刑事コロンボ 29話『歌声の消えた海』汽船という密室が事件現場

【VS.中古車ディーラー】推理小説や探偵の舞台と言えば、「逃げ場のない孤島」「雪山のロッジ」「古い風習の残る村」、そして「豪華客船」ではないでしょうか!? 客船で探偵ものといえば、ファミコンソフト「ミシシッピー殺人事件」を思い出します。

今回のエピソードは実在する船『サン・プリンセス号』のメキシコクルーズに、スタッフや役者が乗り込んで撮影おこなったエピソードです。コロンボ警部のカミさんも乗船しているようですが……、どうやらコロンボ警部とはぐれてしまったようです。

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データ

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脚本:ウィリアム・ドリスキル

原案:ジャクスン・ギリス&ウィリアム・ドリスキル

監督:ベン・ギャザラ

制作:エヴァレット・チェンバース

制作総指揮:ローランド・キビ―&ディーン・ハーグローヴ

音楽:ディック・デ・ベネディクティス

本編時間:98分

公開日:アメリカ/1975年2月9日 日本/1976年1月3日

あらすじ+人物相関図

歌声の消えた海中古車ディーラーのヘイドン・ダンシガーは、ショーガールのロザンナ・ウェルズでかつて愛人関係にあった。口止め料として金銭を要求し、もし断れば妻シルヴィアに告発するという。資産家のシルヴィアの方が夫婦間での上下関係は上であり、このことがバレたらヘイドンはお終いである。

ヘイドンは汽船をよく利用しているため構造を熟知している。マスターキーを道具を使って複製すると、薬を吸い込み擬似的な心臓発作を起こした。医務室へ運ばれると、30分おきに血圧が測定されることになる。ディナーショーの時間になると、ヘイドンは医務室から抜け出してマスターキーで乗務員専用通路を使ってロザンナの部屋で待ち伏せをする。

衣裳替えに来た彼女を射殺すると、ロザンナに惚れているバンドマンのロイドに、殺人の疑いが向くように偽装したのだった。急いで血圧測定の時間までに戻ると、犯行時刻は医務室で休んでいたというアリバイを完成させたのだった。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

主犯今回の犯人:ヘイドン・ダンシガーロバート・ヴォーン

吹き替え声優:西沢利明(にしざわ としあき)

職業:中古車販売会社社長

殺害方法:銃殺(38口径)

動機:口封じの

概要:詳しく見る
中古車販売会社ディーラーである社長の男性。ラスベガスのショーガールをしていたロザンナ・ウェルズとかつて不倫関係にあった。そのことを、妻シルヴィアに暴露しない見返りとして金銭を要求されてしまう。力関係は妻の方が上で、不倫の事実が知られてしまうと、20年かかって獲得した地位を失なってしまうため、船内の構造を熟知した豪華客船『シーパレス号』で殺人を行った。

ギャンブル好きで1人で良くラスベガスに行っていた。そこでショーガールをしていたロザンナと関係をもったようである。

犯行現場となった『シーパレス号』は、よく利用しており船内の構造を熟知している。今回は招待客104名を連れて乗船して、火曜日にメキシコでゴルフをする予定であった。なお、今回の船旅の合計客数は500名であり、だいぶ彼の招待客で埋まっていたようだ。

中古車ディーラーという職業のため、車にカギが付いていないこともある。そのためカギを作る道具『カーチスクリッパー』なる道具を持っていた。鍵の製造会社と複製番号があれば、カギの制作本を見ながら複製することができるようである。

射撃の腕前はプロそのものである。被害者を射殺した際には、枕越しという銃口が定まらない状態でありながらも、片手で腰から銃を発砲。重心は反動でずれることはなく、銃弾は心臓の真ん中から摘出された。本当に中古車ディーラーなのかと疑いたくなる。


被害者今回の被害者:ロザンナ・ウェルズ(フーレー・ボッカー)

吹き替え声優:中村晃子(なかむら あきこ)

職業:ショーガール

概要:詳しく見る
ショーガールの女性。ラスベガスでも働いているようで、汽船ではジャズバンドのボーカルを担当していた。バンドマンのロイドが惚れているのだが、彼女にはその気はまるでなく、「つきまとわないで。もう終わりって言ってるのよ」と突き放している。

公演時間は毎日決まっており、前半後半と別れているようだ。間に休憩時間があるが、会場から控室までの距離が遠く、衣裳替えをすると休憩時間が終わってしまう様子。

犯行計画/トリック

【被害者に好意を寄せる人物の犯行に偽装】

①ヘイドン・ダンシガーは、パーサーのワトキンスに、部屋の合鍵がないと予備の鍵を借りにいく。その際、マスターキーの製造会社と複製番号を記憶する。部屋で『カーチス・クリッパー』を使用して、マスターキーを複製。海に製造方法の記載された本と、カーチス・クリッパーを捨てた。

②バンドマンのロイドの部屋に侵入して、明細書箱に銃の購入書を入れる。ロザンナの部屋に銃を隠しておく。プールデッキで、鼻から亜硝酸アミルを吸引すると擬似的な心臓発作をわざと引き起こす。医務室へ運ばれ、30分おきに脈拍と血圧を測定されることになる。

③看護師の隙を見てゴム手袋を盗む。ディナーショーの時刻、医務室から抜け出すと、マスターキーを使い乗務員専用通路を移動。途中スタッフの衣裳に着替え変装した。ディナーショーの休憩時間、ロザンナは衣裳替えのために部屋へ戻る。待ち伏せていたヘイドンは、彼女を枕越しに射殺した。

④口紅を使い鏡に「L」と記入する。バンドマン「ロイド」は、ロザンナに好意を抱いており、振られたことによる復讐に見せかけるため。ヘイドンは30分おきの血圧測定までに急いで戻る。途中、シーツ回収BOXの中に拳銃を隠した。医務室のベッドに戻ると看護師から血圧測定を受け、犯行時間はベッドで休んでいたというアリバイが完成した。

推理と捜査(第2幕まで)

ネタバレ注意!
○医務室内の病室で戸口の床に羽毛が落ちていた。

○ロイドの部屋から、ラスベガスで購入した拳銃の領収書が見つかった。もし犯人ならば領収書は処分するのではないか? 他に残されていた領収書は楽器の調律などの必要経費として控除されるものばかりであった。

○ダンジガーは中古車ディーラーで、カーチス・クリッパーというカギを複製する道具を知っていた。キーの製造会社とマスターキーのコード番号さえわかれば、マスターキーを作ることができる。マスターキーを使って乗務員専用通路を移動すれば、医務室から犯行現場まで容易に往復できる。

○凶器の拳銃は発見できたのだがゴム手袋が見つからない。海にゴム手袋を投げたのだとすれば、どうして拳銃も捨てなかったのか? また、ロイドの犯行だとすれば、海に捨てる時間がなく辻褄が合わない。

○ダンジガーは先週の金曜と土曜日にラスベガスに行っており拳銃を購入する機会があった。領収書にロイドの名前が記載されているが、ディーラーとして客の明細書を作るダンジガーなら偽装は可能である。

○ダンジガーはプールで心臓発作が起こり医務室へ運ばれていた。プールのろ過機を調べると、心臓発作の症状を引き起こす亜硝酸アミルのカプセルが見つかった。

○ダンジガーは心臓発作と診断されたため、30分おきに脈と血圧を測定していた。犯行時刻とされる23:30の血圧が異常に高くなっている。コロンボも階段を掛け上がってみると数値が高かった。ダンジガーも階段を駆け上がったのではないか?

三幕構成

歌声の消えた海 三幕構成

小ネタ・補足

〇舞台となった『サン・プリンセス号』は、香港のクルーズ船「オーシャン・ドリーム」として現在も航海しているようだ。(海外Wikipedia

〇被害者「ロザンナ・ウェルズ」がディナーショーで歌っていた曲は、『ボラーレ(青く塗られた青の中で)』である。

〇ロザンナに惚れていたバンドマン「ロイド・バリントン」は、12話『アリバイのダイヤル』で被害者エリック・ワグナーを演じている。

〇パーサーの「ワトキンス」を演じたバーナード・フォックス氏は、14話『ロンドンの傘』のダーク刑事部長を演じていた。

〇コロンボ警部が鼻歌を歌い、「ダンジガーさ~ん♪」というシーンは、吹替だけの演出である。

〇コロンボ警部が、メキシコ行の船旅中に巻き込まれた事件である。到着地は35話『闘牛士の栄光』が舞台となっている。

まとめ

特殊な舞台設定が見どころのエピソードなんですね。ミステリーの定番『豪華客船』でございます。海の上の船ですので、鑑識や他の刑事たちもいません。そんな条件下においてコロンボ警部は単独で事件解決に乗り出すのです。

丁寧に描かれた作品であり、冒頭でゴルフ用の手袋を妻ジュリアが忘れてしまいました。ダンジガーさんは言い返そうとしますが、「アカプルコで買えばすむことよ」と突き返されてしまいます。これから殺人に使用する大事な手袋だったというのに……。

この点から妻との上下関係が明らかになっているんですね。また、コロンボ警部が鉄砲が苦手だからとダンジガーさんにベッドマットに銃を撃たせるシーンでは、彼の銃の腕前を試していましたね。

古い鑑識方法、「鉛筆の削りカスを使って指紋を検出」。犯人との会話の中から疑問を見つけ、次々と実験して解消していき徐々に犯人に詰め寄る。

コロンボ警部が犯人をロックオンしたのは、病室の床に落ちていた「羽毛」がきっかけという演出が最初から提示されますが、どうしてそれで犯人と確信したのかが見事というか、勉強になったエピソードでありました。

以上29話、「歌声の消えた海」でした。