【VS.資産家】今作の脚本は、コロンボ役のピーター・フォーク氏が担当したエピソードです。これが、長年主演をして思い描いたコロンボ像なのでしょうか?
共犯の犯人ではありますが、後半まで共犯者の名前が伏せられています。それにより、主犯であるローレン・ステイトンと共犯の関係性が分かりません。また、後半になるにつれて徐々に明らかになる殺人の動機など、視聴者への隠し事もあります。
さらに、犯人は捜査をかく乱すべく、コロンボに誘惑しデートに誘ったり……。一方で、もちろんコロンボ警部もそのことに気づき、どうしたものかと頭を抱えたりするエピソードです。
データ
脚本・製作総指揮:ピーター・フォーク
監督:ヴィンセント・マケヴィティ
制作:クリストファー・セイター
音楽:ディック・デ・ベネディクティス
本編時間:95分
公開日:アメリカ/1993年10月31日 日本/1995年5月7日
あらすじ
資産家ローレン・ステイトンの屋敷で盛大にパーティーが催された。恋人ニック・フランコがやってきて結婚をしたいという旨を伝えると、ポーカーの勝負があると屋敷を後にした。ローレンは彼を見送ると、ある人物に「ニックがそっちに行くはず」と連絡をした。
パーティー会場を抜け出したニックは、バーで若い女性(リサ)と会っていた。彼が席を離れると、女性は電話boxから連絡をする。その相手はローレンである。2人は殺人計画の最終確認をし合ったのだ。
やがてニックはリサを連れて自宅アパートに戻ると、待ち構えていたローレンにより射殺された。彼女は頭が痛いからと自室に戻り、密かに屋敷を抜け出していたのだった。ローレンはリサに指示をして、パーティー会場に戻った。
パーティーが終わり、ローレンは再びニックの家に向かう。管理人に合鍵を忘れたと告げ、一緒にニックの部屋に向かう。その途中、部屋に残っていたリサが銃を発砲する。そして、遺体の死亡推定時刻を錯覚させるために使用した電気毛布を回収して、窓口から逃走した。ローレンと管理人は、急いで鍵を開けると、部屋にはニックの遺体があった。これで、ローレンのアリバイは成立した。共犯のリサの素性も誰にも知られていない。
人物紹介(キャスト/吹き替え声優)
今回の犯人:ローレン・ステイトン
役者:フェイ・ダナウェイ
吹き替え声優:高畑淳子
概要:ロサンゼルスに住む資産家の女性。3ヶ月前にニック・フランコと出会い交際が始まる。婚約の約束までしていた。しかし、ローマにいる娘リサ・フィオーレもニックと出会っており、彼から暴力を受けていた。このことをリサから打ち明けられ、親子揃って身も心も踏みにじられたことに対する復讐を計画した。
頭痛がすると嘘をつき、別室から抜け出すことで犯行現場に向かう。その際、服用したと言ったのが『アスピリン』である。アメリカ合衆国はアセチルサリチル酸(アスピリン)の大量消費国であり年間に16.000トン、200億錠が消費されているらしい。かなりメジャーな薬のようだ。
血の循環が悪いようで、冷え症らしい。その道の名医に診察を受けたが、これという手はなかった様子。この結果は犯行現場で待機中、外気温は12℃。無意識の内に暖房を22℃で設定して起動させてしまうなど、日頃からの習慣が出てしまったと反省している。
過去は振り返らない性格ということで、事件の次の日には、靴を店で見て回る。その翌日には、美容室でシャンプー+ブロー=75ドル。コロンボ警部の前でも表情よく振る舞っている。警部には、捜査を和らげてもらえるように狙いをもってもって近づき、赤いネクタイや、愛犬ドッグのカゴソファーを購入したりした。※1993年10月:1ドル=106円 75ドル=7950円
自宅は豪華な屋敷のようである。パーティーの招待客は何百人とおり、音楽隊も多数いた。そんな、屋敷の玄関を入るとすぐに飾られているのが、全身白のスーツにトップハット、葉巻を指に挟み、アンティークの椅子に腰かける、おどけた表情の彼女である。葉巻は吸わないとのこと。
夫はローマに住んでおり、だいぶ会っていないらしい。単身ロスに来た理由は不明であり、職業も不明だ。冒頭で着ていた、背中が開いたセクシーな赤いドレスは3人がかりで着たらしい。
今回の共犯:リサ・フィオーレ
役者:クローディア・クリスチャン
吹き替え声優:佐々木優子
概要:ロサンゼルスに来て10日の女性。ローマに自宅があり、ずっとヨーロッパで暮らしていた。まだ、ロスでは知り合いがいない。そのため、ローレン・ステイトンの正体不明の共犯者となり、ニック・フランコを殺害後すぐにローマに帰国する予定であった。
ローレンとは、親子関係にある。親子揃ってニックにたぶらかされたのだ。自身の母親がニックに狙われていると分かったのは、母が彼のイニシャル入りの指輪を身に着けていたからだ。このことをニックに問い詰めると、殴られ、首を締めあげられ、カミソリで切られた。
右首筋には生々しい傷跡が残っている。また、ニックと関係があること、傷つけられたことをローレンに打ち明けると殺すと脅された。電話番号は市外局番818-555-7247である。住所はグロウ・ストリート2200だ。
今回の被害者:ニック・フランコ
役者:アルマンド・プッチ
吹き替え声優:大塚芳忠
概要:ギャンブラーというよりも詐欺師の男性。バーテンダーたちの話によると「その気になりゃあ、どんな人間でも丸め込む」と言われるほど口が上手い。窃盗犯10人グループのリーダーであり、客とカウンターで話をする。その隙に、財布から金を抜き取るなどをしている。
また、女性であれば、年増でも若い女にもすり寄る。年増は金目当て。若い女性は体目当てのようだ。リサ・フィオーレと出会ったのは、ローマである。その後、母親が資産家であることを知り、ロスにいるローレン・ステイトンにすり寄る。交際は3ヶ月前からで婚約者となろうと目論んだ。
イタリア女性が好きなようで、耳たぶを甘噛みしたいという性癖がある。身に着けているものとしては、贈り物なのだろうか?腕にはロレックスに腕時計を装着していた。また、ゴルフクラブの会員であったり、ワイン/チーズ専門店に通っていたようだ。ワイン/チーズに関しては、ローレンが「大好物を用意してくれたり」と言っていることから、彼女へのプレゼント目的だったのだろう。
ギャンブラーとしては、ヨーロッパや色々な場所で勝負をしている。曜日ごとに決まった賭け事をしていたようで、月曜日/金曜日がポーカー勝負。その他の曜日には、違うギャンブルをしていたようである。負け越しが多いようで返済は回っておらず3万ドルの借用証がある。
※1993年10月:1ドル=106円 3万ドル=318万円
また、アパートの管理人の話では潔癖症のようだ。午前中~13:00までの時間、メイドを雇い部屋の掃除をしてもらっている。だが、アパートはほとんど使用していないようで、13:00~外出して、夜間に寝に戻ってくるだけのようだ。外食がメインとのこと。
小ネタ・補足
〇電気毛布で遺体を温めて死亡推定時刻を錯覚させる。顔に被せてないから、そこだけ冷たくならない? また、遺体がガッツリと瞬きをしている。(17:19秒)
〇2話『死者の身代金』で登場した『バーニーの店』が、実に22年ぶりに登場する。
まとめ
コロンボ警部が脚本を書いたのですが、最後に犯人の手首に手錠をかけるのです。ここがなんだが気になります。コロンボ警部には手錠は使わないでほしかった……、そんな願望があったからです。他のエピソードでは、女性犯人に対しは優しくエスコートをする姿が印象的に残っております。
あとコロンボ警部、最後は優しい感じなんですが、中盤は逮捕するために冷淡です。犯人からプレゼントされたネクタイを毎回着けてきます。彼女と別れるとすぐにネクタイを外すのです。彼女の好意を罠だと知りつつも表面上は笑顔で関わります。そして、自身も罠を貼る為に、瞬時に表情を変えつつ接触を図っていくのです。
またリサの家を突き止めると、部屋の鍵をどうやってか開ける。証拠品として、勝手にタンスの中にあった写真をくすめ取っていったのです。犯罪ですよ警部!
以上、「恋に落ちたコロンボ」でした。
母娘共、フランコの餌食だったという悲劇で、犯行自供と引き換えに共犯の娘を無罪放免にしたが、司法取引は検察•容疑者側弁護士とで行うモノで、一現場捜査員の「警部補」のコロンボが独断で決められるモノではなく、この行為は立派な犯罪で、共犯者不明で警察組織が事件解決とする筈が無い。フェイダナウェイに、有終の美を飾らせたい演出が強く出ていましたね。
ルテナントコロンボ様
コメントありがとうございます!
>>司法取引は検察•容疑者側弁護士とで行うモノ
>>共犯者不明で警察組織が事件解決とする筈が無い
刑事が犯人の意向を汲み取り何らかの罪を逃す展開があるとこの点が気になりますよね。日本法律に当てはめ、弁護士の方が犯人の罪状を解説するブログがあります。そこでは、犯人たちを結び付ける証拠はないが、フェイダナウェイ演じる『ステントン』は自白をしたため有罪にできる可能性があるが、フィオーレの方は共犯であると供述しなければ罪を立証できないようです。
>>一現場捜査員の「警部補」のコロンボが独断で決められるモノではなく
おっしゃるように、無令状での捜査・差し押さえもしており、違法捜査のため自白についても虚偽供述になる可能性があるようですね。
大変勉強になるブログですのでご参考までにどうぞ!『弁護士が斬る刑事コロンボ』
>>フェイダナウェイに、有終の美を飾らせたい演出が強く出ていました
当時52歳のダナウェイ氏ですがチャーミングな演技でしたね! ピーターフォーク氏の脚本であり、過去作品のオマージュや、シリーズで唯一の女性二人による共犯、男女関係の描き方などは女性犯人ならではだと思いました。