法廷画家・坂野恭二は、15年前に自動車事故で妻を失うが、事件の被告は無罪となっていた。その弁護を引き受けていたのが杉本浩紀(田中要次)である。彼はどのような人でも弁護を引き受け無罪を勝ち取ることから、多くの被害者や遺族から恨まれていた。
坂野も復讐の機会を伺い、ある裁判で杉本と再会を果たすと、彼を裁判所の屋上に呼び出して転落死させた。現場状況から坂野の犯行が疑われるのだが、その時刻、黒羽ミコ(篠原涼子)は弟で弁護士の慧(染谷翔太)が担当する裁判を傍聴しており、坂野が法廷画家として席に座っているのを目撃してていたため、ミコ自身がアリバイの証人となってしまうのだった。
データ・スタッフ
脚本:中園勇也
音楽:野崎美波
演出:筧昌也
プロデュース:宮崎暖
制作プロデューサー:熊谷理恵
製作:フジテレビ
放送日:2024年5月10日
放送時間:46分
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:坂野恭二(さかの・きょうじ)
役者:渡辺篤郎(わたべ・あつろう)
概要:法廷画家の男性。15年前に妻を自動車事故で亡くしており、その日以降は絵が思うように描けなくなっていた。その事件の被告は裁判では無罪となり、2年後には再び自動車事故を引き起こして死亡してしまう。やりきれない思いは、やがて弁護を引き受けていた杉本浩紀への復讐に傾き、建設会社事件の法廷で再会を果たすと、裁判所の屋上に呼び出して転落死させた。
法廷画家として仕事するようになったのは妻を事故で亡くした時からである。法廷画は水彩で描いているが専門は油絵であり、冒頭のポスターなどを確認すると、2008年の第62回「日本麗会展」では大賞を獲得、「破顔」というタイトルで個展なども開催していたようだ。
今回の被害者:杉本浩紀(すぎもと・ひろき)
役者:田中要次(たなか・ようじ)
概要:弁護士である男性(55歳)。弁護方針としては、どのような人でもお金を払えば弁護を引き受け無罪を勝ち取るため、多くの被害者・遺族から恨まれていた。
冒頭では、茄子原建設の弁護を引き受けており、原告である下請け会社「梅坂工務店」が起こした死亡事故は施工計画書通りに進めなかったのが問題だと逆に追いつめていた。被害者は恨みを覚えるかも知れないが、弁護人は被人の無罪を勝ち取るという徹底した価値観の持ち主のやり手である。
その他キャスト
役 者 | 概 要 |
辻川慶治(つじかわ・けいじ) | 役名:榊(さかき)。被害者遺族 |
蒼木陣(あおき・じん) | 建設会社事件の検察官 |
八代祟司(やしろ・たかし) | 建設会社事件の梅坂工務店社長 |
氏神一番(うじがみ・いちばん) | 建設会社事件の裁判官 |
空美(くみ) | 犯人・坂野恭二の亡き妻 |
阿蘇山大噴火(あそさんだいふんか) | 505号法廷のパワハラ事件の加害者(監督) |
高山純平(たかやま・じゅんぺい) | パワハラ事件の被害者(坊主頭) |
黒田よし子 | パワハラ事件の裁判官 |
稲村星(いなむら・しん) | 森野徹(バカリズム)風の裁判所職員 |
古畑任三郎からのオマージュ
●”先入観で物事を捉えてしまう”という発想は、同じく法廷を舞台にした古畑任三郎『しゃべりすぎた男』から着想を得ていると思われる。 それに関連して作中では黒羽ミコ(篠原涼子)が、額に一指しを当て古畑任三郎のような姿を見せる場面があった。
小ネタ・補足
●犯人である坂野恭二は、妻の絵画の右目や口元だけは描いていなかった。犯行後に目を描こうとしたことから、ダルマの願掛けのような思いがあったのだろう。
●被害者である杉本浩紀が吸っているタバコの銘柄は『BoBA』である。これは、演じた田中要次のデビュー作の役名であり、スタッフ時代からの愛称や自身でもボバ呼びをしていることから、それにちなんだネーミングになっている。
まとめ(評価:嫌い)
復讐は何も生まないって言いますけど
復讐をしてもしなくても
大切な人は帰ってこないので
復讐した方がスッキリするんじゃないかなって思います!
電脳少女シロ『アニメやマンガのあるあるネタを即興でやったら負荷が高すぎた!(2018/09/10 19:00)』(https://www.youtube.com/watch?v=rpzvT32vYCw)より引用
法では裁けない相手がいる……。 そんな事態に直面した際にあなたならどうするでしょうか? そうですね復讐だ! ということで、復讐+アリバイ崩しがテーマのエピソードになっています。
犯行時刻には法廷画を描いていたというアリバイトリックですが、「どうやったのか」という部分は特に視聴者には伏せられていません。それよりも、どのようにしてアリバイを崩すのかがメインになっているんですね。
しかしながら、肝心な詰め手部分は記憶が決め手となっており、決定的な証拠とは言えない盛り上がり難い解決編で爽快感は感じませんでした。そもそも、見たまま表現していたあの部分ですが、本来はどうするつもりだったのでしょうか? そう考えると犯人は自主する決心があったのだと思います。
なぜなら、この事件の犯人は過去に妻を失ったことでイップスに陥り絵が描けなくなりました。そのため、復讐を完結させることで再び妻の絵画を描くことができると思っていたんですね。ところが、顔が描けません。犯人なりにもがき続けた結果がリスタートできなかった。
心に抱えた過去の問題は根深く、大きく開いてしまった穴は閉じないということが分かる場面は、犯人を演じた渡部篤郎さんの言い回しや表情が見事に演じきっておりました。逆に言えばここがドラマ最大の見せ場でそれ以外がイマイチです。
さて、ドラマ『イップス』の作品テーマは、黒羽ミコ(篠原涼子)が繰り返し述べているように、「もがき続ければリスタートできる」だと思います。
その点を踏まえ今作品は、主人公が自分の価値観を考え直すきっかけの犯人であると同時に、物語のターニングポイントに突入する回なんですね。W主人公である黒羽ミコ・森野徹も過去の事件と向き合わなければならない瞬間が来たのです。
来週以降は、篠原涼子とバカリズムが演じるキャラクターの『過去の事件には複雑な背景があった』という、おそらく犯人視点から進んできた倒叙ミステリの形を破ったストーリー展開になることが予告から察することができるのですが、個人的には倒叙のまま観ていきたかった思いもあります。
以上、【イップス(ドラマ)|5話『法廷画家は誰がために』ネタバレあり感想】でした。
参考サイト
・フジテレビ『イップス ニュース17』(https://www.fujitv.co.jp/yips/news/index17.html)、2024年5月10日閲覧
・フジテレビ『イップス ニュース18』(https://www.fujitv.co.jp/yips/news/index18.html)、2024年5月10日閲覧