刑事コロンボ 53話『かみさんよ、安らかに』コロンボのかみさんに焦点

新・刑事コロンボ 53話 かみさんよ、安らかに

【VS.不動産業者】コロンボ警部のカミさんの葬儀シーンから開始される衝撃のエピソードです。ストーリー展開の方法も特殊であり、葬儀に参列している登場人物の回想シーンから、徐々に事件の真相が明らかになっていく変わった形式になっています。

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データ

脚本・製作総指揮:ピーター・S・フィッシャー
監督:ヴィンセント・マケヴィティ
製作総指揮スーパーバイザー:ロバート・F・オニール
ストーリー監修:ジャクスン・ギリス&W・R・ウッドフィールド
クリエイティブコンサルタント:ビル・ドリスキル
音楽:リチャード・マーコウィッツ

本編時間:96分
公開日:アメリカ/1990年3月31日 日本/1995年4月14日

あらすじ

不動産業者ヴィヴィアン・ドミートリーの夫ピートは、過去に顧客の金を使い込み、その顧客を殺害してしまった。使い込みがバレたきっかけは、ピートが勤務する動産会社の社長チャーリー・チェンバースの密告によるものだった。

その殺人事件はコロンボ警部が担当することになり、ピートは逮捕されたが、心臓麻痺で獄中死してしまう。これをきっかけにヴィヴィアンは精神的に病み、密告したチャーリーと、夫を逮捕したコロンボを逆恨みしていた。

ある日、ヴィヴィアンは愛人リーランドと会っていたというアリバイを作ったうえで、チャーリーを殺害した。契約違反の物件を売りつけられた顧客による殺人に偽装すると、コロンボのカミさんをも殺害する行動を起こしたのだった。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

今回の犯人:ヴィヴィアン・ドミートリー
役者:ヘレン・シェイヴァー

吹き替え声優:弥永 和子

概要:不動産業者の女性。10年前に夫ピート・ガラボルディが殺人の罪でコロンボに逮捕されてしまう。懲役10年の罪であったが、8年刑務所で過ごして心臓麻痺により獄中死を遂げた。最愛の夫を失ったことで精神を病み、ピートを殺人に走らせたチャーリーと、逮捕したコロンボを逆恨みするようになった。

ピートが顧客の金に手をつけてしまったのは、ヴィヴィアンに最高の生活をさせたいとの思いからだった。元々株をしていたようだが、株が暴落してしまう。現在の暮らしを維持できなくなってしまうため、顧客の金を使用してしまった。このことを、チャーリーがボスに密告したため、顧客を殺害してしまったようだ。

エピソード内ではボスの名前が挙がらなかったが、ピートが手をかけた人物は、ボスか顧客のどちらかであると考えられる。ピートは殺人事件としてコロンボに逮捕されたが、コロンボによると、「魔が差したんでしょう」と、彼の真面目ぶりは評価していた。

昔はピートと共に、サンフランシスコの郊外に住んでいた。ヴィヴィアンによると、ピートは節制しない性格であったようで、カロリーとタバコも取りすぎていたようだ。彼が亡くなったときは、三日三晩、銀食器を磨き続けていたとのこと。銀の食器は結婚祝いで貰った思い出の品らしい。

現在は不動産業者として働いているが、これはチャーリーに復讐するためにアプローチしたことによるものであろう。これにより精神病院から抜けて、一見すると普通に振る舞っている。しかし、主治医の精神科医ステッドマンによると、まだ心配でよく電話をかけていたようだ。

不動産業者としての腕はあり、立地条件が悪く厄介者とされる『スミス邸』を、ドミートリー夫妻に570万ドルで売却している。成功報酬としては25万ドルを要求した。また、チャーリー殺害後は事務所の社長となり適格に指示を飛ばす敏腕である。

(1990年3月:1ドル=153円 570万ドル=8億7千210万円)(25万ドル=3千825万円)

ラムのコーラ割りが好きなようで、昔からよく飲んでいたようだ。愛人リーランドと食事をした「ペントハウス・カフェ」は、思い出の場所と語っており、最愛の夫ピートとよく通っていたのだろう。

愛人リーランドと関係をもったのは半年前に物件を売ってからである。関係はアリバイ作りに利用後するために発展させたのであろう。朝食にはイングリッシュマフィンを食べており、塗っているのはイギリス製のレモンマーマレードとのこと。過去の名前アネット・ガラボルディである。


今回の被害者:チャーリー・チェンバース
役者:エド・ウィンター

吹き替え声優:富田 耕生

概要:不動産会社を経営する男性。10年前にピートが顧客の金を使い込んでいることをボスに報告したことで、ヴィヴィアンに恨まれていた。バスケの賭けが好きなようで、オルデン・ホテルの電話を利用して、賭けの仲介をしているジョーに連絡をして賭けを行っていた。

売りに出している物件は、ほとんどがボロ家であり、花壇を植えて彩を良くしたり、広く見せるためにローアングルで撮ったり、夜間でも家を撮ってこいというなど、カメラマン泣かせの広告写真を貼っていたようだ。その詐欺まがいの売り方から、ファルコン・リッジの建売住宅を購入した何件かの住人からは、契約違反として訴訟を起こされようとしていた。

また、オフィスには「キム・ノヴァク」の写真が飾られており、仕事上の付き合いであったのかは不明である。

小ネタ・補足

〇謎に包まれたコロンボのかみさんがストーリーに絡むお話である。声は無いものの、電話でやりとりをするシーンを見られるのは、29話『歌声の消えた海』以来である。

〇犯人・ヴィヴィアンが亡くなった夫の写真を壁にスライドで映すシーンに流れる曲は、”I’m so I one some I could cry(泣きたいほどの悲しさだ)”である。ハンク・ウィリアムズ氏の曲であり、24話『白鳥の歌』のメインテーマ、”I saw the light”に引き続いての使用であった。

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まとめ

コロンボ「それに実例がありましてね。ある女性が、夫の死はある人物の行動によるものと感じた。しかし、彼女の復讐の執念は、その当の人物には向けられなくなって、その妻に向けられた。これは、滅多にないことなんでしょうか?」

ステッドマン「そんなことはありませんよ。極端なケースでは、そういう思い込みはよくあります。あなたは私の夫を奪った、だから妻を奪ってやる」

コロンボ「その実例ではですねえ、その結果、逃げおおせる見込みなんて全くなかったんですねえ」

ステッドマン「逃げるつもりはなかったハズです。それどころか、恐らくその男の責任であると気付かせる行動に出たでしょう」

コロンボ「それで終身刑を受けることになってもですか?」

ステッドマン「それは問題ではなかったでしょう。そのお話の女性はあなたが本で読まれた実例は、本当に復讐を行ったのなら、その責任は被害者本人にあったことを本人に伝えたハズですよ。そうしなければ満足感は無いでしょう。お分かりですか」

コロンボ「「はい。はい先生。よく分かりました。完璧に!」
この会話に事件の全てが集約されております。

犯人ヴィヴィアン・ドミートリ―は「逃げるつもりはなかった」、最初から完全犯罪をするつもりは毛頭なかったのです。狙いは「復讐」のみ。

①チャーリーを殺害しコロンボ警部に接近する。(電話で出勤状況を聞き犯行する日を合わせた)
②愛する夫を逮捕され、夫は獄中死した。そのため、コロンボ警部の愛するかみさんを亡き者にして、自分と同じように苦しめる。

殺人の罪をコノリー(建売住宅の住人)にしたのもそのためです。契約違反で訴訟を検討している資料をわざわざオフィスから抜きとる。コロンボ警部がその住宅を売った、ヴィヴィアンに聞き込みに来る。コロンボ警部も、「誘導している」と発言もあります。そもそも完全犯罪を目指すならば、凶器は別の場所に捨てるはず。ファイルも不必要です。

意欲的な作風でもあり、今回の「かみさん」に焦点を当てるとい挑戦的なエピソードですよね。

以上、「かみさんよ、安らかに」でした。

  1.  今回は、カミさんの葬儀のシーンと、回想シーンとが交互という、これまでとは違うストーリー展開で、最初はちょっと難しいと感じました。
     しかし、結末は見事でした。
     コロンボ刑事がヴィヴィアンから毒入りマーマレードを渡され、カミさんと、刑事を一気に殺害することを目論んだようですが、どうやらコロンボ刑事は、マーマレードが怪しいことに気付いていたようですね。
     そしてラストは、ブレイディ刑事の自宅を、コロンボ刑事の自宅と思わせて、ヴィヴィアンを自白に追い込む。
     ここのところは、私のハンドルネーム「アホです」の由来となった「アホかいな」というセリフのあった回を思わせました。
     それにしても、コロンボ刑事が毒入りマーマレードにいかにも引っかかったような芝居をするシーンは、見事なものでした。

  2. アホです。様
    ≫カミさんの葬儀のシーンと、回想シーンとが交互という、これまでとは違うストーリー展開
     冒頭からインパクトがありますよね! 映画に多い、現在に至った経緯を過去から辿っていくという「後説法」に分類されます。いつものようなコロンボのストーリーではなく、その上かみさんがメインでもある意欲的な作風でした。犯人の鬼気迫る狂気を感じられる展開でもあり、新シリーズの中でも好きな人も多いようです。

    ≫「アホかいな」というセリフのあった回を思わせました。
    泥棒のアーチーさんがいい味出してますよね、印象に残る名セリフです!

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