んだことをせずに、気絶させてから水を貯めれば良かったのではないかと感じてしまいました。

今作品は、あくまでも捜査側の成長などを重視していると感じます。同じく恐怖症を題材にしたミステリドラマ『名探偵モンク』のようなコメディな作風になっており、この手の作品は最初の世界観の説明が難しいです。その点、初回は15分拡大スペシャルだったこともあり、そこに充分な時間を使った印象があります。

個人的には、主人公たちとの出逢いと事件の結びつき(屋上にある水風呂に浮かぶ遺体、それに気付かずに近くのリラックスチェアで罵り合う黒羽と森野の遠巻きカットは見事!)や、犯行シーンの演出も癖がないために馴染みやすい作品だったと好印象でした。

そのため、世界観の説明が済んだ2話以降はどういった物語展開になるのかが楽しみです。(多分、黒羽の弟である人権派弁護士は犯人として登場するはず……)

以上、イップス 第1話『電撃ウィッチの魔法』でした。

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