【VS.上院議員候補者】第3シーズンに入り、ドラマ性の高いエピソードが続いておりましたが、今作は犯人と刑事による1対1の対決がメインになります。何といってもコロンボが犯人を追い詰める手数の多さが魅力的です。
脚本家が5人体制 であり、各々のアイディアが寄せ集まってできたことによる豪華さも感じられます。犯人は上院議員候補者のネルソン・ヘイワードです。組織犯罪撲滅を掲げて立候補していますが、自らが殺人に手を染めることになります。
ココが見どころ‼
〇脚本家は5人体制で重厚感あるストーリー構成。
〇選挙戦中という慌ただしい中での殺人。
〇BGMと演出のシンクロ。
〇コロンボの手数の多さが魅力的。「あともうひとつだけ……」計5回も扉から出たり入ったり、かなりしつこい。
データ
データ:詳しく見る
脚本:アーヴィング・パールバーク&アルヴィン・R・フリードマン、
ローランド・キビ―&ディーン・ハーグローヴ
原案:ラリー・コーエン
監督:ボリス・セイガル
制作総指揮:ローランド・キビ―&ディーン・ハーグローヴ
音楽:ディック・デ・ベネディクティス
本編時間:98分
公開日:アメリカ/1973年11月4日 日本/1974年8月17日
あらすじ+人物相関図
上院議員候補者のネルソン・ヘイワードは、「組織犯罪の撲滅」を公約に掲げ選挙を戦っていた。そんな彼のもとに脅迫状が届き、組織がネルソンの暗殺を狙っていると世間の注目を集めた。投票日も近く、警察は彼に24時間体制の警備をつけることになった。しかしそれは、選挙参謀のハリー・ストーンが有識者の指示を集めるために仕組んだ「やらせ」であったのだ。
またハリーはネルソンに、選挙運動中は愛人であるリンダは邪魔になりかねないと、関係を終わらせるように強要する。ネルソンはそれを受け入れ、直接リンダに会いに説明すると伝える。その為には警察の護衛をかいくぐらなければならない。
そこでネルソンは、ハリーに自分の帽子と上着を着せて変装させる。ハリーが警察の護衛を車で振り切ってネルソンの別荘に到着する。すると、そこには先回りしていたネルソンが待ち伏せしており、彼を射殺する。
遺体の腕時計を華奢なものに変え、1時間ずらして時計を壊すと死亡推定時刻を偽装した。現場を立ち去り、自宅に向かうと、妻ヴィクトリアとの誕生パーティーを開いた。警察の護衛を振り切ったのはこのためであると説明がつく。またハリーは、犯罪組織にネルソンと間違って殺害されたという筋書きが完成したのだった。
人物紹介
今回の犯人:ネルソン・ヘイワード (ジャッキー・クーパー )
吹き替え声優:中谷一郎(なかたに いちろう)
追加吹き替え:稲葉実(いなば みのる)
職業:上院議員候補者
殺害方法:サイレンサーを装着した銃で射殺
動機:ハリーの傲慢さに不満があり、愛人と別れるように強要されたから。
概要:詳しく見る
概要:「組織犯罪の撲滅」を公約に掲げ、上院議員に立候補した人物。選挙ポスターには
「HIS OWN MAN(信念を貫く)」 と記載しているように、野望の果てまで己の信念を貫きとおした。
演説に関しては、ハリーから茶化されているかもしれないが、「トーマス・ジェファーソン顔負けの演説(アメリカ独立宣言、第3代アメリカ合衆国大統領)」だと語っている。女性支持者の人気があるようで、勇気と誠実さに惹かれる模様。
上着はオーダーメイドであり、キャメルのカシミアを好んでいる。移動時には帽子も被っていたが、ハリーを殺害後は身に着けてはいない。ハリーの殺害計画のための準備として、今まで身に着けていたのだろうか?また、警察の護衛を離れさせるために葉巻を買ってきて欲しいと頼んでいる。作中には一切葉巻を吸う描写はなく、本当に愛煙家なのか不明である。子供のころは、石を投げて街灯を壊していた過去も話している。
妻ヴィクトリアの秘書を務める、リンダ・ジョンソンとは予備選挙の時にボランティアとして知り合った様子。妻も各地で演説会に参加するようになるため、女性がいると安心できるのではないかとの理由で秘書として雇い入れた。
コロンボの追及がいよいよをもって直前まで迫ると、自分で脅迫状作る。「Hayward drop OUT u live win U die(ヘイワードお前は生きるか死ぬかだ)」嘘の狙撃事件をでっちあげた。
91:10~開封結果が聞くことができる。 台詞の後ろでラジオの音声でもあり聞き取り難いのだが、「デイビス202票……ヘイワード111票」「デイビス4420票……ヘイワード3152票」と、まだ全て開封されているわけではないが、2州の選挙結果は敗色濃厚である。
上院議員は計100名が当選することになる。もしも当選したのならば、公約に掲げる「犯罪組織の撲滅」の名の元に、「環境・公共事業委員会」、「司法委員会」にいずれかに属したのではないだろうか?
今回の被害者:ハリー・ストーン (ケン・スウォフォード)
吹き替え声優:槍田順吉(やりた じゅんきち)
職業:選挙参謀
概要:詳しく見る
概要:ネルソンの選挙参謀を務める人物。彼1人で秘密に計画を担当している分野もあるが、電話のやり取りを聞くともう数名ほど各地に仕掛け人がいる様子。その仕掛人たちに指示を出したり、彼らが書いた脚本を選定もしている。
警察の護衛が車に乗り込むのが遅かったのもあるのだが運転技術が素晴らしい 。大型の車で警察の護衛を振り切って見せている。有能な人材ではあるものの傲慢(人を見下し失礼)な性格であり、ネルソンの周辺の人物からも、がさつで攻撃的な人物と評価されている。しかし、ネルソンを当選させるために生活を捨ててきたようで、目的達成のためには努力を怠らない。
身なりに関しては、丈夫で長持ちするものを好む。服の注文した際には、「破れないもの」という条件であった。靴も頑丈であり、時計はネルソンにすり替えられてしまったものの、本来ならば鉄棒に打ち付けてもびくともしない腕時計を着用していた。
選挙戦の相手は「デイビス 」という名前であり、彼への支持を下げるために嘘の情報を流す計画も立てていたが、それを実行する前にネルソンに殺害されてしまった。もしこの作戦が実行されていれば、ネルソンは当選していたのかも知れない。
犯行計画
①ネルソン・ハワードはリンダ・ジョンソンと決別をするため直接会って話をしたいと言う。そのために、警察の護衛を振り切る必要がある。ハリー・ストーンに自分の上着と帽子を着てもらう。
②ハリーは警察を振り切り別荘に到着するとガレージの明かりがつく。ネルソンは待ち伏せしており、彼をサイレンサー付の銃で射殺する。腕時計を壊れやすい物に交換し、9時20分に設定して壊し死亡推定時刻にした。
③ネルソンは別荘から自宅へ向かう。内緒で妻ヴィクトリアの誕生パーティーを企画していたのだった。しばらくして、ネルソンは警察に電話を掛ける。「ネルソン・ヘイヤードの遺体はガレージに転がっている」
④架空の犯罪者が誤認殺人を起こしたように偽装した。
【コロンボの追及を逃れるため】
④ネルソンは自分への脅迫状を作成する。それをリンダが警察に届けた。
⑤警察による警備が多くなる。電話を掛けたいと、数分ほど1人になる。その間に窓から部屋の壁に向かってサイレンサー付の銃を打ち込む。リンダに持ってきてもらった鞄に銃を入れ、再び持って帰らせた。
⑥投票後の打ち上げパーティーで、ネルソンは1人部屋に戻る。そこで爆竹を破裂させて、たった今狙撃されたように偽装したのだった。
コロンボの疑問点
ネタバレ注意!
○別荘近くの外灯は子供が壊していたようだ。そうなると犯人は明かりもないのにどうやって被害者を撃ったのか?
○被害者の乗っていた車は大型。犯人がヘッドライトで照らしたとしても後方しか照らせない。もし照らせたとしても弾道が合わない。不自然な位置から狙撃されている。
○コロンボは「はじめからストーンを狙った殺人」という仮説を述べたとき、ヘイワードは安心するどころかそれを否定した。
○ヘイワードの部屋に予定表を取りに来ていたリンダは、予定表を取らずに部屋から出て行った。2人は何をしていたのか?
○ヘイワードはストーンに着せていた上着と同じ物を、6日前にオーダーで注文していた。
○ハリー・ストーンの腕時計は壊れて9時20分で止まっていた。コロンボが到着したのが10時過ぎ。ホテルから別荘まで60kmありエンジンが冷えるまで1時間50分かかった。ところが、コロンボが現場にあった車のエンジンはすっかり冷えていた。
○事件当日のヴィクトリアの誕生パーティは、ヘイワードが1人が準備と企画を立てていた。
○警察にかかってきた市内電話は9時23分にかかってきた。しかし、犯行現場の近くに電話はない。最も近くにあるガソリンスタンドの電話だが、その日は20時に店は閉まっている。別荘の電話は市外局番になるため、いったい犯人はどこから掛けたのか?
○ハリー・ストーンは丈夫な物を身に着けるようにしていた。それなのに腕時計だけは壊れやすい物を使用していた。
三幕構成
まとめ
【コロンボに指示を出す男】
監督は第11話「悪の温室 」を担当したボリス・セイガルさんです。犯罪組織に狙われるといったプロットが実によく似ています。悪の温室でも犯人が殺人を犯す前にコロンボが登場していますね。
ラストの決め手も犯人の「○○」を、コロンボが取り出して見せる。コロンボが単独で事件を解決するのではなく、警察組織の一員として事件解決にあたるなど印象に残ります。画面いっぱいに映り、慌ただしく動くエキストラは選挙運動中のあわただしさが感じ取れました。
吹き替え版では語呂を良くするために警部となっていますが、コロンボの階級は「警部補 」です。コロンボに指示を出す人物は警部クラスの人物なのでしょうか?どちらにせよ、今までで一番偉い人が登場したのです。
以上、20話「野望の果て」でした。
このラスト5分間、何度見返しても実にいいですね。Yes, Sir.と5回繰り返したのち No, Sir.で犯人も周りの人もキョトンと静止するところ、思わず「クーパー屋!」などと掛け声をかけたくなります。じっさい犯人が、わざわざ墓穴を掘る質問を畳み掛けて、観客の爽快感を盛り上げていくあたり、なんか歌舞伎とか昔の正統派の舞台を見てるみたいです。それにしても奥さんと秘書、これからどうするんでしょう。
≫犯人も周りの人もキョトンと静止するところ、思わず「クーパー屋!」などと掛け声をかけたくなります
※初めて見た時には、思わず膝を打ったラストでした!警部の台詞の後の静寂感、犯人のやっちまった……というような表情が合わさって見事です。