刑事コロンボ 68話『奪われた旋律』コンサート中に遠隔殺人

新・刑事コロンボ 68話 奪われた旋律
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すでに音楽の才能が枯れ果てた作曲家が、ゴーストライターの弟子が書いた曲を自身の名前で公表する。このことを、弟子が暴露すると話したために起こる殺人事件である。音楽のゴーストライターで思い出すのは、2014年に起きた『佐村河内 守氏の事件であった。

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データ

脚本:ジェフリー・ケーヴァ&パトリック・マクグーハン
原案:ジェフリー・ケーヴァ
監督・共同製作総指揮:パトリック・マクグーハン
制作:クリストファー・セイター
制作総指揮:ピーター・フォーク
音楽:ディック・デ・ベネディクティス

本編時間:89分
公開日:アメリカ/2001年3月12日 日本/2001年7月8日

あらすじ

作曲家キンドレー・クロフォードは、サスペンス映画音楽の巨匠だが才能が枯れ果て、弟子のガブリエル・マッケンリーがゴーストライターとして作曲をしていた。不満を感じたガブリエルは、この関係を映画監督に暴露すると話したため殺害を計画する。

キンドレーは今までの非礼を詫びガブリエルが作曲していたという事実を打ち明けると話し、翌日コンサートで指揮をしてみないかと誘った。翌日、祝杯と称し睡眠薬入りのシャンパンを飲ませ眠らせると屋上に運び出した。

その晩、コンサートが始まる時刻に合わせ、スタジオの地下にあるエレベーターを作動させると、鉄の蓋は開き、横になっていたガブリエルは屋上から地面に落下した。いつもスタジオの屋上で指揮の練習をするガブリエルが誤って転落死したように偽装したのだった。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

今回の犯人:フィンドレ―・クロフォード
役者:ビリー・コノリー

吹き替え声優:佐々木勝彦

銀河万丈版:堀勝之祐

概要:サスペンス映画の巨匠と呼ばれる作曲家の男。しかし、すでに才能は枯れ果てており、7割以上の曲は弟子である、ガブリエル・マッケンリ-が作曲している。ガブリエルがゴーストライターであることを暴露すると言い始め、コンサート中に殺害を計画した。

作曲に関しては、映画監督リッターと組んで20年になるそうだ。8~9本の映画に携わり、昔は素晴らしい音楽を作曲していた。ガブリエルもそれに感銘を受けて弟子入りをしたのだが「今は下り坂。迫力も、才能も、輝きもなくなった。5年間教えてもらって感謝している」と酷評された。

ガブリエルとの出会いは5年前、警備員から曲に合わせて指揮棒を振っている男がいると聞いたことからだ。オーケストラを残しスタジオの屋上に行くと、その指揮をする姿に惚れ込む。弟子入りを承諾したようだ。

殺害実行日はコンサートの日であった。題名は『クロフォード指揮による「クロフォード」』である。パンフレットの文言や、リッター監督が開演前のスピーチなどは、キンドレーが自身が考えたようだ。しっかりと観客から笑いを獲得していた。

飲酒運転の常習犯であり、現在までに逮捕はされていないが、コロンボに「近頃は取り締まりが厳しくなっていますので」と注意を受けていた。カクテルを飲んで、リラックスした気持ちで運転できるようになると語っていた。また、葉巻を吸うようだ。

ガブリエル殺害後、自ら曲を仕上げることになる。映画のラストシーンであったが、リッター監督は「屁みたいな音楽だ」「普段とタッチが違う」「殺しがあり、犯人が死んだ。最後は客を酔わせるロマンス調はやめろ」と、酷評を受けてしまった。

コロンボの推理により、逮捕を素直に受け止める。まともな音楽部のある刑務所を希望し、サンクエンティンにブラスバンドがある刑務所をコロンボに教えてもらう。音楽が大好きな犯人であった。


今回の被害者:ガブリエル・マッケンリー
役者:チャド・ウィレット

吹き替え声優:小室正幸

概要:キンドレー・クロフォードに5年前弟子入りをした作曲家見習いの男。スタジオの楽団員で、ピアニストのレベッカとは恋人関係にある。キンドレーがコンサートホールで収録をしていると、天井に設置したマイクから、屋上に置いたFMラジオで音をキャッチして演奏を聴いている。少なくとも5年前から、スタジオの屋上で指揮を練習をしているようだ。

キンドレーの弟子ということだが、実はゴーストライターとして、彼の代わりに7割以上を作曲してきた。キンドレーがハリウッドで大きな賞を獲得した『殺人者』の曲も彼の作品であった。作曲の才能だけではなく、音の使い方が非常に上手い。映画のBGMを無くし、あえて悲鳴と効果音だけにするなど、映画監督のリッターからは非常に好評(キンドレーの手柄にされたが)を得ていた。

愛車は『ビートルガブリオレ』である。服装に関しては『ジーンズ』+『スニーカー』というのが好きだったようだ。コンサートで指揮をすると決まった際には、タキシードこそ借りたものの、革靴は借りなかった。スニーカーでコンサートに臨むつもりだったようだ。スニーカーに対しては、並々ならぬこだわりを感じる。ちなみに、足のサイズは9号(27㎝)らしい。

また、以前にもタキシードは借りたことがある様子。紳士服店の店員によると、初めての来店は、女性とダンスに行くときであった。21ドルしかないから、上着だけを借りたいと話したようだ。その際、店員の好意で、一揃い貸し与えたようだ。この時も、革靴はいらないからもう少しまけてほしいと話していた様子。

また、キンドレーから睡眠薬入りのシャンパンを振る舞われる。一気に飲み干したが「酒は弱いんです。たまにビールを飲むだけで」と、語っていた。

小ネタ・補足

〇犯人のモデルとしては、作曲家『マイケル・ケイメン』氏にかなり風貌を寄せている。

〇被害者の転落を目撃した女性マルシアは、パトリック・マクグーハンの次女『アン・マクグーハン』である。

〇作曲家『田中公平』氏のブログ(2013年10月20日『ワザと下手には。』)にて、「奪われた旋律」について綴られている。劇中のBGMに関して作曲家ならでは視点が面白い。

まとめ

サスペンス映画音楽の巨匠という職業、コンサートホールという舞台設定、指揮の最中に被害者を転落死させるアイディアは見事である。テレビ的に見栄えるトリックであり、犯人の性格なども嫌いではない。個人的に好きなエピソードランキング上位に入る作品だ。

ラストが非常に惜しい。コロンボによるラストの詰め手が披露され、「お連れして」と唐突に終わりを迎えるのだ。状況証拠として、キンドレ―が犯人だと推測できるのだが、犯人の反論や、「いやもう結構」などの言葉がないなまま終わるのは腑に落ちない。

キンドレー:ガブリエルと最後に会ったのは、前日のバンガロー。当日初めて見たのが、スタジオの屋上から落下して横たわる姿。

レベッカ:事件日の午前に指揮棒をプレゼントした。そして、ガブリエルは指揮棒を持ってバンガローに行った。

③指揮棒はエレベーターのある地下室に落ちていた。ガブリエルはスタジオの屋上で練習していたようだが、指揮棒の柄がひっかかり、鉄の扉が閉まった状態では落ちない。扉は開いている状態になったことがある。

④ガブリエルの自宅からは、オリジナルの楽譜がなくなっていた。また、身体からは睡眠薬が検出された。楽譜が盗まれるのと、ガブリエルが殺害されるのは共通した動機がある。それは、ゴーストライターとして彼を使っていた、キンドレーだけである。

※睡眠薬が体内からなくなる時刻から逆算すると、ガブリエルはバンガローで睡眠薬を飲まされたとも推測できる。そうなると、やはりキンドレ―が怪しくなる。

だが、コロンボから状況証拠を聞かされた段階で『逮捕される決心』がすでにあったようにも感じる。直前にリッター監督から、作曲した曲について『屁みたいな音だ』『いつもとタッチが違う』と酷評されているのだ。

明朝までに曲を完成させるように言われ「何とかしてみるさ」と強がってはいるが、物陰に隠れて『栄養ドリンク』を飲み干していた。これは、徹夜覚悟になるだろうと自覚していたのだろう。コロンボから証拠を提示され、ラストの微笑みは、内心安堵しているようにも思えた。

コロンボ警部が以前弾くことができていた『THIS OLD MAN』を、被害者の恋人レベッカに教えを乞う場面がある。その前に、レベッカの表情が暗くうつむいているようなカットが入っており、弾けないフリをして、彼女を慰めるために会話のタネにしたのであろう。警部の優しさを感じた。

以上、『奪われた旋律』でした。

  1. 陰で隠れて飲んだのは酒じゃないでしょうか?どーでも良いですが(^O^)
    指揮棒に書かれたメロディーのシーン、あれは一体なんなんでしょうか? あれが殺人の証拠になってるんでしょうか?
    本当に後半が意味不明の作品です。

  2. グッチ-様
    >>陰で隠れて飲んだのは酒じゃないでしょうか?
    >>本当に後半が意味不明の作品
     確かにお酒の可能性もありますね。引き込まれる前半部分から、段々と展開が失速するのが勿体ないですよね。車での移動シーンは冗長気味で、やはりラストに犯人が罪を認める前に「お連れして」は急過ぎてついていけませんが、個人的に好きなエピソードです。

    >>指揮棒に書かれたメロディーのシーン、あれは一体
    >>あれが殺人の証拠になってるんでしょうか?
     まとめの部分にも書きましたが、あくまで状況証拠の積み重ねになります。メロディーの意味を補足すると、黒板に書かれたメロディーは音階に直すと被害者と恋人の名前であることを示しています。「GABE(被害者)へ、BECCA(レベッカ)より」。
     そして指揮棒は、恋人が被害者の為に特注で用意したもので、先ほどのメロディーが入っていました。さて、その指揮棒はエレベーターの下に落下していましたが、屋上の鉄の扉は隙間がなく、蓋が開いていないと落とす可能性がない。そのため、被害者はエレベーターで運ばれた以外には考えられず、「(動機もチャンスもある、あなたが犯人です)お連れして」と犯人の言葉を待つことなく語るに落ちたというラストになります。

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