刑事コロンボ 13話『ロンドンの傘』イギリスが舞台の証拠品争奪戦

刑事コロンボ 13話 ロンドンの傘

【VS.舞台俳優の夫婦】初の海外撮影!舞台はイギリスのロンドンです。コロンボ警部はロンドン市警の視察ということでイギリスに訪れることになりました。コロンボ警部のカメラ片手にはしゃぐ姿はとってもチャーミングです。

さて、犯人は夫婦の舞台俳優です。名誉ある『マクベス』の主演を務めることになったのですが、それにはちょっとしたワケがあり……。 真相に気づいた大物プロデューサーともみ合いになり、その最中に過失致死で殺害してしまうのです。

4話『指輪の爪あと』69話『殺意のナイトクラブ』そして、『ロンドンの傘』という数少ない過失致死から進むエピソード。コロンボと犯人が”証拠物品”をめぐり、壮大な争奪戦が開幕です。

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データ

脚本・ストーリー監修:ジャクスン・ギリス
原案:リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク
監督:リチャード・クワイン
制作::ディーン・ハーグローグ
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

本編時間:98分
公開日:アメリカ/1972年11月26日 日本/1974年4月20日

あらすじ

落ち目の俳優夫婦ニコラス・フレイムとリリアン・スタンホープは、大物演劇プロデューサーであるサー・ロジャー・ハビシャムをリリアンが色仕掛けで口説き落とし、彼をスポンサーに名誉あるロイヤル・コート・シアターでの『マクベス』公演にこぎつけたが、その前夜ロジャーが楽屋に怒鳴り込んできた。2人が共謀していたことを知り、舞台の中止を宣言したのだ。

楽屋から出ていくロジャーを止めようと揉み合いになると、リリアンが思わず投げた化粧クリームの瓶が彼の後頭部に当たり殺してしまう。ここで事件が発覚すれば、明日のマクベスは中止となってしまう。せっかく掴んだチャンスをここで手放してしまうわけにはいかず、ロジャーの遺体を彼の屋敷まで車で運びだすと、階段から転落死したように偽装したのだった。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

今回の犯人:ニコラス・フレイム
役者:リチャード・ベイスハート

吹き替え声優:高橋昌也

追加吹き替え声優:稲葉実

概要:イギリスの舞台俳優である男性。妻リリアン・スターホープと共に、長年日の目を浴びない下積み時代を歩んでおり、大物プロデューサーであるサー・ロジャー・ハビジャムに、妻をけしかける色仕掛け考案。名誉ある『マクベス』の主役を獲得した。ロジャーから真相を掴まれ、公演中止を宣言されると揉み合いの末、妻がロジャーを誤って殺してしまう。屋敷の階段から転落死したように偽装するが、ロジャーの執事タナーから犯行を見抜かれる。タナーをも殺害すると全ての罪を擦り付けた。

長年の下積みの成果か? マクベスの舞台は大成功をおさめ、イギリスの各新聞紙では夫婦の評価を称える記事が一面を飾った。舞台には並々ならぬプライドがあり、妻からマクベスの芝居をする前は、アガサ・クリスティーの芝居に出るように言われたが、「あんな田舎芝居にわたしが出ると思っているのか!」と拒否している。

コロンボがロジャーの死は階段からの転落死ではないことを突き止めると作戦を変更。自分が貸していた、『ヘンリー・アーヴィングのメモ入り”マクベス”』がロジャーの自宅から無くなっており、強盗犯から盗まれたのではないかとでっちあげた。価値は2~3万ポンドとのことで、おそらく所有はしていないだろう。(1972年11月1ポンド=707円 2~3万ポンド=1414万~2121万円)

ヘンリー・アーヴィング」は18世紀イギリス人の俳優。イギリス人なら知らぬ者はいない伝説的な人物であるが、ニコラスに言わせるとAクラスの俳優らしい。(SS→S→Aクラス?→B.C.D???)

会話がセリフ口調になることがある。最後にコロンボに証拠を突き付けられた際には、精神錯乱しマクベスのセリフを語りだした。彼は舞台台役者ではあるが、精神的には弱かったようである。警察車両に乗り込む際には冷静に歩いており、一時的な精神錯乱は解消したように見える。


今回の犯人:リリアン・スタンホープ
役者:オナー・ブラックマン

吹き替え声優:岸田今日子

追加吹き替え声優:滝沢久美子

概要:イギリスの舞台俳優である女性。夫ニコラス・フレイムの考案で、大物演劇プロデューサーであるサー・ロジャー・ハビシャムを色仕掛けで口説き落とし、名誉ある「ロイヤル・シアター劇場」で『マクベス』の上演にこぎつけたが、ロジャーが騙されていることに気が付くと公演中止を宣言された。

夫が揉み合いになる姿を見ると取り乱し、思わず投げてしまった化粧瓶が彼の後頭部に当たり絶命させてしまう。ロジャーのことは「ひひ(嫌な)ジジ(イ)だったわ」と語っている。

夫ニコラスとの夫婦関係は良好であるが、喧嘩するほど仲が良いというか、夫が他の女性と会話をするなどすると嫉妬し言い合いになることもある。コロンボとの決着で精神錯乱した夫を庇うかのように罪を自白し逮捕された。


今回の被害者:サー・ロジャー・ハビシャム
概要:ジョン・ウィリアムズ

吹き替え声優:辻本真人

概要:イギリスの大物プロデューサーである男性。長年名プロデューサーと言われてきており、ダーク刑事部長によると家内の5親等らしい。リリアンの色仕掛けにまんまと引っかかり、ロイヤル・コート・シアターでの『マクベス』上演のための資金をだしてしまう。

その後、利用されていることに気が付くと、公演を中止させ自らの権力を駆使して2度と舞台俳優をできなくさせようともした。死後は功績が称えられ彼を模した蝋人形が展示されることになった。

長年仕えてきた執事のタナーによると、夜分はココアを好む。老眼であり本を読む時は胸ポケットに老眼鏡をしまうと話している。本の収集家でもあり自宅にはレアな本が並んでいる。犯人が事故に偽装したのに利用した本は「不思議な国のアリス:初版本」である。

小ネタ・補足

〇マクベスを上演する『ロイヤル・コート・シアター』は、イギリスのロンドンにある劇場である。1888年に開業した由緒ある歴史があり、演劇のメッカとされている。

〇コロンボ役のピーター・フォークが気に入らないエピソードの1つとのこと。テレビのインタビューで嫌悪感を語ったようである。

「コロンボがイギリスに出張するなどいかにもテレビ局の考えそうなことだ」
「テレビ局は日本でも撮影したがっていた。わたしには到底理解できない」

『レインコートの中のすべて』P.142より引用

〇ノベライズ版刑事コロンボ『消える女(だまされたコロンボ)』の、P.52~に、犯人夫妻がその後どうなったのかが記載されている。ロンドンの傘から15年後、コロンボはダーク部長と再会する。夫婦は3年前に出所し、リリアンだけは小さな劇団をつくり演劇を続けているとのことであった。

〇犯人ニコラス・フレイムが逮捕を確信した瞬間。精神錯乱して喋り出したセリフは、『マクベス:第5幕第5場』で、マクベスが妻の死を知る山場ともいえるシーンである。マクベスは夫婦の愛がテーマであり、同様にこの夫婦も最後までお互いを裏切らなかった。最後まで言い終えると、再び冒頭に戻り台詞をくり返した。ちなみに、台詞は後3行程残されている。

「明日が来、あすが去り、そしてまたあすが、こうして一日一日と小きざみに、時の階(きざはし)を滑り落ちて行く、この世の終わりに辿り着くまで。いつも、きのうという日が、愚か者の塵にまみれて死ぬ道筋を照らしてきたのだ。

消えろ、消えろ、つかの間の燈し火! 人の生涯は動き回る陰にすぎぬ。あわれな役者だ、ほんの自分の出番のときだけ、舞台の上で、みえを切ったり、喚いたり、そしてとどのつまりは消えてなくなる」新潮文庫『マクベス』P.125より引用

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まとめ

刑事コロンボの初海外ロケなんですね。イギリスを象徴するビッグベンで、コロンボ警部とダーク刑事部長が会話するシーンがあるんですが、コロンボはビッグベンと自分の腕時計を見ながら、「古いのに1分しか遅れてない。たいしたもんだ」と呟くシーンがあるのです。

最初は何とも思わなかったのですが、後半のエピソードを見ていると、まぁーコロンボの時計が狂ったり遅れていること。実際にはビッグベンの時刻が正確で、この時もコロンボ警部の時計が狂っていたのではないかと今にして考えてしまいます。

でも、同行しているダークさんは何にも言わなかったからコロンボ警部の方が正しいのかも知れません。コロンボ警部の顔を立てたのでしょうか?

ミステリーとしては、転落死を疑うきっかけが丁寧に描かれております。コロンボが疑いを掛ける手数も多いです。それにしても、わざわざ被害者の屋敷での転落死に偽装するのではなく、川とかにでも遺体を遺棄すれば逮捕されなかったのかも知れませんね。

以上、刑事コロンボ13話「ロンドンの傘」でした。

  1. はじめまして!楽しくブログを見させてもらってます。
    小説版だと、リリアンのその後がわかるんですね。あと、ニコラスの最後のセリフがよく聞こえなかったんですが、マクベスのセリフだったんですね!画像の「ここまで、ここを過ぎず」は笑いましたwww

  2. 警部さん≫
    コメントありがとうございます。ブログの閲覧ありがとうございました!
    小説版は原作には描かれなかった部分や、犯人の心理描写が見ることができて一味違った面白さがあります。「ここまで、ここを過ぎず」は大好きなセリフです(笑)

  3. 劇が大反響だったのは過失とは言え「マクベス」と同じくサー・ロジャーを謀殺したことから、
    犯人夫婦の演技にリアリティーというか迫真なものが生まれたからと解釈してます。
    古畑任三郎の「殺した後にお茶漬けを食べる気持ちを知りたい」に近いものがあったのでしょう。

  4. >>劇が大反響
    >>犯人夫婦の演技にリアリティーというか迫真なものが生まれた
     役になりきることができたため演技に魅力が増したんですね。

    >>古畑任三郎の「殺した後にお茶漬けを食べる気持ちを知りたい」に近いもの
     なるほど!

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