【VS.議員秘書】「人の心を読むときは、相手の目を見て話して下さい。逆に、心を読まれたくない時は絶対に目を合わせないことです。鼻を見て話して下さい。相手の鼻です。自分の鼻じゃありません。言葉の裏を読むのがうまい人にありがちなのが…」
データ
あらすじ+人物相関図
参議院議員・鵜野忠国は、コンパニオンガール・沢田マリと愛人関係にあった。ある晩、議員秘書・佐古水茂雄を交えて三人で密会を行う。沢田に金を渡し、愛人関係の解消を申しでたのであった。議員にとって、愛人との関係が公になれば失脚にも繋がるからだ。
だが沢田は、それを拒否し部屋から出ていこうとする。佐古水は彼女を止めようと揉みあいになると、とっさに手を出してしまい気絶させてしまう。鵜野は彼女を始末するように指示をすると、佐古水は睡眠薬を大量に服薬させ中毒死させたのだった。
すると鵜野は、愛人は佐古水と関係があり、別れを告げられたために自殺したという筋書きを立てた。最初から身代わりにするつもりだったのである。逆上した佐古水は、鵜野を置き物で殴りつけて殺害。沢田との無理心中に偽装した。しかし、警察の現場検証が始まると、なんと鵜野は一命を取り留め病院へ運ばれたという。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:佐古水茂雄(さこみず しげお)
役者:小堺一機(こさかい かずき)
職業:議員秘書
殺害方法:薬殺
動機:逆上
今回の被害者:沢田マリ
役者:泉本のり子
職業:コンパニオンガール
名前:鵜野忠国(うの ただくに)
役者:森山周一郎
職業:参議院議員
犯行内容/トリック
【参議院議員・鵜野忠国と愛人・沢田マリの無理心中に偽装】
①佐古水茂雄は、部屋から出ていこうとする沢田マリと揉みあいになる。とっさに手をあげてしまうと、床に倒れて気絶した。寝室に運び出すとベッドに寝かせる。引き出しの中にあった睡眠薬を、大量に服用させて中毒死させた。
②鵜野忠国は、佐古水と沢田は愛人関係あり、彼女が別れを告げられて自殺したという筋書きを立てた。自身を身代わりにしたことに逆上し、置き物で鵜野を撲殺。その後、置き物を沢田に持たせ指紋を付着させる。コードレス電話機をベッド近くに置いた。
③佐古水は自身の指紋を消すと、車で行きつけのバーに向かう。そこでママさんと相席すると、トイレに行くと席を離れる。店内にある公衆電話から、自分の携帯電話に通話し席に戻る。携帯電話では、これから自殺をするような内容の話をでっちあげる。これで、ママさんがアリバイの証人になる。
④急いで車に戻り、マンションに戻る。しかし、警察がすでに現場に到着していた。室内の火災警報器が作動して、管理人が通報。遺体が発見されていたのだった。また、殺したと思っていた鵜野が、一命を取り留めており病院へ搬送されたのだという。
視聴者への挑戦状
「えー、鵜野先生を殴ったのは十中八九、佐古水です。肝心の鵜野先生の記憶がなくなっていたのは痛かったです。でも、考えがあります。今日はひとつ、仕掛けをしてみようと思います。佐古水を自白に追い込むための仕掛けを。ただし、鵜野先生は記憶喪失状態。仲間に引き入れることは不可能です。あなたならどうするか。考えてみてください。古畑任三郎でした」
三幕構成
小ネタ・補足・元ネタ
〇佐古水茂雄が、今度こそ鵜野忠国を殺害しようと使用した凶器を、古畑任三郎が回収した際のセリフ「こういうのを証拠っていうんです」は、刑事コロンボ第42話『美食の報酬』のコロンボのセリフからの引用である。
まとめ
コメディ回になります。第二シリーズでは、「間違えられた男」。第三シリーズでは、「追い詰められて」と、各シリーズに必ずコメディ回が入っております。古畑任三郎のドSぶりを、遺憾なく発揮されるのを垣間見ることができるんですね。
まずこのエピソードで魅力的な点としましては、『共犯になるのかと思いきや』になります。主犯は森山周一郎さんと大御所が「どーん!」と登場するわけなのですが、その主犯も殺害したうえで愛人との無理心中に偽装するんですね。1~9話まで共犯が登場しなかったわけですから、これにはまず騙されちゃいます。
さらに『殺したと思っていた主犯が生きていた』これには犯人もヒヤヒヤするわけです。運が悪いことに、古畑の部下・今泉慎太郎が痔の手術のため、主犯が搬送された病院にいたんですね。これを犯人の目星がついている古畑は満面なく利用して、どんどん追い詰めていきます。
チャップリンの映画で『当人にとっての悲劇は、他人から見れば喜劇』という言葉があるのですが、まさにそんな感じでストーリーは展開していきます。犯人である議員秘書・佐古水茂雄のストレスやらドキドキが見ていて笑っちゃいます。さすが喜劇作家・三谷幸喜氏ですね。
ミステリーとしても、第一の犯行での立証はせずに、第二の犯行での立証で逮捕するという、トリッキーな作風になっています。どうやって自白に追い込んでいくのか?また、犯人・佐古水を疑うきっかけもスマートでいいですね。電話機を使ったトリックならではの着眼点です。
以上、『矛盾だらけの死体』でした。