刑事コロンボ 4話『指輪の爪あと』探偵社社長が引き起こした過失致死事件

刑事コロンボ 4話 指輪の爪あと

過失致死として進む事件で、コロンボ警部は銃を持ち歩かないことが判明するエピソードです。刑事ドラマだと銃を持ち歩いているばかりに、犯人から盗られてアクションシーンが勃発したりすることもあるのですが、最初から銃を持っていないためそのようなシーンは発生しません。

刑事ドラマのお約束を真っ向から否定したようなスタイルは、今なお愛される理由なのかも知れませんね。犯人は探偵社社長であるブリマーですが、メガネに事件隠滅の映像がうつる演出は大好きです。

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データ

脚本・制作:リチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンク
監督:バーナード・コワルスキー
ストーリー監修:スティーヴン・ボチコ
音楽:ギル・メレ

本編時間:76分
公開日:アメリカ/1971年10月6日 日本/1973年1月21日

あらすじ

探偵会社社長のブリマーは、財界人アーサー・ケニカットからの依頼を受け、妻レノアの素行調査を実施し、浮気の事実はないと報告書をまとめて伝えた。だが実際には彼女は浮気をしており、隠ぺいの見返りに、アーサーが経営する新聞会社に集まる情報を求め脅迫したのである。その夜、ブリマー宅にやって来たレノアは、浮気の事実を白状して脅迫されたことも夫に打ち明けると伝えた。事実が明るみになれば探偵会社としての信用を失う。部屋から出ようとする婦人を止めようと揉み合いになると、思わず婦人を殴りガラスのテーブルに頭を打ちつけ殺してしまうのであった。

人物紹介(キャスト/吹き替え声優)

今回の犯人:ブリマー
役者:ロバート・カルプ

吹き替え声優:梅野泰靖

概要:大手探偵会社の社長である男性。有力新聞3社を経営する大物財界人アーサー・ケニカットから、妻レノアの不倫調査の依頼を受ける。調査の結果は不倫は事実であったが、嘘の報告書をまとめ不倫はなかったとアーサーに報告した。レノアに不倫をしていた真実を隠した見返りに、新聞社に集まる情報を求め脅しをかけるも、彼女は不倫をしていた事実を夫に打ち明けると腹を括る。そのうえで、脅されたことも大々的に告発すると話したため、口論の末に誤って殺害してしまった。

元・警察官であり、退職して探偵会社を設立したようだ。今でこそ大手探偵会社であるものの、夫人が不正を白状しに部屋からでようとした際には、軌道に乗るまでは大変だったという話をして制止しようとしていた。

オフィスには金属探知機、最新のデータ室、監視カメラ、射撃場、広い駐車場に多数の車など、かなり大規模で真新しい設備を完備している。部下によると給料も高いらしく、貰っている人は3万ドルの人もいるようだ。(1949~1971年=1ドル:360円=1080万円

探偵という職業柄、情報と信頼は第一と考えている。アーサー・ケニカットは有力新聞会社を3社経営するワンマン社長であり、財界にも顔は広い。そのため財界人は次の州知事選で、誰に投票をするのかという情報を狙っていたようだ。ただし、その方法を間違ってしまったのが運の尽きである。

一見冷静沈着とみられるが、短気で頭に血が上りやすい性格である。このことは、部下からも見抜かれており、機嫌が悪い時には傍に寄らないようにしているようだ。

普段は左利きであるが、右手でも文字は書ける器用な人物でもある。冒頭の射撃テストでは両手に銃を持ち、2丁拳銃でど真ん中を射抜いてみせる腕前である。

コロンボの手相占いによると、「強烈な意思と仕事に対する熱意、知能線のカーブの仕方が1万人に1人というタイプで頭が切れすぎる。好調の時はこれ以上の強みはないけれど、いったん曲がってくるとどこまで反れるかわからない。親指の大きさ=野心が大きい」と評価された。

自宅は海岸沿いにあるビーチハウスである。住み心地は良いが、車のホイールが錆びてしまうのが気がかりだと話している。


今回の被害者:レノア・ケニカット
役者:パット・ローリー

吹き替え声優:池田昌子(いけだ まさこ)

概要:アーサー・ケニカットの妻である女性。アーサーとは娘に間違えられるほどの年齢差がある。前々から男性関係が多く不倫が多かったようだ。付き合ってすぐに別れることがほとんどで、熱しやすく冷めやすいタイプらしい。

ブリマーから不倫の事実を突き止められ、これをアーサーに報告しない見返りに、新聞社に集まる情報を提供するように脅される。1晩悩んだ末に彼女が出した結論が、全てを犠牲してでも夫に全てを打ち明けることであった。この点から、アーサーに迷惑を掛けまいとする思いが感じ取られ、歳を超えた心からの愛があったのだと思われる。

結婚時はメガネを装着していたが、最近ではもっぱら、女性の身だしなみの理由からコンタクトレンズを装着するようになった。趣味はスポーツ。特にテニスとスキンダイビングを好んでいた。ゴルフは最近初めて、ここでゴルフインストラクターの男性と不倫関係に発展する。ここを、ブリマーの探偵会社社員に目撃されてしまったようだ。

別荘が海辺の近くにあり、ブリマーの自宅とは3キロほど離れているそうだ。

小ネタ・補足

〇コロンボ警部がゴルフをして、見事なショットを決める場面がある。ピーター・フォークの自伝によると、売れない俳優時代はもっぱらゴルフばかりをしていたから。しかし、給料はしっかりと貰えていたと綴っている。

〇犯人『ブリマー』のファーストネームはエピソード中に明かされていない。ノベライズ版によると、『マイケル』と明記されている。

〇被害者の夫アーサー・ケニカットを演じる『レイ・ミランド』は、11話『悪の温室』の犯人「ジャービス・グッドウィン」として登場する。

〇52分15秒~コロンボ警部とブリマーがオフィスで食事をする場面がある。そこで、コロンボ警部のネクタイが料理に垂れ下がってしまい、ブリマーが指でネクタイを拭いてあげるシーンがある。『刑事コロンボ レインコートの中のすべて』P.74によると、これは偶然によるアドリブだそうだ。

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まとめ

職業設定と展開が見事なエピソードでした。探偵会社の所長が犯人で、なんと自分が起こした殺人事件に警察の協力者として捜査に加わるなんて、ふてぶてしくも大胆不敵な犯人であります。コロンボ警部と最初に出会った場面では「優秀な刑事だと聞いています」とも言っており、部下に下調べさせるほどの抜かりのない人物として描かれているんですね。やはり印象的なのが、ブリマーのメガネに映しだされる、殺人後の隠ぺい工作のシーンでした。ちょっと長いのですが、面白い演出だと感じます。

以上、第4話「指輪の爪あと」でした。

  1. ひねりの効いた斬新なエピソード。
    私はベスト10に入るんですが不思議と人気がないんですよね。

    この回のラストシーン、レイ・ミランドの演技が素晴らしいんですよね。
    少し笑ってしまうけどカッコいい立ち振る舞いが秀逸。

  2. ≫ひねりの効いた斬新なエピソード
     いいですよねー。探偵が犯人で捜査に協力するなんて設定も面白いです。名犯人ロバート・カルプさん初登場であり、神経質そうな顔とか好きです。

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