【VS.女流弁護士】第1話「殺人処方箋」は舞台劇をテレビ用の脚本へと作り直したのに対し、「死者の身代金」は最初からテレビ用に脚本が練り上げられています。この結果、作品のスケールが大きいものとなり、テレビの映像をフルに活かした編集となりました。
このテレビの演出を駆使したダイナミックな殺人計画が大盛況を呼び、コロンボがシリーズ化されることが決定的になったエピソードです。
1話のコロンボでは捜査方法が確立されていましたが、このエピソードではコロンボというキャラクターが完成しております。ボサボサ髪にレインコートという姿。固かった表情もなくなり、笑顔が多くなっています。
データ
あらすじ+相関図
弁護士レスリー・ウィリアムスは、自宅で脅迫文書を作成すると、帰宅した弁護士会会長の夫ポールを銃で射殺する。その遺体を海へ遺棄したのだった。そして、夫を誘拐したという脅迫文書を自分宛に送り、架空の誘拐事件を作り上げた。
FBI主導の監視下のもと、直前で身代金の入っていないバッグをすり替え、存在しない犯人に金を支払ったように偽装する。やがて夫の遺体は発見され、犯人不明のまま身代金は戻らないという筋書きを完成させたのだった。
人物紹介(キャスト/吹き替え声優)
今回の犯人:レスリー・ウィリアムス(リー・グラント)
吹き替え声優:山東 昭子(さんとう あきこ)
追加吹き替え:弥永 和子(やなが かずこ)
職業:弁護士
殺害方法:射殺
動機:社会的地位の保持/遺産相続金の獲得
被害者:ポール・ウィリアムス(ハーラン・ウォード)
吹き替え声優:水島晋(みずしま すすむ)
職業:弁護士
犯行計画/トリック
【架空の誘拐犯の犯行に偽装】
①レスリー・ウィリアムスは、自宅で脅迫状を作製する。そして、帰宅した夫・ポールを銃で射殺した。遺体は毛布で包み夫の車で移動。海へ遺体を遺棄すると、自分宛の脅迫状を郵便ポストに投函した。これで、翌日には自宅に配送される。そして友人に翌日12:15に、忘れないように一言だけ「テニス」と連絡をしてほしいと頼んだ。
②次の日、友人から電話を一言だけ受け取ると電話を切り、架空の誘拐犯とのやり取りを演じる。自宅に帰ると脅迫状が届いているため、警察に通報して架空の誘拐事件を発生させた。
③FBIが捜査を主導する。レスリーの事務所にあるタイマー付き自動電話で、録音されたポールの声が、決めておいた時間に再生される設定をしておく。指定の時間に電話が鳴り、レスリーが受け取ると嘘のやり取りをして身代金を準備する流れとなる。身代金は貯金や株を切り崩して用意した。
④小型飛行機で、空から身代金の入ったバッグを投下するように指定している。バッグは2つ用意しており、直前で空のバッグとすり替えをした。空のバッグを投下したことで、犯人は金を盗み逃走したと思わせる。その後、レスリー自身が屋敷に金を隠した。後日、夫の遺体を発見され、身代金不明のまま誘拐事件を終える。
推理と捜査(第2幕まで)
三幕構成
小ネタ・補足
〇コロンボ警部の大好物『チリ』が初めて登場するエピソードである。
〇コロンボファンである三谷幸喜氏の脚本『ラヂオの時間』で、「女弁護士と言えばパイロットです」というセリフがあり、このエピソードが元ネタだと思われる。
〇マーガレットの役者は『パトリシア・マティック』である。1951年7月31日生まれで、2003年12月6日で亡くなられている。享年51歳で死因は癌だったようだ。(海外Wikipedia参照※英語です)
〇マーガレットが朝のリビングで見ていたモノクロテレビの内容は、ビリー・ワイルダー監督の映画『深夜の告白』である。
まとめ
女流弁護士が犯人のエピソードなんですね。部下からも弁護士として腕の確かさが認められており、法廷のシーンでは相手側から圧勝という結果を残しております。地道に弁護士としての仕事を続けていれば、おのずと評価され確かな地位と名声を手に入れることができたのではないでしょうか?
この事件の発端は、レスリーの性格に集約されているんですね。「欲深く・自信家」であること。レスリーは、殺人という最短距離のルートを選んでしまったのです。邪魔になった夫を殺害するだけではなく、義娘への相続金も着服するという、一石二鳥の計画だったのですね。
ただこの時代、女性の社会進出への壁が大きかったようにも思えます。コロンボ警部も「よく勤まるね。ボスが女でしょ」なんて、犯人の部下に聞いてたりしていました。
弁護士として確かな腕を持っていますが、女性という理由で誠実な評価を得られない。だから、弁護士会会長のポールと結婚して、確かな地位を獲得する必要が彼女にはあったんですね。しかし、離婚が決まればこの地位が失われてしまう。
これから先、女流弁護士として高みを目指していくためには、どうしても弁護士会会長の妻という肩書にこだわる必要があったんですね。悲しい時代背景があるエピソードだとも考えられます。
以上、「死者の身代金」でした。
やはり「身代金のために娘の年金まで換金」したのが最大のミス?!
それさえ残しておけば娘に口止め料を払うために身代金(紙幣番号を記録されている)の一部を出さなくて良かった!
それからレスリーは夫を撃つ時には立って撃つべきだった!
それがコロンボをして自宅が犯行現場じゃないかと勘ぐらせる原因?!
みんなはレスリーの電話でのやり取りがミスだと思いたいようだが、僕は全財産を換金したのが原因だと思いたい!
Vermilion Swan様
コメントありがとうございます!
>>「身代金のために娘の年金まで換金」したのが最大のミス?!
>>全財産を換金したのが原因
そうですよね。義娘の生活費だけでも確保していれば上手くいったように思えます。
犯人レスリーは帰国した義娘マーガレットに対し、「帰ってくるとは思わなかったわ」と話していました。
皮肉で言ったのかも知れませんが、義娘の帰国は予定外だったのではないでしょうか?
そのため、義娘への相続金も全部回収しようとして欲がでてしまったのでしょうね。
家族が誘拐され、命の危険があると知れば帰国してきても不思議ではないはず。
なのにレスリーはマーガレットが帰国してきたことに驚いていた。
この場面でレスリーという女の異質さが表れてますね。
演じたリー・グラントはアカデミー賞助演女優賞の常連ったほどの女優だそうですが、このエピソードを見ただけでその実力がよくわかります。
吹き替えた山東昭子さんは政治家になっていて役者活動は永らくやってないそうですね。
しかし何年か前、選挙特番で山東さんがコメントしていた場面をみましたが声を聞いて驚きました。レスリー吹き替えの時と変わってない!
あれ?40年は経ってるはずだし、役者活動も長年やってなくて、(特番当時)70歳半ばでこの声?
昔の役者ってスゴイなぁって思いました。
≫選挙特番で山東さんがコメントしていた場面をみましたが声を聞いて驚きました。レスリー吹き替えの時と変わってない!
そうなんですね! 政治家は声が武器ですから、声帯が衰えていないんでしょうね。
≫レスリーはマーガレットが帰国してきたことに驚いていた
金には代え難い人の思いがある。それが分からないレスリーの性格がうまく伏線になってましたね。