コロンボの身内に犯人がいるという『権力の墓穴』というエピソードを彷彿とさせる。鑑識員パトリック・キンズレーと愛人キャサリンの共犯である。キャサリンには、横暴な夫クリフォードがおり、邪魔な存在となっていた。そこで、夫と対立関係にある人物を殺害して、その罪を被せるという展開は今までにはなかった。
ただ、犯人パトリック・キンズレーが殺人に加担する動機が弱いというのが気になった。愛人であるキャサリンにそそのかされて殺害計画を企てるので、惚れた弱みというやつなのだろうか。
データ
あらすじ
資産家クリフォード・カルバートは、株取引において不正な情報を提供し、資産を過大に評価し負債の総額を隠していたため、投資家ハワード・セルツァーは損害を被り訴訟を起こす準備を進めていた。
これを利用し、クリフォードの妻キャサリンは、愛人パトリック・キンズレーは、訴訟を進めるハワードを殺害したうえで、夫クリフォードに罪を被せた。さらに、パトリックはロス市警のベテラン鑑識員であり捜査を有利に運ぶこともできるのだった。
人物紹介(キャスト/吹き替え声優)
今回の犯人:パトリック・キンズレー(デヴィッド・ラッシュ)
吹き替え声優:船越英一郎(ふなこし えいいちろう)
職業:ロス市警鑑識員
殺害方法:射殺(38口径)
動機:愛人にそそのかされ
今回の犯人:キャサリン・カルバート(シーラ・ダニーズ)
吹き替え声優:藤田淑子(ふじた としこ)
職業:クリフォードの妻
動機:邪魔な夫を廃除し現在の地位を確保するため。
今回の被害者:ハワード・セルツァー(レイ・バーク)
吹き替え声優:小室正幸(おもろ まさゆき)
職業:投資家
小ネタ・補足
〇2018年11月3日放送『刑事コロンボ 完全捜査ファイル』にて、船越英一郎氏が声優として起用されたきっかけとしては、サスペンスドラマで、コロンボの吹き替えをしている石田太郎氏に、コロンボのファンであることを伝え、犯人役をやってみたいと頼んだところ、石田さん経由で正式に抜擢されたそうである。
ディアゴスティーニの『新・刑事コロンボDVDコレクション』第21号「殺意の切れ味」には、船越英一郎氏のインタビュー記事あり、詳しく読むことができる。
まとめ
「殺意の斬れ味」というタイトルだが、正直パッとしない。どういったストーリーであるのかがわからいのである。これならどのエピソードに名付けてもいいじゃん! となるネーミングは勿体ない。
残念な点とはしては、ラストシーンである。事件が共犯によるものだと、どこで感づいたのかをコロンボ警部が懇切丁寧に映像と共に振り返って説明をするのである。映像をリプレイするのも完全な蛇足のように思えた。
自分としては、刑事コロンボのラストシーンというものは、犯人退場の捨て台詞、動かぬ証拠の提示により物語が終わる鋭い『斬れ味』が醍醐味であると感じる。
いつもよりコロンボ警部が真犯人に気が付くのに時間がかかったりするのだが、警部も最初から全てを見抜いているわけではなく、捜査により導き出した過程を整理し推理していくのだと改めて感じさせる場面でもあった。
犯人の職業設定は良かった。鑑識員という警察側の人間でありながら犯罪に加担するという、お互いに反発し合う関係にこそ面白さ生まれてきた。もう少し年配のベテラン鑑識員の引き起こす殺人事件というもの観てみたかったとも妄想した次第である。
以上、「殺意の斬れ味」でした。