古畑任三郎 11話『さよなら、DJ』あらすじと解説

古畑任三郎 11話 さよなら、DJ

【VS.ラジオDJ】「走ったすぐ後は息が乱れるものです。三十過ぎるとなおさらです。そういう時は、大きく深呼吸をしてゆっくりとお茶を飲むと落ち着きます。しかし、一番いいのは…三十過ぎたら走らない事です」

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データ

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脚本:三谷幸喜

監督:関口静夫

制作:フジテレビ

演出:松田秀知

音楽:本間勇輔

本編時間:46分01秒

公開日:1994年6月22日

あらすじ/人物相関図

さよなら、DJ 人物相関図ラジオDJ・中浦たか子は、付き人・沢村えり子に恋人を奪われていた。中浦は今週一杯で彼女の解雇を告げ、愛用している赤いセーターをプレゼントした。これは、中浦が用意周到に準備した殺人計画の一部であった。

ラジオ生放送の収録中に、『サントワマミー』の曲が流れる3分程の空き時間を利用すると、中浦はラジオ局内の抜け道を疾走。駐車場に出ると沢村えり子を撲殺した。前々から自分宛に、殺害を予告する脅迫文を送りつけており、愛用していた赤いセーターを着ていた沢村が、間違えて殺されてしまったように見せかけたのだった。

人物紹介/キャスト

主犯今回の犯人:中浦たか子

役者:桃井かおり

職業:歌手/ラジオDJ

殺害方法:撲殺(凶器不明)

動機:復讐

概要:詳しく見る
歌手でありラジオDJでもある女性。付き人・沢村えり子に恋人を奪われたため犯行に及ぶ。生放送中『サントワマミー』が流れる3分程の空き時間に、ラジオ局内の抜け道を利用し駐車場まで疾走。復讐のために彼女を殺害した。

前々から殺害を計画していたようで、(言及はされていないが)自分宛に脅迫文を送りつけていた。それをマネージャー・安藤から心配され警察と相談することになってしまうのだが、よりにもよって現れたのが古畑任三郎であった。

スタッフからは「おたかさん」と呼ばれており、有名なようで、古畑が自己紹介の際にファンであると述べていた。気だるい雰囲気な彼女であるが、ラジオが始まると一転はつらつと喋りまくり、やはりプロである。

ラジオ番組『中浦たか子のミッドナイトジャパン!』は、午前1時~午前4時までの生放送であり、構成作家・水野と共に司会進行していく。視聴者からの悩みを聞いたり、『LP復活委員会』という、貴重なレコードを持ってきて曲を流すコーナーもある。

今作品内では、「エルビス・プレスリー」のレコードを持ってきており、大学の時に一緒に住んでいた男が出て行った後に、このLPが残されていたのだというエピソードを語っていた。毎回自分でレコードに針を下ろしているのだが、犯行直後であったために手が震え、今日に限っては相方でもある水野に針を下ろさせ、古畑から疑われることにも繋がった。

ラジオDJとしては、20年間仕事をしているとのこと。また新人歌手の売り込みCDを、ウォークマンで聞くなどしているようだ。自動車免許は取得していない。


被害者今回の被害者:沢村エリ子

役者:八木小織(やぎ さおり)

職業:付き人

概要:詳しく見る
中浦たか子の付き人である女性。たか子の交際相手を取った挙句、歌手である彼女の元で、まだまだ唄の勉強がしたいなどと話し図々しい以外の何者でもない。

たか子と、そのマネージャー・安藤が自動車免許を持っていなかったことから、免許取得者で募集をかけたところ、応募してきたとのこと。たか子の前ではしっかりとした振る舞いをしているが、彼女が生放送ラジオの収録中は、車の中でのびのびとしている。足でラジオのボタンをONにしたり、寝転がりコーヒーを飲んでいる。

犯行計画/トリック

【生放送の空き時間に殺害。抜け道を利用してアリバイ工作】

①中浦たか子は、沢村えり子に、自分が愛用している『赤いセーター』をプレゼントしていた。ラジオの生放送が始まり、『サントワマミー』の曲が流れる3分程の空き時間に、ラジオ局内の抜け道を通り駐車場まで走る。駐車場で沢村えり子を撲殺後、再びラジオに戻った。

②前もって自分宛に『お前を必ず殺す』などの脅迫文を送りつけており、愛用している赤いセーターを着ていた沢村が、間違われて殺害されてしまったように見せかけた。また、ラジオ局内を普通のルートで走り、駐車場に向かうと7分以上かかってしまう。

視聴者への挑戦状

「おたかさん。実は犯行を認めていました。しかもラジオの中で。彼女、自分が犯人であるとほとんど認めていたのです。ヒントは……(新聞:コンビニ強盗の記事を指さす)んふふふふコレです。古畑任三郎でした」

三幕構成

さよなら、DJ 三幕構成

小ネタ・補足・元ネタ

〇ラジオDJ・中浦たか子が脅迫されていて、彼女の赤いセーターを着ていた付き人・沢村えり子が間違われて殺されるという設定である。しかし中浦を狙っての犯行ならば、その時間は生放送をしているのだから間違えるはずがないという矛盾がある。ただ、休憩時間に車に戻ってくる可能性もある。

〇三谷幸喜脚本の映画『ラヂオの時間』の中での事件とされている。

『赤い洗面器の男』が初めて登場する作品である。三谷作品において度々登場し、オチが明かされずに終わってしまうのが定番となっている。

赤い洗面器の男の話:表示する
中浦「赤い洗面器の男の話。ある晴れた日の午後道を歩いていたら、向こうから赤い洗面器を頭にのせた男が歩いてきました。洗面器の中にはたっぷりの水。男はその水を一滴もこぼさないように、ゆっくり、ゆっくり歩いてきました。

私は勇気をふるって、『ちょっとすいませんが、あなたどうしてそんな赤い洗面器なんか頭にのせて歩いているんですか?』と聞いてみました。すると男は答えました。

この話の続きは番組の最後で。中浦たか子のミッド・ナイト・ジャパン、午前4時までお付き合い下さいませませぇ」

中浦「今週もそろそろお別れの時間がやってまいりました。ある日の午後、道を歩いていたら、向こうから赤い洗面器を頭にのせた男が歩いてきました。私は勇気をふるってその男に聞いてみました」

(古畑が登場し、中浦が動揺する)

中浦「『どうして…どうしてあなたは、は、赤…赤い洗面器なんか頭にの…のせて歩いているのですか?』」番組が終了し、時間内にオチを言えず。

〇中浦たか子が犯行直後のため、レコードプレーヤーに針を落とそうとするが手が震えてしまい、構成作家・水野にその役目を譲るやりとりがある。刑事コロンボ19話『別れのワイン』でも、犯人が犯行直後だったために手が震え、ワインの移し替えを譲るやりとりがある。

〇古畑「人がね、いつもと違うことするっていうのは気になるんだよ」は、刑事コロンボ30話『ビデオテープの証言』にも似たようなセリフがある。

〇トリックに関しては、時間内に現場を行き来するという刑事コロンボ43話『秒読みの殺人』。事件解決方法に関しては、34話『仮面の男』を参考にしていると思われる。

〇中浦たか子が、沢田エリ子を殺害時に放った台詞、「痛い……?」は、犯人役・桃井かおりが三谷幸喜に許しを請いて言ったアドリブとされている。(出典:古畑任三郎辞典-269p-より)

まとめ/解説

男性を奪われてしまい、復讐のため犯行に及んだ愛憎劇になっています。復讐がテーマとなっている場合、最大の特徴としては、『復讐=目的』であります。犯行の瞬間に犯人にとっての最大のドラマが完了してしまうんですね。しかし、本作品ではそれをあまり感じられません。

犯人を演じた、桃井かおり氏の気怠い感じ、独特の雰囲気が実に見事にマッチしているのです。そのため、動機が復讐でありながらも、刑事との丁々発止の対決感も味わえます。エピソードの中盤に、犯人自らが「彼氏を奪われていた」という動機を語ったのも大きいかも知れません。自身は捕まらないという絶対的な自信を垣間見ることができるんですね。

また、この作品でユニークな点は証拠になります。犯人しか知り得ない情報の吐露というのは、14話『しゃべりすぎた男』にも繋がっており、職業柄話すことをメインとしている人物がうっかり……というさりげない一言が犯行の証拠になるのは見事であります。

さらにそこに、日本ならではのアニメが加わるという、これは『間違えられた男』にも繋がっていきます。後の名エピソードの基盤にもなっている優れた脚本でありながら、遊び心も詰まってるんですね。

以上、『さよなら、DJ』でした。