『古畑任三郎』第1シーズン第3話「笑える死体」は、シリーズで最初に撮影されたエピソード1であり、その後の作風を決定づけた重要な回でもあります。
本記事では、「笑える死体」の台本(改訂稿)をもとに、ドラマ本編との違いや、実際には使われなかった設定・演出を詳しく解説します。
デコパッチン誕生の経緯や、台本段階で存在していた「ビデオカメラの映像」という未使用アイデアなど、作品をより深く楽しむための裏側を読み解いていきましょう。
笑える死体の簡単なあらすじ
精神科医・笹山アリ(古手川祐子)は、クリニックの元患者・田代慎吾(羽場祐一)と恋人関係にありました。
しかし、田代は別の女性と婚約。失恋した笹山は、自分を振った田代への復讐を決意します。
人を驚かせることが好きだった田代の性格を利用し、誕生日を祝う名目で彼を自宅へ招待。
いったん部屋の外へ締め出し、ストッキングを被ってベランダから入ってくるように仕向けたうえで、バットで撲殺してしまいます。
そして、自分の部屋に強盗が押し入ったように偽装し、正当防衛による殺人を主張するのでした。
笑える死体 台本の外観と基本情報


ドラマ本編との違い①|田代慎吾の年齢設定

「笑える死体」の台本では、田代慎吾(羽場祐一)の年齢は27歳と設定されています。しかし、ドラマ本編ではこの設定が変更されていました。
- 免許証に記載された生年月日:昭和38年9月17日
- 東急ハンズで購入したレシートの日付:1994年3月16日
昭和38年は1963年。
つまり、ドラマ版の田代は30歳となり、笹山アリと同年代に変更されています。
なお、余談ですが小説版では
- 笹山アリ:34歳
- 田代慎吾:27歳(7歳年下)
という設定になっています。
ドラマ本編との違い②|デコパッチンは台本にあったのか

『古畑任三郎』第3話「笑える死体」は、古畑が今泉慎太郎に“デコパッチン”をする演出が初めて登場した回でもあります。
問題の場面は、
「被害者は泥棒を装って侵入したはずなのに、なぜ靴をきちんと揃えてベランダに置いていたのか」
という点を古畑が疑問に思い、今泉に問いかけるシーンです。
今泉が靴のメーカーを「クラリーノ」と答えた直後、古畑からデコパッチンを食らいますが、この演出は台本には存在しません。
実は撮影時、田村正和さんによるアドリブだったそうです1。
このデコパッチンはその後の脚本にも受け継がれ、古畑が今泉の回答に満足できなかったときの“お決まり”として定着。
総集編『消えた古畑任三郎』では、
今泉自身が「愛のムチ」と受け取っているという台詞まで登場します。
ドラマ本編との違い③|カットされたビデオカメラの映像
セリフ回しに関しては、台本とドラマ本編でほぼ違いはありません。
しかし、物語の展開に関わる重要なやり取りがカットされています。
それは、古畑がストッキングを被り、
タバコを吸う印象的なシーンの直後に続く場面です。


古畑「夜中にゴミ出す人が多いんで、マンションの管理人さんが隠しカメラをセットしたんです」
ドラマでは、犯行後の笹山アリが
田代の用意した料理やパーティーグッズを黒いゴミ袋にまとめ、
マンション内のゴミ置き場へ捨てに行く描写があります。
台本ではこの行動が隠しカメラの映像として記録されている設定になっており、
古畑がダビングしたビデオテープを見せて
ゴミ出しの時間について犯人を揺さぶる、という展開が用意されていました。

さらに、料理をしながらの会話の中で映像を検証した結果、
ゴミは2階16号室の住人・岩崎さんが
深夜2時半ごろに捨てたものであることが判明。
その後は古畑と犯人が料理をするシーンのなかで、隠しカメラの映像に映っているタンスを調べると、2階の16号室の住人・岩崎さんが夜中の2時半頃に捨てたものであり、犯人は被害者の殺害後、ゴミを捨ててから警察に通報したことが証明され、改めて大した度胸の持ち主であると古畑から言われます。
まとめ|笑える死体の台本から見える初期・古畑任三郎
脚本の最初の原稿は「初稿」と呼ばれますが、今回読んだ台本は改訂稿にあたります。
関係者とのやり取りを重ね、
三谷幸喜さんが細かな加筆・修正を施すことで、ドラマとしての完成度を高めていったことがうかがえます。
その過程で、「ビデオカメラの映像」という犯人を追い詰めるためのアイディアは、本編から削除されました。
もし初稿の段階から残しておきたかった設定だとすれば、『古畑任三郎』の世界にも
監視カメラという概念が存在していたことになり、個人的には新鮮な驚きでした。
実際、ドラマシリーズでは監視カメラや隠しカメラは一度も登場しません。
これが物語の中で本格的に扱われるのは、
小説版第2作『殺意の湯煙』(2022年)が初めてとなります。
なお、デアゴスティーニ『古畑任三郎DVDコレクション(2)』では、このビデオカメラ設定の存在や、撮影時のエピソードが多数紹介されています。
本記事は、その内容を補足しつつ
「台本ではどのような構成だったのか」を知るための参考資料として読んでいただければ幸いです。

ちなみに、デアゴスティーニには掲載されていない小ネタとして、ダビングしたビデオテープの中に古畑が下手なカードマジックを披露する映像があり、犯人に呆れられる、という場面も台本には残されていました。
以上、『古畑任三郎の台本を読む|笑える死体』でした。
同じく第1シーズン『殺人特急』の台本も解説していますのでよろしければお読みください。
参考・引用資料
- 三谷幸喜『古畑任三郎 殺人事件ファイル』フジテレビ出版、1994年
- ハヤカワミステリマガジン『カムバック、古畑任三郎( №752)』早川書房、2022年




コメント
凄いですね
感心します
再放送を見る時はこちらのサイトを参照しながら楽しませて頂きたいので残しておいてください!笑笑
ありがとございます! 台本に関しては『殺人特急』も記事として挙げてますので何かの合間にどうぞ
殺人特急
鹿賀丈史の回ですね
ぜひ読ませてもらいます(・∀・)!