刑事コロンボ 8話『死の方程式』犯人の特技をフル活用した爆破殺人

刑事コロンボ 8話 死の方程式
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【VS.化学工場専務】倒叙形式の作品において重要なのは、”犯人の魅力”、”犯行計画”、そして”職業”だと感じます。今回の犯人は計画において自身の能力をフル活用しています。職業と特技の一体感こそが、倒叙形式のストーリーに結束が生まれます。

第1シーズンは3話~8話と、当初は6本の予定でテレビ局と契約。そして撮影されてきました。しかし、テレビ局側が試写会時に見た内容の面白さに惹かれ、追加で”もう1本”とお願いして、急遽撮影することになったのが”死の方程式”になります。

突然撮影が決まったエピソードのため、他の作品と違い時間がない中での脚本の練り上げとなりました。コロンボ役のピーター・フォークも「最も(オチが)弱い作品」と述べています。

テレビ局側の要望を断ればいいのではないかと思うあなた。ピーター・フォークがシリーズの1本を監督したいとテレビ局側に打診していたのです。色々とテレビ局側との攻防もあり、フォークが撮影をストライキしたり……。結果として「もう1本追加したら良いよ」との交換条件で撮影するハメになりました。

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データ

脚本:ジャクスン・ギリス
原案:レスター&ティナ・バイン、ジャクスン・ギリス
監督:エドワード・M・エイブロムズ
制作::リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク
ストーリー監修:スティーヴン・ボチコ
音楽:ギル・メレ

本編時間:76分
公開日:アメリカ/1972年1月19日 日本/1973年9月1日

あらすじ

スタンフォード化学工業社長の息子ロジャー・スタンフォードは、現社長である叔母の夫デビット・バックナーが会社を身売りする計画を立てていることから敵対していた。ある日バックナーは、ロジャーが会社の金を使い込み、ギャンブルやドラッグ、車泥棒もやっていた事実を掴んでおり、それをネタに会社から追い出すとちらつかせた。

バックナーがいなくなれば不正が明るみに出ることはなく、また自身が社長になることで会社を身売りせずに済む。ロジャーは彼が愛用している葉巻ケースに手製の時限爆弾を仕掛けると、会議に向かう車での移動中に起爆させ殺害したのであった。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

今回の犯人:ロジャー・スタンフォード
役者:ロディ・マクドウォール

吹き替え声優:野沢那智

概要:スタンフォード化学工業の専務で亡くなった先代社長の息子。会社の身売りを進める現社長デビット・バックナーとは敵対関係にあり、過去に違法行為をしてきたことを脅しに会社から追放されそうになると、葉巻ケースの中に時限爆弾を仕掛けて車ごと爆殺した。その後、偽の報告書や合成写真を偽造すると、副社長を蹴落として自身が社長になろうと画策した。

両親は会社の爆発事故でどちらも亡くなっており、もっぱら道楽のような実験と趣味の写真をしている名ばかりの専務である。非常にお調子者でいたずら好きな性格であり、パーティーグッズのスプレーを社員に吹きかけるなど突拍子もない行動をとっていた。

ロサンゼルスでは賭博をしたり、麻薬に溺れたり、アカプルコでは車を盗みメキシコ警察に逮捕されたのが半年前。会社の金を50万ドル使い込むなど、かなりの悪い男である。
(1971年末~1973年2月:1米ドル=308円…1億5千4百万円)

しかし反面、勤勉でもある。21歳で科学の博士号を取得。その後、法学部へ進み弁護士の資格も獲得している。いつも首に博士号のメダルを下げている。会社をクビになると、ヨーロッパで研究をする段取りを組まれていた。愛車は『フェラーリ365GTB』のシルバーカラーである。


今回の被害者:デビット・バックナー
役者:ジェームス・グレゴリー

吹き替え声優:大木民夫

概要:スタンフォード化学工業会社社長の男性。ロジャー・スタンフォードの父親の妹と結婚しており、彼の両親の死後は会社を引き継いだ。そんな会社も、巨大コンシェルジュに会社を身売りしようと計画を進めているが、なぜ手放そうとしたかは理由は不明である。

身売りの計画については、社内でも反対派と賛成派で対立していたようである。その為、反対派からは庭に爆弾が投げられたり、脅迫を受けていたこともあったらしい。葉巻の愛煙家であり、それを殺害計画に利用されてしまった。ロジャー曰く、葉巻はキューバ産で密輸品とのこと。


今回の被害者:クインシー
役者:ローレンス・クック

吹き替え声優:飯塚昭三

概要:社長専属の運転手である男性。実態は元刑事であり、『ハリージェー・オニール』という偽名を用い、社長の指示に従って素行調査などを行っていた。

小ネタ・補足

〇社長デビット・バックナーを演じる『ジェームス・グレゴリー』は、12話『アリバイのダイヤル』のフットボールチームのコーチ役を演じる。また、妻ドリス・バックナーを演じた『アイダ・ルピノ』が、24話『白鳥の歌』で被害者役も演じている。

〇秘書ヴァレリー・ビショップ役の『アン・フランシス』は、15話『溶ける糸』の被害者役も演じている。副社長ローガンを演じる『ウィリアム・ウィンダム』は、1話『殺人処方箋』の犯人フレミングの友人役で登場する検事役であった。

〇犯人ロジャー・スタンフォードはカメラ好きとして描かれているが、実際に役者『ロディ・マクドウォール』はアマチュア写真家の一面もあり、5冊の写真集を出している。

〇『刑事コロンボの秘密-p.98-』によると、「刑事コロンボ」は当初6本の予定でドラマを組まれていた。テレビ局側が人気が出たために、もう1本追加でシナリオを出して欲しいと要求。制作陣は怒ったが、コロンボ役『ピーター・フォーク』が、1本監督をするという条件で、急遽『死の方程式』の製作が決まってしまったという経緯がある。そのため、このエピソードの製作期間は極めて多忙なものだったと振り返っている。

まとめ

お調子者の犯人が印象に残るエピソードなんですね。これに加えて、野沢那智さんのアテレコは素晴らしかったです。言動は飄々としているんですが、犯行計画ときたら下衆の極みでございます。

秘書ヴァレリー・ビショップとの交際は完璧に偽装不倫写真を用意するために仕組んだことで、計画に利用して切り捨ててしまいました。(困ったことがあったら援助するとは言ってましたが)両親の会社を身売りしたくないという動機は「イイハナシダナー」なんて思ったりもします。

それともう1点は、広大なアメリカの景色なんですね。広大な工業地帯をカートで移動してみたり、長い長いロープウェイから見下ろす遥か下の地面。日本のロケでは垣間見ることができない人間が作り上げたロケーションを堪能できます。規模が違いにびっくりです。コロンボ警部の台詞を借りると「資本の力って偉大ですな」。

以上、8話『死の方程式』でした。

  1. 半世紀前の作品ですが、とっても好きです。 
    いま見ても楽しい。

    ロディ・マクドウォールとピーター・フォーク
    ロディ・マクドウォールとアイダ・ルピノ
    ロディ・マクドウォールとアン・フランシス
    ロディ・マクドウォールとジェームズ・グレゴリー

    舞台劇と考えれば、納得できます。
    上記俳優の会話が、とても楽しく秀逸な作品であります。

  2. GOLDLION様
    ≫半世紀前の作品ですが、とっても好きです。いま見ても楽しい。
    ≫上記俳優の会話が、とても楽しく秀逸な作品
    わたしも大好きです! ロディ・マクドウォールさんの立ち振る舞いが良いですよね。陽気で軽妙、クライマックスの高笑いは素晴らしいです。

  3.  今回は「Short Fuse」という原題に、ちょっと惑わされた感がありました。
    この原題から、電気回路がショートしてヒューズが飛んで停電して真っ暗になった部屋が犯行現場となるような展開を予想していました。
     「短気な奴」と訳されていましたが、一種の俗語のようなものだったのでしょうか。

  4. アホです様
    ≫今回は「Short Fuse」という原題に、ちょっと惑わされた感
    ≫電気回路がショートしてヒューズが飛んで停電して真っ暗になった部屋が犯行現場となるような展開を予想
     なるほど! 確かに冒頭は暗室からのシーンで、そういった見方もできますね‼

    ≫「短気な奴」と訳されていましたが、一種の俗語のようなものだったのでしょうか。
    『Short Fuse』=『短い信管or導火線』とも訳されます。『(線が短いので)すぐ発火する』という意味合いから『短気な奴』という意味にもなるようです。

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