【VS.日本特命全権大使】「お久しぶりです。早速ですが新春スペイン語講座を。Grasiasgは“ありがとう”、Adiosは“さようなら”、Un Conac,Por favorは“コニャックを一杯ください”。そして、Estas arrestado…“あなたを逮捕します”」
データ
あらすじ+人物相関図
南米にある国の日本特命全権大使・黛竹千代は、地元の企業から不正な献金を受け取り、大使館で豪勢な暮らしをしていた。参事官・川北健は、その金は貧困に喘ぐ地元住民から吸い上げた金であると良心の呵責に耐えきれなくなり、この事実をマスコミに公表する決意を固める。
その晩、口論の末に川北を撲殺すると遺体を隠し、過激派による誘拐殺人事件に見せかけた。しかし、パスポートを紛失したため大使館に来ていた古畑任三郎から追及されると、今度は大使館で働く使用人・ガルぺスの犯行に仕立て上げたのだった。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:黛竹千代(まゆずみ たけちよ)
役者:松本幸四郎(現:2代目松本 白鸚)
職業:日本特命全権大使
殺害方法:撲殺
動機:口論の末に
今回の被害者:川北健(かわきた けん)
役者:及川光博
職業:参事官
犯行計画/トリック
『現地の過激派による誘拐事件に偽装』+『遺体なき殺人』
①黛竹千代は、川北健と口論の末にはずみで撲殺してしまい遺体を隠す。翌日、大使館の職員たちの間で川北が戻ってきていないと話が上がる。レストランで会食の打ち合わせを部下に行わせている間、外の車で待機する。用意していた脅迫状を、覆面の男に無理矢理渡されたとでっちあげる。
我々は日本の資本主義に鉄槌を加えるために集まった者たちである。人質を返して欲しければアメリカ紙幣で10万ドル支払うこと。くれぐれも警察には知らせるな。金はボストンバッグに入れ、今日の午後4時に目が見の噴水の前に持って来い。目印に黒いコートを着てくること(※スペイン語で記載)
②受け渡しには大使館職員・長谷部宏樹を指名する。その間、黛は外務大臣訪問の対応をしている。予告された時刻に犯人たちは現れず、長谷部は大使館に戻ってきた。金が受け渡されなかったことで、人質の命の保証ができない状況に仕立て上げることができた。
③その晩、黛は被害者の遺体を大使館の外に遺棄する。遺体は巡回する警備員が発見すると、過激派が身代金を受け渡さなかった報復として殺害したように見せかけた。しかし、古畑から追及される。
④使用人・ガルぺスに部屋の模様替えと称して、ワープロやセットする紙を触らせた。チップを払いたいと車にある財布を取りに行ってもらう間、ワープロに脅迫文書を打ち込み、彼の部屋に置いておく。
⑤大使館内の職員の部屋を確認させると、脅迫文書を作成する際に使用したワープロと同様の機種の物がガルぺスの部屋から発見される。彼が事件の犯人であるかのように演出した。
視聴者への挑戦状
小ネタ・補足・元ネタ
〇46分41秒~『花田』が古畑から脅迫文を受け取ろうとした際、勢いよくデスクライトに手をぶつけている。
◯大使館内で起きる殺人事件という舞台設定は、刑事コロンボ33話『ハッサン・サラーの反逆』から着想を得ていると思われる。また、犯人・黛竹千代はゼリービーンズをつまみ食いしている。刑事コロンボ52話『完全犯罪の誤算』の犯人も同様にゼリービーンズをつまみ食いをする。
◯DVD/Blu-rayの特典映像として、三谷幸喜氏の特別インタビューが収録されている。オチがなかなか明かされない『赤い洗面器の男(「さよなら、DJ」の小ネタ・補足を参照)』について語られる。
元ネタはイスラエルにあるジョークらしく、『すべて閣下のしわざ』の本編では、スペイン語でオチを喋る場面があるのだが、字幕などには表示されず、管理人もスペイン語は分からないので不明である。(頭に乗せた赤い洗面器が落ちない、おちない、オチない……。 という話ではとはよく聞く)
インタビューの最後で、三谷氏の口からオチを言おうとするが、機材トラブルにより映像が途切れてしまう演出になっている。急に途切れるので、管理人はホラー映画なみにビックリしたので注意‼
まとめ
前作からおおよそ5年ぶりとなった本作品は、2時間枠のスペシャル回に相応しいストーリーとなりました。犯人の職業も『日本特命全権大使』と、シリーズ中で最も地位のある役職であり、海外の日本大使館で起こる殺人事件に繋げることができました。
南米での休暇中に、『猿からパスポートを盗まれてしまった古畑任三郎』が、日本国大使館にパスポートを再発行しに貰いに来たという展開になっており、部下である「今泉慎太郎」や「西園寺くん」は登場しません。
第3シーズンで度々登場する「花田」は大使館職員として登場しますが、『勘だけで事件の全貌を暴く』というお約束の展開はありませんが、古畑の補佐的な役割を担当することになります。
スペシャル回だけあり、ストーリー構成にひねりが加えられております。『偽装誘拐事件』を主軸におき進むのですが、犯人側の犯行の一部始終をすべて見せるわけではなく、『遺体なき殺人』が組み合わされます。一体どこに遺体を隠しているのかという謎が加えられるんですね。全体的に伏線もうまく張り巡らされており、『遺体の場所』や『最後の詰め手』にも繋げることができております。
なんといってもラストはびっくりですね。古畑シリーズの中でも特殊な終わり方といいましょうか、若松医師役「津川雅彦」氏を登場させたのも、津川さんが犯人回の『再会』と相対する展開となっていることを感じさせるエピソードでした。
以上、『すべて閣下のしわざ』でした。