「鮮やかさは人を惹きつけ、色はアイデンティティを明確にする」
『ジョルジオ・アルマーニ 帝王の美学』124pより引用
華やかなファッション業界で起こる殺人事件になります。見た目のインパクトがある、『ピタゴラスイッチ』を用いたトリックはNHKのなせる業!
データ
脚本:西田征史
製作統括:谷口卓敬
制作:NHK
演出:田中健二
音楽:佐藤俊彦
本編時間:58分02秒
公開日:2012年11月10日
あらすじ+人物相関図
ファッションデザイナー・鈴村真沙美(夏木マリ)は、会社の共同経営者・吉川和子(黒田福美)から引退を勧告される。かつては一世を風靡していたが、現在の流行からは大きなズレがあった。すでに人気は下火となり、会社は大きな損失を生んでいたために新しいファッションデザイナーを雇い入れるのだという。
鈴村はオフィスで吉川を撲殺すると、彼女に成りすましアパートに戻ると、強盗に襲われて殺されたように偽装する。空になったオフィスでは作動させていたピタゴラ装置を用いてアリバイを作り上げたのだった。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:鈴村真沙美
役者:夏木マリ
概要:ファッションデザイナーの女性。かつて人気デザイナーであったが、今は落ち目となり会社の経営は悪化していた。そんな折、共同経営者・吉川和子からブランド存続のため、デザイナーの変更をするとクビを宣告されたため犯行に及んだ。
和子とは20年以上の付き合いである。当時全くの無名であったがデザインを評価し、会社『FLAME』の専属デザイナーに抜擢した。世界で通用する服を作ろうと二人三脚で歩み、かつてはヨーロッパの随所でショーを開催するほどのデザイナーであった。
しかし、流行は変化するものであり時代に取り残されてしまう。もはや服のデザインだけで勝負できる力は残っていなかった。そのため、服そのものよりもショーで派手なことを仕掛けたり、奇抜さやエッジの立ったものばかりを作るようになり、作品そのものをごまかし続けた。
和子を殺害後、満を持して臨んだファッションショーのテーマは『産業革命』であり、歯車を基調として舞台とファッション。噴煙や眩いスポットライトが交差し、犯行に利用したピタゴラスイッチが目玉となるド派手なショーであった。この演出からも、服そのもので勝負するよりショーでごまかしているという感じが伺える。
ファッションショーが終わり、記者からの最初の質問が、「ここ数年のFLAMEのショーは空席が目立つ。理由としてデザインがステレオタイプの前衛的表現に収まっているからだと批評する評論家もいるが」と、いきなりこんな質問されるということは、栄枯盛衰な時期になっているようだ。
作風の変化はパリでのショーの後かららしく、他の作品の影響を受けてしまったのか、このままの自分の作品では通用しないと感じたのだろうか? フランス語は堪能であり、パリのデザイナーとも流暢に会話をしている。日本酒が好きなようで、大衆居酒屋では升で飲んでいた。
今回の被害者:吉川和子
役者:黒田福美
概要:会社経営者の女性。『FLAME』の専属デザイナーとして、設立当初からの付き合いであった鈴村真沙美を起用していたが、会社の経営は火の車で潰れるのは時間の問題であることから、ブランド存続のため来期からは新しいデザイナーに鞍替えする予定であった。
鈴村との出会いは20年前になるが、その頃から既に経営者として活躍をしており、当時全くの無名であった鈴村を高く評価し専属デザイナーに抜擢。『二人で~女性実業家の奮闘記』というタイトルで本を出版しており、当時の思い出が綴られているそうだ。
会社『FLAME』のネーミングは、『炎のような情熱』をコンセプトに名付けられている。服の値段は1着10万円はくだらない品ばかりであり高級店である。
事件当日は、18時には成田空港からパリのセレクトショップオーナーに会いに行く予定であった。自宅は防犯対策に鍵を2錠追加し、部屋には『トルソー(マネキン)』に服を着せており、日夜ファッションの組み合わせを研究していたのであろう。
小ネタ・補足
〇犯人・鈴村真沙美を演じた『夏木マリ』氏は、役作りのイメージとして、「ソニア・リキエル」氏を意識したそうである。(オーディオコメンタリー31分15秒より)
〇FLAMEのスタッフが集まったシーンを確認すると、男性5人、女性8人の計13人が在籍しているようだ。
まとめ
実験刑事トトリ第1シーズンの中で1番印象に残った動機でした。犯人の犯行から描かれる倒叙形式であるため、必然的に動機というものが視聴者にも分かった状態で物語は展開するのですが、その裏にある『ふとした瞬間に芽生える殺意』というものが実に見事に描かれておりました。
また、印象に残るトリックでもあります。美術スタッフの手腕が素敵な『ピタゴラスイッチ』を用いたトリックなんですね。トリック自体は非常にシンプルなのですが、この装置が映像映えします。さすがNHK制作といったところです。
一方で、遺体を旅行トランクに入れて運びだすのは、1話のクーラーBOXに入れて運ぶ犯行計画と内容が被ってしまうのはデジャヴ感がありました。
コメディーが色濃い回でもあり、被害者の部屋に残された服と靴のセンスが合わないことから疑問を抱き、相棒の安永を利用してヘンテコな組み合わせの服を犯人に見せていくんですね。
単純な安永はセンスの良い組み合わせだと思ってたりしてキザなポーズを決めたりと、振り回される相棒役を熱演してます。また、フランス語が話せそうで話すことができなかった都鳥のやりとりも面白かったです。
白いフラミンゴのままでも、十分周囲の目を引きつけられたのかもしれません。
都鳥刑事は、毎回エピソード毎に動物に関するうんちくを披露するのですが、上記のセリフは、犯人の境遇ともマッチした格好良いセリフ回しでした。
以上、実験刑事トトリ 第2回『女はドレスに罪を隠す』でした。