【VS.警視】「火事の時は119番。どうして最後が「9」なのかご存じですか。ダイヤル式の電話の場合、大きな数字の方がダイヤルが元に戻る時間が長い、それだけ心が落ち着くという事です。つまり、プッシュホンの時代にはほとんど意味ないんです」
データ
あらすじ+人物相関図
警視庁警視・小暮音次郎は、孫娘を殺害したグループのリーダー・生原治が証拠不十分で無罪になったことを受け、自ら裁きを下す決意をする。麻薬ルートを知っていた小暮は、運び屋を装ってバイヤーに取引先と時間を指定したのだった。
取引先が見える安ホテルを借りると、麻薬のバイヤーが酒場に入っていくのを見たという偽のアリバイを作った。小暮は部下が、自分に内緒で張り込みに協力しているのに感付いており、犯行時刻に自分はバイヤーを見ずとも、部下が入ったことを証明し、張り込みのアリバイが完成するのだ。ホテルを抜け出した彼は、生原が来るのを待ち伏せし射殺した。
人物紹介(キャスト)
今回の犯人:小暮音次郎(こぐれ おとじろう)
役者:菅原文太
職業:警察官
殺害方法:銃殺(32口径ブローニング)
動機:復讐
今回の被害者:生原治(はいばら おさむ)
役者:鈴木隆仁(すずき りゅうじん)
職業:
犯行計画/トリック
【張り込みを利用してアリバイを作る】
①小暮音次郎は麻薬ルートを掴んでいた。運び屋としてバイヤーに、酒場へ『18:15』に来るように呼んだ。麻薬の受け渡し場所が見えるホテルを借りると、18:00頃には部屋を出る。生原治が仕事を終えて帰宅するルートに待ち伏せした。
②18:10 生原が来ると呼び止めて拳銃で射殺、銃を遺体の胸元に置いた。拳銃は暴力団が良く使用する種類であり、抗争に巻き込まれ殺されたように見せかけた。
③ホテルに戻った。古畑任三郎にアリバイを聞かれると、その時刻はホテルで張り込みをしており、18:15にバイヤーが入るのをみたと主張する。小暮は部下たちが自分に内緒で張り込みを手伝っていたことに気が付いており、それを利用。部下たちはバイヤーが酒場に入るのを18:15に確認しているため、小暮の主張するアリバイが成立した。
視聴者への挑戦状
古畑「やはり生原を殺したのは小暮警視です。彼は張り込みを利用して生原を殺害しました。つまり、小暮警視のアリバイはニセモノです。彼がどういうトリックを使ったのか、もうお分かりですね。そして、りんごの謎。これも考えてみてください」
バーの客「だれと話してんだよー」
古畑「ん、こちらと」
バーの客「納得できねえなぁ」
古畑「古畑任三郎でした」
三幕構成
小ネタ・補足・元ネタ
〇小暮音次郎が犯行を認め、古畑に言ったセリフ「残念だよ。洋子の事件も君に担当してもらいたかった」は、刑事コロンボ41話『死者のメッセージ』の犯人が犯行を認めた際のセリフからオマージュしたものである。
〇26:26~28:34 科研の桑原万太郎に、今泉慎太郎が古畑任三郎についての不満を口にする場面がある。後に、『巡査・今泉慎太郎』というショートドラマの元となる。
まとめ
シーズン1の最終作品になります。古畑の上役が犯人として登場するなど、相手にとって不足なしな展開です。作品の動機としては『復讐』で、それに加えて『共感路線』というのも加わっているんですね。法では裁けないなら自分で裁きをくだすという展開なのですが、犯人の職業が『刑事』であることが良い味を出しております。
古畑任三郎の最後の台詞が良いですね、「人を裁く権利は我々にはありません。私たちのしごとは、ただ真実を導き出すことだけです」これが古畑の信念なのです。1話~9話までどこか飄々としていた彼なのですが、初めて本音を言ったんですね。小暮警視も彼の手腕を認め、敬語で話したことも印象的に残ります。
トリックとしては『アリバイ崩し』がメインテーマです。これが実に上手い演出でして、良く見ると証拠が丁寧に提示されているんですね。もし映像を見る機会がありましたら、ぜひ初めて古畑と今泉がホテルに訪れたシーンを見返してみてください。細か過ぎて気が付きませんでした。消火器/部屋のカーペットなど、しっかりとある違いが描写されているんですね。
最後に、古畑任三郎は『刑事コロンボ』をリスペクトした作品であることはご存じの方も多いでしょう。第1話「死者からの伝言」は、刑事コロンボ41話『死者のメッセージ』のアレンジ、そして今回の暮警視の台詞『洋子の事件も気に担当してもらいたかった。そうすれば……』も、死者のメッセ―ジからの流用なんですね。
初回、最終話共に『死者のメッセージ』で締めくくられているんです。コロンボではじまりコロンボで終わるという……、脚本家・三谷幸喜氏のリスペクト愛を感じます。
以上、『最後のあいさつ』でした。