【VS.鑑識員】コロンボの身内に犯人がいるという『権力の墓穴』というエピソードを彷彿とさせます。鑑識員パトリック・キンズレーと愛人キャサリンの共犯です。キャサリンには、横暴な夫クリフォードがおり、邪魔な存在となっていました。そこで、夫と対立関係にある人物を殺害して、その罪を被せるという展開は今までにはありませんでした。
ただ、犯人パトリック・キンズレーが殺人に加担する動機が弱いというのが気になります。愛人であるキャサリンにそそのかされて殺害計画を企てますので、惚れた弱みというやつなのでしょうか?
データ
あらすじ+人物相関図
資産家クリフォード・カルバートは、株取引において不正な情報を提供し、資産を過大に評価し負債の総額を隠していた。このことで、投資家ハワード・セルツァーは莫大な損害を被り、訴訟を起こす準備を進めていた。もし、裁判になれば、いずれ不正があったことが発覚し、クリフォードは無一文になってしまう。
妻キャサリンは、横暴な夫には嫌気がさしており、かといってこのままいけば、現在の贅沢な暮らしはなくなってしまう。そこで、愛人パトリック・キンズレーと共犯となり、訴訟を進めるハワードを殺害したうえで、夫クリフォードに罪を被せる計画を企てる。そうすれば、訴訟相手は消え、邪魔な夫も逮捕される。現在の地位を維持したまま生活できる、一石二鳥のアイディアだ。
パトリックは、娘が病院に運ばれたから電話を貸してほしいと言い、ハワードの屋敷に入った。そこで、彼を射殺する。掃除機でカーペットの繊維と猫の毛を回収すると容器に詰めた。その晩、結婚パーティーに参加した、クリフォードとキャサリンはダンスを踊り、その容器に詰めた繊維を彼のスーツに付着させた。
凶器はクリフォードの銃で、スーツには犯行現場にいたとされる繊維が付着している。また、彼にはハワードを殺害する動機もあった。さらに、パトリックはロス市警のベテラン鑑識員であり、捜査を有利に運ぶこともできるのだった。
人物紹介(キャスト/吹き替え声優)
今回の犯人:パトリック・キンズレー(デヴィッド・ラッシュ)
吹き替え声優:船越英一郎(ふなこし えいいちろう)
職業:ロス市警鑑識員
殺害方法:射殺(38口径)
動機:愛人にそそのかされ
今回の犯人:キャサリン・カルバート(シーラ・ダニーズ)
吹き替え声優:藤田淑子(ふじた としこ)
職業:クリフォードの妻
動機:邪魔な夫を廃除し現在の地位を確保するため。
今回の被害者:ハワード・セルツァー(レイ・バーク)
吹き替え声優:小室正幸(おもろ まさゆき)
職業:投資家
犯行計画/トリック
【訴訟の準備をするハワード・セルツァーを殺害。邪魔になった夫クリフォード・カルバートに罪を擦り付け逮捕させる】
①キャサリンの友人が結婚式の日、夫クリフォード・カルバートにも参加を促す。彼が外出したのを確認すると『葉巻』と、机の引き出しにある『拳銃』を回収し、小袋に詰めた。売店で夫に電話をしつつ、傍の茂みに小袋を置く。それを、愛人パトリック・キンズレーが回収した。
②パトリックは「娘が救急車で運ばれたから電話を貸してほしい」と、ハワード・セルツァーの屋敷に尋ねる。しばらく電話で会話をしたそぶりをする。その後、世間話をして油断したハワードを射殺した。
③ハンディクリーナーで、カーペットにある繊維を回収する。その繊維を容器に詰めた。その後、葉巻の吸い口を十徳ナイフで切り落とし、灰皿に残しておいた。警報機を作動させ、すぐに警察が駆けつける。パトリックは現場を後にすると、凶器の拳銃は海に投げ捨てた。
④キャサリンとクリフォードは結婚パーティーに参加。クリフォードは、彼女の車に繊維を詰めた容器を入れておいた。キャサリンは途中で抜け出し外の車に赴き、そこで容器の中にある繊維をポーチの中に入れた。
⑤キャサリンはクリフォードをダンスに誘う。そこで、繊維を彼のスーツに付着させた。クリフォードにはハワードを殺す動機がある。そして、犯行現場に行ったという繊維の証拠が残る。また、パトリックはロス市警の鑑識員であり、事件を有利に進めることができるのだった。
推理と捜査(第二幕まで)
小ネタ・補足
〇2018年11月3日放送『刑事コロンボ 完全捜査ファイル』にて、船越英一郎氏が声優として起用されたきっかけとしては、サスペンスドラマで、コロンボの吹き替えをしている石田太郎氏に、コロンボのファンであることを伝え、犯人役をやってみたいと頼んだところ、石田さん経由で正式に抜擢されたそうである。
ディアゴスティーニの『新・刑事コロンボDVDコレクション』第21号「殺意の切れ味」には、船越英一郎氏のインタビュー記事あり、詳しく読むことができる。
まとめ
残念な点とはしては、ラストシーンにあります。『最後の戦い』においては、コロンボ警部が自白を引き出すために、互いに仲たがいをさせる作戦にでます。巧みな話術と間を空けて、見事作戦成功します。それはまぁまぁいいです。
コロンボ警部がレストランで『どこで2人が親密な関係』であるのかを、懇切丁寧に映像と共に振り返って説明をするのは蛇足な感じがします。自分としては、刑事コロンボのラストシーンでは、犯人退場の捨て台詞、動かぬ証拠の提示により物語が終わる鋭い『斬れ味』を楽しんでいます。
いつもより警部が真犯人に気が付くのに時間がかかったりしますが、コロンボ警部も最初から全てを見抜いているわけではなく、捜査により導き出した過程を整理し推理していくのだと改めて感じさせる場面でもありました。
犯人の職業がいいですよね。鑑識員という警察側の人間でありながら犯罪に加担するという、お互いに反発し合う関係にこそ面白さ生まれてきます。もうちょっと年配のベテラン鑑識員の引き起こす殺人事件というもの観てみたかったと妄想していました。
また、「殺意の斬れ味」というタイトルですが、正直パッとしません。どういったストーリーであるのかがわからんのですよね、これならどのエピソードに名付けてもいいじゃん! となるネーミングは勿体ないのですよ。
以上、「殺意の斬れ味」でした。