【VS.ミュージシャン】犯人視点から進む『倒叙形式』で面白いのが、大物を起用できるということです。通常の推理ミステリーだと、有名人が登場すると、その人が犯人である可能性が高いです。それを避けるためパッとでの人物を犯人にされたら「誰だお前」状態になります。
最初から犯人が分かっている形式だと、超大物を犯人に起用してもなんら問題もありません。今回のエピソードは古畑任三郎で言う、役者ではない野球選手の「イチロー」を犯人役として起用したということが見どころの1つです。
データ
あらすじ
カントリー・ミュージシャンのトミー・ブラウンは、妻エドナ・ブラウンに弱みを握られていた。エドナは新興宗教に心酔しており、トミーの歌手としての収益金を全て礼拝堂の建築費につぎ込まれ、自分の利用できる金銭や自由もなかった。
弱みとは、かつて未成年の信者メアリ=アン・コップと関係をもったことで、公表されてしまえば逮捕され現在の地位もなくなってしまう。そこでトミーは、その晩の天候が悪いと調べたうえで、小型航空機を操縦して2人に睡眠薬入りのコーヒーを飲ませ眠らせた。
パラシュートで航空機から脱出すると、墜落する機内に残された2人を殺害した。トミーは着地の際に、足を骨折しながらもパラシュートを倒木の下に隠して気を失う。後日、航空局が悪天候での操縦中に起きた事故として調査を開始するが、ボロボロの車に乗ったレインコートを着た男が現れる。
人物紹介(キャスト/吹き替え声優)
今回の犯人:トミー・ブラウン(ジョニー・キャッシュ)
吹き替え声優:外山高士(とやま たかし)
職業:カントリー・ミュージシャン
殺害方法:小型飛行機ごと墜落死
動機:口封じ
今回の被害者:エドナ・ブラウン(アイダ・ルピノ)
吹き替え声優:麻生美代子(あそう みよこ)
職業:トミーの妻(バック・ボーカル)
今回の被害者:メアリ=アン・コップ(ボニー・ヴァン・ダイク)
吹き替え声優:戸部光代
職業:バックボーカル
小ネタ・補足
〇犯人『トミー・ブラウン』を演じたのは、カントリーミュージック界の大御所『ジョニー・キャッシュ』氏である。
〇犯人の過去の経歴などを振り返ると、実際にジョニー氏と酷似している部分が多い。アーカンソー州生まれで農業をしていた、空軍に入隊しオペレーターになるなど。ドラマではアーカンソー州の農業刑務所に服役、空軍に入隊した過去があり、軍のバスの運転手、伝令、通信とたらい回しに何でもやったと語っている。
〇犯人が睡眠薬入りのコーヒーを入れたボトルは、22話『第三の終幕』で、コロンボ警部が使用していたボトルと同じタイプである。
〇エピソードで多用されているテーマ曲は、ハンク・ウィリアムス氏の楽曲『I saw the light』である。ストーリーとしては、ラストの詰め手と『I saw the light(私は光を見た)』という歌詞がリンクする演出になっている。
まとめ
大物ミュージシャンを犯人役に起用する掴みばっちりのエピソードになっており、放送当時のアメリカの反応はいかがなものであったのか気になるところでもあります。演技というものは詳しくはないのですが、普通に上手いなぁという印象です。
犯人の人物像としても、ジョニー氏の経歴を使用する当て書き方式であり、この点もファンならニヤリとする構成なのではないでしょうか?
動機としては、ミュージシャンが未成年のファンに手を出しちゃったのがばれちゃったという、昔からもこれからも未来になってからも変わらない世界共通の出来事になっております。(よくオファーしたなジョニーさん!)
良い意味では、極悪マネージャーに反旗を翻すミュージシャン。被害者役が憎い妻でしたので殺されてもしかたないと、視聴者側に犯人の同情を誘います。ただ、メアリは可哀そうですね……。解説本の説明によると、それを補う工夫もなされているようです。
『このトリックは自分の命の保証もない決死の犯行にすることで、ふたり同時の殺人という本来ならつきまとう残忍なイメージを払拭するという狙いがある』
ミステリーとしては、墜落事故から殺人を疑う過程が丁寧に追われておりスムーズな展開です。各地を回りながら1つ1つの疑問点を払拭していくんですね。
なんといってもラストのコロンボ警部とのやりとり。最大限にジョニー氏へのリスペクトしたセリフは胸が打たれるラストでもあります。詰め手としては、過去の2作品を彷彿とさせるのですが、決定的違いは部下がおらず、コロンボ警部と犯人のみです。
この場面を作り出したことによる犯人のセリフ、「人殺しと二人っきりで怖くないかね?」それに対してのコロンボ警部の返しがこのエピソードの魅力、犯人の人物像を高く評価すると同時に、憎むべき犯人というイメージを緩和させられます。ぜひ、ご視聴してみてください。
以上、24話「白鳥の歌」でした。
【航空機事故に偽造】→「偽装」でしょうか?
ありがとうございます!
【×偽造】➡【〇偽装】で間違いありません。
修正させていただきました。お手数おかけしました。