古畑任三郎ファイナルシーズンのトリを飾るのは『松嶋菜々子』氏である。双子の脚本家として一人二役を演じきっているのだ。
演出を担当した河野圭太さんのインタビューによると、定点観測カメラを用いて重ね撮りをしたそうで、撮影に大変苦労したとのこと。ぜひ、見返すことがあったら注目してほしい。
データ
あらすじ+人物相関図
脚本家・加賀美京子は、双子の姉・もみじ、妹・かえでの共同ペンネームであり、このことは業界でも知られていた。かえでは社交的な性格で、ストーリーを考える他にマネジメントや交渉を行い、もみじはプロットを完成させる裏方に徹していた。
そんな折、もみじは脚本の方向性の違いからコンビ解消を申し入れる。冷ややかに応援する妹であったが、双子であることを利用した入れ替わりトリックでアリバイを作ると、拳銃での自殺を装い殺害したのだった。
人物紹介(キャスト)
氏名:大野もみじ
役者:松嶋菜々子
職業:脚本家
脚本家の女性。双子の姉妹の姉で、共同ペンネーム”加賀美京子”の名でドラマの脚本を執筆している。妹・かえでが考えたプロットに、セリフや行間を付け加えてドラマとして完成させる作業を担っていたが、脚本の方向性の違いから独立して個人でドラマ脚本を執筆したいと告げていた。引っ込み思案で人間嫌いである。
氏名:大野かえで
役者:松嶋菜々子
職業:脚本家
脚本家の女性。双子の姉妹で妹で、共同ペンネーム”加賀美京子”の名でドラマの脚本を執筆している。大まかなストーリーを考案するほか、社交的な性格のためマネジメントや交渉も行っている。容姿端麗で自信のある態度と決断力。ドラマのヒットメーカーでもあるためにテレビ局側も頭が挙がらないようだ。本業の傍らに、他映画の試写会で舞台挨拶をするなど幅広い活躍をしている。
小ネタ・補足・元ネタ
〇冒頭のドラマ『鬼警部ブルガリ三四郎』は、俳優・誉陽一(小日向文世)が演じる刑事ドラマである。鶴田というどこか抜けている刑事と、トメ子という女性が登場し事件を解決していくらしい。全11作のようで、視聴率は19.5%と高視聴率である。
〇アリバイ作りに利用され目撃者となった秘書・杉浦を演じた「松金よね子」氏は、16話『ゲームの達人』で家政婦・亀山を演じている。ゲームの達人でも、爆竹を利用したトリックで、たった今銃で自殺したように思いこまされる目撃者を演じていた。
〇作中に登場したRTVの『ポタージュ』というドラマのプロデューサー・海老沢は、19話『VSクイズ王』で登場していた。バラエティー番組からドラマ部門の方に異動になったようである。ちなみに毎週水曜日9時からオンエアされるそうだ。
〇18分~古畑任三郎が扱った事件について語るシーンがある。会話の内容から、20話『動機の鑑定』である。
刑事コロンボからのオマージュ
まとめ
田村正和氏が全編を通じて登場する「古畑任三郎」の最終回である。後は番外編「古畑中学生」の冒頭で少しだけ登場するのみとなる。DVD特典の三谷幸喜氏へのインタビュー前編によると、今まで描かれることが少なかった『古畑の内面』を強調した作品になっているようだ。
これまでの作品を観てきた方はお分かりだと思うが、古畑さんは生粋のフェミニストであり、女性への気遣いが素晴らしいのだ。
このエピソードでは、1話『死者からの伝言』の犯人・小石川ちなみの名前も挙がり、悲しい結末に陥った女性犯人に対し、古畑はどう寄り添っていくのかを最終話にもってきてみせた。
ミステリーとしては『双子』という大変難しい設定を題材とした。入れ替わりが行われたのではないかという視聴者にミスリードを孕ませ、一体どちらが殺したのか、本当に入れ替わったのか、とひねくれて考えることもできるため、犯人視点で進む倒叙形式でありながら犯人当てもすることができる構成となっているのだ。
最後に撮影を終えた田村正和氏はこう述べていたようだ。
三谷「本当せいせいしたみたいな感じでおっしゃってましたからね。凄い楽しげでしたもんね。やっと終わった、もうセリフ覚えなくていい。こんな嬉しいことはない。あんな明るい田村さん久々に見た。本当に嬉しそうでした(笑)」
河野「いやぁ……。本当気持ちいいって帰って行きましたからね(笑)」
三谷「でも田村さんこうおっしゃってまして。眠狂四郎は自分以外の役者さんが演じているバージョンもあるけれど、古畑に関しては俺しかやってないんだ。そういう自負、こだわりがありましたね」『三谷幸喜×河野圭一 対談(2006年)』より引用
2021年4月3日に逝去された田村正和さん。10年以上にわたり、みんなが愛した名刑事・古畑任三郎を演じてくださり本当にありがとうございました。ご冥福をお祈りします。
以上、『ラスト・ダンス』でした。
杉浦さんは家政婦ではなく秘書っしょ
≫杉浦さんは家政婦ではなく秘書
ご指摘ありがとうございます。修正させていただきました。