刑事コロンボ 15話『溶ける糸』ラスト10秒の大逆転

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【NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン:刑事コロンボ「溶ける糸」より引用】

【VS.心臓外科医】コロンボを手こずらせた犯人として挙げられるのが、心臓外科医メイフィールドでしょう。自らの保身のために淡々と殺人を重ね、名誉のために恩師も殺す。コロンボの捜査に冷やかしを入れたり笑い飛ばしたり。このエピソードではコロンボが激怒します。

犯人に対しての苛立ちではありません。「他者の命がかかっているから」です。26話「自縛の紐」でも激怒します。溶ける糸では、早く解決をしなければ被害者が増えてしまう。自縛の紐では、夫人が精神的に追い詰められ死にそうになる。

コロンボが思わず声を荒げて怒鳴るのは、そのような結果になってしまったことへの自分の不甲斐なさからの怒りかも知れません。ところで、コロンボが激怒するエピソードには、どちらも「」がついていますね。堪忍袋の緒が切れるとは、まさにこのこと。

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ココが見どころ‼

〇アメリカのSFテレビドラマ「スター・トレック」のミスター・スポック役で有名な、レナード・ニモイが犯人。第1、第2、第3の殺人までも手掛けようとする冷酷無比!

〇コロンボ、現場を荒らす。ゆで卵を被害者の車のボンネットで割る。凶器でも割る。さらには病室内でも構わず喫煙。

〇コロンボが具合が悪いわりにパーティーでは爆食い。しかし、やっぱり胃の調子が悪くなる。

〇コロンボが机を叩き激怒する!(日本語吹き替えだと怒ったような口調ですが、英語だと冷静な口調です)

データ

データ:詳しく見る
脚本:シャール・ヘンドリックス

監督:ハイ・アヴァバック

制作::ディーン・ハーグローグ

ストーリー監修:ジャクスン・ギリス

音楽:ビリー・ゴールデンバーグ

本編時間:74分

公開日:アメリカ/1973年2月11日 日本/1974年6月8日

あらすじ+人物相関図

心臓外科医バリー・メイフィールドは、心臓外科の権威であるハイデマン博士と共に、新薬の研究に取り組んでいた。研究は完成段階にあり、すぐにでも公表したいメイフィールドだったが、もう少し検証が必要であると、ハイデマンは公表を固辞していた。

そんなある日、ハイデマン博士は持病の心臓発作により病院に運ばれる。メイフィールドは心臓の弁膜手術の執刀を買って出て手術の準備を進めた。ハイデマン博士を慕う看護師のシャロン・マーティンは、メイフィールドが博士の研究を独占するために手術中に殺害するのではないかと疑いをもって手術に臨んだ。

しかし、手術中に不審な動きはなく、無事に手術は成功したかに思えた。だが、シャロンが手術台の下にある縫合糸が落ちているのを見つける。それを手に取ると、自分の準備した糸ではないことに気が付いた。メイフィールドは、数日すると糸が溶け弁膜が離れてしまう吸収性の糸で縫合をしていたのだった。糸が溶けると、表向きには心臓麻痺で死んだように見える。

シャロンは、電話で糸の分析を依頼し帰宅しようとする。しかし、待ち伏せしていたメイフィールドにより撲殺されてしまう。彼は、シャロンの自宅にモルヒネの瓶を隠し、麻薬を横流ししていたように仕組んだ。そして、彼女は麻薬中毒患者によって殺害されたように偽装したのだった

人物紹介

【NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン:刑事コロンボ「溶ける糸」より引用】

今回の犯人:バリー・メイフィールドレナード・ニモイ

吹き替え声優:天田俊明(あまだ としあき)

職業:心臓外科医

殺害方法:①心臓の弁膜手術の際、縫合糸を吸収性の糸にすり替え、後日心臓麻痺を起こさせる(エドムンド・ハイデマン:未遂)
②鉄パイプで撲殺(シャロン・マーチン)
③麻薬を注射して階段からの転落(ハリー・アレキザンダー:死亡したか不明)

動機:①研究の名誉独占のため
②ハイデマン博士を殺害しようと使用した糸の存在を知られてしまった。
③シャロンを殺害したのはモルヒネ中毒者の犯行に見せかけるため。

概要:詳しく見る
心臓外科の権威でもあるハイデマン博士に認められた優秀な心臓外科医。博士と共に、「移植による拒絶反応を抑える薬」の研究を行っていた。心臓の弁膜手術中に、縫合糸を吸収性の糸にすり替えてハイデマン博士を殺害しようとした。彼を殺害してしまえば、研究結果を独占して名誉を挙げられるからである。

ハイデマン博士を狙った殺人であったが、博士を慕うシャロン・マーチンに目をつけられてしまってからは、その処理に追われることになる。常に冷静に行動してコロンボの執拗な捜査にも動じなかった。大抵の犯人はコロンボを最初は侮っているのだが、メイフィールドは最初からやり手の刑事であると評価している。

なお、このエピソードで研究をしている薬は、まさに夢のような薬である。この時代、拒絶反応を抑える薬は「ステロイド剤」の大量投与によるものが主流であり、消化器官への出血、重篤な合併症にかかる移植患者も多くはなかった様子。そんな拒絶反応を抑える薬が誕生するのは1990年後期からのようだ。このエピソードから20年後の話になる。


【NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン:刑事コロンボ「溶ける糸」より引用】

今回の被害者①:エドムンド・ハイデマンウィル・ギア

吹き替え声優:巌金四郎(いわお きんしろう)

職業:心臓外科の権威

概要:詳しく見る
世界でも1、2位を争うほどの名医。彼の専門は心臓である。しかし、本人の持病もまた心臓病によるもの。今回のエピソードでは一時的な心臓の発作でありすぐに回復して、自分で血圧を測り診察したりもした。手術を先延ばしにしていたようで、メイフィールドに今日手術すると診断を受けてしまった。

メイフィールドと共同で「移植による拒絶反応を抑える薬」の研究を行っており、もう1年は検査が必要であると判断していた。メイフィールドとは違い、特段名誉には関心がないようで、ドイツの「ブレックマン」医師との共同研究も行う約束をしていた。

メイフィールドが野心家であることも知っていたが、優秀な点では変わりがない。あくまでも世界中の医者と協力していき、1日も早くこの薬の完成を望んでいたのである。

病室嫌いなようで、入院生活を退屈にしていた。コロンボが病室に葉巻を吹かしながら現れた際には、「せっかく人間臭い人が来てくれたんだ」と笑顔で出迎えた。


【NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン:刑事コロンボ「溶ける糸」より引用】

今回の被害者②:シャロン・マーチンアン・フランシス

吹き替え声優:翠準子(みどり じゅんこ)

職業:看護師

概要:詳しく見る
病院に勤務し、手術助手も務めている看護師の女性。ハイデマン博士を尊敬しているが、メイフィールドのことは嫌悪している。野心家のメイフィールドが研究成果を独占するために、手術中にハイデマン博士を殺害するかも知れないという疑いのまなざしをもって手術に臨む。その結果、手術後メイフィールドが縫合糸を交換したことを気づいて見せた。(糸は手触りと色が違うらしい)

友人曰く、「シャロンは外部思考型。他人の願望によって人間性に献身していた。天使みたいな人だった」とのこと。ちなみに、友人は結婚相手を探すべく整形外科の看護師になったが、彼女は病院に留まったようである。

ボランティア活動にも積極的に参加しており、ベトナム帰還兵で麻薬中毒患者のハリー・アレギザンダーとは、麻薬患者更生の奉仕センターで出会った様子。


【NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン:刑事コロンボ「溶ける糸」より引用】

今回の被害者③:ハリー・アレキザンダージャレット・マーティン

吹き替え声優:津嘉山正種(つかやま まさね)

職業:ベトナム帰還兵

概要:詳しく見る
ベトナム戦争から帰還した左利きの兵士。麻薬中毒だった過去があり、それをバリー・メイフィールドに利用される。付き合いがあるシャロンを、麻薬のために殺害したと濡れ衣を着せられたのだった。

戦争から帰還した兵士の多くは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされており、麻薬による心の安定を図っている。彼の場合もモルヒネやマリファナを使用して施設に入所していた。しかしボランティアで来ていたシャロン・マーチンとの接触を重ねていくうちに麻薬を断ち、遊園地にある動物エリアの飼育・餌やりを担当するまでに回復した。

シャロンとの付き合いはそこまでであり、これ以上彼女に頼るのは医者に通うみたいで、いつまでも独立できないからという、彼なりの信条があったからである。

犯行計画

ハイデマン博士の心臓手術中に、縫合糸を吸収性の糸に交換する。数日後、糸が溶けることで表向きには心臓麻痺に偽装できる。ハイデマンが死亡することで、共同研究者のメイフィールドが、研究成果を独占することができる。

※ハイデマンを狙った計画殺人でしたが、シャロンに計画を見つかってしまい、後処理に追われるハメになります。

①ハイデマン博士を手術する。心臓の弁膜を縫合する糸を吸収性の糸にすり替える。数日後に糸が溶け、表向きには心臓麻痺で死亡したことになる。

②シャロン・マーチンが糸の存在に気が付く。口封じのため、駐車場で待ち伏せして撲殺。シャロンの自宅を荒らしモルヒネを隠す。シャロンは麻薬の横流しをしており、それを知っていた麻薬中毒者に殺害されたと偽装した。

→しかしコロンボはどうにも麻薬中毒者の犯行には思ってくれない。

③元麻薬中毒者のハリー・アレキザンダーにモルヒネを注射。シャロンの自宅に隠していたモルヒネと同じ型であり、ハリーが犯行に及んだと再度偽装。

コロンボの疑問点

ネタバレ注意!
〇メイフィールドは助手である看護師が亡くなったと電話で聞いている最中に、時計の針を直していた。医者だからかも知れないが冷静過ぎる。

〇シャロンの自宅が荒らされたが指紋がない。モルヒネ中毒者の発作的犯行ならば手袋をつけるような考えまでには至らないはず。

〇シャロンが麻薬を横流ししたように見えるが、話を聞く限りとてもそんな人間には思えない。

〇ハリー・アレギザンダーの注射跡は左腕であった。しかし彼は左利きであり、普通ならば右腕に注射跡が残るはず。

〇シャロンはハイデマン博士の手術が成功したのにも関わらずイライラしていた。また、シャロンがのこしたメモ「MAC」は、医療用具会社「マーカス・アンド・カールソン」の頭文字だった。病院はこの会社から手術用の縫合糸を仕入れている。

〇病院の医師に話を聞くと、糸には「溶けない糸」と「一定期間ののち溶けてしまう糸」がある。心臓手術にその「溶ける糸」を使用して縫合したならば、数日後には患者は死亡してしまうという。メイフィールドは溶ける糸を使用してハイデマン医師を殺害しようとしている。

〇ハイデマン医師の容態が変わる。メイフィールドは再度、心臓の手術を行った。コロンボは手術中に乗り込み「溶ける糸」を使用している証拠を見つけたい。その際、普段怒らないメイフィールド医師が激高しコロンボに掴みかかった。コロンボは捜索を続けるが糸は発見できなかった。引き上げようとしたときに、メイフィールドが激高した意味に気が付く。コロンボに掴みかかった際、コロンボの手術着の中に、溶ける糸を隠し入れたのだった。

三幕構成

まとめ

コロンボが、最初に激怒したと勘違いされている方も多いのが「殺人処方箋」です。ピーター・フォーク自身も「殺人処方箋でも激怒したじゃないか」と述べていたそうです。しかし、あれは犯人の共犯者の反応を見るための計算された行動であると、コロンボの生みの親であるリチャード・レビンソンが語っています。

今エピソードの「溶ける糸」では、計算なしで嫌悪感をさらけ出した初めてのコロンボなのです。しかし「レインコートの中のすべて」によると、原作者はコロンボが怒るという描写を嫌っていたようです。

以上、15話「溶ける糸」でした。